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フランスからのミストラル級ヘリ空母の補償金はロシア海軍の為に

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『中央海軍ポータル』(フロートコム)より
2015年8月14日19時41分配信
【フランスからの金はロシア海軍の為に】

10億ユーロ-これは、フランスが「ミストラル」の契約破棄によりロシアへ戻される金額である。
同国(フランス)財務相ミシェル・サペンは、以前にメディアへ登場した20億ルーブルという情報を否定した。
『海軍産業』(フロートプロム)は、ロシア連邦の近代的な艦隊の作成の費用を分析し、この金額をどう使えるかについて考察してみた。


ロシア艦の建造の為の契約は、ロシアの造船所がルーブルで締結する。
従って、10億ユーロの補償額は、ルーブル相当で見るのが合理的である。
2015年8月14日に中央銀行が設定した為替レートによれば、この金額(10億ユーロ)は723億ルーブルに相当する。

フランスの艦に代わり、ロシアが自身で建造した同類のヘリコプター空母を受領するという話は、まだ時期尚早であろう-ネフスキー計画設計局による「プリボイ」は設計段階に在る。
従って、フランスから戻される資金は、水上艦および水中艦のシリーズ建造の為に使われる可能性の方が高いであろう。

[14隻の大型揚陸艦「イワン・グレン」型]
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ロシアは受領する事が出来なかったものの、ヘリコプター揚陸ドック艦「ミストラル」型は、海外で「艦の戦力投射と指揮」、艦船グループのリーダー、洋上病院、対テロ作戦の遂行、そして主な用途は揚陸部隊の上陸であると見られている。
多くの条件があるとは言え、これをロシアで建造される揚陸艦と比べる事は理にかなっている。
「ヤンターリ」工場で建造されている1隻の大型揚陸艦プロジェクト11711「イワングレン」型の費用は50億ルーブルであると見られており、「ミストラル」の費用で、この艦を14隻造る事が可能である。

[5隻のプロジェクト11356フリゲート]
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プロジェクト11356フリゲートは、(11711と)同様にカリーニングラードロシア海軍の為に建造されている。
その建造は、ウクライナの企業『ゾーリャ-マシプロイェクト』からのガスタービンエンジン供給問題が故に中断されたが、8月にはロシア製ガスタービンエンジンを使用する事を考慮して再開された。
この艦の1隻あたりの費用は130億ルーブルと見られており、2隻の「ミストラル」型ヘリコプター空母(の価格)で、このフリゲート5隻を海へ送り出すことが出来るだろう。

[2~3隻のプロジェクト22350フリゲート]
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サンクトペテルブルク「セーヴェルナヤ・ヴェルフィ」で建造されているフリゲートは、より高価である。
公開情報によると、プロジェクト22350のトップ艦「アドミラル・ゴルシコフ」の為の海軍の費用は4億2000万ドルである。
(註:約270億ルーブル)
無論、シリーズ艦(2番艦以降)は、より安くなり、大まかな見積もりでは、フランスからの資金でプロジェクト22350フリゲートを新たに3隻建造する事が出来るだろう。

[7隻のプロジェクト20380コルベットと5隻のプロジェクト20385コルベット]
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近代的な近海ゾーン艦は、フリゲートの半分の排水量にも関わらず、その費用は匹敵する。
戦略技術分析センターの評価によれば、プロジェクト20380コルベットの価格は少なくとも100億ルーブル、近代化されたプロジェクト20385コルベット140億ルーブルである。
しかしながら、フランスから戻される資金は、既に進水している艦と同等の隻数で、この艦のシリーズ作成を継続できるだろう。

[1隻の重原子力ロケット巡洋艦プロジェクト1144の修理と近代化]
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100億単位の数字を背景に、海軍は「ゼロから」近代的な艦を建造する為に500億(ルーブル)を支出した。
ソヴィエト海軍の誇り-重原子力ロケット巡洋艦「アドミラル・ナヒーモフ」の近代化の為の価格は、天文学的な金額ではない。
更には、次なる近代化として、太平洋艦隊プロジェクト1144艦「アドミラル・ラーザレフ」が挙げられる事も出来るだろう。
「現時点で、重原子力ロケット巡洋艦プロジェクト1144の復元が決定されている。
そして2014年、公開株式会社・第30艦船修理工場は、プロジェクト11442重原子力ロケット巡洋艦アドミラル・ナヒーモフの技術的近代化プロジェクトの簡略化として、セヴェロドヴィンスクでの大規模修理と近代化を待っている巡洋艦アドミラル・ラーザレフのドック修理と検査を実施した」

最近に公開された第30艦船修理工場の年次報告では、こう述べられた。
したがって、世界で最も強力な水上艦の1つを復元する為の費用は、引き渡されなかった2隻のフランス「ミストラル」の補償金額により完全にカバーできるだろう。

[2隻の原子砕氷船LK-60]
(註:原子力砕氷船LK-60・プロジェクト22220は、2013年11月5日に1番船アルクチカ、2015年5月26日に2番船シビーリが起工され、建造中である)

「砕氷船は、防衛任務を含め、北極圏(での課題)を解決します」
バルト工場
で建造される砕氷船隊の重要性について、ロスアトムのトップ、セルゲイ・キリエンコは強調した。
サンクトペテルブルクで作成される確かに競争力のある北極船は、出力60メガワットの核動力、2重吃水構造を有し、シベリア河口での作業、更には、厚さ3メートルの氷を割る事が出来る。
その費用は370億ルーブルである。
その(ミストラルの)後部を建造したバルト工場は、「ミストラル」の価格で2隻の砕氷船LK-60を建造する事が出来る。

[7隻のプロジェクト636.3ディーゼル潜水艦]
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世界で最も静粛なディーゼルエレクトリック潜水艦の1つであるプロジェクト636.3の費用は、コルベットに匹敵する。
メディアで公開された情報によると、6隻の潜水艦の契約にロシア海軍600億ルーブルの費用を費やす。
(註:1隻あたり100億ルーブル)
「ミストラル」の補償金は、このような契約の費用をカバーするのに充分であろう。

[多目的原子力潜水艦プロジェクト「ヤーセン」]
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最新鋭の多目的原子力潜水艦プロジェクト「ヤーセン」は、より高価という点では同様では無い。
多様な魚雷ミサイル兵器新世代の水中音響ステーション(ソナー)、より高い隠密性と静穏性-これらの指標は、潜水艦の価格を到達できない高みへと引き上げた。
公開情報では、その費用は470億ルーブルと言われている。
結論として、2隻の「ミストラル」の代わりは1隻の「ヤーセン」となる。

[3隻の戦略水中巡洋艦プロジェクト「ボレイ」]
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このような背景で、ロシアの近代的な核防護要素-戦略水中ロケット艦プロジェクト「ボレイ」の建造価格は適正に見える。
その価格は232億ルーブルと見積もられており、ロシア連邦海軍の2隻のヘリコプター空母の代わりに、このような巡洋艦を3隻建造する事が可能であろう。

[『海軍産業』参考資料]
12億ユーロと推定されるフランスヘリコプター揚陸ドック艦「ミストラル」の供給契約は2011年に締結された。
「ウラジオストク」と命名された1番艦は2014年11月までにロシアへ引き渡さなければならなかった。
2番艦「セヴァストーポリ」の納入期限は2015年11月1日だった。

ロシア「ミストラル」を供給する為の契約を凍結するとフランス当局が初めて発表したのは2014年9月3日であった。
後にフランソワ・オランドは、全てはウクライナ紛争の展開に依ると説明した。
(2014年)11月末、ロシアへの艦の引き渡しの一時停止が正式に決定された。
メディアの報道によると、2015年5月、契約終了の条件に関する交渉が始まった。
最新報道によると、補償金の額は、ほぼ12億ユーロになる。

8月5日、フランスロシアの大統領、ウラジーミル・プーチンフランソワ・オランドが、「ミストラル」の供給契約の破棄で合意に達した事が知られるようになった。
パリが支払った補償金の額は明らかにされておらず(メディアによると8億5000万ユーロ~12億ユーロ)、ロシア製の機器を取り外した後、その運命を決める権利を得る。
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