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ロシアとフランスはロシア海軍向けミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦の契約を終了させた

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『中央海軍ポータル』(フロートコム)より
2015年8月6日8時15分配信
【プーチンとオランドは「ミストラル」の物語に終止符を打った】

フランスはロシアへ「ミストラル」型ヘリコプター空母の建造の為に支払い済みの代金を返還する。
クレムリンは、この問題が決着したと見ていると公式に表明した。


ロシア大統領ウラジーミル・プーチンは、彼のフランスの同僚(大統領)フランソワ・オランドと電話会談を行なった。
ロシア連邦大統領府広報サービスは、両首脳が「2011年6月に署名されたミストラル型ヘリコプター揚陸ドック艦2隻の建造・供給の為の契約を終了する為の共同決定を下した」と伝えた。

専門家の協議過程で「過去の伝統的なロシアとフランスの友好的な関係が鍵となり、契約下で支払ったロシア側への補償金、更には、設置されたロシア製機器及び材料の返還で相互合意に達した」事は注目される。

更にロシア大統領府広報サービスは、フランスが既に資金を振り込んでいると発表した。
ロシア製機器の返還後、(フランスは)財産権を取得し、双方の艦を処分出来るようになる。

「モスクワは、ミストラルに関する問題は完全に決着したと考えております」
広報サービスは表明した。

ロシア「ミストラル」を供給する為の契約を凍結するとフランス当局が初めて発表したのは2014年9月3日であった。
後にフランソワ・オランドは、全てはウクライナ紛争の展開に依ると説明した。
(2014年)11月末、ロシアへの艦の引き渡しの一時停止が正式に決定された。
メディアの報道によると、2015年5月、契約終了の条件に関する交渉が始まった。
最新報道によると、補償金の額は、ほぼ12億ユーロになる。


『ロシア通信社ノーボスチ』より
2015年8月6日9時29分配信
【フランス国防省:「ミストラル」の為の支払いは12億ユーロよりは少なくなる】
モスクワ、8月6日-ロシア通信社ノーボスチ

フランス国防相ジャン・イヴ・ル・ドリアンは、パリ「ミストラル」型ヘリコプター空母2隻の建造契約下の資金を満額支払うつもりであると表明した。
支払額は、12億ユーロよりは少なくなると『ロイター通信』は伝えた。

「2隻の艦の初期費用は12億ユーロでした。
(新たな)合意による支払いは・・・それよりは少なくなります。
今回に限り、ロシアへはユーロ金融債務で返還され、彼らは、それを現金に換える事が出来ます」
国防相
ラジオ局『RTL』の生放送で表明した。

ル・ドリアンによると、正確な金額と合意の基本内容は議会で議論され、当事者間で達した合意を批准しなければならない。

以前、クレムリン(ロシア連邦大統領府)広報サービスは、双方の当事者が「ミストラル」型ヘリコプター空母2隻の建造・供給の為の契約の終了を決定したと発表した。
更に、フランスは既に契約下での資金を振り込んでおり、機器の返還後に艦を処置出来るようになる事が知られるようになった。

2隻のヘリコプター空母の供給契約は2011年にフランスDCNS/STXロソボロネクスポルト(ロシア兵器輸出公社)との間で締結された。
フランスは、1番艦「ウラジオストク」を昨年11月に引き渡さなければならなかったが、実現には至らなかった。


[フランスのミストラル級引き渡し保留問題]
[ヘリコプター揚陸ドック艦ミストラル型]
[ヘリ空母ミストラル型(旧ブログ)]

ロシアフランスから「ミストラル」級指揮・戦力投射艦を購入するかもしれないと最初に報じられたのは、2009年8月初頭でした。
[ロシア海軍、フランス艦を購入?]

それから間もなく、ロシア連邦軍参謀本部総長、ロシア連邦海軍総司令官、ロシア連邦国防相代理が相次いで「ミストラル」級購入の為の交渉が進行中である事を公式に認めました。
[ロシアは、今年末までに「ミストラル」級購入で合意できる]
[ロシアは、競争によりヘリ揚陸艦を購入する]
[ロシア国防省は、「ミストラル」型揚陸艦購入交渉が行なわれている事を認める]

ロシア海軍向けの「ミストラル」級ヘリコプター揚陸ドック艦の売買契約が締結されたのは、最初に話が出て来てから約2年後の2011年6月になりました。
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『ロシア通信社ノーボスチ』より
2011年6月17日17時11分配信
【ロシアとフランスは、ヘリコプター空母「ミストラル」に関する契約を締結する】

ロシア海軍向け「ミストラル」級の1番艦「ウラジオストク」は2014年11月に引き渡される予定でしたが、2014年2月以降のウクライナ情勢の悪化により、アメリカを初めとする西側諸国フランスに対し、ロシアへの「ミストラル」級の引き渡しの中止を求め、当初はロシアへ艦を引き渡す意向を表明していたフランス大統領も、2014年11月末に「ウラジオストク」の引き渡しの延期を決定しました。
[フランスはロシアへのミストラル級ヘリ空母ウラジオストクの引き渡しを一時停止する]
[ロシアはミストラル級ヘリ空母購入の為にフランスへ約10億ユーロを支払っている]

2番艦「セヴァストーポリ」も2014年11月に進水し、2015年3月から洋上試験を開始しています。
[ロシア海軍向けミストラル級ヘリ空母セヴァストーポリは2回目の洋上試験を行なう]

オランド大統領はは、再三に渡り、「ミストラル」級引き渡しの為の条件として、ウクライナ情勢の鎮静化(停戦合意の履行)を挙げていました。
[ロシアへのミストラル級ヘリ空母引き渡しの為の条件は未だ成立していないとフランス大統領は言った]

このようなフランス側の態度に対し、ロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチンは、2015年4月16日、「ロシアはミストラル級の供給の『挫折』に関し、フランスへ違約金を請求するつもりは無いが、ロシアが負担した費用は返してもらわなくてはならない」と公言しました。
[ロシアはミストラル級ヘリ空母に関してフランスへ違約金を求めないが支払った代金の返却を望む]

4月19日、オランド氏は、4月24日にアルメニアプーチン氏と会い、「ミストラル」級に関する問題で話し合うと確約する事になりました。
[フランス大統領はミストラル級ヘリ空母の問題についてロシア大統領と話し合う]

4月22日、オランド氏は、ウクライナ大統領との共同記者会見において、改めてロシアへの「ミストラル」級引き渡しの為の条件は形成されておらず、引き渡しは不可能であると表明しました。
更には、ロシアフランスへ払った「ミストラル」級の代金の返還についても言及しました。
[フランスはロシアが支払ったミストラル級ヘリ空母の代金を返還する用意がある]

そして4月24日、アルメニアエレバンプーチン氏とオランド氏の会談が開かれました。
[フランス大統領とロシア大統領はアルメニアにおける首脳会談でミストラル級ヘリ空母の問題についても話し合った]

この会談では「ミストラル」級の問題についても話し合われたようですが、会談後、フランス大統領「ロシアへのミストラル級の引き渡しは決まっていない」と述べ、一方、ロシア大統領報道官「この件に関しては何の問題も無い」とだけ述べました。

4月27日、ロシア大統領報道官ドミトリー・ペスコフ氏は、「ミストラル級ヘリ空母か、或いは前払い金(ロシアがフランスへ支払い済みの代金)をロシアへ戻す事で合意している」と述べました。
[フランスはロシアへミストラル級ヘリ空母を引き渡すか、或いは金を返す]

その後、両国の代表団は何度か交渉を行ないましたが、最終的には、「ミストラル」級ロシアへ引き渡すのではなく、ロシアが以前に支払った「ミストラル」級の代金を返還する方向で合意する事になりました。
[ロシアとフランスはミストラル級ヘリ空母の代金返還で合意する]
[ロシアとフランスはミストラル級ヘリ空母に関する合意原案を用意している]

7月下旬からは詳細の部分に関する協議へ入り、先ず初めに、「ミストラル」級ヘリ空母へ設置されたロシア製機器の返却の問題について議論されました。
[ロシアとフランスはミストラル級ヘリ空母に設置されたロシア製通信システムの返却について話し合った]

その後、「ミストラル」級に設置済みのロシア製通信システムを取り外す為、ロシアの技術者がフランスへ渡る事になりました。
[ロシアはミストラル級ヘリ空母に設置された自国製機器を取り外す]

7月28日、フランス大統領フランソワ・オランドは、今後数週間以内に「ミストラル」級に関する最終決定を下すと発表しました。
[フランス大統領はロシア海軍向けミストラル級の供給問題に関する最終決定を下す]

そして2015年8月5日、ロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチンフランス大統領フランソワ・オランドは電話で会談し、「ミストラル」級ヘリコプター揚陸ドック艦の建造・供給契約の終了(破棄)を決定しました。

契約終了によりフランスロシアへ支払う事になる補償金額は、フランス国防相ジャン・イヴ・ル・ドリアン氏によると、「12億ユーロよりは少ない」との事です。

以前の報道によると、この金額は約11億ユーロ~11億6300万ユーロになります。
[フランスはミストラル級ヘリ空母契約終了により約12億ユーロをロシアへ補償する]

ロシアフランスへ支払い済みの「ミストラル」級の為の代金が約9億ユーロ、それに幾ばくかの補償金がプラスされる事になるようです。

「ミストラル」級ヘリコプター揚陸ドック艦そのものは取得できませんでしたが、ロシアは支払い済みの代金(プラスアルファ)を回収し、「ミストラル」級に設置されたロシア製機器も回収し、更には、「ミストラル」級の契約(後ろ半分はロシアで建造した)により建造技術を取得しました。
[ロシアはフランスのミストラル級ヘリ空母購入契約を通じて大規模ブロック組立技術を取得した]


既にロシア海軍「ミストラル」級ヘリ空母には見切りを付けており、新たな汎用揚陸艦の建造を計画しています。

新型汎用揚陸艦「プリボイ」級の建造は2016年から開始され、計8隻の調達が計画されています。
[ロシア海軍の為の新型汎用揚陸艦プリボイ級が建造される]
[ロシア海軍の新世代大型揚陸艦は2020年に就役する]

「プリボイ」級の後に、ロシア版ミストラルとも言える大型の全通甲板ヘリコプター揚陸艦の建造も検討されています。
[ロシア海軍将来汎用揚陸ヘリコプター搭載艦プロジェクト「ラヴィーナ」]
[ロシア海軍の為の将来大型揚陸艦は複数のヴァージョンが設計されている]
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