ロシア海軍の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフと重原子力ロケット巡洋艦ピョートル・ヴェリキーは地中海遠征へ出発した

『タス通信』より
2016年10月15日15時16分配信
【航空母艦「アドミラル・クズネツォフ」は地中海への遠距離航海に出発した】
モスクワ、10月15日/タス通信
北方艦隊の航空艦グループは北東大西洋及び地中海への航海を始めた。
土曜日、北方艦隊広報サービスは発表した。
「グループの構成には、重航空巡洋艦アドミラル・フロータ・ソヴィエツカヴァ・ソユーザ・クズネツォフ、重原子力ロケット巡洋艦ピョートル・ヴェリキー、大型対潜艦セヴェロモルスクとヴィツェ・アドミラル・クラコーフ、そして支援船が含まれています」
声明では、こう述べられた。
「航海の目的は、世界の大洋の作戦上重要な海域における海軍の存在の確保であります」
広報サービスは指摘した。
「ロシア連邦の海洋船舶航行及びその他の種類の海洋経済活動の安全保障、更には、海賊や国際テロといった新たな種類の現代の脅威への対応へ主な注意が払われます」
航海では、水上艦の乗組員の海洋技量と戦闘連携を向上させ、艦上航空機及びヘリコプターのフライトの実施を含む航空艦グループと航空隊の共同活動への取り組みが行なわれる。
ロシア海軍の他の艦隊の艦船との合同演習が計画されていると広報サービスは説明した。
数日間、航空艦グループの乗組員は、バレンツ海の北方艦隊戦闘訓練射爆場で遠距離航海の計画準備を完了した。
重巡洋艦「アドミラル・クズネツォフ」と「ピョートル・ヴェリキー」の前回の地中海及び北東大西洋海域での合同航海は2014年前半に完了した。
航空母艦グループの旗艦である航空巡洋艦「アドミラル・クズネツォフ」にとって8回目となる遠距離航海が始まる。
[重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフの経歴(ロシア国防省公式サイト)]
[空母アドミラル・クズネツォフ艦長セルゲイ・アルタモノフ]
ニコラエフ(ウクライナ)の黒海造船工場で1982年9月1日に起工され、1985年12月4日に進水し、1991年1月20日に当時のソ連海軍へ就役した重航空巡洋艦「アドミラル-フロータ-ソヴィエツカヴァ-ソユーザ・クズネツォフ」は、同年12月末に黒海から北方艦隊基地へ回航され、以後、同艦隊で運用されています。
「アドミラル・クズネツォフ」は、これまでに7回の遠距離航海(北東大西洋へ2回、地中海へ5回)を実施しており、最近では、2013年12月17日から2014年5月18日までの5ヶ月間に渡る大西洋・地中海遠征を実施しています。
[空母アドミラル・クズネツォフ第5次地中海遠征(2013年12月-)]
2016年前半はムルマンスクの第35艦船修理工場でオーバーホール(技術的準備状態の回復)が行なわれ、6月下旬からバレンツ海で訓練を開始し、7月1日以降は艦載機の飛行訓練も行われています。
[ロシア海軍の正規空母アドミラル・クズネツォフの艦載機の発着艦訓練が始まった]
7月31日の「ロシア海軍の日」には、セヴェロモルスクの観艦式へ参加しました。

「アドミラル・クズネツォフ」は、今年(2016年)秋に地中海東部への遠征が計画されており、その為の準備が進められました。
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフは地中海遠征の準備を行なっている]
[ロシア海軍の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフは2016年秋に新たな艦上戦闘機と共に地中海東部へ行く]
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフの地中海遠征は約4ヶ月間に渡る]
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフは2016年10月20日よりも前に地中海へ向かうかもしれない]
地中海東部へ進出した「アドミラル・クズネツォフ」は、シリア領内のISIL(イラク・レバントのイスラム国)への空爆作戦へ参加します。
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフは2016年10月から2017年1月までISIL(イラク・レバントのイスラム国)への空爆作戦へ参加する]
更には、来年(2017年)春の実施が予定されているロシアとエジプトの合同軍事演習へ参加するかもしれません。
[ロシア海軍の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフは2017年春にエジプトとの合同演習へ参加するかもしれない]
「アドミラル・クズネツォフ」の為の新たな艦上戦闘機MiG-29KR/MiG-29KUBR(註:インド海軍向けのMiG-29K/MiG-29KUBと区別する為、ロシア海軍向けの機体に対して非公式に用いられている呼称。Rは「ロシア」の頭文字)は2015年末までに契約分全機(24機)が納入され、2016年1月には、MiG-29K/KUBを装備する新たな航空連隊~第100独立艦上戦闘機航空連隊が編成されました。
[ロシア海軍唯一の空母アドミラル・クズネツォフは新型艦上機により近代化される]
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフの為の艦上戦闘機MiG-29K/KUBは契約分全機(24機)の納入を完了した]
[ロシア海軍の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフの為の新たな艦上戦闘機MiG-29Kの航空連隊の編成は殆ど完了している]
[MiG-29K/KUBで編成されたロシア海軍の新たな艦上戦闘機航空連隊は本格的な戦闘訓練飛行を始めた]
第100独立艦上戦闘機航空連隊は、2016年6月からはクリミア半島のサキ飛行場へ進出し、艦上戦闘機発着訓練施設(旧ニートカ)で訓練を行なっています。

「アドミラル・クズネツォフ」には、艦上戦闘機MiG-29KR/MiG-29KUBRを運用する為の新たな慣性航法システムが装備されました。
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフは艦上戦闘機MiG-29K/KUBを運用する為の新型システムを搭載する]
2016年8月8日、第100独立艦上戦闘機航空連隊の艦上戦闘機MiG-29KRが初めて「アドミラル・クズネツォフ」へ着艦しました。
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフへ初めて艦上戦闘機MiG-29KRが着艦した]
この他、艦上攻撃ヘリコプターKa-52K「カトラン」も「アドミラル・クズネツォフ」に搭載されます。
Ka-52Kの発着試験も既に行なわれています。
[ロシア海軍の艦上攻撃ヘリコプターKa-52Kカトランは空母アドミラル・クズネツォフへ搭載される]

一方、「スモレンスク赤旗授与・ソ連邦英雄2度受賞ボリス・サフォーノフ記念第279独立艦上戦闘機航空連隊」の艦上戦闘機Su-33にも地上攻撃能力が付与されます。
[ロシア海軍航空隊の艦上戦闘機Su-33は地上攻撃の為の新たなシステムを装備する]
10月上旬の時点で、機体番号60、67、71、77、78、84、85、88の8機に地上爆撃用特殊計算サブシステムSVP-24が装備されています。

艦載機の飛行訓練と試験を行なった「アドミラル・クズネツォフ」は、8月12日にムルマンスクの第35艦船修理工場へ戻り、オーバーホール(技術的準備状態の回復)及び部分的な近代化改装作業の第2段階(MiG-29KR/MiG-29KUBRを運用できるようにする為の改修)を実施しました。

この作業は2016年9月末までの完了が予定されていました。
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフのオーバーホールは2016年9月末に完了する]
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフは2016年9月末に新型艦上戦闘機MiG-29K/KUBを運用する為の改修を終える]
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフはシリア沖へ向かう前に新型艦載システムの試験を行なう]
9月21日、ロシア連邦国防相セルゲイ・ショイグ上級大将は、「アドミラル・クズネツォフ」を地中海東部へ派遣する計画が有る事を初めて公式に認めました。
[ロシア国防省(ロシア海軍)は重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフの地中海派遣を計画している]
オーバーホールと改修を終えた「アドミラル・クズネツォフ」は9月26日に第35艦船修理工場を去り、バレンツ海へ出航しました。
[ロシア海軍の重航空巡洋艦(空母)アドミラル・クズネツォフは2016年10月中旬にシリア沖へ向かう?]
おそらくは、オーバーホール後の点検作業などを行なったのでしょう。
10月初頭には第35艦船修理工場へ戻り、各種物資の積み込みが行なわれました。
[ロシア海軍北方艦隊の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフ近影(2016年10月8日)]
物資積み込みを終えた「アドミラル・クズネツォフ」は、10月14日にセヴェロモルスク沖へ移動しました。

[ロシア海軍唯一の空母アドミラル・クズネツォフはセヴェロモルスク沖に居る]
そして翌10月15日、地中海東部へ向けて出航しました。
今回の「ロシア海軍空母機動部隊」は、以下の艦で構成されています。
[北方艦隊航空艦グループ]
重航空巡洋艦「アドミラル・フロータ・ソヴィエツカヴァ・ソユーザ・クズネツォフ」
重原子力ロケット巡洋艦「ピョートル・ヴェリキー」
大型対潜艦「セヴェロモルスク」
大型対潜艦「ヴィツェ・アドミラル・クラコーフ」
各種支援船(おそらく大型海洋給油船「セルゲイ・オシポフ」と救助曳船)
これまでに「アドミラル・クズネツォフ」は、2回の大西洋への遠距離航海と5回の地中海への遠距離航海を行なっています。
[第1次地中海遠征(1995年12月8日出港、1996年3月22日帰港)]
[北方艦隊]
重航空巡洋艦「ソ連邦海軍元帥クズネツォフ」、駆逐艦「ベッストラーシヌイ」、給油船「ドニエプル」、救助曳船SB-406、原子力潜水艦「ヴォルク」
[バルト艦隊]
警備艦「プイルキー」、給油船「オレクマ」
[黒海艦隊]
救助曳船「シャフテル」、給油船「イワン・ブブノフ」
[第2次地中海遠征(2007年12月5日出港、2008年2月3日帰港)]
[北方艦隊]
重航空巡洋艦「ソ連邦海軍元帥クズネツォフ」、大型対潜艦「アドミラル・レフチェンコ」、「アドミラル・チャバネンコ」、給油船「セルゲイ・オシポフ」、救助曳船「ニコライ・チケル」
[黒海艦隊]
親衛ロケット巡洋艦「モスクワ」、給油船「イワン・ブブノフ」
[第3次地中海遠征(2008年12月5日出港、2009年3月2日帰港)]
[北方艦隊]
重航空巡洋艦「ソ連邦海軍元帥クズネツォフ」、大型対潜艦「アドミラル・レフチェンコ」(途中で大型対潜艦「アドミラル・チャバネンコ」と交代)、給油船「セルゲイ・オシポフ」、救助曳船「ニコライ・チケル」
[第4次地中海遠征(2011年12月6日出港、2012年2月16日帰港)]
[北方艦隊]
重航空巡洋艦「ソ連邦海軍元帥クズネツォフ」、大型対潜艦「アドミラル・チャバネンコ」、救助曳船「ニコライ・チケル」、給油船「セルゲイ・オシポフ」、「ヴャージマ」、「カーマ」
[バルト艦隊]
警備艦「ヤロスラフ・ムードルイ」、給油船「レナ」
[黒海艦隊]
警備艦「ラードヌイ」
[第5次地中海遠征(2013年12月17日出港、2014年5月18日帰港]
[北方艦隊]
重航空巡洋艦「ソ連邦海軍元帥クズネツォフ」、大型対潜艦「アドミラル・レフチェンコ」、大型揚陸艦「オレネゴルスキー・ゴルニャク」、救助曳船「ニコライ・チケル」、給油船「セルゲイ・オシポフ」、「カーマ」
(地中海東部で重原子力ロケット巡洋艦「ピョートル・ヴェリキー」と合流)
この他、2004年9月20日から11月1日まで北東大西洋への遠距離航海を行ないました。
[クズネツォフ復帰まで~1990年代末~2004年~]
この時の随伴艦は、重原子力ロケット巡洋艦「ピョートル・ヴェリキー」、ロケット巡洋艦「マルシャル・ウスチーノフ」、駆逐艦「アドミラル・ウシャコーフ」、大型海洋給油船「セルゲイ・オシポフ」、大洋救助曳船「ニコライ・チケル」などで構成されていました。
翌2005年8月にも北東大西洋への遠距離航海を行なっております。
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