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ロシアはミストラル級ヘリ空母に設置された自国製機器を取り外す

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『タス通信』より
2015年7月25日10時17分配信
【情報筋:ロシア連邦は「ミストラル」の通信機器を取り外す為の専門家グループを準備する】
モスクワ、7月25日/タス通信

ロシアは、「ミストラル」通信機器を取り外す為にフランスへ出張する専門家グループの準備を始めた。

タス通信は、ロシア連邦防衛産業企業体の情報提供者より伝えられた。

「この課題は受理され、現在、ミストラル艦上に存在するロシアが供給した通信機器及び管理機器を取り外す為、フランスへ向かうグループが準備されています」
対談者は話した。

更に情報提供者は、これらの機器は汎用性が有り、ロシア海軍の他の艦で使用できると説明した。
「ミストラル」の為の通信システム及び管理システムの開発に従事したのは、『統合計器製造営団』に所属するコンツェルン『管理システム』である。

[「ミストラル」建造の為の契約]
ロシア
は、2011年夏に「ミストラル」型ヘリコプター空母建造の為の契約をフランスと締結した。
1番艦「ウラジオストク」は、2014年秋にロシア海軍へ引き渡される予定であったが、引き渡しはウクライナの出来事に関連して延期された。
「セヴァストーポリ」と命名された2番艦は、2014年11月に進水した。
以前、軍事技術協力担当ロシア連邦大統領補佐官ウラジーミル・コジンは、フランスとは補償額についてのみ議論しており、最終文書への署名は近い内に行なわれるとタス通信へ表明した。

[フランス国防省:パリはロシア連邦との契約破棄により支払いを余儀なくされる事は承知している]
以前、フランス国防相ジャン・イヴ・ル・ドリアンは、ワシントンにおいて専門家やジャーナリストを前にマーシャル基金について話している時、フランス政府は、契約不履行により、モスクワへ多大な金額を返金しなければならない事を承知の上でロシア「ミストラル」を引き渡さない決定を下したと表明した。

彼は、昨年秋、フランス大統領フランソワ・オランドが、ウクライナ向けの政策に関連し、ロシアへの軍用艦の引き渡しを停止した事を想い起した。
「これは、正しい戦略的決定でした」
ル・ドリアン
は話した。
彼によると、それ以降の状況は変わっておらず、ロシアとの契約を履行することは出来ない。
「その為の条件は存在しません」
フランス国防省
のトップは指摘した。

彼は、契約の挫折により、自国政府に12億ドルの費用が掛かる事を認めたが、他に手段は無い。
フランスは、これらの艦の新たな購入者を見つけなければならないが、それは簡単な事ではない。
「もしも合衆国が購入してくれたのならば、僕としては嬉しいですね」
ル・ドリアン
は話した。
しかし、ペンタゴンでの会談でアメリカ合衆国国防長官アシュトン・カーターは、この件には言及せず、そこに居合わせて笑っただけだった。

[モスクワの立ち位置]
7月初頭、軍事技術協力担当ロシア連邦大統領補佐官ウラジーミル・コジンは、ロシア「ミストラル」の代金の返還問題の解決に従事しており、「月内に」フランスとの最終文書へ署名すると述べた。

次に、ロシア連邦海軍総司令官ヴィクトール・チルコフ大将は、サンクトペテルブルク国際海軍サロンにおいて、ロシアフランス「ミストラル」に代わる独自建造の揚陸艦を発注すると述べた。


[フランスのミストラル級引き渡し保留問題]
[ヘリコプター揚陸ドック艦ミストラル型]
[ヘリ空母ミストラル型(旧ブログ)]

ロシア海軍向けの「ミストラル」級ヘリコプター揚陸ドック艦の売買契約は、2011年6月に締結されました。
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『ロシア通信社ノーボスチ』より
2011年6月17日17時11分配信
【ロシアとフランスは、ヘリコプター空母「ミストラル」に関する契約を締結する】

「ミストラル」級の1番艦「ウラジオストク」は2014年11月に引き渡される予定でしたが、2014年2月以降のウクライナ情勢の悪化により、アメリカを初めとする西側諸国フランスに対し、ロシアへの「ミストラル」級の引き渡しの中止を求め、当初はロシアへ艦を引き渡す意向を表明していたフランス大統領も、2014年11月末に「ウラジオストク」の引き渡しの延期を決定しました。
[フランスはロシアへのミストラル級ヘリ空母ウラジオストクの引き渡しを一時停止する]
[ロシアはミストラル級ヘリ空母購入の為にフランスへ約10億ユーロを支払っている]

2番艦「セヴァストーポリ」も2014年11月に進水し、今年3月から洋上試験を開始しています。
[ロシア海軍向けミストラル級ヘリ空母セヴァストーポリは2回目の洋上試験を行なう]

オランド大統領はは、再三に渡り、「ミストラル」級引き渡しの為の条件として、ウクライナ情勢の鎮静化(停戦合意の履行)を挙げています。
[ロシアへのミストラル級ヘリ空母引き渡しの為の条件は未だ成立していないとフランス大統領は言った]

このようなフランス側の態度に対し、ロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチンは、2015年4月16日、「ロシアはミストラル級の供給の『挫折』に関し、フランスへ違約金を請求するつもりは無いが、ロシアが負担した費用は返してもらわなくてはならない」と公言しました。
[ロシアはミストラル級ヘリ空母に関してフランスへ違約金を求めないが支払った代金の返却を望む]

4月19日、オランド氏は、4月24日にアルメニアプーチン氏と会い、「ミストラル」級に関する問題で話し合うと確約する事になりました。
[フランス大統領はミストラル級ヘリ空母の問題についてロシア大統領と話し合う]

4月22日、オランド氏は、ウクライナ大統領との共同記者会見において、改めてロシアへの「ミストラル」級引き渡しの為の条件は形成されておらず、引き渡しは不可能であると表明しました。
更には、ロシアフランスへ払った「ミストラル」級の代金の返還についても言及しました。
[フランスはロシアが支払ったミストラル級ヘリ空母の代金を返還する用意がある]

そして4月24日、アルメニアエレバンプーチン氏とオランド氏の会談が開かれました。
[フランス大統領とロシア大統領はアルメニアにおける首脳会談でミストラル級ヘリ空母の問題についても話し合った]

この会談では「ミストラル」級の問題についても話し合われたようですが、会談後、フランス大統領「ロシアへのミストラル級の引き渡しは決まっていない」と述べ、一方、ロシア大統領報道官「この件に関しては何の問題も無い」とだけ述べました。

4月27日、ロシア大統領報道官ドミトリー・ペスコフ氏は、「ミストラル級ヘリ空母か、或いは前払い金(ロシアがフランスへ支払い済みの代金)をロシアへ戻す事で合意している」と述べました。
[フランスはロシアへミストラル級ヘリ空母を引き渡すか、或いは金を返す]

その後、両国の代表団は何度か交渉を行ないましたが、最終的には、「ミストラル」級ロシアへ引き渡すのではなく、ロシアが以前に支払った「ミストラル」級の代金を返還する方向で合意する事になりました。
[ロシアとフランスはミストラル級ヘリ空母の代金返還で合意する]
[ロシアとフランスはミストラル級ヘリ空母に関する合意原案を用意している]

7月下旬からは詳細の部分に関する協議へ入り、先ず初めに、「ミストラル」級ヘリ空母へ設置されたロシア製機器の返却の問題について議論されました。
[ロシアとフランスはミストラル級ヘリ空母に設置されたロシア製通信システムの返却について話し合った]

そして、「ミストラル」級に設置済みのロシア製通信システムを取り外す為、近い内にロシアの技術者がフランスへ渡る事になりました。

これは、ロシア衛星通信システム「チェンタヴル」の事でしょう。
[ロシア海軍向けミストラル級にはフランス製衛星通信システムは搭載されない]

2隻の「ミストラル」級から取り外された「チェンタヴル」は、他のロシア海軍の新造艦へ流用される事になります。

この他にも、「ミストラル」級に設置する為の各種機器が既に発注されていますが、これらも、他の艦へ流用される事になるでしょう。
[ロシア海軍向けミストラル級2番艦セヴァストーポリにはフランス製戦闘管理システムSENIT-9は搭載されない]
[ロシア海軍向けミストラル級2番艦セヴァストーポリはロシア製光学電子システムを装備する]


既にロシア海軍「ミストラル」級ヘリ空母には見切りを付けており、新たな汎用揚陸艦の建造を計画しています。

新型汎用揚陸艦「プリボイ」級の建造は2016年から開始され、計8隻の調達が計画されています。
[ロシア海軍の為の新型汎用揚陸艦プリボイ級が建造される]
[ロシア海軍の新世代大型揚陸艦は2020年に就役する]

「プリボイ」級の後に、ロシア版ミストラルとも言える大型の全通甲板ヘリコプター揚陸艦の建造も検討されています。
[ロシア海軍将来汎用揚陸ヘリコプター搭載艦プロジェクト「ラヴィーナ」]
[ロシア海軍の為の将来大型揚陸艦は複数のヴァージョンが設計されている]
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