空母アドミラル・クズネツォフはシリア情勢とは関係なく2013年12月に地中海遠征へ出発する

『イタル-タス』より
2013年8月30日14時10分配信
【ロシアはシリアのタルトゥースへ航空母艦「アドミラル・クズネツォフ」を向かわせる】
モスクワ、8月30日/イタルタス
ロシア海軍司令部は、今年末にタルトゥースへ重航空巡洋艦「アドミラル・クズネツォフ」を向かわせる計画を変更する事は無い。
本日(8月30日)、イタルタス特派員はロシア連邦国防省の情報提供者より伝えられた。
「今年末、まあ大方12月上旬という事になるでしょうが、プロジェクト11435重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフは遠距離海洋航海へと向かい、その間にロシア連邦海軍物資・技術供給所の在るシリアのタルトゥース市へ寄港します」
彼は話した。
情報提供者は、巡洋艦が駐留地点-セヴェロモルスク-を出航する正確な日時については明確にしなかった。
「この地域-シリアの情勢の最近の悪化とは関係なく、海軍司令部は巡洋艦の地中海東部における計画航海を断念するつもりは一切御座いません。
航海スケジュールは、既に合意されておりますので」
対談者は話した。
情報提供者は、ロシア唯一の航空巡洋艦のタルトゥースへの訪問は、シリアの情勢とは全く関係が無い事を指摘した。
ロシア海軍のフラッグシップ「アドミラル・クズネツォフ」が艦船航空グループの一員としてタルトゥース港への最後の業務寄港を行なったのは2012年1月だった。
「アドミラル・クズネツォフ」
航空母艦は、重艦上戦闘機Su-33、襲撃機Su-25、そして対潜ヘリコプターKa-27を搭載する事が出来る。
巡洋艦はニコラエフ造船工場の船台で1982年に起工され、1985年12月に進水した。
1991年1月20日、巡洋艦は初めて海軍旗を掲揚した。
艦の飛行甲板の長さは306メートル、幅75メートル、巡洋艦の排水量は6万トンである。

[重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフの経歴(ロシア国防省公式サイト)]
2013年5月末、北方艦隊司令官ウラジーミル・コリョローフ大将は、「アドミラル・クズネツォフ」が今年と来年に遠海ゾーンで任務を遂行すると述べています。
[空母アドミラル・クズネツォフは2013-2014年に遠距離航海を行なう]
6月初頭には、ロシア海軍総司令官ヴィクトル・チルコフ大将が「アドミラル・クズネツォフ」は今年末に遠距離航海を実施すると述べています。
[空母アドミラル・クズネツォフは年末に地中海へ行く]
「アドミラル・クズネツォフ」は8月21日にムルマンスクの係留岸壁を離れていますが、これは恐らくメンテナンス後の点検の為でしょう。
[空母アドミラル・クズネツォフは係留岸壁を離れた(2013年8月21日)]
現在、シリアの情勢は化学兵器使用により、以前に増して悪化しておりますが、それとは関係なく「アドミラル・クズネツォフ」の年末の地中海航海は当初の予定通り実施される事になるようです。
これまでに「アドミラル・クズネツォフ」は、4回の地中海遠征を行なっています。
[第1次地中海遠征(1995年12月8日出港、1996年3月22日帰港)]
[北方艦隊]
重航空巡洋艦「ソ連邦海軍元帥クズネツォフ」、駆逐艦「ベッストラーシヌイ」、給油船「ドニエプル」、救助曳船SB-406、原子力潜水艦「ヴォルク」
[バルト艦隊]
警備艦「プイルキー」、給油船「オレクマ」
[黒海艦隊]
救助曳船「シャフテル」、給油船「イワン・ブブノフ」
[第2次地中海遠征(2007年12月5日出港、2008年2月3日帰港)]
[北方艦隊]
重航空巡洋艦「ソ連邦海軍元帥クズネツォフ」、大型対潜艦「アドミラル・レフチェンコ」、「アドミラル・チャバネンコ」、給油船「セルゲイ・オシポフ」、救助曳船「ニコライ・チケル」
[黒海艦隊]
親衛ロケット巡洋艦「モスクワ」、給油船「イワン・ブブノフ」
[第3次地中海遠征(2008年12月5日出港、2009年3月2日帰港)]
[北方艦隊]
重航空巡洋艦「ソ連邦海軍元帥クズネツォフ」、大型対潜艦「アドミラル・レフチェンコ」(途中で大型対潜艦「アドミラル・チャバネンコ」と交代)、給油船「セルゲイ・オシポフ」、救助曳船「ニコライ・チケル」
[第4次地中海遠征(2011年12月6日出港、2012年2月16日帰港)]
[北方艦隊]
重航空巡洋艦「ソ連邦海軍元帥クズネツォフ」、大型対潜艦「アドミラル・チャバネンコ」、救助曳船「ニコライ・チケル」、給油船「セルゲイ・オシポフ」、「ヴャージマ」、「カーマ」
[バルト艦隊]
警備艦「ヤロスラフ・ムードルイ」、給油船「レナ」
[黒海艦隊]
警備艦「ラードヌイ」
地中海遠征は、全て年末(12月初頭)に出港し、翌年の2月~3月に帰港するというパターンになっております。
第2次遠征を除き、シリアのタルトゥースへ寄港しています。
今回も同様のパターンになるようです。
むろん、「アドミラル・クズネツォフ」1隻だけで地中海へ行く事など有り得ず、水上戦闘艦や保障船(救助曳船、給油船)が随伴する事になるでしょう。
更に、「アドミラル・クズネツォフ」は、現時点では(地中海への)遠距離航海を行なえない理由が有ります。
現在、バレンツ海で海上試験を実施中のインド海軍航空母艦「ヴィクラマーディティヤ」(旧「アドミラル・ゴルシコフ」)には、「アドミラル・クズネツォフ」の乗組員300名以上が乗っており、同艦の運航とインド人乗員への指導に当たっています。
[インド空母ヴィクラマーディティヤは白海で各種機器を点検する]
「アドミラル・クズネツォフ」の乗組員は約1900名ですから、約6分の1の乗員が欠けている事になります。
「ヴィクラマーディティヤ」へ派遣されている「アドミラル・クズネツォフ」乗員団を指揮するのはイーゴリ・リャブコ1等海佐です。
同氏は、「ヴィクラマーディティヤ」の実質的な艦長を務めています。

イーゴリ・リャブコ氏は航海士官出身であり、2000年代初頭頃から「アドミラル・クズネツォフ」に配属され、同艦の航海士を務めています。
[2005年9月21日の空母アドミラル・クズネツォフ(その2)]
ロシアの歌手達に囲まれている海軍士官が、イーゴリ・リャブコ氏です(この当時は大尉)。
「アドミラル・クズネツォフ」は2004年以降、大西洋や地中海への遠距離航海を行なっていますが、当然ながらリャブコ氏は、それらの航海全てに参加しています。
おそらく、「アドミラル・クズネツォフ」の遠距離航海には、熟練の航海士官であるリャブコ氏が必要不可欠なのでしょう。
その彼と、熟練の乗員300名を欠いては遠距離航海を行なえないという事でしょう。
「ヴィクラマーディティヤ」の航海試験が9月末までに終わり、彼らが「アドミラル・クズネツォフ」へ復帰するまでは。
スポンサーサイト