ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフは艦上戦闘機MiG-29K/KUBを運用する為の新型システムを搭載する
- カテゴリ:艦上戦闘機MiG-29K/KUB

『イズベスチヤ』より
2016年8月5日0時1分配信
【航空母艦クズネツォフはMiG-29の為の設備を追加する】
ユニークな座標表示システムは甲板での新たな戦闘機の使用を可能にする。

今年末までにシリア沿岸へ向かわなければならないロシア海軍のフラッグシップ~重航空巡洋艦「アドミラル・クズネツォフ」では、現在、ユニークなシステムの設置作業が進められている。
これは、艦上戦闘機MiG-29KRとMiG-29KUBRの離艦前の入力に適応した(海洋飛行士の用語で言う所の「記入する」)超精密座標慣性航法システムである。
必要な情報を受信しなければ、「ミグ」は高精度で敵目標を攻撃する事は出来ないのみならず、ロシア空母の甲板から発艦する事すら疑わしいだろう。
「現在、システムの設置作業は既に完全に進められています。
システムの準備が完全に整う正確な時期に関しましては、私から申し上げる事は出来ません。
ですが、シリアへの航海までには、全てが準備され、飛び回る事が出来るようになります」
ロシア海軍の代理人は匿名を条件に『イズベスチヤ』へ話した。
最近まで「クズネツォフ」艦上には類似したシステムが設置されていた。
これは、戦闘機Su-33と練習訓練機Su-25UTGの為にのみ動作する事が可能なより古いアナログ慣性システムであり、MiG-29KR/KUBRのデジタル慣性航法システムとは互換性が無かった。
最新の艦載システムは『ラメンスコエ機器製造設計局』が開発し、『イズベスチヤ』の対談者によると、多くの技術的解決策が用いられた製品は、インドの航空母艦「ヴィクラマーディティヤ」の建造においてテストされた。
「システムの主な特徴は、それが最新のMiG-29KRの『慣性』のみならず、Su-33とSu-25UTGに設置された前世代のシステムでも同時に表示される事に有ります」
対談者は総括した。

ロシア連邦名誉試験飛行士ローマン・タスカエフが『イズベスチヤ』へ話したように、機上慣性システムは空間上での航空機の位置を算定する:針路、ローリング値、タンジェント値(航空機の縦軸と水平面の間の角度)、航空機の上昇あるいは降下状態の表示、そして他のフライト実行の為のみならず、最も重要なのは、爆撃及びミサイル発射に必要な一連の表示。
航空機の照準複合体は、空間での状況に関する慣性航法システムからのデータを受け取り、目標を攻撃する為に最適な位置を算出する。
「慣性航法システムは最も重要なシステムの1つであり、事実上、全ての航空機が有しており、衛星ナビゲーションを代替する事は不可能です。
ですが、『慣性』の動作を調整する為に、離艦前の初期の座標を入力する事は必要です」
タスカエフは『イズベスチヤ』へ説明した。
「しかも、1秒の誤差は、その後の座標データの10メートルの不正確さをもたらします。
陸上飛行場からの航空機の離陸の課題については、事前に飛行場から通知された出発点の座標データを慣性航法システムへ入力すれば非常に簡単に解決出来ます。
しかし、海上の艦は移動しており、その針路は変更され、揺れます。
慣性航法システムを配置する際には、この全てを考慮する必要があります」
軍事史家で海軍の歴史に関する著書を記しているドミトリー・ボルテンコフによると、慣性航法システムを表示する最新艦載システムの設置無くしてロシアのMiG-29KR/KUBRがシリアの作戦へ参加する事は出来ない。
「ロシア海軍のMiG-29は、航空母艦クズネツォフの甲板からのフライトを行なっていません。
この機体を軍備として受領した第100艦上戦闘機連隊のパイロットのフライトは、未だエイスク及びサキの陸上飛行場からのみです」
ボルテンコフは『イズベスチヤ』へ説明した。
同時に、専門家によると、『ラメンスコエ機器製造設計局』の製品のお蔭で、古いSu-33も、最新の「ミグ」と同時に効果的に動作し、ロシア海軍空母群旗艦は、広範囲の戦闘任務を効果的に果たす事が出来るようになる。
「Su-33については秘密でも何でもありません~これは、むしろ迎撃機であり、空中戦闘を行なう事は出来ますが、地上目標を攻撃する為の武装は無誘導ロケット弾及び通常爆弾のみであり、MiG-29KR/KUBRのように非常に効果的な高精度航空攻撃手段は使用できません」
ボルテンコフは指摘した。
航空機製造工業の消息筋が『イズベスチヤ』へ話したように、現在、世界で2つの国~ロシアとアメリカ合衆国のみが、慣性航法システムを表示する現代的な艦載システムを有している。
「市場におけるこのようなシステムの提案の多くは、艦上ヘリコプターの為のものであり、これらの航空機は高い精度を必要としていません。
同時に、特殊な高精度兵器を搭載する艦上戦闘機は、その速度が毎時1000kmで測定される為、超精密座標のみを必要とします。
このような製品はアメリカのみが有しており、航空母艦や揚陸艦へ設置されております、そしてロシアも。
特に、手元のデータによりますと、フランスの航空母艦シャルル・ド・ゴールと、ブリテンが建造中のクイーン・エリザベスは、アメリカ合衆国が提示した複合体を発注しています」
対談者は指摘した。
[艦上戦闘機MiG-29K/KUB]
[艦上戦闘機MiG-29K/MiG-29KUB(旧ブログ)]
[RSKミグMiG-29K/MiG-29KUB艦上戦闘機(RSKミグ公式サイト)]
ロシア海軍の重航空巡洋艦「アドミラル・クズネツォフ」の新たな艦上戦闘機は、当初、Su-27KUB(1999年初飛行)とMiG-29K/KUB(2007年初飛行)の2機種から選ぶ事になっていました。
[ロシア海軍は、2016年以降に新しい艦上戦闘機を採用する]
その後、2009年2月にはMiG-29K/KUBに絞られる事になりました。
[ロシア海軍、MiG-29KUBを導入]
艦上戦闘機MiG-29K/KUB24機の供給契約が締結されたのは、それから3年後の2012年2月29日でした。
[ロシア国防省は艦上戦闘機MiG-29K/KUBの購入契約を締結した]
ロシア海軍向けのMiG-29KUB量産1号機は2013年10月下旬に初飛行しました。
[ロシア海軍の為の艦上戦闘機MiG-29KUB量産1号機は飛行試験を開始した]
2013年11月下旬、当初の計画通りに2機のMiG-29K(単座型)と2機のMiG-29KUB(複座型)がロシア海軍へ引き渡されました。
[ロシア海軍は最初の艦上戦闘機MiG-29K/MiG-29KUBを受領した]
そして2014年12月2日までに8機のMiG-29Kと2機のMiG-29KUBが、当初の計画通りにロシア海軍へ引き渡されました。
[ロシア海軍へ10機の艦上戦闘機MiG-29K/KUBが引き渡された]
2015年12月末までに10機のMiG-29Kが引き渡され、契約分全機の納入が完了しました。
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフの為の艦上戦闘機MiG-29K/KUBは契約分全機(24機)の納入を完了した]
MiG-29Kは、現用の艦上戦闘機Su-33と共に重航空巡洋艦「アドミラル・クズネツォフ」で運用されます。
[新たな艦上戦闘機MiG-29K/KUBはロシア海軍現用艦載機と共に運用される]
MiG-29Kのパイロットの養成は、クラスノダール地方のエイスク市に建設された戦闘応用・飛行再訓練センター(新「ニートカ」)行なわれました。
[ロシア北方艦隊のパイロットは新たな艦上戦闘機MiG-29Kをマスターする]
[エイスクの新ニートカは本格的に稼働を始める]
[ロシア海軍航空隊はエイスクで艦上戦闘機MiG-29K/KUBのパイロットを養成する]
[ロシア連邦国防相セルゲイ・ショイグ上級大将はエイスクのロシア海軍飛行訓練センター(新ニートカ)を視察した]
2016年1月には、MiG-29K/KUBを装備する新たな航空連隊~第100独立艦上戦闘機航空連隊が編成されました。
[ロシア海軍の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフの為の新たな艦上戦闘機MiG-29Kの航空連隊の編成は殆ど完了している]
そして2016年3月20日、第100独立艦上戦闘機航空連隊としての本格的な飛行訓練が始まりました。
[MiG-29K/KUBで編成されたロシア海軍の新たな艦上戦闘機航空連隊は本格的な戦闘訓練飛行を始めた]
2016年6月からはクリミア半島のサキ飛行場へ進出し、艦上戦闘機発着訓練施設(旧ニートカ)で訓練を行なっています。




今回の記事ではMiG-29KR/MiG-29KUBRと呼ばれていますが、これはインド海軍向けのMiG-29K/MiG-29KUBと区別する為、ロシア海軍向けの機体に対して非公式に用いられている呼称です。
(Rは「ロシア」の頭文字)
MiG-29K/KUBの母艦となる「アドミラル・クズネツォフ」は、2016年前半はムルマンスクの第35艦船修理工場でオーバーホールが行なわれ、6月下旬からバレンツ海で訓練を開始し、7月1日以降は艦載機の飛行訓練も行われています。
[ロシア海軍の正規空母アドミラル・クズネツォフの艦載機の発着艦訓練が始まった]
「アドミラル・クズネツォフ」は、今年(2016年)秋に地中海東部への遠征が計画されており、現在、その為の準備が進められています。
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフは地中海遠征の準備を行なっている]
[ロシア海軍の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフは2016年秋に新たな艦上戦闘機と共に地中海東部へ行く]
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフの地中海遠征は2016年10月よりも早くはならない]
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフの地中海遠征は約4ヶ月間に渡る]
地中海東部へ進出した「アドミラル・クズネツォフ」は、シリア領内のISIL(イラク・レバントのイスラム国)への空爆作戦へ参加します。
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフは2016年10月から2017年1月までISIL(イラク・レバントのイスラム国)への空爆作戦へ参加する]
今年の地中海遠征には艦上戦闘機MiG-29K/KUBの参加も予定されておりますが、これに先立ち、「アドミラル・クズネツォフ」には、MiG-29K/KUBを運用する為の新たな慣性航法システムが設置されました。
(MiG-29K/MiG-29KUBは2009年9月28日と29日に「アドミラル・クズネツォフ」で発着艦試験を行なっており、ただ単に発着艦するだけなら可能ですが)
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