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ロシア海軍は4隻の汎用ヘリコプター揚陸艦を必要とする

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『タス通信』より
2016年9月8日13時13分配信
【専門家は何故ロシア海軍に揚陸ヘリコプター母艦が必要なのかについて話した】
クビンカ/モスクワ州、9月8日/タス通信

ロシア海軍には4隻の汎用揚陸艦のニーズがあり、この内の1隻は地中海の常設グループの為に必要である。
『クルイロフ国立科学センター』軍事技術協力開発管理部長ユーリー・エレミンは、こう考える。

『クルイロフ・センター』は、排水量23000トンと見積もられている「プリボイ」型揚陸艦の概念案を開発した。
艦は900名までの海軍歩兵隊員と車両を輸送し、その航空群は16機のヘリコプターで構成される。

「このような艦は北方艦隊の為に1隻、太平洋艦隊の為には2隻が必要です。
地中海水域の重要性の増加~常設グループの艦の行動~を考慮いたしますと、黒海艦隊自体には、このような艦は必要が無いのですが、1隻は黒海艦隊へ配置する必要があるでしょう。
このような艦をバルト艦隊の為に建造する事は無意味です」
『クルイロフ国立科学センター』軍事技術協力開発管理部長ユーリー・エレミン


彼によると、ロシア海軍「プリボイ」へ関心を有しているが「しかし、未だ決定されていません」

このタイプの艦1隻の費用は、専門家の推定では、今の価値で400~450億ルーブルになる。
このような艦は、カリーニングラード沿バルト造船工場『ヤンターリ』或いはサンクトペテルブルク『北方造船所』で建造できるだろう。

今、ロシア海軍には汎用揚陸艦は無い。

「ミストラル」型ヘリコプター空母は2011年にフランスへ発注されたが、ロシア連邦へ引き渡される事は無かった。
『統合造船業営団』は、国内の造船所が「ミストラル」の同類を作成する事が出来ると表明した。

7月末、海軍副総司令官ヴィクトール・ブルスクは、汎用揚陸艦の為の技術的課題は既に用意されていると述べた。


ロシアフランスへ2隻の「ミストラル」級ヘリコプター揚陸ドック艦(ヘリコプター空母)を発注し、「ウラジオストク」、「セヴァストーポリ」と命名された艦は2014年と2015年に引き渡される筈でしたが、フランスウクライナ情勢に関連して引き渡しを凍結しました。

2015年8月5日、ロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチンフランス大統領フランソワ・オランドは電話で会談し、「ミストラル」級ヘリコプター揚陸ドック艦の建造・供給契約の終了(破棄)を決定しました。
[ロシアとフランスはロシア海軍向けミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦の契約を終了させた]

フランスロシアへ補償金として約9億5000万ユーロを支払い、2隻の「ミストラル」級に設置されたロシア製機器は全て取り外してロシアへ返却されました。
[ロシア海軍向けミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦の契約終了によりフランスはロシアへ9億4975万4849ユーロを支払う]
[ロシア海軍向けだった2隻のミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦から取り外されたロシア製機器は全てロシアへ到着した]

その後、2隻の「ミストラル」級エジプトへ売却されることになりました。
(1番艦は「ガマール・アブドゥル=ナーセル」、2番艦は「アンワル・アッ=サーダート」と改名)

エジプトへ引き渡された「ガマール・アブドゥル=ナーセル」(旧「ウラジオストク」)
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一方、ロシアは、以前からロシア版ミストラルとも言える大型の全通甲板ヘリコプター揚陸艦の設計を進めていました。
[ロシア海軍将来汎用揚陸ヘリコプター搭載艦プロジェクト「ラヴィーナ」]
[ロシア海軍の為の将来大型揚陸艦は複数のヴァージョンが設計されている]
[ロシア海軍の為の新たなヘリコプター揚陸艦の設計は進められている]
[ロシア海軍の将来汎用ヘリコプター揚陸艦の建造にはミストラル級の経験が生かされる]

将来汎用揚陸艦の為に新たな戦闘情報管理システムも開発されます。
[ロシア海軍将来汎用揚陸艦の為の新たな戦闘情報管理システムが開発される]

搭載機は、元々は「ミストラル」用に開発されたKa-52Kなどになります。
[ロシア海軍の艦上攻撃ヘリコプターKa-52Kカトランは最新鋭の目標探知システムを装備する]

「ミストラル」級が配備される予定のウラジオストク南部ウリス湾では、埠頭の建設が続けられています。
[ウラジオストクのウリス湾ではロシア海軍の大型水上艦(ヘリコプター空母)の為の埠頭の建設が続けられる]

現在の所、「ロシア版ミストラル」の建造は、2018年以降に『2018-2025年の国家軍備プログラム』の枠組みで開始される予定です。
[ロシア海軍の為の新たな汎用大型揚陸艦の建造は2018年に始まる]
[ロシア海軍の為の新たな汎用大型揚陸艦は『2018-2025年の国家軍備プログラム』において建造される]



今回の記事に登場する『クルイロフ国立科学センター』は、ロシア海軍向けなどの艦船の形状を研究する機関であり、艦船設計局とは違います。

『クルイロフ国立科学センター』には実験用の大型水槽などが有り、ここで模型を使って様々な艦船の形状の実験を行ない、今後建造されるロシア海軍の新型艦の大まかな外形を決定して艦船設計局へ提示し、設計局は、これを基にして実際に建造される艦の設計を行ないます。
いわば、『中央航空流体力学研究所』(ツアギ)の海上版とでもいうべき機関です。

『クルイロフ国立科学センター』は実験結果を基にして次世代艦の大まかな形状を決め、概念設計案として仕上げます。
この概念設計案をベースにして艦船設計局が艦を設計します。
最近では、ロシア海軍次世代水上艦概念設計案3タイプをを作成しています。

多目的重空母「シトルム」
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駆逐艦「シクヴァル」
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汎用揚陸艦「ラヴィーナ」
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無論言うまでも無く、これらの概念設計案は、水槽などの実験施設での実験を重ねて作られたものです。
もちろん、復元性、耐航性、航洋性なども全て計算された上で作られています。



今回、『クルイロフ国立科学センター』の軍事技術協力開発管理部長ユーリー・エレミン氏は『タス通信』のインタビューに応じ、ロシア海軍には4隻の汎用ヘリコプター揚陸艦が必要であると述べました。
その主な目的は、地中海での活動、つまり、2013年6月1日に創設されたロシア海軍地中海作戦連合部隊の中核としての活動です。

エレミン氏は4隻の汎用揚陸艦を、太平洋艦隊へ2隻、北方艦隊へ1隻、黒海艦隊へ1隻配備すべきだと言っています。
これでローテーションを組んで常に1隻を地中海へ展開させる為に。
ただ、黒海艦隊自体には、このような艦は必要無いが、地中海での運用を考慮すれば、1隻は同艦隊へ置いておいても良いという事でしょう。
バルト艦隊への配備は無意味であるとも言っています。

ロシア海軍が入手できなかった「ミストラル」級ヘリコプター揚陸ドック艦も、地中海での運用が想定されていました。
[ロシア海軍のミストラル級は地中海作戦部隊の旗艦になるかもしれない]
[ミストラル級はロシア海軍地中海作戦部隊に加わるかもしれない]

ロシア海軍「ミストラル」級(当初は4隻調達予定)を太平洋艦隊北方艦隊へ配備し、黒海艦隊バルト艦隊へ配備するつもりは有りませんでした。
[ロシアはフランス製の強襲揚陸艦「ミストラル」型を購入する(イタルタス通信)]
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