ロシア-ウクライナ間の黒海艦隊協定は廃止された
- カテゴリ:ロシア黒海艦隊(2012-2019年)


『アルムス-タス』より
2014年4月2日11時19分
【プーチンはロシア連邦黒海艦隊に関するウクライナとの協定を廃棄する法令に署名した】
モスクワ、4月2日(アルムス-タス)
ロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチンは、ロシア連邦黒海艦隊に関する4つのロシア-ウクライナ協定を廃止する法令に署名した。
クレムリンの広報サービスは発表した。
「この連邦法令は、公式に公示された日から効力が発生する」
文書には、こう記された。
ここでは、1997年5月28日の黒海艦隊分割バラメータに関するロシア-ウクライナ間の合意、1997年5月28日からのウクライナ領におけるロシア連邦黒海艦隊の滞在条件及び状態に関する合意、1997年5月28日からのウクライナ領におけるロシア連邦黒海艦隊の相互分割に関連した合意、更には、2010年4月21日からのウクライナ領におけるロシア連邦黒海艦隊の滞在問題に関する、いわゆるハリコフ合意について述べられている。
3月28日、大統領は国家院(下院)に対し、これらの合意を廃止する為の法案を提議した。
3月31日、それは満場一致で採択された。
4月1日には連邦院(上院)で承認された。
以前、ロシア連邦外務次官グリゴリー・カラシンが説明したように、現在、黒海艦隊に関するロシア-ウクライナ協定を遵守した行動を続ける理由など存在しない。
「クリミア共和国及びセヴァストーポリ連邦特別市の領域は、今後はロシア連邦の不可欠な部分となり、憲法第4条に沿ってロシア連邦の主権が及びます。
従いまして、今日、ウクライナとのロシア連邦黒海艦隊の施設や要員配置の権利関係を継続する為の如何なる土台も存在しておりません。
ロシア側への債務と、ウクライナ側が支払うべき代償あるいは補償を含めて」
彼は強調した。
ウクライナ大統領ヴィクトール・ヤヌコーヴィチが署名した「ハリコフ合意」を廃止する必要性について、ドミトリー・メドベージェフ首相は、3月21日のロシア連邦安全保障協議会の会合で初めて表明した。
2010年4月に署名されたこれらの文書によると、ロシア黒海艦隊のクリミアへの滞在は25年間で合意され、それと引き換えにロシアはガスの価格を30パーセント削減し、1000立方メートルにつき100ドルを超えない。
メドベージェフによると、ロシアが失った利益は110億ドルに上る。
「ウクライナの予算から、これらの資金の返済の問題を提起する事は、完全に合法的であると私は考えます。
それは、合意の廃棄通告の規範に基づき、裁判所を介して行なう事が出来ます」
内閣議長は提起した。
「無論、それは厳しい措置ですが、その一方、私達へ支払う為の文書は全く存在しません。
我々は、ウクライナのパートナーは、そうしなければ支払わないだろうという事を理解すべきです」
ロシア首相は指摘した。

1991年12月末のソヴィエト連邦解体後、旧ソ連黒海艦隊の帰属・分割問題がロシアとウクライナの間で持ち上がりました。
1997年5月28日、ロシアとウクライナは旧ソ連黒海艦隊の分割協定を結びました。
『ロシア黒海艦隊公式サイト』より
【ロシア連邦及びウクライナによる黒海艦隊の分割パラメータに関する合意(キエフ、1997年5月28日)】
この時には、ロシア黒海艦隊は2017年までセヴァストーポリ(クリミア)に駐留できる事になっていました。
2000年代には、ウクライナは、ロシア黒海艦隊の駐留期間延長など一切認めないという態度を貫いてました。
つまり、「2017年までに出ていけ」という事です。
[ウクライナは、2017年までのロシア海軍基地の撤退を求める]
[ロシア黒海艦隊は、2017年末までにウクライナを去る]
[ロシア黒海艦隊は、2017年5月28日までにウクライナを退去しなければならない]
この為、ロシアは、2017年以降にはセヴァストーポリに駐留出来なくなる事を見越し、ノヴォロシースク海軍基地の拡大工事に着手しました。
その後、ウクライナには親ロシア派政権が誕生し、2010年4月21日に締結されたハリコフ合意により、黒海艦隊の駐留期間は25年延長されました(2042年までの駐留が可能となった)。
しかし、2014年2月、その親ロシア派政権が瓦解し、ウクライナは、極右勢力を含む反ロシア派に乗っ取られました。
この為、ロシア連邦は2014年3月にクリミア共和国とセヴァストーポリ市を自国に編入し、黒海艦隊に関するウクライナとの協定は存在意義を失いました。
黒海艦隊協定が廃止された事により、クリミア共和国及びセヴァストーポリ連邦市へのロシア連邦軍駐留に関する制限は全て無くなります。
協定が存在していた時には、ロシア海軍の黒海艦隊所属部隊しかクリミアに駐留することが出来ず、しかも、駐留できる艦艇や陸上部隊、航空部隊の数には厳密な制限が課せられていました。
新たな艦をセヴァストーポリへ配備しようとすれば、ウクライナとの事前協議を行ない、ウクライナ側が同意する必要が有りました。
2000年代以降も、ロシア黒海艦隊には僅かながら新造艦が補充されましたが、面倒なウクライナとの協議を避け、全てノヴォロシースク海軍基地へ配備されていました。
海洋掃海艦「ワレンチン・ピクリ」(2002年就役)

揚陸艇D-144(2008年就役)

海洋掃海艦「ヴィツェ-アドミラル・ザハリン」(2009年就役)

今後、黒海艦隊へ補充される6隻の新造フリゲート及び6隻の新造潜水艦も、ノヴォロシースクへ配備される予定でした。
[アドミラル・グリゴロヴィチ型フリゲート]

[プロジェクト06363潜水艦]

しかし、黒海艦隊協定が撤廃された事により、今後は、これらの新造艦をセヴァストーポリへ駐留させる事も可能となります。
なお、プーチン大統領は、4月2日、クリミア半島をロシア連邦軍南方軍管区の管轄地域とする法令にも署名しています。
『ロシア通信社ノーボスチ』より
2014年4月2日18時52分配信
【クリミアは南方軍管区へ含まれる】
ロシア黒海艦隊は、南方軍管区の指揮下にあります。
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