fc2ブログ

ロシア海軍航空隊はクリミアのニートカを今後使用しない

16-0407a.jpg
16-0407b.jpg
『Lenta.ru』より
2016年4月5日17時9分配信
【ロシア海軍はクリミアの甲板航空隊射爆場ニートカを放棄する】

ロシア海軍は、クリミアの航空機試験及び甲板航空隊パイロット訓練の為の射爆場ニートカの使用を断念する。
『Lenta.ru』特派員は、軍当局の情報提供者より伝えられた。
海軍総司令部は、アゾフ海沿岸のエイスクへ新たに建設された複合体の開発に専念する事を計画している。
クリミアの射爆場を放棄する理由は、資金不足と見られる。

「当初、海軍は、エイスクの新たな複合体と、ソヴィエト社会主義共和国連邦時代に建設されたサキのニートカを使用する事を望んでおりました。
ですが、クリミア合併後にロシアへ戻ったクリミアの複合体には、国家防衛の為の資金は有りませんでした。
複合体の査定が行なわれた結果、その修理及び近代化の為の技術的課題は作成されません」

対談者は伝えた。

情報提供者によると、資金不足という条件下で国防省エイスクの新たな複合体の調整に専念する事を決定した。
「当初、それは昨年には完全に就役しなければならなかったのですが、結果として、完全なフライトは2016年秋から始まる事になりました」
情報提供者は伝えた。

対談者が『Lenta.ru』へ指摘したように、準備が整っていないエイスク複合体は、戦闘機MiG-29KR/KUBRを装備する甲板航空隊の新たな航空連隊の戦闘訓練計画を狂わせる恐れがある。
「今、彼等はクリミアへ飛ぶ事は出来ますが、設備の寿命は尽きており、エイスクの複合体の納入までは、連隊の完全な訓練は出来ないでしょう」

以前、『ロシア新聞』は、新たな戦闘機MiG-29が配置された航空母艦「アドミラル・クズネツォフ」は2016年秋にシリア沿岸での戦闘勤務を計画していると報じた。
エイスクの新たな複合体の納入時期の遅延やクリミアの設備の消耗は、この計画を狂わせる恐れがあるだろう。


ソヴィエト連邦時代(1980年代初頭)、ウクライナには航空母艦の飛行甲板を模した発着艦訓練施設「ニートカ」が建設されました。
[地上試験・訓練複合体「ニートカ」]
[サキ飛行実験センター(ニートカ)]
[Нитка(ニートカ)~知られざる旧ソ連の蒸気カタパルト開発の経緯~]


ソ連邦解体後はウクライナに接収され、ロシアウクライナと協定を結んで「ニートカ」を使用していました。
2012年8月、改訂された「ニートカ」使用協定にロシア・ウクライナ国防相が署名しました。
[ロシアとウクライナは艦上機訓練施設ニートカ使用協定を改訂した]

しかし、2013年にはロシア「ニートカ」を使用しませんでした。
[ロシアは2013年にウクライナのニートカを使用しない]

その一方、ロシアは、クラスノダール地方エイスク市に新たな「ニートカ」の建設を開始しました。
[ロシアは、2010年に空母パイロット訓練センターの建設を開始する]

その後、2014年3月18日にロシアウラジーミル・プーチン大統領クリミア自治共和国ロシア連邦へ編入する条約に署名した事により、クリミア半島サキに在る「ニートカ」は再びロシアの手に戻りました。
[ウクライナの訓練複合体ニートカ要員はクリミアへ忠誠を誓う]
[クリミア半島のニートカは2015年2月末から本格的に稼働を再開する]

これにより、クリミア旧ニートカは主に現用のロシア海軍艦上戦闘機隊の訓練に使われ、エイスク新ニートカは主にロシア海軍航空隊の新型航空機の各種試験と訓練に使われる事になりました。
[ロシア海軍航空隊の2つの「ニートカ」]

2014年9月初頭、ロシア海軍Su-33艦上戦闘機は、クリミア「ニートカ」へ戻ってきました。
[ロシア海軍艦上航空隊はクリミアのニートカへ戻ってきた]

2015年7月~9月にもクリミア「ニートカ」Su-33艦上戦闘機の訓練が行なわれました。
[ロシア海軍北方艦隊の艦上戦闘機航空連隊はクリミアのニートカでの訓練を終えた]


一方、エイスク新ニートカでは、2015年末に創設された艦上戦闘機MiG-29K/KUBを装備する第100独立艦上戦闘機航空連隊の錬成訓練が進められています。
16-0323c.jpg
[ロシア連邦国防相セルゲイ・ショイグ上級大将はエイスクのロシア海軍飛行訓練センター(新ニートカ)を視察した]
[MiG-29K/KUBで編成されたロシア海軍の新たな艦上戦闘機航空連隊は本格的な戦闘訓練飛行を始めた]

この他にもエイスクでは、艦載機を有する水上艦の艦長の研修などが行なわれています。
[ロシア海軍航空隊は艦載機を有する新世代水上艦の艦長の訓練を活性化させる]


これまでに情勢の変化の為、使用しなかったり使用されたりと、方針が二転三転してきたクリミア「ニートカ」ですが、今回の記事に登場する「軍当局(国防省)の匿名の情報提供者」によると、今後は使用しない事になるようです。

建設から30年以上が経過し、各種設備も老朽化しているクリミア「ニートカ」に資金を使うよりも、エイスク新ニートカに(金を)使った方が良いという事でしょう。
関連記事
スポンサーサイト