ロシア海軍の為に35000馬力のガスタービンエンジンが開発される
- カテゴリ:ガスタービンエンジン代替問題
『タス通信』より
2021年1月17日17時27分配信
【『統合エンジン製造営団』は出力35000馬力までの2つの海洋エンジンプロジェクトを検討している】
モスクワ、1月17日/タス通信
『統合エンジン製造営団』(『ロステック』へ加入)は、出力35000馬力までの海洋エンジンを作成する2つの試験設計プロジェクトを検討している。
『統合エンジン製造営団』総取締役アレクサドル・アルチュホフは述べた。
「今日において、我々には、6000馬力から27000馬力まで3つの有益なニーズが有ります。
その上、35000馬力までの2つの試験設計プロジェクトについて討議しております」
アルチュホフは、テレビ局『ズヴェズダー』の番組『軍への納入品』のインタビューを受け、こう話した。
『統合エンジン製造営団』トップによると、この海洋ラインの最初のエンジンは、2020年12月にフリゲート「アドミラル・ゴロフコ」へ納められた。
ウクライナへの供給の依存を避ける為、ロシア海軍総司令部は2000年代初頭に「ガスタービンエンジン及び海軍の水上艦のユニットの作成と使用に関するコンセプト」を承認し、全体の供給機能をルイビンスク科学生産合同『サトゥルン』へ委ねた。
ロシア海軍の最新戦闘艦、特にプロジェクト22350フリゲートとプロジェクト11356フリゲートは、以前、ニコラエフの『ゾーリャ機械設計』の動力装置を装備していた。
ソ連/ロシアの艦船用ガスタービンエンジンの製造には、ロシアの「サトゥルン」、「アヴローラ」、「トゥルボコン」、ウクライナの「ゾーリャ機械設計」が関わっており、エンジンの最終組立は「ゾーリャ機械設計」で行なわれていました。
(主要部品はロシアの企業で製造し、それをウクライナへ送って最終組み立て)
【科学生産合同「サトゥルン」公式サイト】

【『科学製造合同アヴローラ』公式サイト】

【国営企業ガスタービン製造科学工業複合体「ゾーリャ機械設計」公式サイト】

なお、ロシアのカルーガ市に在る非公開株式会社「科学製造国内企業トゥルボコン」は、公式サイトを持っていません。

ソヴィエト連邦時代、ガスタービン搭載艦は、ニコラーエフ市の61コムーナ造船所、カリーニングラード州のヤンターリ造船所、ゼレノドリスクのゴーリキー造船所などで建造されていました。

特に、ウクライナの61コムーナ造船所では大型のガスタービン推進艦が建造されていました。

プロジェクト61大型対潜艦/警備艦(1962-1973年に15隻建造、他にレニングラードで5隻建造)

プロジェクト1134B大型対潜艦(1971-1979年に7隻建造)

プロジェクト1164ロケット巡洋艦(1982-1989年に3隻建造、1隻未完成)

ですから、ニコラーエフ市にガスタービンエンジンの最終組立工場が在った方が輸送などの面で都合が良かったわけです。

しかし、1991年末のソ連邦解体後、ガスタービン機関の部品を製造する会社と最終組立を行なう会社が別々の国に分かれてしまう事になり、何かと不都合が生じました。
そこで1993年、旧ソ連のガスタービン製造に関わっていた「サトゥルン」、「アヴローラ」、「トゥルボコン」、「ゾーリャ機械設計」が集まり、合同企業「トゥルボルス」が設立されました。
【非公開株式会社『トゥルボルス』公式サイト】
ロシア海軍の新世代水上艦の為のガスタービン(M90FR)も、ロシアとウクライナの企業の共同開発でした。
[ロシア新世代艦のガスタービンとディーゼル]
しかし、2014年2月末からのウクライナ危機、3月のロシア連邦によるクリミア半島編入により、ウクライナとロシアの関係も悪化しました。
2014年3月末まで「ゾーリャ機械設計」社はロシアへのガスタービン機関供給を継続していましたが、その後、供給は途絶えました。
[ウクライナ防衛産業は依然としてロシアとの契約を忠実に履行している]
ウクライナとロシアのガスタービンエンジン生産に関する「分業体制」が瓦解した為、ロシア海軍のガスタービン装備艦の建造は停滞しました。
[ロシア海軍の新型フリゲートの建造は停滞する]
プロジェクト22350フリゲートは1番艦と2番艦、プロジェクト11356Rフリゲートは1番艦~3番艦のガスタービンは供給されましたが、ウクライナは、それ以降のエンジンの引き渡しを拒否しました。
(代金はウクライナへ支払っていた)
[ロシアはガスタービンエンジン供給中止に関してウクライナを訴える]
この為、ガスタービンの生産を全面的にロシア国内へと切り替える事になり、ルイビンスクの『サトゥルン』社にガスタービンエンジンの最終組立施設を作る事になりました。
[ロシア海軍の艦艇には完全国産のガスタービンエンジンが提供される]
[ロシアは艦艇用ガスタービンの製造を全面的に国内へと切り替える]
[ロシアのサトゥルン社は2017年までにウクライナ製ガスタービンを完全に代替する]

ルイビンスクの『サトゥルン』社におけるガスタービンエンジン生産の為の各種試験は2017年12月末までに完了しました。
『Mil.Press FLOT』(フロートコム)より
2017年12月31日17時40分配信
【科学生産合同サトゥルンは3つのガスタービンエンジンの試験設計作業を完了した】
2018年1月初頭、『サトゥルン』社でガスタービンエンジンの生産が始まりました。
[ルイビンスクのサトゥルン社はロシア海軍の為のガスタービンエンジンの生産を開始する]
ガスタービンエンジン「M90FR」(出力27500馬力)

ガスタービンエンジン「M70FRU-R」(出力14000馬力)

特に、ガスタービンエンジン「M90FR」は、プロジェクト22350フリゲートの増速用エンジンなどに使われています。
[ロシア海軍のプロジェクト22350フリゲート3番艦と4番艦のガスタービンエンジンはロシア国内で製造されている]
そして今は、出力35000馬力のガスタービンエンジンの開発が検討されています。
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