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ロシア海軍太平洋艦隊の原子力巡洋潜水艦クズバスは2016年3月末までに復帰する

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『タス通信』より
2016年3月7日11時31分配信
【ロシア連邦国防省:多目的潜水艦「クズバス」は3月末までに復帰する】
モスクワ、3月7日/タス通信

2009年から修理と近代化を実施していたプロジェクト971原子力潜水艦「クズバス」は3月末までにロシア海軍の戦闘編制へ復帰する。
(ロシア)国防省広報サービスは発表した。

「(ロシア)海軍の既存プロジェクト潜水艦の修理・近代化プログラムに沿って、沿海地方の企業ズヴェズダーでの修理を終えたプロジェクト971原子力多目的潜水艦クズバスは、今年3月末までに太平洋艦隊潜水艦部隊へ復帰します」
タス通信
が受け取った当局の声明では、こう述べられた。

潜水艦は居住保障システム、電波無線機器、水中音響機器を更新した。

「現在、原子力潜水艦クズバスは、工場航行試験の最後の段階を実施しています」
国防省
のプレスリリースは説明した。

潜水艦「クズバス」は2009年から「ズヴェズダー」で修理が行なわれていた。


プロジェクト971「シチューカ-B」(NATOコード名「アクラ」)原子力大型潜水艦K-419は、コムソモリスク・ナ・アムーレ市レーニン共産党青年団記念造船工場(現アムール造船工場)で1991年7月28日に起工されました。

建造中にソ連邦は解体されましたが、1992年5月18日に進水し、1992年12月31日にロシア海軍へ納入されました。
この間、1992年4月28日には「原子力巡洋潜水艦」へ類別変更されました。

翌1993年1月30日に海軍旗初掲揚式典を開催し、正式にロシア海軍へ就役しました。

1993年2月5日に太平洋艦隊第2潜水艦小艦隊・第45潜水艦師団へ編入され、7月10日にカムチャツカ半島ヴィリュチンスク基地へ到着しました。
1993年4月13日には「モルシュ」Моржと命名されました。

1995年10月14日から12月15日まで戦闘勤務を実施。
1996年5月5日から7月26日まで戦闘勤務を実施。
1997年7月6日から8月18日まで戦闘勤務を実施。

1998年1月29日にロシア海軍総司令官の指示で「クズバス」Кузбассと改名されました。
因みに、「クズバス」Кузбасс「クズネツク炭田」Кузнецкий угольный бассейн の略称です。

1998年5月1日、第10潜水艦師団へ転属しました。

2001年には小規模な修理を行ないました。

2007年8月には原子力巡洋潜水艦「ネルパ」(現在はインド海軍へリース)の試験の支援へ参加しました。

2007年9月から12月までボリショイ・カーメニドックで修理を実施。

2008年7月末にはウラジオストク沖でロシア海軍記念日の観艦式に参加しました。
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2009年にはボリショイ・カーメニ艦船修理工場「ズヴェズダー」へ回航され、核燃料交換などを含む大規模なオーバーホールが始まりました。
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オーバーホールは2015年秋にようやく完了しました。

2015年12月18日にはロシア連邦首相ドミトリー・メドベージェフ氏(前ロシア連邦大統領)が「クズバス」を視察しました。


当初の計画では、「クズバス」は2015年12月末までに太平洋艦隊へ復帰する筈だったのですが、今回の記事の通り、数ヶ月間延びて2016年3月末になりました。


今回のロシア国防省発表によると、現在、「クズバス」工場航行試験の最後の段階に在るとの事ですから、おそらくは2016年1月初頭あたりから航行試験を開始したようです。

つまり、「クズバス」は今年初めから日本海で航行試験を行なっていたという事です。
具体的に、何時・何処で航行試験を行なったのか、言い換えれば、「クズバス」ボリショイ・カーメニを出て何処まで行ったのかについては一切明らかにされていませんが・・・
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日本国防衛省は、2016年2月15日に「外国の潜水艦」が潜航したまま対馬南東沖を航行し、日本海側から東シナ海方面へ通過したと発表しています。
『スプートニク』(日本語版)より
2016年2月16日17時59分配信
【日本防衛省 対馬沖で国籍不明潜水艦を確認】

この時期に「クズバス」日本海で工場航行試験を行なっていた筈です。


ロシア海軍に就役中のプロジェクト971原子力巡洋潜水艦の内、6隻(北方艦隊の3隻と太平洋艦隊の3隻)はセヴェロドヴィンスク艦船修理工場「ズヴェズドーチカ」で高度な近代化改装が実施されますが、「クズバス」は、この6隻には入っていません。
[セヴェロドヴィンスクの艦船修理センターはアクラ級原潜を近代化する]
[ロシア海軍の約10隻のアクラ級原潜とオスカーII級原潜が近代化改装される]

既に太平洋艦隊からはK-391「ブラーツク」K-295「サマーラ」が2014年9月末にセヴェロドヴィンスクへ回航されています。
[ロシア海軍太平洋艦隊の原潜ブラーツクとサマ―ラはセヴェロドヴィンスクの艦船修理工場へ到着した]


現在のロシア連邦海軍における原子力潜水艦の分類は以下の通りです。

重原子力戦略用途水中巡洋艦:プロジェクト941「アクラ」(タイフーン)
原子力戦略用途水中巡洋艦:プロジェクト667BDRM「デリフィン」(デルタIV)、プロジェクト667BDR「カリマール」(デルタIII)、プロジェクト955「ボレイ」
原子力水中巡洋艦:プロジェクト949A「アンテイ」(オスカーII)、プロジェクト885「ヤーセン」
原子力巡洋潜水艦:プロジェクト971「シチューカ-B」(アクラ)
原子力大型潜水艦:プロジェクト945「バラクーダ」(シエラI)、プロジェクト945A「コンドル」(シエラII)、プロジェクト671RTMK「シチューカ」(ヴィクターIII)


弾道ミサイル或いは有翼ミサイルの専用垂直発射機を装備する原潜西側で言う所のSSBNSSGNに該当する艦は「水中巡洋艦」に分類されています。
一方、いわゆる「魚雷攻撃型原潜」は、「原子力大型潜水艦」に分類されています。

ただ、今回の記事に登場する「クズバス」を含むプロジェクト971のみは「原子力巡洋潜水艦」と、「原子力水中巡洋艦」「原子力大型潜水艦」の中間的な分類となっております。

上記の分類はソ連邦解体後の1992年に定められたものですが、この当時、971魚雷発射管から発射できる長射程有翼ミサイル「グラナート」(SS-N-21)を搭載し、原子力戦略用途水中巡洋艦を補完する戦力と見なされていた為、他の魚雷攻撃型原潜と区別して「巡洋潜水艦」となりました。
(ただし、その後に「グラナート」971原潜から降ろされましたが)
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