近代化された原子力巡洋潜水艦クズバスはロシア海軍太平洋艦隊へ復帰した
『ロシア連邦国防省公式サイト』より
ロシア東方軍管区(太平洋艦隊)広報サービス発表
2016年3月22日3時4分配信
【原子力潜水艦「クズバス」は修理後に太平洋艦隊へ引き渡された】
3月19日・土曜日、ボリショイ・カーメニの艦船修理工場「ズヴェズダー」の埠頭で、原子力巡洋潜水艦「クズバス」が修理後に納入された。
潜水艦引き渡し式典には、太平洋艦隊司令部の代表、艦船修理工場の代表、潜水艦隊の退役将兵、(沿海)地方幹部、議員が出席した。
太平洋艦隊司令官セルゲイ・アヴァキャンツ大将はスピーチで指摘した。
「今日は重要な出来事です。
潜水艦は海軍へ引き渡されました。
それは、我々の部隊の作戦において最も重要な任務を遂行します。
私達は、艦船修理及び造船ベースが立ち上がるのを見ました。
数年で工場は復活、発展し、太平洋艦隊の原子力潜水艦隊の即応性を確保する為の全ての能力を有しています」
潜水艦の居住保障システム、無線電波兵装及び水中音響兵装(ソナー)は更新され、大部分の機器は、最新の同類のものと交換された。
その後、検査航行試験が行われ、3月上旬に成功裏に完了した。
式典の最後に、セルゲイ・アヴァキャンツ大将は、工場労働者と潜水艦乗組員へ『ソ連邦元帥S.G.ゴルシコフ』勲章を授与した。
原子力潜水艦「クズバス」は第3世代に属している。
それはコムソモリスク・ナ・アムーレで1991年7月28日に起工され、1992年12月31日に海軍へ引き渡された。
1998年までは「モルシュ」の名を有していた。
プロジェクト971U潜水艦は約13000トンの水中排水量を有しており、(水中)速力は33ノット、潜航深度は600メートルである。
兵装は、4門の533mm魚雷発射管及び4門の650mm魚雷発射管である。
弾薬総数は、40基までの魚雷、有翼ミサイル、ロケット魚雷である。
『SMISMITTY』のブログより
2016年3月19日20時25分配信
【修復された原子力潜水艦「クズバス」の太平洋艦隊への引き渡し式典】
「クズバス」引き渡し式典の写真が数多く掲載されています。
プロジェクト971「シチューカ-B」(NATOコード名「アクラ」)原子力大型潜水艦K-419は、コムソモリスク・ナ・アムーレ市のレーニン共産党青年団記念造船工場(現アムール造船工場)で1991年7月28日に起工されました。
建造中にソ連邦は解体されましたが、1992年5月18日に進水し、1992年12月31日にロシア海軍へ納入されました。
この間、1992年4月28日には「原子力巡洋潜水艦」へ類別変更されました。
翌1993年1月30日に海軍旗初掲揚式典を開催し、正式にロシア海軍へ就役しました。
1993年2月5日に太平洋艦隊の第2潜水艦小艦隊・第45潜水艦師団へ編入され、7月10日にカムチャツカ半島のヴィリュチンスク基地へ到着しました。
1993年4月13日には「モルシュ」Моржと命名されました。
1995年10月14日から12月15日まで戦闘勤務を実施。
1996年5月5日から7月26日まで戦闘勤務を実施。
1997年7月6日から8月18日まで戦闘勤務を実施。
1998年1月29日にロシア海軍総司令官の指示で「クズバス」Кузбассと改名されました。
因みに、「クズバス」Кузбассは「クズネツク炭田」Кузнецкий угольный бассейн の略称です。
1998年5月1日、第10潜水艦師団へ転属しました。
2001年には小規模な修理を行ないました。
2007年8月には原子力巡洋潜水艦「ネルパ」(現在はインド海軍へリース)の試験の支援へ参加しました。
2007年9月から12月までボリショイ・カーメニのドックで修理を実施。
2008年7月末にはウラジオストク沖でロシア海軍記念日の観艦式に参加しました。

2009年にはボリショイ・カーメニの艦船修理工場「ズヴェズダー」へ回航され、核燃料交換などを含む大規模なオーバーホールと、部分的な近代化改装(プロジェクト971Uへのアップグレード)が始まりました。

オーバーホール(近代化改装)は2015年秋にようやく完了しました。
2015年12月18日にはロシア連邦首相ドミトリー・メドベージェフ氏(前ロシア連邦大統領)が「クズバス」を視察しました。
当初の計画では、「クズバス」は2015年12月末までに太平洋艦隊へ復帰する筈だったのですが、数ヶ月間延びて2016年3月下旬になりました。
[ロシア海軍太平洋艦隊の原子力巡洋潜水艦クズバスは2016年3月末までに復帰する]
そして「クズバス」は、「ロシア潜水艦乗員の日」である2016年3月19日に太平洋艦隊へ引き渡されました。
[近代化された原子力巡洋潜水艦クズバスは2016年3月19日にロシア海軍太平洋艦隊へ引き渡される]
復帰した「クズバス」は、今後、近い内にカムチャツカ半島の原潜基地ヴィリュチンスクへ向かいます。

ロシア海軍に就役中のプロジェクト971原子力巡洋潜水艦の内、6隻(北方艦隊の3隻と太平洋艦隊の3隻)はセヴェロドヴィンスクの艦船修理工場「ズヴェズドーチカ」で高度な近代化改装が実施され、プロジェクト971Mへアップグレードされますが、「クズバス」は、この6隻には入っていません。
(「クズバス」の場合、ソナーや通信機器、居住区などの限定的な近代化に留まっています)
[セヴェロドヴィンスクの艦船修理センターはアクラ級原潜を近代化する]
[ロシア海軍の約10隻のアクラ級原潜とオスカーII級原潜が近代化改装される]
既に太平洋艦隊からはK-391「ブラーツク」とK-295「サマーラ」が2014年9月末にセヴェロドヴィンスクへ回航されています。
[ロシア海軍太平洋艦隊の原潜ブラーツクとサマ―ラはセヴェロドヴィンスクの艦船修理工場へ到着した]
現在のロシア連邦海軍における原子力潜水艦の分類は以下の通りです。
重原子力戦略用途水中巡洋艦:プロジェクト941「アクラ」(タイフーン)
原子力戦略用途水中巡洋艦:プロジェクト667BDRM「デリフィン」(デルタIV)、プロジェクト667BDR「カリマール」(デルタIII)、プロジェクト955「ボレイ」
原子力水中巡洋艦:プロジェクト949A「アンテイ」(オスカーII)、プロジェクト885「ヤーセン」
原子力巡洋潜水艦:プロジェクト971「シチューカ-B」(アクラ)
原子力大型潜水艦:プロジェクト945「バラクーダ」(シエラI)、プロジェクト945A「コンドル」(シエラII)、プロジェクト671RTMK「シチューカ」(ヴィクターIII)
弾道ミサイル或いは有翼ミサイルの専用垂直発射機を装備する原潜:西側で言う所のSSBNやSSGNに該当する艦は「水中巡洋艦」に分類されています。
一方、いわゆる「魚雷攻撃型原潜」は、「原子力大型潜水艦」に分類されています。
ただ、今回の記事に登場する「クズバス」を含むプロジェクト971のみは「原子力巡洋潜水艦」と、「原子力水中巡洋艦」と「原子力大型潜水艦」の中間的な分類となっております。
上記の分類はソ連邦解体後の1992年に定められたものですが、この当時、971は魚雷発射管から発射できる長射程有翼ミサイル「グラナート」(SS-N-21)を搭載し、原子力戦略用途水中巡洋艦を補完する戦力と見なされていた為、他の魚雷攻撃型原潜と区別して「巡洋潜水艦」となりました。
(ただし、その後に「グラナート」は971原潜から降ろされましたが)
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