ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフは遠洋航海中に外国港を訪れる必要は無い

『タス通信』より
2016年10月27日15時31分配信
【「アドミラル・クズネツォフ」は遠距離航海中に港を訪れる必要など無い】
モスクワ、10月27日/タス通信
地中海へ向かうロシアの航空巡洋艦「アドミラル・クズネツォフ」は、燃料補給或いは物資補充の為に港を訪れる必要など無い。
タス通信のインタビューを受けた専門家は、こう考える。
10月26日、スペイン外務省は、マドリードはモスクワの要請を受け、10月28日から11月2日までセウタ港への3隻のロシア艦船の寄港を許可したが、ロシア側が、この要請を取り下げたと発表した。
ロシア国防省は、セウタへの「アドミラル・クズネツォフ」訪問の許可を求めた事は無いと表明し、ただ1つ考えられる可能性は「個々の艦あるいは支援船の業務寄港である」
当局の公式代理人イーゴリ・コナシェンコフは、ロシアのグループは「必要な物資を完全に確保しており」、全体の状況は「移動計画に何ら影響を与えない」と表明した。
[自立グループ]
「基本的に、それ(註:「アドミラル・クズネツォフ」)は、給油船を伴っているが為、何処へも寄港する必要は有りません。
彼等は、あらゆる友好国の港へ入り、補給する事が出来ます」
元黒海艦隊司令官ウラジーミル・コモエドフ提督はタス通信へ話した。
彼によると、艦の自立性は、先ず第一に艦上の真水の存在により定められ、そして「アドミラル・クズネツォフ」は、淡水化装置により(水が)補給される。
全ロシア海軍支援運動会長ミハイル・ネナシェフはタス通信特派員のインタビューに対し、ロシア海軍の「補助艦隊は充分な力と手段を有しており、このグループが何ヶ月もの間に必要とする全てのものを提供する事が出来る」と語った。
航空母艦は、1ヶ月半の航海の間、随伴給油船の支援無しで8000海里までの距離を進む事が出来ます。
我々の艦について、特に、「アドミラル・クズネツォフ」或いは「ピョートル・ヴェリキー」に関しては、何の問題も有りません。
例えば、錨あるいは樽を降ろして停泊します。
これらは、長期間に渡る自立の為に意図されており、係留する事無くあらゆるポイントで給油します。
全ロシア海軍支援運動会長ミハイル・ネナシェフ
同様の意見を、元太平洋艦隊司令官で現在は黒海艦隊の主任管理検査官の職務に従事しているヴィクトール・フョードロフ提督も表明した。
彼によると、ルート上に物資・技術供給所が不在の場合、軍事船員は全ての必要な物資を自身で持っている-「食料と、そして他の全てを」
「クズネツォフ」艦船グループは、指示された任務の遂行を保障しなければなりません。
彼等は、少なくとも3ヶ月間の航海を行ない、燃料を補給し、更に長く滞在する事も出来ます。
元太平洋艦隊司令官ヴィクトール・フョードロフ提督
[「それは非常に礼儀を欠く」]
フョードロフは、スペインの港へのロシア艦船の寄港は挫折したというメディアの発表を憶測だと言った。
「僕が思いますに、これは憶測であり、そして、それは永遠に続くでしょう。何故なら、これは情報戦ですので」
彼はタス通信特派員のインタビューにおいて表明した。
コモエドフは、西側諸国のポジションは「非常に礼儀を欠く」と言った。
何が拒否されたのか~スペインと他の全てはNATOの指示を受けています~それは海軍の用語では混乱を意味します。
それは非常に礼儀を欠いています。
特に、寄港が外務省のラインで計画、調整される場合には。
何しろ、我々は無料である事を求めているのでは無く、我々は、燃料には金銭を支払うのですから。
元黒海艦隊司令官ウラジーミル・コモエドフ提督
全ロシア海軍支援運動会長は、外国港を訪れる目的は、物資の補充、乗組員の休養、必要に応じた技術的検査の実施の機会に限定されるものでは無いと説明した。
我々の艦船の儀礼寄港の多くは、軍事技術協力の実地デモンストレーション、海軍の協力、様々な国との外交関係の実現です。
全ロシア海軍支援運動会長ミハイル・ネナシェフ
[西側の心配]
北方艦隊艦船グループは、10月15日に大西洋北東部及び地中海への航海へと向かった。
グループは、「アドミラル・クズネツォフ」、重原子力ロケット巡洋艦「ピョートル・ヴェリキー」、大型対潜艦「セヴェロモルスク」と「ヴィツェ・アドミラル・クラコーフ」、更には支援船で構成される。
航海の目的は、ロシア連邦国防省が発表したように、世界の大洋の作戦上重要な海域におけるロシア海軍の存在の確保にある。
にも関わらず、西側は、「アドミラル・クズネツォフ」航空群がシリアの目標へ打撃を与える為に使用されるだろうと見ている。
NATO事務総長イェンス・ストルテンベルグは、同盟が「アレッポへの攻撃の為にロシア空母群が使用される可能性」を懸念していると表明した。
ブリテン国防大臣マイケル・ファロンは、ロシア艦船への技術的支援の可能性に関するスぺインのポジションについての懸念を表明した。
ロシア艦船がセウタに代わり、他の地中海沿岸の何処の港の訪問を計画しているのかは知られていない。
10月27日、マルタ外相ジョージ・ヴェッラは、「アドミラル・クズネツォフ」率いるグループは、ロシア海軍の艦船が頻繁に訪れているマルタへ入港する事は無いと表明した。
「ロシア艦はマルタで燃料を補給しません」
彼は、『タイムズ・オブ・マルタ』紙のサイトに掲載されたインタビューにおいて、こう話し、同国の港への寄港が計画されているという報道を否定した。
[空母アドミラル・クズネツォフ第6次地中海遠征(2016年10月-)]
ロシア海軍北方艦隊の重航空巡洋艦(空母)「アドミラル・クズネツォフ」を中核とする機動部隊は、2016年10月15日にセヴェロモルスクを出航し、地中海東部(シリア沖)へ向かいました。
[ロシア海軍の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフと重原子力ロケット巡洋艦ピョートル・ヴェリキーは地中海遠征へ出発した]
今回の「ロシア海軍空母機動部隊」は、以下の艦で構成されています。
[北方艦隊航空艦グループ]
重航空巡洋艦「アドミラル・フロータ・ソヴィエツカヴァ・ソユーザ・クズネツォフ」
重原子力ロケット巡洋艦「ピョートル・ヴェリキー」
大型対潜艦「セヴェロモルスク」
大型対潜艦「ヴィツェ・アドミラル・クラコーフ」
大型海洋給油船「セルゲイ・オシポフ」
救助曳船「ニコライ・チケル」
10月17日にはノルウェーのトロンヘイム沖を航行していました。

「ロシア海軍空母機動部隊」は、10月19日午前にノルウェー沖の公海上で艦載機の飛行訓練を開始しました。
[ロシア海軍の正規空母アドミラル・クズネツォフの艦載機はノルウェー沖で飛行訓練を始めた]
「ロシア海軍空母機動部隊」はブリテン本土付近へ接近する為、ブリテン海軍は、同部隊を監視する為の艦を派遣しました。
[ブリテン海軍は英本土付近を通過するロシア海軍空母機動部隊を監視する為の軍艦を差し向ける]
[ロシア海軍のアドミラル・クズネツォフ機動部隊は英本土へ接近する]
[ブリテン海軍はロシア海軍空母機動部隊を監視する為に駆逐艦2隻とフリゲート1隻を派遣する]
10月21日、「ロシア海軍空母機動部隊」はラマンシュ海峡(英仏海峡)を通過しました。
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフ部隊はラマンシュ海峡(英仏海峡)を通過した]
10月24日にはポルトガル沖を航行していました。
10月25日にジブラルタル海峡を通過しました。
その後、ロシア航空艦グループは北アフリカのスペイン領セウタへの寄港を予定していたようですが、スペイン側は、土壇場になって寄港許可を出し渋り、これに業を煮やしたロシアは、セウタへの寄港を諦めました。
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフ部隊はスペイン領セウタへの寄港を取りやめた]
更には、地中海中部のマルタも、自国港内でのロシア艦船への燃料補給を認めない事を表明しました。
このような状況にも関わらず、今回、タス通信のインタビューを受けた3名の元ロシア海軍士官は、そもそも「アドミラル・クズネツォフ」は燃料補給の為に外国港を訪れる必要は無いと断言しています。
ロシア国家院(下院)国防委員長ウラジーミル・コモエドフ(退役大将)

『全ロシア海軍支援運動』会長ミハイル・ネナシェフ(退役1等海佐)

黒海艦隊主任管理検査官ヴィクトール・フョードロフ(退役大将)

因みに、前回の「アドミラル・クズネツォフ」の地中海遠征では、地中海東部へ到着する前に、随伴の給油船「セルゲイ・オシポフ」がアルジェリアのアルジェ港へ寄港し、物資を調達しています。

これまでの「アドミラル・クズネツォフ」の5回に渡る地中海遠征においても、同艦自身が外国の港へ寄港した事は極めて少ないです。
(最近では、シリアとキプロスくらい)
今回、「アドミラル・クズネツォフ」は、艦上戦闘機Su-33、艦上戦闘機MiG-29KR/KUBR、艦上攻撃ヘリコプターKa-52Kなどを搭載しています。
MiG-29KR/KUBRとKa-52Kは、今回の地中海遠征で初めて搭載された機体です。
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフへ新たな艦載機・艦上戦闘機MiG-29Kと艦上ヘリコプターKa-52Kが加わる]
「スモレンスク赤旗授与・ソ連邦英雄2度受賞ボリス・サフォーノフ記念第279独立艦上戦闘機航空連隊」の艦上戦闘機Su-33は、最近になって地上攻撃能力が付与されました。
[ロシア海軍航空隊の艦上戦闘機Su-33は地上攻撃の為の新たなシステムを装備する]
第100独立艦上戦闘機航空連隊の艦上戦闘機MiG-29KR/KUBRは、2015年末までに24機が納入されており、今年8月8日に初めて「アドミラル・クズネツォフ」へ着艦しました。
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフへ初めて艦上戦闘機MiG-29KRが着艦した]
「アドミラル・クズネツォフ」には、艦上戦闘機MiG-29KR/MiG-29KUBRを運用する為の新たな慣性航法システムが装備されています。
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフは艦上戦闘機MiG-29K/KUBを運用する為の新型システムを搭載する]
艦上攻撃ヘリコプターKa-52K「カトラン」は、数機の試作機が「アドミラル・クズネツォフ」に搭載されています。
[ロシア海軍の艦上攻撃ヘリコプターKa-52Kカトランは空母アドミラル・クズネツォフへ搭載される]
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