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ロシア海軍最新鋭フリゲート・プロジェクト22350(アドミラル・ゴルシコフ型)はカリーニングラード造船所でも建造されるかもしれない

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『中央海軍ポータル』(フロートコム)より
2016年5月6日17時5分配信
【『北方造船所』が対処できない場合、『統合造船業営団』は他の工場でフリゲートを建造させる】

(ロシア)国防省がプロジェクト22350フリゲート(「アドミラル・ゴルシコフ」型)の大規模シリーズ建造を決定した場合、『統合造船業営団』は『北方造船所』以外(の造船所)でも充分な追加分を建造させる事が出来る。
『統合造船業営団』副総裁イーゴリ・ポノマリョフは『Lenta.Ru』のインタビューを受け、こう発言した。


(ロシア)海軍への6隻のプロジェクト22350フリゲートの引き渡しは遅延する事になるのにも関わらず、『統合造船業営団』には、このクラスの艦をロシア連邦国防省の発注隻数だけ建造する用意がある。
具体的に言えば、以前と変わらぬ充分な生産能力を有している沿バルト工場『ヤンターリ』は、『北方造船所』にも劣らない。

現在、ロシア海軍の為に3隻のプロジェクト22350が建造されており、もう1隻-同プロジェクトのトップ艦「アドミラル・ゴルシコフ」北方艦隊で試験が行われている。

生産艦の建造は、ウクライナとの協力が破棄されたが故に遅延する。
特に、今、業界には同シリーズ2番艦-「アドミラル・カサトノフ」の為の完全な動力装置一式が在り、3隻目の「アドミラル・ゴロフコ」は、ウクライナとの関係が破棄された事に関連し、受け取った機器は完全では無い。

以前、イーゴリ・ポノマリョフは、プロジェクト22350フリゲートの為の国産ガスタービン装置は2017年に登場すると述べた。

プロジェクト22350艦の排水量は4500トン、全長135メートル、幅16メートル、最大速力29ノット、航続距離4500海里、自立航行期間30日、乗員180-210名。

フリゲートの兵装は、口径130mmの艦載砲A-192「アルマート」、16基の対艦ミサイル「オーニクス」或いは「カリブル-NKE」の為の発射装置、そして高射ミサイル複合体「ポリメント-リドゥート」である。


[ロシア海軍の為の新たなフリゲート~プロジェクト11356R(アドミラル・グリゴロヴィチ型)とプロジェクト22350(アドミラル・ゴルシコフ型)]
[新世代フリゲート「アドミラル・ゴルシコフ」型]
[アドミラル・ゴルシコフ型フリゲート(旧ブログ)]

ロシア海軍の為の新世代フリゲート、プロジェクト22350は、現在までにサンクトペテルブルク『北方造船所』(セーヴェルナヤ・ヴェルフィ)で4隻が起工され、この内の2隻が進水し、1番艦は洋上試験中です。

1番艦「アドミラル・フロータ・ソヴィエツカヴァ・ソユーザ・ゴルシコフ」は2006年2月1日に起工、2010年10月28日に進水し、2014年11月から洋上試験が始まりました。
[ロシア海軍最新鋭フリゲート"アドミラル・ゴルシコフ"はバレンツ海で海上目標への砲撃試験を行なった]
同艦は2016年12月にロシア海軍への引き渡しが予定されています。
[最新鋭のプロジェクト22350フリゲート1番艦アドミラル・ゴルシコフは2016年12月にロシア海軍へ引き渡される]

2番艦「アドミラル・フロータ・カサトノフ」は2009年11月26日に起工、2014年12月12日に進水し、現在艤装中です。
[建造中のロシア海軍最新鋭フリゲート"アドミラル・フロータ・カサトノフ"は2016年11月に乗組員を受け入れる]
同艦は2017年12月にロシア海軍への引き渡しが予定されています。
[最新鋭フリゲート"アドミラル・フロータ・カサトノフ"は2017年末にロシア海軍へ引き渡される]

3番艦「アドミラル・ゴロフコ」は2012年2月1日に起工され、2016年に進水が予定されています。
[サンクトペテルブルクでフリゲート「アドミラル・ゴロフコ」及びコルベット「グレミャーシチー」が起工された]

4番艦「アドミラル・フロータ・ソヴィエツカヴァ・ソユーザ・イサコフ」は2013年11月14日に起工されました。
[サンクトペテルブルク北方造船所はプロジェクト22350フリゲート「アドミラル・イサコフ」(と偵察艦「イワン・フルス」)を起工した]

当初、プロジェクト22350は、2020年までに6隻~8隻がロシア海軍へ引き渡される計画でした。

プロジェクト22350は、通常航行用のディーゼルと高速航行用のガスタービンを組み合わせた複合機関ですが、この内のガスタービンM90FRは、ロシアウクライナの共同開発であり、主な部品はロシアで製造し、ガスタービンエンジンの最終組立はウクライナで行なわれていました。
[ロシア新世代艦のガスタービンとディーゼル]

しかし、2014年2月末からのウクライナ危機、3月のロシア連邦によるクリミア半島編入により、ウクライナロシアの関係も悪化し、ガスタービンエンジンに関する「分業体制」も瓦解しました。
[ロシア海軍の新型フリゲートの建造は停滞する]
[ロシアはガスタービンエンジン供給中止に関してウクライナを訴える]

プロジェクト22350の場合、1番艦と2番艦のガスタービンは納入されましたが、3番艦以降の供給は途絶えました。
この為、ガスタービンの最終組立もロシア国内で行なう事になりましたが、その生産が軌道に乗るのは2018年になります。
[ロシアは2018年から艦艇用ガスタービンを量産する]

プロジェクト22350の為のロシア製ガスタービン(M90FR)、つまり、3番艦以降に搭載されるガスタービンは2017年末から供給が開始されます。
[ロシア海軍最新鋭フリゲート・プロジェクト22350(アドミラル・ゴルシコフ型)3番艦以降の為のロシア製ガスタービンは2017年末から供給を開始する]


この影響の為か、当初の計画は修正され、2025年までにプロジェクト22350フリゲート6隻をロシア海軍へ引き渡す事になりました。
[新世代フリゲート・プロジェクト22350は2025年までに6隻がロシア海軍へ就役する]


これに加えて、プロジェクト22350の建造元である『北方造船所』自身の問題も有ります。
【『北方造船所』公式サイト】
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現在、『北方造船所』は、ロシア海軍新世代水上戦闘艦プロジェクト22350フリゲートと、プロジェクト20380/20385コルベットを建造しています。
[新世代コルベット「ステレグーシチー」型]

現段階において、『北方造船所』の造船台ではプロジェクト22350フリゲート2隻、プロジェクト20385コルベット2隻、プロジェクト20380Mコルベット2隻が建造されており、22350フリゲート1隻が艤装工事中です。
これ以外にも『北方造船所』ではロシア海軍の為の補助艦船(例えば偵察艦「イワン・フルス」など)を建造しています。

更に、2018年~2019年以降には、『北方造船所』で、より大型(14000トン以上)の将来原子力駆逐艦「リデル」級の建造が始まる予定です。
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[ロシア将来駆逐艦プロジェクト「リデル」]

ロシア海軍新世代水上艦の建造が『北方造船所』に集中している現状において、同社はプロジェクト22350だけに専念する事は出来ないでしょう。
プロジェクト22350フリゲート6隻の納入時期が5年延ばされたのには、こういった事情も有るようです。


この問題点について、ロシア造船業の総元締である『統合造船業営団』副総裁イーゴリ・ポノマリョフ氏は、『北方造船所』以外の造船所でプロジェクト22350を建造する可能性に初めて言及しました。

具体的には、記事中でも挙げられているカリーニングラード沿バルト造船工場『ヤンターリ』です。
【沿バルト工場『ヤンターリ』公式サイト】
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『ヤンターリ』は、現在、ロシア海軍向けとして、プロジェクト22350(満載排水量4500トン)と大体同サイズ(22350の方が少し大きい)プロジェクト11356R警備艦(フリゲート)(満載排水量4035トン)の建造を進めており、既に1番艦は海軍へ就役しており、2番艦も5月末に、3番艦は今年夏には就役します。
[アドミラル・グリゴロヴィチ型フリゲート]

プロジェクト11356Rのベースとなったインド海軍向けの「タルワー」級フリゲートは、最初の3隻がサンクトペテルブルク『バルト工場』で建造された後、第2バッチの3隻が『ヤンターリ』で建造されました。
[「タルワー」級フリゲート(プロジェクト1135.6)]

プロジェクト11356Rは、当初は6隻の建造が計画されていましたが、現在でも5番艦までしか起工されておらず、しかも、4番艦と5番艦はインドへの売却話が出ています。
[ロシア海軍向けプロジェクト11356Rフリゲート後期建造艦3隻はインドへ売却されるかもしれない]

この他、『ヤンターリ』ではロシア海軍向けのプロジェクト11711大型揚陸艦2隻を建造しており、1番艦は今年、2番艦は来年に海軍へ引き渡されます。
11711の建造は2隻で終了します。
[新型揚陸艦イワン・グレン]

そこで、11356R11711の後にはロシア海軍向けの仕事の具体的な計画が殆ど無い『ヤンターリ』プロジェクト22350を建造させる事が考慮されているようです。
将来的には、新世代コルベット(プロジェクト20380シリーズ)『ヤンターリ』で建造されるかもしれません。

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ソ連邦時代には、『北方造船所』(サンクトペテルブルク)『ヤンターリ』(カリーニングラード)で同型艦が並行して建造されるという事は普通に行なわれていました。

代表的な例は、1970年代に建造されたプロジェクト1135警備艦(クリヴァクI)や、1980年代に建造されたプロジェクト1155大型対潜艦(ウダロイ型)です。

プロジェクト1135警備艦「リェトゥーチィ」(『北方造船所』で建造)
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プロジェクト1135警備艦「ストロゼヴォーイ」(『ヤンターリ』で建造)
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プロジェクト1155大型対潜艦「アドミラル・トリブツ」(『北方造船所』で建造)
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プロジェクト1155大型対潜艦「アドミラル・ヴィノグラードフ」(『ヤンターリ』で建造)
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