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ロシア海軍向けだったミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦のロシア製機器を取り外す為のロシア人専門家グループはフランスへ向かった

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『タス通信』より
2015年9月20日10時31分配信
【情報筋:ロシア連邦の専門家は「ミストラル」の機器を取り外す為にフランスへ向かった】
モスクワ、9月20日/タス通信

「ミストラル」型ヘリコプター空母ロシア製機器の取り外しは、フランスへ向かった専門家グループにより月曜日から開始される。
ロシア連邦と外国の軍事技術協力分野の情報提供者はタス通信へ伝えた。

「本日、専門家グループはフランスへ出発しました。
明日、彼らは、フランスの同僚との調整会議を開き、その後、予定された機器の取り外しを始めます。
現時点において、全てはスケジュールに沿って実施されています」

対談者は話した。

以前、情報提供者は、ロシア連邦の為に建造された「ミストラル」型ヘリコプター空母の機器の取り外しは9月下旬から始まるとタス通信へ伝えた。
彼によると、機器の取り外しは、フランス側の監督下でロシアの専門家が進める。

取り外される装置の構成には、通信システムミサイル兵装及びを含む管理システム戦闘情報管理システムヘリコプター着艦管理モジュールが含まれる。

以前、統合機器製造組合(ロシアテクノロジー」へ含まれる)総取締役は、ロシア連邦の為に建造された「ミストラル」の機器の開発に従事した事により得られた経験は、ロシア連邦海軍の為の新世代管理システムの作成に使用されるとタス通信へ表明した。

[艦の建造の為の発注]
ロシア連邦海軍
の為に2隻の「ミストラル」型ヘリコプター空母を建造する為の11億2000万ユーロの契約は2011年6月に署名された。

「ウラジオストク」と命名された1番艦は2013年10月に進水し、2014年11月にロシア海軍へ引き渡されなければならなかった。
土壇場になってバリウクライナ情勢を口実にしてヘリコプター空母の引き渡しを無期限に停止した。
第2のヘリコプター空母「セヴァストーポリ」は、元々は2015年後半にロシアへの引き渡しが計画されていたが、1番艦と同様に引き渡しの凍結が決定された。

「ミストラル」型ヘリコプター空母は、軍部隊の移送、揚陸部隊の上陸の為に意図されており、更には、統制艦としての機能を遂行できる。

フランスで製造された同級の艦は、16機までの重ヘリコプター或いは32機の軽ヘリコプター、更には900名の兵士と装甲車両及び揚陸艇を搭載できる。


[フランスのミストラル級引き渡し保留問題]
[ヘリコプター揚陸ドック艦ミストラル型]
[ヘリ空母ミストラル型(旧ブログ)]

ロシアフランスから「ミストラル」級指揮・戦力投射艦を購入するかもしれないと最初に報じられたのは、2009年8月初頭でした。
[ロシア海軍、フランス艦を購入?]

それから間もなく、ロシア連邦軍参謀本部総長、ロシア連邦海軍総司令官、ロシア連邦国防相代理が相次いで「ミストラル」級購入の為の交渉が進行中である事を公式に認めました。
[ロシアは、今年末までに「ミストラル」級購入で合意できる]
[ロシアは、競争によりヘリ揚陸艦を購入する]
[ロシア国防省は、「ミストラル」型揚陸艦購入交渉が行なわれている事を認める]

ロシア海軍向けの「ミストラル」級ヘリコプター揚陸ドック艦の売買契約が締結されたのは、最初に話が出て来てから約2年後の2011年6月になりました。
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『ロシア通信社ノーボスチ』より
2011年6月17日17時11分配信
【ロシアとフランスは、ヘリコプター空母「ミストラル」に関する契約を締結する】

ロシア海軍向け「ミストラル」級の1番艦「ウラジオストク」は2014年11月に引き渡される予定でしたが、2014年2月以降のウクライナ情勢の悪化により、アメリカを初めとする西側諸国フランスに対し、ロシアへの「ミストラル」級の引き渡しの中止を求め、当初はロシアへ艦を引き渡す意向を表明していたフランス大統領も、2014年11月末に「ウラジオストク」の引き渡しの延期を決定しました。
[フランスはロシアへのミストラル級ヘリ空母ウラジオストクの引き渡しを一時停止する]
[ロシアはミストラル級ヘリ空母購入の為にフランスへ約10億ユーロを支払っている]

2番艦「セヴァストーポリ」も2014年11月に進水し、2015年3月から洋上試験を開始しています。
[ロシア海軍向けミストラル級ヘリ空母セヴァストーポリは2回目の洋上試験を行なう]

オランド大統領はは、再三に渡り、「ミストラル」級引き渡しの為の条件として、ウクライナ情勢の鎮静化(停戦合意の履行)を挙げていました。
[ロシアへのミストラル級ヘリ空母引き渡しの為の条件は未だ成立していないとフランス大統領は言った]

このようなフランス側の態度に対し、ロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチンは、2015年4月16日、「ロシアはミストラル級の供給の『挫折』に関し、フランスへ違約金を請求するつもりは無いが、ロシアが負担した費用は返してもらわなくてはならない」と公言しました。
[ロシアはミストラル級ヘリ空母に関してフランスへ違約金を求めないが支払った代金の返却を望む]

4月19日、オランド氏は、4月24日にアルメニアプーチン氏と会い、「ミストラル」級に関する問題で話し合うと確約する事になりました。
[フランス大統領はミストラル級ヘリ空母の問題についてロシア大統領と話し合う]

4月22日、オランド氏は、ウクライナ大統領との共同記者会見において、改めてロシアへの「ミストラル」級引き渡しの為の条件は形成されておらず、引き渡しは不可能であると表明しました。
更には、ロシアフランスへ払った「ミストラル」級の代金の返還についても言及しました。
[フランスはロシアが支払ったミストラル級ヘリ空母の代金を返還する用意がある]

そして4月24日、アルメニアエレバンプーチン氏とオランド氏の会談が開かれました。
[フランス大統領とロシア大統領はアルメニアにおける首脳会談でミストラル級ヘリ空母の問題についても話し合った]

この会談では「ミストラル」級の問題についても話し合われたようですが、会談後、フランス大統領「ロシアへのミストラル級の引き渡しは決まっていない」と述べ、一方、ロシア大統領報道官「この件に関しては何の問題も無い」とだけ述べました。

4月27日、ロシア大統領報道官ドミトリー・ペスコフ氏は、「ミストラル級ヘリ空母か、或いは前払い金(ロシアがフランスへ支払い済みの代金)をロシアへ戻す事で合意している」と述べました。
[フランスはロシアへミストラル級ヘリ空母を引き渡すか、或いは金を返す]

その後、両国の代表団は何度か交渉を行ないましたが、最終的には、「ミストラル」級ロシアへ引き渡すのではなく、ロシアが以前に支払った「ミストラル」級の代金を返還する方向で合意する事になりました。
[ロシアとフランスはミストラル級ヘリ空母の代金返還で合意する]
[ロシアとフランスはミストラル級ヘリ空母に関する合意原案を用意している]

7月下旬からは詳細の部分に関する協議へ入り、先ず初めに、「ミストラル」級ヘリ空母へ設置されたロシア製機器の返却の問題について議論されました。
[ロシアとフランスはミストラル級ヘリ空母に設置されたロシア製通信システムの返却について話し合った]
[ロシアはミストラル級ヘリ空母に設置された自国製機器を取り外す]

2015年8月5日、ロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチンフランス大統領フランソワ・オランドは電話で会談し、「ミストラル」級ヘリコプター揚陸ドック艦の建造・供給契約の終了(破棄)を決定しました。
[ロシアとフランスはロシア海軍向けミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦の契約を終了させた]

契約終了によりフランスロシアへ支払う事になる補償金額は、フランス国防相ジャン・イヴ・ル・ドリアン氏によると、「12億ユーロよりは少ない」との事です。
一方、ロシア政府側は、フランスから受け取る金額については明言を避けました。

その後、フランス議会から正確な金額~9億4975万4849ユーロが公表されました。
[ロシア海軍向けミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦の契約終了によりフランスはロシアへ9億4975万4849ユーロを支払う]

「ミストラル」級ヘリコプター揚陸ドック艦そのものは取得できませんでしたが、ロシアは支払い済みの代金(プラスアルファ)を回収し、「ミストラル」級に設置されたロシア製機器も回収し、更には、「ミストラル」級の契約(後ろ半分はロシアで建造した)により建造技術を取得しました。
[ロシアはフランスのミストラル級ヘリ空母購入契約を通じて大規模ブロック組立技術を取得した]

そして9月20日、「ミストラル」級へ設置済みのロシア製機器を取り外す為、ロシア人専門家グループフランスへ向かいました。

「ミストラル」級から取り外されるロシア製機器は、具体的には以下の通りです。

『中央海軍ポータル』(フロートコム)より
2015年9月8日17時54分配信
【「ミストラル」の欠片:どのようなロシア製機器がフランスから返されるのか】

電波位置特定識別装置67R
戦闘情報管理システム「シグマ-E」
多機能光学電子テレヴィジョン複合体MTK-201ME
衛星通信ステーションR-793-M「プリンツェプ-M」
衛星通信ステーションR-794-1「ツェンタヴル-NM1」
16チャンネル電波受信装置R-693
電波受信装置R-774SD1.1


これらのロシア製機器の取り外しが終わった後、フランスは2隻の「ミストラル」級を第3国へ転売できる権利を取得します。


なお、「ウラジオストク」「セヴァストーポリ」の名前は、将来に建造される大型ヘリコプター揚陸艦(ロシア版「ミストラル」)へ与えられる事になります。
[ウラジオストクとセヴァストーポリの名はロシア海軍の将来ヘリコプター揚陸艦へ与えられる]
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