ロシア海軍唯一の空母アドミラル・クズネツォフは新型艦上機により近代化される

『タス通信』より
2015年11月21日13時4分配信
【ロシア連邦海軍:正規空母「アドミラル・クズネツォフ」は新型航空機により仕上げられる】
モスクワ、11月21日/タス通信
ロシア唯一の航空母艦「アドミラル・フロータ・ソヴィエツカヴァ・ソユーザ・クズネツォフ」は、新型航空機により近代化される。
ラジオ局『エコー・モスクワ』の生放送で、軍事科学業務担当海軍総司令官補佐官アンドレイ・スロフ1等海佐は伝えた。
「我々はアドミラル・クズネツォフを維持して行き、定期作業を行ないます。
現在、我々は次の戦闘勤務の準備をしております。
それ(註:アドミラル・クズネツォフ)は変化し、新型航空機により仕上げられます。
外見は同じですが、その機能は常に変化し、強化されます」
彼は話した。
「航空母艦についてお話し致しますと、我々は、それを海上航空複合体と呼んでおり、それ故に、それは単なる艦では無いと見なしております」
スロフは続けて言った。
「それは、様々な航空機~打撃、情報、偵察用途~を有する適切な航空団を有していなければなりません。
ヘリコプターも用途に対応しなければなりません」
そのような航空団の作成は「独立した大いなる課題です」
ロシア連邦海軍の代理人は結論付けた。
[重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフの経歴(ロシア国防省公式サイト)]
[空母アドミラル・クズネツォフ艦長セルゲイ・アルタモノフ]
「アドミラル・フロータ・ソヴィエツカヴァ・ソユーザ・クズネツォフ」は、2013年12月17日から2014年5月18日までの5ヶ月間に渡り、大西洋・地中海遠征を実施しました。
[空母アドミラル・クズネツォフ第5次地中海遠征(2013年12月-)]
遠距離航海から戻った後は、ムルマンスク市郊外の第35艦船修理工場でメンテナンスが行なわれました。
2014年7月18日にはムルマンスクからセヴェロモルスクへ移動しました。
[ロシア海軍空母アドミラル・クズネツォフ近影(2014年7月18日)]
7月27日の「ロシア海軍の日」には、北方艦隊基地セヴェロモルスクで祝賀行事に参加しました。
その後、第35艦船修理工場へ戻ってメンテナンスを完全に終え、9月29日に点検の為、バレンツ海へ出航しました。
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフは整備後の点検の為に出航した]
9月30日、艦上航空隊の訓練が始まりました。
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフで艦上航空隊の訓練が始まった]
10月1日からは北方艦隊の捜索救助部隊の演習へ参加し、「遭難艦」の役を演じました。
[ロシア海軍北方艦隊は空母アドミラル・クズネツォフの救助訓練を行なう]
2014年11月末、ムルマンスク市と後援協定を締結し、同市の後援を受ける事になりました。
[ムルマンスク市はロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフを後援する]
2015年5月13日、常時係留地であるムルマンスク郊外の第35艦船修理工場岸壁からロスリャコヴォの第82艦船修理工場へ移動しました。

[ロシア海軍空母アドミラル・クズネツォフは浮きドックへ入る]
[ロシア海軍空母アドミラル・クズネツォフは浮きドックへ入渠した]
「アドミラル・クズネツォフ」は、ロスリャコヴォの大型浮きドックPD-50に入渠し、普段は海水に浸かっている艦底部分(吃水線から下の部分)の修復作業が行なわれました。
[ロシア海軍重航空巡洋艦アドミラル・フロータ・ソヴィエツカヴァ・ソユーザ・クズネツォフ近影(2015年5月31日)]
3ヶ月後の8月20日、大型浮きドックPD-50から出渠しました。
[ロシア海軍空母アドミラル・クズネツォフは浮きドックを出る]
浮きドックを出た後、「アドミラル・クズネツォフ」は第35艦船修理工場岸壁へ戻り、修理作業の残りの部分が実施されました。

その修理作業も完了し、「アドミラル・クズネツォフ」はバレンツ海への出航を準備していました。
[ロシア海軍唯一の空母アドミラル・クズネツォフは2015年10月中旬に出航する]
[ロシア海軍唯一の空母アドミラル・クズネツォフは出航を準備する]
「アドミラル・クズネツォフ」が出航を準備している間に、一部のメディアは、近日中に同艦がシリアへ向かうと報じ、北方艦隊広報部に否定されました。
[ロシア海軍唯一の空母アドミラル・クズネツォフが近日中にシリアへ向かう予定は無い]
10月17日にはムルマンスクからセヴェロモルスク沖へ移動し、10月19日にバレンツ海へ出航しました。
[ロシア海軍の正規空母アドミラル・クズネツォフは抜錨した]
その後もバレンツ海で各種艦載機器の点検と洋上訓練を続けていました。
[ロシア海軍の正規空母アドミラル・クズネツォフはバレンツ海で訓練を続ける]
10月26日には高射ミサイル複合体「キンジャール」の発射訓練を行ないました。
[ロシア海軍の正規空母アドミラル・クズネツォフは海上目標へ艦対空ミサイルを発射した]
11月5日からは対空防衛演習を開始しました。
[ロシア海軍の正規空母アドミラル・クズネツォフはバレンツ海で防空演習を始めた]
「アドミラル・クズネツォフ」は、2010年代末に近代化改装が予定されています。
[空母アドミラル・クズネツォフの近代化は先延ばしされている]
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフは2010年代後半に近代化改装を行なう]
そして今回、ロシア海軍総司令官補佐官アンドレイ・スロフ氏は、「アドミラル・クズネツォフ」が「新型航空機」により近代化されると発言しました。
「新型航空機」の具体的な機種に関してスロフ氏は何も話しておりませんが、現在、「アドミラル・クズネツォフ」の新たな艦上戦闘機MiG-29Kの配備と慣熟訓練が進められており、今年末には新たな航空連隊が編成されます。
[ロシア海軍航空隊へ引き渡される艦上戦闘機MiG-29K/KUBは新設の航空連隊へ配備される]
この他、現用の艦載ヘリコプターKa-27も近代化改修が行なわれます。
[ロシア海軍航空隊の長距離対潜哨戒機Tu-142及び対潜ヘリコプターKa-27は2020年までに全機が近代化される]
Ka-27の後継機となる新型艦載ヘリコプターの開発作業も既に始まっています。
[ロシア海軍航空隊の為の新世代艦上ヘリコプターは2020年までに作成される]
これらの新型機が加わる事により、「航空母艦」としての「アドミラル・クズネツォフ」の能力は向上するという事です。
現在の「アドミラル・クズネツォフ」航空団は、14機の艦上戦闘機Su-33、24機のヘリコプター(対潜ヘリKa-27PL、早期警戒ヘリKa-31、救難ヘリKa-27PS)で構成されていますが、Su-33には対地・対艦誘導兵器(ミサイルや誘導爆弾)の運用能力が無く(無誘導爆弾や無誘導ロケット弾くらいしか使えない)、対地・対艦攻撃能力は無いに等しい状態です。
これでは、アメリカ海軍やフランス海軍の原子力空母のように、搭載機による地上への空爆を行なう事など望むべくも有りません。
今年末まで契約分全機の納入が完了する新たな艦上戦闘機MiG-29K/KUBは対地・対艦誘導兵器の運用が可能であり、この24機の新型艦戦が加わる事により、「アドミラル・クズネツォフ」は初めて搭載機による地上への戦力投射が真に可能となります。
むろん、シリアの「イスラム国」を含めて。
なお、アンドレイ・スロフ氏は、現在、「アドミラル・クズネツォフ」が「次の戦闘勤務」の準備を行なっていると述べています。
「アドミラル・クズネツォフ」の「戦闘勤務」とは、具体的には大西洋や地中海(東部)への遠距離航海を指しています。
- 関連記事
-
- ロシア海軍唯一の空母アドミラル・クズネツォフの近代化改装は2017年初頭から始まる
- ロシア海軍唯一の空母アドミラル・クズネツォフの近代化改装は2016年末から始まる
- ロシア海軍唯一の空母アドミラル・クズネツォフは新型艦上機により近代化される
- ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフは2010年代後半に近代化改装を行なう
- 空母アドミラル・クズネツォフの近代化は先延ばしされている
スポンサーサイト