ロシア海軍唯一の空母アドミラル・クズネツォフは地中海に常時滞在すべきであるとロシア下院国防委員長は言った

『タス通信』より
2016年6月28日12時29分配信
【コモエドフ:航空母艦「アドミラル・クズネツォフ」は地中海に常時滞在すべきである】
モスクワ、6月28日/タス通信
ロシア唯一の航空母艦「アドミラル・クズネツォフ」は、この地域におけるロシアの国益を保護する為、地中海に常時滞在すべきである。
国家院(下院)の(国防)委員会のトップであり、元ロシア連邦黒海艦隊司令官ウラジーミル・コモエドフ提督は、こう考える。

「僕の意見といたしまして、アドミラル・クズネツォフは、ロシアの安全保障上の利益に関する課題の解決を保障する為、この地域から離れる事無く地中海に常時滞在すべきです。
艦の乗組員は、ローテーションにより交代させる事が可能ですし、同艦は地中海に留まるべきです。
無論言うまでも無く、この航空母艦の為の適切な物理的状態を有している必要があります」
コモエドフはタス通信へ、こう話した。
彼は、ロシア連邦国防省が今秋に航空母艦を地中海への遠距離航海へ向かわせる計画がある事を確認した。
「はい、そのような計画は有り、この計画下で巡洋艦は、そこへ行かなければなりませんが、その為の技術的状態を形作る事が出来るのかどうかについて、僕は御話する事は出来ません」
対談者は説明した。
以前、軍事外交筋は、ロシア海軍の重航空巡洋艦「アドミラル・クズネツォフ」は今秋に地中海東部へ到着するとタス通信へ伝えた。
現在、同艦は修理後の工場航行試験をバレンツ海で行なっている。
[重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフの経歴(ロシア国防省公式サイト)]
[空母アドミラル・クズネツォフ艦長セルゲイ・アルタモノフ]
ニコラエフ(ウクライナ)の黒海造船工場で1982年9月1日に起工され、1985年12月4日に進水し、1991年1月20日に当時のソ連海軍へ就役した重航空巡洋艦「アドミラル-フロータ-ソヴィエツカヴァ-ソユーザ・クズネツォフ」は、同年12月末に黒海から北方艦隊基地へ回航され、以後、同艦隊で運用されています。
「アドミラル・クズネツォフ」は、これまでに7回の遠距離航海を実施しており、最近では、2013年12月17日から2014年5月18日までの5ヶ月間に渡る大西洋・地中海遠征を実施しています。
[空母アドミラル・クズネツォフ第5次地中海遠征(2013年12月-)]
2015年5月-8月には、ロスリャコヴォの大型浮きドックPD-50へ入渠し、普段は海水に浸かっている艦底部分(吃水線から下の部分)の修復作業が行なわれました。

[ロシア海軍空母アドミラル・クズネツォフは浮きドックを出る]
2015年10月-11月にはバレンツ海で演習を行ないました。
[ロシア海軍の正規空母アドミラル・クズネツォフは抜錨した]
[ロシア海軍の正規空母アドミラル・クズネツォフはバレンツ海で訓練を続ける]
[ロシア海軍の正規空母アドミラル・クズネツォフは海上目標へ艦対空ミサイルを発射した]
[ロシア海軍の正規空母アドミラル・クズネツォフはバレンツ海で防空演習を始めた]
その後、ムルマンスク市北方の第35艦船修理工場でメンテナンスと修理(技術的準備状態の回復)が行なわれました。

[ロシア海軍唯一の空母アドミラル・クズネツォフは就役25周年を祝った]
「アドミラル・クズネツォフ」の搭載機部隊である第279独立艦上戦闘機航空連隊(艦上戦闘機Su-33)は、2016年4月末から6月下旬までクリミア半島のサキ飛行場に在る艦上戦闘機発着訓練施設(旧ニートカ)で訓練を行ないました。
[ロシア海軍航空隊の艦上戦闘機Su-33はクリミア半島の訓練複合体ニートカでの発着訓練を完了した]
「アドミラル・クズネツォフ」の搭載機の近代化は進められており、以前からの艦上戦闘機Su-33(寿命延長改修済み)に加え、新たに発注された艦上戦闘機MiG-29K/KUBは2015年末までに契約分全機(24機)が納入されています。
(2013年末に4機、2014年末に10機、2015年末に10機納入)
[ロシア海軍唯一の空母アドミラル・クズネツォフは新型艦上機により近代化される]
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフの為の艦上戦闘機MiG-29K/KUBは契約分全機(24機)の納入を完了した]
艦上戦闘機MiG-29K/KUBを装備する第100独立艦上戦闘機航空連隊は2015年末に創設され、現在はクラスノダール地方のエイスクに在る艦上戦闘機発着訓練施設(新ニートカ)で錬成訓練を行なっています。
[ロシア連邦国防相セルゲイ・ショイグ上級大将はエイスクのロシア海軍飛行訓練センター(新ニートカ)を視察した]
[MiG-29K/KUBで編成されたロシア海軍の新たな艦上戦闘機航空連隊は本格的な戦闘訓練飛行を始めた]
「アドミラル・クズネツォフ」は、今年(2016年)秋に地中海東部への遠征が計画されています。
[ロシア海軍の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフは2016年秋に新たな艦上戦闘機と共に地中海東部へ行く]
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフは2016年10月以降に地中海東部へ行く]
「アドミラル・クズネツォフ」は、6月15日に第35艦船修理工場の岸壁を離れ、コラ湾(セヴェロモルスク沖泊地)へ進出しました。
[ロシア海軍の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフはムルマンスク修理工場岸壁を離れ、コラ湾へ進出した]
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフは海上での訓練後にムルマンスク艦船修理工場へ戻る]
6月21日、「アドミラル・クズネツォフ」はバレンツ海へ出航し、対空防衛演習を実施しました。
[ロシア海軍北方艦隊の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフはバレンツ海へ出航し、対空防衛演習を行なった]

今回の記事に登場するウラジーミル・ペトロヴィチ・コモエドフ提督(1950年8月14日生まれ)は、1998年7月から2002年10月まで黒海艦隊司令官を務めています。
2002年10月にロシア海軍を退役し、2007年にはロシア連邦共産党から立候補して国家院(下院)議員となり、2012年11月から国家院の国防委員長を務めています。
[ロシア下院国防委員長はロシア海軍地中海作戦部隊について語った]
そのコモエドフ氏は、今回、タス通信の取材を受け、彼個人の意見として、「アドミラル・クズネツォフ」は地中海へ常時滞在すべきであると述べました。
つまり、「アドミラル・クズネツォフ」をずっと地中海へ滞在させ、乗組員を2組用意してローテーションで交代させるという事です。
仮にコモエドフ氏の構想を実行するとなると、「アドミラル・クズネツォフ」は北方艦隊では無く、黒海艦隊へ転属しなければならないでしょう。
「アドミラル・クズネツォフ」のメンテナンスや修理に関しては、地中海にいちばん近い所ではクリミア共和国ケルチ市の造船工場「ザリフ」に同艦が入居可能な乾ドックが有りますから、ここで行なう事が出来るでしょう。
[クリミア共和国ケルチ市のザリフ造船所はロシア海軍将来空母の建造へ参加できる]
ただ、「アドミラル・クズネツォフ」は今年秋の地中海遠征から戻った後に近代化改装が始まりますから、当面の間は、コモエドフ氏の構想を実行に移す事は出来ませんが・・・
[ロシア海軍唯一の空母アドミラル・クズネツォフの近代化改装は2017年初頭から始まる]
[ムルマンスクの第35艦船修理工場はロシア海軍空母アドミラル・クズネツォフ近代化改装の為にドックを拡張する]
[ロシア海軍の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフは近代化改装により兵装を変更する]
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