ロシア海軍空母アドミラル・クズネツォフの艦上戦闘機Su-33の海中落下事故(2016年12月5日)・続報
- カテゴリ:艦上戦闘機Su-33

『中央海軍ポータル』(フロートコム)より
2016年12月5日17時55分配信
【専門家:「アドミラル・クズネツォフ」のSu-33パイロットは航空機を救う事は出来なかった】
12月5日・月曜日、巡洋艦「アドミラル・クズネツォフ」の航空拘束装置のケーブルが切断されたが故の事故で艦上多目的戦闘機Su-33が失われた。
『中央海軍ポータル』(フロートコム)は、航空艦を指揮した経験を持つロシア海軍士官から、同様の状況において艦の乗組員とパイロットは、どのように行動しなければならないのかを聞いた。
匿名を希望する専門家によると、飛行士は唯一正しい行動を取った。
「似たようなケースは2005年にも有りました、
それは、射出による緊急脱出を除き、飛行士は他には何も実行できない事を示しております」
対談者は説明した。
実際には、航空拘束装置のケーブルが切断された事により、航空機は、再び離艦する為の十分な速度へ達する事が出来なかった。
「航空機の速度は、着艦時には時速約200kmですが、ケーブルが切断されれば、それは時速160kmか、それ以下に減速されます。
航空機は、このようなスピードでは再び離艦は出来ません。
従いまして、ケーブルを切断した航空機の命運は尽き、勇敢なる飛行士は射出により緊急脱出するしか無いのです」
専門家は強調した。
[アメリカの航空母艦において航空拘束装置のケーブルが切断された際に乗組員が見舞われた非常事態]
公開情報によると、同様の事故は、2003年にアメリカ合衆国海軍の航空母艦「ジョージ・ワシントン」で起こった。
その後、戦闘機F/A-18Eホーネットは艦上から落下し、切断されたケーブルにより数名の乗組員が負傷した。
専門家が説明したように、航空拘束装置のケーブルは、各々の着艦の後に検査され、交換は摩耗状態に依存する。
「摩耗の度合を考慮すれば、一定の割合でケーブルを交換すべきですね」
彼は締め括った。
「アドミラル・クズネツォフ」の航空拘束装置には合計で4本のケーブルが有る。
航空機の着艦の際、それは12cm持ち上がる。
1本目のケーブルは、飛行甲板の端から46メートルの距離が有り、そこから互いに12メートル離れて2本のケーブルが有り、更に4本目のケーブル~予備~が有る。
パイロットは着艦を行なう際、航空機の特殊な制動鉤(フック)へ2本目のケーブルを引っ掛ける事が必要であり、そして3本目は尚の事良い。
飛行士は引っ掛ける時まで燃料を排出する事は無く、必要な場合には再び機体を空中へ上げる。
「アドミラル・クズネツォフ」における同様の事故は、2005年秋に大西洋北部で起こった。
戦闘機Su-33の着艦時に航空拘束装置のケーブルが切断され、航空機は甲板から飛び立ったが、海に沈んだ。
パイロットは射出による緊急脱出に成功した。
戦闘機が引き揚げられる事は無かった。
2016年11月13日、ロシアの「アドミラル・クズネツォフ」航空団の戦闘機MiG-29KRは、技術的不具合が故の事故で失われた。
12月5日・月曜日、航空拘束装置の(ケーブル)切断が故の事故で、更に1機の艦上多目的戦闘機Su-33が失われた事が知られるようになった。
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ロシア海軍の艦上戦闘機Su-33は、北方艦隊の「スモレンスク赤旗授与・ソ連邦英雄2度受賞ボリス・サフォーノフ記念第279独立艦上戦闘機航空連隊」にのみ配備されており、重航空巡洋艦「アドミラル・クズネツォフ」を母艦としています。
(普段はセヴェロモルスク-3飛行場に駐留)
現在の総保有機は21機であり、少なくとも16機程度が稼働状態に在ります。
(機体番号60、62、66、67、68、71、76、77、78、79、80、84、85、86、87、88)

稼動状態に在る16機のSu-33は寿命延長近代化改修が行なわれており、少なくとも2025年までは運用されることになります。
[ロシア北方艦隊艦上戦闘機隊は近代化改修されたSu-33を受け取った]
[ロシア海軍航空隊の艦上戦闘機Su-33は2025年まで現役に留まる]
第279連隊のSu-33は、2016年4月26日から6月24日までクリミア半島サキ飛行場の艦上機訓練施設「ニートカ」で「発着艦」訓練を行ないました。
[ロシア海軍航空隊の艦上戦闘機Su-33はクリミア半島の訓練複合体ニートカでの発着訓練を完了した]
その後、7月1日からは母艦「アドミラル・クズネツォフ」での飛行訓練を行ないました。
[ロシア海軍の正規空母アドミラル・クズネツォフの艦載機の飛行訓練が始まった]
[ロシア海軍の正規空母アドミラル・クズネツォフの艦載機の発着艦訓練が始まった]
重航空巡洋艦「アドミラル・クズネツォフ」を中核とするロシア海軍空母機動部隊は、2016年10月15日に地中海へ向けて出航し、現在はシリア沖に展開しています。
Su-33は、10機程度が搭載されています。
[空母アドミラル・クズネツォフ第6次地中海遠征(2016年10月-)]
11月15日、「アドミラル・クズネツォフ」の艦上戦闘機Su-33は、初めてシリアへの空爆作戦へ参加しました。
[ロシア海軍の正規空母アドミラル・クズネツォフの艦載機は初めてシリア領内のテロ組織への攻撃へ参加した]
Su-33はイドリブ県の『アル=ヌスラ戦線』の施設を爆撃し、3名の野戦司令官を含む30名以上の戦闘員が死亡しました。
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフの艦上戦闘機Su-33の空爆によりアル=ヌスラ戦線の戦闘員30名以上が死亡した]
11月17日、ロシア航空宇宙軍の戦略爆撃機がシリア領内のテロ組織『イスラム国』と『アル=ヌスラ戦線』の施設へ有翼ミサイルKh-101を発射した事に呼応して、再び「アドミラル・クズネツォフ」のSu-33もシリア領内を爆撃しました。
[ロシア海軍の正規空母アドミラル・クズネツォフの艦載機は再びシリアのテロ組織を空爆した]
元々は空対空専門のSu-33でしたが、今回の地中海遠征へ出発する前に、地上爆撃用の特殊計算サブシステムSVP-24-33が装備されました。
[ロシア海軍航空隊の艦上戦闘機Su-33は地上攻撃の為の新たなシステムを装備する]
[ロシア海軍の艦上戦闘機Su-33は爆撃精度を向上させる為のシステムを装備している]
11月20日頃、「アドミラル・クズネツォフ」の艦載機(8機のSu-33と1機のMiG-29KR)は、初めてシリアのフマイミーン航空基地(ラタキア郊外)へ着陸しました。
その後、艦載機は「アドミラル・クズネツォフ」へ戻りました。
[ロシア海軍の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフの艦載機は初めてシリアのフマイミーン基地へ着陸した]
そして12月5日、1機のSu-33が「アドミラル・クズネツォフ」へ着艦した際、着艦拘束装置のケーブルを切ってしまった為に停止できず、海中に落ちました。
パイロットは脱出に成功しました。
[ロシア海軍の艦上戦闘機Su-33は地中海東部(シリア沖)で空母への着艦に失敗して海中へ落ちた]
11月13日には艦上戦闘機MiG-29Kが墜落しており、今回の地中海遠征において2度目の事故です。
[地中海東部のロシア海軍空母アドミラル・クズネツォフで艦上戦闘機MiG-29Kの墜落事故が発生した]
[ロシア海軍空母アドミラル・クズネツォフの艦上戦闘機MiG-29KRの墜落事故(2016年11月13日)・続報]
記事中でも触れられていますが、11年前の2005年9月5日、大西洋上に居た「アドミラル・クズネツォフ」において、全く同様の事故が起こっています。
今回の記事に登場する「航空艦を指揮した経験を有するロシア海軍士官」(元「アドミラル・クズネツォフ」艦長?)は、着艦拘束装置のケーブルが切れた理由について直接には言及していませんが、
「ケーブルは毎回の着艦後に検査される」
「ケーブルの交換は摩耗の具合に依る」
「一定の割合(間隔)でケーブルを交換すべき」
と言っております。
つまり、これらの事を怠った為に事故が起こった可能性が高いでしょう。
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