ロシア海軍黒海艦隊の大型揚陸艦ニコライ・フィリチェンコフはシリアへ地対空ミサイルS-300を輸送する?
- カテゴリ:地中海情勢(2018年)

『インタファクス-軍事ニュース出張所(AVN)』より
2018年9月29日23時56分配信
【ロシア海軍の大型揚陸艦「ニコライ・フィリチェンコフ」は地中海へ入った】
イスタンブール、9月29日、インタファクス
ロシア海軍の大型揚陸艦「ニコライ・フィリチェンコフ」は、土曜日に黒海海峡を通過して地中海水域へ入った。
イスタンブールのニュースポータルは、ボスポラス海峡を通過する写真を公表した。
トルコのサイトは、黒海艦隊の戦闘艦が地中海のロシア海軍の物資-技術サービス供給所が置かれているシリアのタルトゥース港へ向かっていると確信している。
このシリアへの航海が、シリアへのロシア製高射ミサイル複合体S-300の供給に関連しているという観測は排除されない。
現在、シリア沿岸へは、更に、シリアのロシアグループへの最大の補給機関の1つとみられているロシアの『防衛論理』社のコンテナ輸送船「スパルタ-3」が航行している。
木曜日夕方、同船は黒海海峡を通過して地中海水域へ入った。
西側の航空リソース状況のモニタリングデータによると、シリアへの高射ミサイル複合体S-300の供給は、この48時間に行なわれ、少なくとも3機のロシア航空宇宙軍の重軍用輸送機An-124-100「ルスラン」がフマイミーン航空基地へのフライトを行なった。
ロシアからシリアへの貨物輸送には、機上番号RA-82032、RA-82010、RA-82035のAn-124が関わっている。
特に、土曜日にはフマイミーン航空基地へ機上番号RA-82035のAn-124が到着した。
これら全ての軍用輸送航空機のロシアからシリアへの飛行ルートは、カスピ海、イラン、イラクを通過している。
ロシア連邦外務省のトップ、セルゲイ・ラブロフは、金曜日の国際連合総会で行なわれた発表の結果のプレス会議において、ミサイル複合体S-300のシリアへの引き渡しは、既に始まっていると述べた。
月曜日、ロシア連邦国防相セルゲイ・ショイグは、ロシアは、この2週間で、シリア軍へ高射ミサイル複合体S-300を引き渡すと語った。
この発言によると、シリアへの高射ミサイル複合体S-300の供給は、9月17日夜に地中海上空でシリアの対空防衛システムS-200により、15名の将兵を乗せたロシアの偵察航空機Il-20が撃墜されたという結果を受けてのものである。
ロシア連邦国防省は、(Il-20は)シリアの目標へ航空攻撃を加えたイスラエルの戦闘機の近くで危険にさらされたと表明した。
西側の航空リソースのデータによると、最近、ロシア連邦航空宇宙軍の軍事輸送航空隊は、ロシアからフマイミーン航空基地への往復フライトを定期的に行なっている。
特に、月曜日には、重軍用輸送航空機Il-76MDが、同基地へ着陸した。
『イズベスチヤ』紙によると、月曜日、フマイミーン航空基地へ航空機Il-76が電波電子戦闘複合体を送り届けた。
セルゲイ・ショイグは、シリア近辺の地中海水域上空では、軍用航空機の衛星航法、機内電波位置測定ステーション及び通信システム、シリア領域の攻撃者施設への電波電子制圧が行なわれていると語った。
ロシア海軍の大型揚陸艦は、2013年1月以降、黒海沿岸(ノヴォロシースク或いはセヴァストーポリ)からシリアのタルトゥースへ貨物や人員などを輸送する任務、いわゆる「シリア・エクスプレス」に就いています。

当初は大型揚陸艦のみが「シリア・エクスプレス」へ参加していましたが、2015年夏以降は海軍がチャーター或いは購入した貨物船も参加するようになりました。
「シリア・エクスプレス」へ参加しているのは、主に黒海艦隊所属艦ですが、この他に北方艦隊及びバルト艦隊からも大型揚陸艦が交代で派遣されています。
黒海艦隊の大型揚陸艦「ニコライ・フィリチェンコフ」(1975年12月30日就役)は「シリア・エクスプレス」の常連であり、2017年には、計7回の「シリア・エクスプレス」に従事していた事が確認されています。
(ロシア海軍当局からの公式発表は無いが、ボスポラス海峡を南下すればシリアへ向かい、北上すれば黒海沿岸のロシア海軍基地へ戻っている)
・1月18日にボスポラス海峡を南下、1月27日に北上
・2月19日にボスポラス海峡を南下、3月5日に北上
・3月15日にボスポラス海峡を南下、3月24日に北上
・4月6日にボスポラス海峡を南下、4月17日に北上
・5月1日にボスポラス海峡を南下、5月11日に北上
・5月20日にボスポラス海峡を南下、6月2日に北上
・7月20日にボスポラス海峡を南下、8月初頭に北上
2017年8月初頭にセヴァストーポリへ戻った後はオーバーホールが行なわれ、2018年2月に修理を終えて復帰した後は黒海の演習へ参加していました。
[ロシア海軍黒海艦隊の大型揚陸艦ニコライ・フィリチェンコフとオルスクはクリミア半島で上陸訓練を行なった]
2018年4月13日、大型揚陸艦「ニコライ・フィリチェンコフ」は、ほぼ9ヶ月ぶりにボスポラス海峡を南下、シリアのタルトゥース港へ向かいました。
[ロシア海軍黒海艦隊の大型揚陸艦ニコライ・フィリチェンコフはシリアへ向かった]
タルトゥース港で貨物を降ろした後、4月21日にはダーダネルス、ボスポラス海峡を通過し、地中海を去りました。
[ロシア海軍黒海艦隊の大型揚陸艦ニコライ・フィリチェンコフはシリアから戻ってくる]
5月1日にボスポラス海峡を南下してシリアへ行き、5月11日に同海峡を北上しました。
5月23日にダーダネルス、ボスポラス海峡を通過し、今年3度目となる「シリア・エクスプレス」へと向かいました。
[ロシア海軍黒海艦隊の大型揚陸艦ニコライ・フィリチェンコフと対水中工作艇P-433はシリアのタルトゥースへ向かった]
6月15日、今年4度目となる「シリア・エクスプレス」へと向かいました。
[ロシア海軍黒海艦隊の大型揚陸艦ニコライ・フィリチェンコフはシリアへ貨物を運ぶ]
6月25日にダーダネルス、ボスポラス海峡を通過し、地中海を去りました。
7月11日にボスポラス海峡を南下してシリアへ行き、7月27日に同海峡を北上しました。
8月24日にボスポラス海峡を南下して地中海へ入り、9月12日に同海峡を北上しました。
[ロシア海軍黒海艦隊の大型揚陸艦アゾフとニコライ・フィリチェンコフは地中海東部からセヴァストーポリへ帰投した]
これは、9月1日から8日まで地中海東部で実施されたロシア海軍とロシア航空宙軍の大規模演習へ参加する為でした。
[ロシア海軍とロシア航空宇宙軍の地中海演習(2018年9月1日~8日)]
そして9月29日、「ニコライ・フィリチェンコフ」は、ボスポラス海峡を南下して地中海へ入りました。
無論、今回も「シリア・エクスプレス」でしょうが、運ぶ貨物は、最近にシリアへの引き渡しが始まった高射ミサイル複合体S-300である可能性が高いようです。
現在、地中海東部(シリア沖)には、少なくとも以下のロシア海軍の艦船が滞在しています。
[北方艦隊]
ロケット巡洋艦「マルシャル・ウスチーノフ」
[バルト艦隊]
工作船PM-82
[黒海艦隊]
潜水艦「ヴェリキー・ノヴゴロド」
潜水艦「コルピノ」
フリゲート「アドミラル・グリゴロヴィチ」
フリゲート「アドミラル・エッセン」
フリゲート「アドミラル・マカロフ」
小型ロケット艦「ヴイシニー・ヴォロチョーク」
警備艦「プイトリーヴイ」
大型揚陸艦「ニコライ・フィリチェンコフ」
海洋掃海艦「ワレンチン・ピクリ」
中型偵察艦「キルディン」
大型海洋給油船「イワン・ブブノフ」
救助曳船「プロフェッソル・ニコライ・ムールイ」
サルベージ船KIL-158
試験船「セリゲル」
[カスピ小艦隊]
小型ロケット艦「グラード・スヴィヤージスク」
小型ロケット艦「ヴェリキー・ウスチュグ」
スポンサーサイト