ロシア海軍北方艦隊の戦略用途原子力ロケット水中巡洋艦ユーリー・ドルゴルーキーは就役10周年を迎えた

『タス通信』より
2023年1月10日14時0分配信
【「ユーリー・ドルゴルーキー」:最初の「ボレイ」潜水艦は第4世代艦への道をどう開いたのか】
「ロシアとその同盟国の安全保障のグローバルバランスの保証人」~ロシア大統領ウラジーミル・プーチンは、原子力潜水艦「ユーリー・ドルゴルーキー」をこのように言った。
1月10日、21世紀初のロケット艦がロシア連邦海軍へ加入してから10周年を迎えた。
2013年1月10日は、セヴェロドヴィンスク工場『セヴマシュ』(『統合造船業営団』へ加入)、海軍、業界全体にとって歴史的な日となった。
この艦へ聖アンドレイ旗が掲揚された事により、我が国の新たな原子力潜水艦隊の時代が開かれた~より低騒音、より強力、よりデジタルな。
[原子力潜水艦の誕生]
原子力潜水艦「ユーリー・ドルゴルーキー」の就役の日、当時の設計局『ルビーン』総取締役ウラジミール・ズドルノフはこう話した「この艦は、子供のように痛みを抱えて生まれました」
1996年に最初の第4世代戦略ロケット艦が起工された。
この当時は国の経済が崩壊し始めた時期であり、パートナー企業は閉鎖されていた。
しかし『セヴマシュ』幹部は、工場がこの艦を建造する事に疑いを抱かなかった。
「第4世代戦略原子力潜水艦の建造の構想は、1980年代中期に登場しました。
ソヴィエト連邦共産党中央委員会と閣僚会議の決定は、1985年11月に下されました。
設計主任S.N.コワリョーフ率いる海洋工学中央設計局『ルビーン』は、第4世代原子力潜水艦の設計研究へ着手しました。
この時、国は安定しており、防衛産業は増加していました」
生産合同『セヴマシュ』総取締役ミハイル・ブドニチェンコは『タス通信』のインタビューで話した。
それから11年経った1996年11月2日、艦は起工された。
「我々の企業にとって、そして海軍全体の更なる発展にとって、それは境界線の時期でした。
時を経て分かったように、原子力潜水艦ユーリー・ドルゴルーキーの建造の決定は時節に即したものであり、多くを失う事は有りませんでした:協力企業、人材の可能性、そして最終的には人々の将来への信頼」
ブドニチェンコは話し、これは、当時工場を率いていたダヴィド・グセイノヴィチ・パシャエフの大きな利点であった事を指摘した。
彼によると、同盟国の省庁との枠組みで存在していた協力は、殆ど完全に瓦解した。
「それは、海軍と国防省の支援を受け、設計社の海洋工学中央設計局『ルビーン』と共同で、文字通り少しずつ復元されていきました。
この重要な時期に、『セヴマシュ』と設計局幹部は、文字通り艦を救う事になった非標準的で優れた技術的解決策を生み出しました。



船体構造に未完成のプロジェクト971及び949A潜水艦の部品を流用するというアイデアにより、原子力潜水艦ユーリー・ドルゴルーキーの建造を進める事が可能となりました。
船体の形成は2004年に完了しました」
ブドニチェンコによると、ロシア大統領プーチン率いる国の新たな指導層は、国家安全保障問題及び防衛産業への支援に充分な注意を払い始めた。
「ウラジーミル・ウラジーミロヴィチは、まだ首相の職責に在った1999年、原子力潜水艦ゲパルドが造船台から出渠した際に初めて『セヴマシュ』を訪れ、2年後の2001年に艦へ海軍旗が掲揚された時に参列した事は注目すべきでしょう」
『セヴマシュ』のトップは話した。
彼は更に、2000年代には国家防衛発注への資金供給が確立され、その後数十年に渡る第4世代原子力潜水艦の建造の明確な見通しが立った事を強調した。
「かつてセルゲイ・ニキチーチ・コワリョーフは言いました:国の指導者は、国益は民主主義を演じるのみならず、武力により護られる事を理解するようになった。
強力な艦隊の作成無くしてロシアという国は存在できない事を確信しております」
ブドニチェンコは指摘した。
[原子力潜水艦の価値 ]
『セヴマシュ』のトップは、原子力潜水艦「ユーリー・ドルゴルーキー」が第4世代艦への道を開いた事を確信している。
「2013年1月10日は、工場、艦隊、業界全体にとって歴史的な日でした。
私達は誰もが、最も危機的な状況であっても、団結し、結果に集中することが成功への道であることを証明しました。
もちろん、この日は私達、工場労働者、設計者、軍事船員にとって最も幸せでした」
ブドニチェンコは強調した。
それ以降、『セヴマシュ』は更なる2隻のプロジェクト「ボレイ」原子力潜水艦を建造し、海軍へ引き渡した~「アレクサンドル・ネフスキー」と「ウラジーミル・モノマーフ」
「ユーリー・ドルゴルーキー」は実験艦のようであった。
「その多くは、完全に新しいものでした~船体の建造方式、電波電子兵装複合体、船体の流体力学改善の為に使用された最新の技術的成果」
ブドニチェンコは話した。
「次の2隻の艦は、造船台に居る期間が著しく速くなりました。
現在、3隻全てが北方艦隊と太平洋艦隊で勤務に就いています。
私達は、その運命に従い、艦のサービスメンテナンスを行なっています。
船員は現代的な第4世代巡洋艦を高く評価しています」
艦の試験モデルの兵装の海上での問題点除去と試験には4年掛かった。
「私達は、この艦が深淵の端を越えてしまい、その結果、原子力潜水艦の造船が失われてしまうかもしれないと感じたものです」
原子力潜水艦「ユーリー・ドルゴルーキー」の試運転責任者ニコライ・セマコフは話した。
「あらゆる方向において、私達は作業を始める時、何ができるのか、何処で手に入れる事が出来るのか、どのように作業するのかという事から始めなければなりませんでした。
そして今、多くの試験設計作業の完了が簡単に艦へ移された事はおそらく秘密では無く、この協力が始まった時、それは非常に困難なものでした。
全てが中途半端だった時、それは艦へ来て、我々の作業と並行で、試験準備と並行で艦上で全て行なわれました」
2013年1月10日、「ユーリー・ドルゴルーキー」へ海軍旗が掲揚されると同時に、このクラスの潜水艦の主兵器である大陸間弾道ミサイル「ブラヴァー」が軍備採用された。
同時に、その飛行設計試験は更に数年間続けられた。
にも関わらず、「ブラヴァー」は、その動作性能と有効性を示した。
公開情報源によると、大陸間弾道ミサイルは3段式固体燃料ロケットであり、6個の個別誘導弾頭を搭載できる。
総搭載重量は1150キログラム。
各々のプロジェクト「ボレイ」及び「ボレイ-A」潜水艦は、このようなミサイルを16基搭載できる。
現在、「ボレイ」ラインは、近代化されたシリーズ艦に引き継がれている。
プロジェクト「ボレイ-A」の下で『セヴマシュ』は3隻の艦を建造して海軍へ引き渡した~「クニャージ・ウラジーミル」、「クニャージ・オレグ」、「ゲネラリーシムス・スヴォーロフ」
「このシリーズの原子力潜水艦が更に数隻、様々な建造段階に在ります。
プロジェクト"ボレイ"及びボレイ-Aラインの艦の建造は、国内防衛産業の傑出した成果と言え、新たな段階の始まりを象徴しております。
これらの艦の建造は、わが国の戦略核戦力の潜在能力を現代的な水準に維持し、国家規模で複雑な技術プログラムを実行する能力を示しています」
ブドニチェンコは指摘した。

プロジェクト955「ボレイ」戦略用途原子力水中巡洋艦の1番艦K-535「ユーリー・ドルゴルーキー」は、1996年11月2日に起工、2007年4月15日に進水、2012年12月29日に竣工、2013年1月10日に就役し、北方艦隊第31潜水艦師団に編入されました。
[新世代戦略原潜ユーリー・ドルゴルーキーはロシア海軍へ就役した]
[新世代戦略原潜ユーリー・ドルゴルーキーは北方艦隊第31潜水艦師団へ編入された]
「ユーリー・ドルゴルーキー」は、就役前の2011年に計4回の弾道ミサイル「ブラヴァー」発射試験を実施しました。
(2011年6月28日、8月27日、10月28日、12月23日に実施)
この内、2011年12月23日に実施された試験では、2基の「ブラヴァー」を一斉に発射しました。
[「全力全開」ブラヴァー発射試験(2010~2011年) ]
[潜水艦発射弾道ミサイル「ブラヴァー」は一斉発射試験に成功した]
「ユーリー・ドルゴルーキー」は就役後もセヴェロドヴィンスクに居ましたが、2013年9月3日夜にセヴェロドヴィンスクを出港し、ガジエヴォへ向かいました。
[新世代戦略原潜ユーリー・ドルゴルーキーは9月6日に駐留基地ガジエヴォへ到着する]
2013年9月6日、ガジエヴォ基地へ到着しました。
[新世代戦略原潜ユーリー・ドルゴルーキーはガジエヴォ基地へ到着した]
2013年12月5日、定期修理の為、セヴェロドヴィンスクへ戻ってきました。
[戦略原潜ユーリー・ドルゴルーキーはセヴェロドヴィンスクで定期修理を行なう]
2013年12月24日に修理を完了しました。
[戦略原潜ユーリー・ドルゴルーキーはセヴェロドヴィンスクでの修理を終えた]
2013年12月30日、ガジエヴォに到着しました。
[2隻のボレイ級戦略原潜はガジエヴォ基地に到着した]
その後の動向は公表されていませんが、2014年7月27日の「ロシア海軍の日」にはセヴェロモルスクで観艦式に参加しています。
2014年8月20日には2週間ぶりにガジエヴォ基地へ戻りました。
[ロシア海軍最新鋭戦略原潜ユーリー・ドルゴルーキーは2週間ぶりに基地へ戻った]
2014年10月下旬、セヴェロドヴィンスクへ入港し、「ブラヴァー」ミサイルを満載(16発)しました。
[ロシア海軍最新鋭戦略原潜ユーリー・ドルゴルーキーは弾道ミサイル「ブラヴァー」を満載する]
2014年10月29日にはバレンツ海からカムチャツカへ向けて弾道ミサイル「ブラヴァー」を発射しました。
[ロシア海軍北方艦隊の戦略原潜ユーリー・ドルゴルーキーはバレンツ海からの弾道ミサイル発射に成功した]
2015年10月15日には、2ヶ月以上に渡る北極圏航海~具体的には戦略核パトロールを終え、ガジエヴォ基地へ戻っています。
[ロシア海軍北方艦隊の新鋭戦略原潜ユーリー・ドルゴルーキーは2ヶ月以上に渡る北極圏航海を終えて帰港した]
2016年9月27日には、白海からカムチャツカ半島へ向けて2発の「ブラヴァー」を発射しました。
この時には、1基のミサイルは正常に飛翔し、弾頭はカムチャツカ半島の目標へ命中したのですが、もう1基のミサイルは、発射された当初は正常に飛翔していたものの、第1段ロケットを切り離した後に何らかの不具合が起こったらしく(第2段ロケットのエンジン点火に失敗?)、自爆処分されました。
[ロシア海軍北方艦隊の新鋭戦略原潜ユーリー・ドルゴルーキーは弾道ミサイル"ブラヴァー"を2発同時に発射した]
2017年6月26日、「ユーリー・ドルゴルーキー」は、バレンツ海からカムチャツカ半島のクラ射爆場へ「ブラヴァー」を発射しました。
同艦にとっては、通算で7度目の「ブラヴァー」発射となりました。
[ロシア海軍北方艦隊の原子力戦略用途水中巡洋艦ユーリー・ドルゴルーキーはバレンツ海からカムチャツカ半島へ弾道ミサイル"ブラヴァー"の発射訓練を行なった]
2018年4月16日には、北方艦隊へ配備された新型哨戒艇「グラチョニク」級の訓練の為、ガジエヴォ基地から出航しました。
[ロシア海軍北方艦隊の戦略用途原子力水中巡洋艦ユーリー・ドルゴルーキーは哨戒艇の訓練の為に出航した]
4月28日には、北方艦隊の最新鋭砕氷船「イリヤー・ムーロメツ」(2017年11月30日就役)に先導されてセヴェロドヴィンスクへ入港しました。
[ロシア海軍北方艦隊の最新砕氷船イリヤー・ムーロメツは白海の結氷海域で戦略用途原子力水中巡洋艦ユーリー・ドルゴルーキーを先導した]
2018年5月22日、「ユーリー・ドルゴルーキー」は、白海からカムチャツカ半島のクラ射爆場へ「ブラヴァー」を発射しました。
同艦にとっては、通算8度目の「ブラヴァー」発射となりました。
更に今回、「ユーリー・ドルゴルーキー」は、4基の「ブラヴァー」を同時に発射しました。
これまでに「ユーリー・ドルゴルーキー」は、2基の「ブラヴァー」同時に発射した事は2度ありますが(2011年12月23日と2016年9月27日)、4基の一斉発射は初めてです。
[ロシア海軍北方艦隊の戦略用途原子力ロケット水中巡洋艦ユーリー・ドルゴルーキーは弾道ミサイル"ブラヴァー"4基を一斉に発射した]
2019年8月24日には戦略用途原子力水中巡洋艦K-114「トゥーラ」(1987年11月5日就役)と共に弾道ミサイルを発射しました。
「ユーリー・ドルゴルーキー」は、バレンツ海からクラ射爆場へ弾道ミサイルを発射したようです。
[ロシア海軍北方艦隊の戦略用途原子力水中巡洋艦トゥーラ及びユーリー・ドルゴルーキーは弾道ミサイルを発射した]
その後の動向は明らかにされていませんが(ロシア海軍の潜水艦の行動は原則非公開)、2023年1月10日に就役10周年を迎えました。
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