正規空母アドミラル・クズネツォフを中核とする空母機動部隊のシリア遠征の経験はロシア海軍の新型艦の設計と建造へフィードバックされる




『ロシア通信社ノーボスチ』より
2017年2月9日13時2分配信
【「アドミラル・クズネツォフ」のシリアへの航海の経験は艦の建造の際に考慮される】
航空母艦「アドミラル・クズネツォフ」(セヴェロモルスク)、2月9日-ロシア通信社ノーボスチ
ロシア海軍の航空母艦「アドミラル・クズネツォフ」と他の種類の艦のシリアへの航海の経験は、新たな艦の設計と建造において考慮される。
木曜日、シリアから戻ってきた船員及び飛行士の歓迎会中に(ロシア)海軍総司令官ウラジーミル・コロリョーフ大将は記者団へ話した。
「新たな艦を設計する際、我々は考慮に入れます~この作業は既に進められています。
全ては、航空艦グループから直接に航空隊を戦闘へ使用した今回の航海と関連付けられます」
彼は話した。
総司令官は、新たな艦船の作成には、更に「海上での空母グループの全ての種類の保護と防衛」が考慮されると付け加えた。
[重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフの経歴(ロシア国防省公式サイト)]
[空母アドミラル・クズネツォフ艦長セルゲイ・アルタモノフ]
[空母アドミラル・クズネツォフ第6次地中海遠征(2016年10月-)]
ロシア海軍北方艦隊の重航空巡洋艦(空母)「アドミラル・クズネツォフ」を中核とする機動部隊は、2016年10月15日にセヴェロモルスクを出航し、地中海東部(シリア沖)へ向かいました。
[ロシア海軍の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフと重原子力ロケット巡洋艦ピョートル・ヴェリキーは地中海遠征へ出発した]
10月17日にはノルウェーのトロンヘイム沖を航行していました。

「ロシア海軍空母機動部隊」は、10月19日午前にノルウェー沖の公海上で艦載機の飛行訓練を開始しました。
[ロシア海軍の正規空母アドミラル・クズネツォフの艦載機はノルウェー沖で飛行訓練を始めた]
「ロシア海軍空母機動部隊」はブリテン本土付近へ接近する為、ブリテン海軍は、同部隊を監視する為の艦を派遣しました。
[ブリテン海軍は英本土付近を通過するロシア海軍空母機動部隊を監視する為の軍艦を差し向ける]
[ロシア海軍のアドミラル・クズネツォフ機動部隊は英本土へ接近する]
[ブリテン海軍はロシア海軍空母機動部隊を監視する為に駆逐艦2隻とフリゲート1隻を派遣する]
10月21日、「ロシア海軍空母機動部隊」はラマンシュ海峡(英仏海峡)を通過しました。
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフ部隊はラマンシュ海峡(英仏海峡)を通過した]
10月24日にはポルトガル沖を航行していました。
10月25日にジブラルタル海峡を通過しました。
その後、ロシア航空艦グループは北アフリカのスペイン領セウタへの寄港を予定していたようですが、スペイン側は、土壇場になって寄港許可を出し渋り、これに業を煮やしたロシアは、セウタへの寄港を諦めました。
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフ部隊はスペイン領セウタへの寄港を取りやめた]
更には、地中海中部のマルタも、自国港内でのロシア艦船への燃料補給を認めない事を表明しました。
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフは遠洋航海中に外国港を訪れる必要は無い]
ロシア海軍空母部隊は、10月27日から29日に掛けてアルジェリア沖で支援船(給油船「セルゲイ・オシポフ」、「ドゥブナ」、「カーマ」)から洋上補給を行ないました。

[ロシア国防相セルゲイ・ショイグはロシア海軍空母部隊の地中海遠征について語った]
11月3日にはアルジェリア東海岸沖で演習を行ないました。

[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフはアルジェリア沖に居る]
その後、ロシア海軍空母部隊は地中海を東へ進みました。
11月3日にセヴァストーポリを出航し、11月4日にボスポラス海峡を通過した黒海艦隊の警備艦(フリゲート)「アドミラル・グリゴロヴィチ」もロシア海軍空母機動部隊へ加わりました。
[ロシア海軍黒海艦隊の最新警備艦アドミラル・グリゴロヴィチはシリア沖へ向かった]
ロシア海軍空母機動部隊は、11月9日にはロードス島の南東海域で訓練飛行を実施しました。
11月10日~15日、11月17日~22日の期間には、キプロス島とシリアの間の海域で訓練飛行とミサイル発射を実施します。
[ロシア海軍の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフ航空隊はシリアのアレッポ空爆を準備する]
11月9日、ロシア海軍空母機動部隊の大型対潜艦「セヴェロモルスク」と「ヴィツェ・アドミラル・クラコーフ」は、接近するネーデルラント海軍の潜水艦(ワルラス級)を発見しました。
[地中海東部のロシア海軍空母部隊の大型対潜艦は接近するオランダの潜水艦を発見した]
11月10日にはキプロス島南東海域へ進出し、シリア上空へ作戦の事前調査の為に艦上戦闘機Su-33、艦上戦闘機MiG-29KR/KUBRを飛ばしました。
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフの艦載機は作戦行動の事前調査の為にシリア上空を飛行する]

ロシア海軍空母機動部隊は11月12日までにシリア沖へ到着し、艦載機の飛行訓練を始めました。
[重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフと重原子力ロケット巡洋艦ピョートル・ヴェリキーを中核とするロシア海軍空母機動部隊はシリア沖へ到着した]
11月13日には艦上戦闘機MiG-29Kが墜落しました。
[地中海東部のロシア海軍空母アドミラル・クズネツォフで艦上戦闘機MiG-29Kの墜落事故が発生した]
[ロシア海軍空母アドミラル・クズネツォフの艦上戦闘機MiG-29KRの墜落事故(2016年11月13日)・続報]
11月15日、「アドミラル・クズネツォフ」の艦載機(艦上戦闘機Su-33)は、初めてシリアへの空爆作戦へ参加しました。
[ロシア海軍の正規空母アドミラル・クズネツォフの艦載機は初めてシリア領内のテロ組織への攻撃へ参加した]
同じ11月15日には、フリゲート「アドミラル・グリゴロヴィチ」もシリアへ有翼ミサイルを発射しています。
[ロシア海軍黒海艦隊の最新警備艦アドミラル・グリゴロヴィチはシリア領内のテロ組織へ巡航ミサイルを発射した]
「スモレンスク赤旗授与・ソ連邦英雄2度受賞ボリス・サフォーノフ記念第279独立艦上戦闘機航空連隊」のSu-33は、2016年に地上爆撃用の特殊計算サブシステムSVP-24を装備しています。
[ロシア海軍航空隊の艦上戦闘機Su-33は地上攻撃の為の新たなシステムを装備する]
[ロシア海軍の艦上戦闘機Su-33は爆撃精度を向上させる為のシステムを装備している]
Su-33はイドリブ県の『アル=ヌスラ戦線』の施設を爆撃し、3名の野戦司令官を含む30名以上の戦闘員が死亡しました。
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフの艦上戦闘機Su-33の空爆によりアル=ヌスラ戦線の戦闘員30名以上が死亡した]
11月17日、ロシア航空宇宙軍の戦略爆撃機Tu-95MSがシリア領内のテロ組織『イスラム国』と『アル=ヌスラ戦線』の施設へ有翼ミサイルを発射した事に呼応して、再び「アドミラル・クズネツォフ」の艦上戦闘機Su-33もシリア領内を爆撃しました。
[ロシア海軍の正規空母アドミラル・クズネツォフの艦載機は再びシリアのテロ組織を空爆した]
11月20日頃、「アドミラル・クズネツォフ」の艦載機(8機のSu-33と1機のMiG-29KR)は、初めてシリアのフマイミーン航空基地(ラタキア郊外)へ着陸しました。
その後、艦載機は「アドミラル・クズネツォフ」へ戻りました。
[ロシア海軍の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフの艦載機は初めてシリアのフマイミーン基地へ着陸した]
12月5日、1機のSu-33が「アドミラル・クズネツォフ」へ着艦した際、着艦拘束装置のケーブルを切ってしまった為に停止できず、海中に落ちました。
パイロットは脱出に成功しました。
[ロシア海軍の艦上戦闘機Su-33は地中海東部(シリア沖)で空母への着艦に失敗して海中へ落ちた]
[ロシア海軍空母アドミラル・クズネツォフの艦上戦闘機Su-33の海中落下事故(2016年12月5日)・続報]
「アドミラル・クズネツォフ」を中核とする空母機動部隊は、その後もシリアのタルトゥース沖に留まりました。
[空母アドミラル・クズネツォフを中核とするロシア海軍空母群は完全に自立して行動している]
「アドミラル・クズネツォフ」を中核とする機動部隊は、2017年の新年を地中海で迎えました。
[ロシア海軍北方艦隊の空母アドミラル・クズネツォフは地中海で新年(2017年)を迎える]
シリアではロシアとトルコ主導による停戦が成立し(2016年12月30日から発効)、国連安全保障理事会も、これを支持しています。
これを受け、ロシア海軍空母部隊は、2017年1月6日以降にシリア沖を離れる事になりました。
[ロシア海軍北方艦隊の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフと重原子力ロケット巡洋艦ピョートル・ヴェリキーは2017年1月に地中海を去る]
[ロシア海軍の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフはシリア沖を去る]
ロシア海軍空母部隊は、1月10日にはクレタ島西方海域へ到達しました。
[ロシア海軍北方艦隊の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフは地中海東部を去る]

1月11日にはリビア沖(おそらくはリビア東部沖)へ到達した「アドミラル・クズネツォフ」を、リビア国民軍司令官ハリーファ・ベルカシム・ハフタル元帥が訪れました。
[リビア国民軍司令官はロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフを訪れた]
1月17日の時点では地中海西部に居ました。
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフは地中海西部に居る]
1月20日にジブラルタル海峡を通過して大西洋へ入りました。
[重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフを中核とするロシア海軍航空打撃艦グループはジブラルタル海峡を通過して大西洋へ出た]
ロシア海軍空母部隊はポルトガル沿岸を北上し、1月23日には同国沿岸海域を離脱しました。
[重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフを含むロシア海軍航空打撃艦グループはポルトガル沖を去った]
1月24日の午後にはラマンシュ海峡(英仏海峡)へ入りました。
[重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフを含むロシア海軍航空打撃艦グループはラマンシュ海峡(英仏海峡)へ入った]

1月25日にはラマンシュ海峡(英仏海峡)から北海へ入りました。
[重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフを含むロシア海軍航空打撃艦グループは北海へ入った]
1月30日にはノルウェー沖を北上していました。

[正規空母アドミラル・クズネツォフ率いるロシア海軍空母機動部隊はノルウェー沖を北上している]
ロシア海軍空母部隊は1月31日~2月1日にルイバチー半島の東方海域で実弾射撃演習を行なったようです。
[重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフを伴うロシア海軍航空打撃艦グループは帰投前にバレンツ海で演習を行なう]
2月3日、「アドミラル・クズネツォフ」航空隊は、セヴェロモルスク-3飛行場へ戻りました。
[ロシア海軍の正規空母アドミラル・クズネツォフの艦載機はセヴェロモルスク-3飛行場への移動を開始した]
2月8日、ロシア海軍空母部隊はセヴェロモルスク泊地へ帰港しました。
[ロシア海軍の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフと重原子力ロケット巡洋艦ピョートル・ヴェリキーはシリア沖から北方艦隊基地セヴェロモルスクへ帰投した]
帰港から一夜明けた2月9日、「アドミラル・クズネツォフ」の艦内(航空機格納庫)でロシア空母部隊将兵の歓迎式典が開催されました。
[シリア沖から帰投したロシア海軍の正規空母アドミラル・クズネツォフで歓迎式典が開催された]
「アドミラル・クズネツォフ」は、翌2月10日に本来の「母港」であるムルマンスク北方の第35艦船修理工場の埠頭へ戻りました。
[シリア沖から凱旋したロシア海軍の正規空母アドミラル・クズネツォフはムルマンスクの母港へ戻る]
今回のシリア遠征において、「アドミラル・クズネツォフ」は、艦上戦闘機Su-33、艦上戦闘機MiG-29K/MiG-29KUB、救難ヘリコプターKa-27PS、対潜ヘリコプターKa-27PL、輸送戦闘ヘリコプターKa-29、早期警戒ヘリコプターKa-31、艦上攻撃ヘリコプターKa-52Kを合計で約40機程度搭載しました。
[ロシア海軍の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフは40機程度の搭載機を有する]
「アドミラル・クズネツォフ」航空隊は、2016年11月中旬から12月末頃までにシリアのテロ組織(イスラム国やアル=ヌスラ戦線)の施設1252を破壊しました。
[ロシア海軍の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフ航空隊は1252のシリアのテロリスト施設を破壊した]
北方艦隊広報部発表によると、「アドミラル・クズネツォフ」航空隊は、2016年11月8日から約2ヶ月間に、420回の戦闘飛行(内117回は夜間)と、750回の捜索救助、航空輸送支援の為の飛行を行なったとの事です。
「420回の戦闘飛行」は、艦上戦闘機がシリア上空を飛行した回数であり、これ以外にも艦載ヘリコプターが750回のフライトを行なっていたという事でしょう。
そして、ロシア海軍総司令官ウラジーミル・コロリョーフ提督は、「アドミラル・クズネツォフ」の初の実戦参加となった今回の北方艦隊航空打撃艦グループのシリア遠征の経験が、今後の新型艦の設計と建造へフィードバックされると述べました。
コロリョーフ提督は、具体的な艦のタイプには全く触れていませんが、今後、ロシア海軍が建造を計画している新型艦には、「アドミラル・クズネツォフ」及び「ピョートル・ヴェリキー」の後継艦も存在します。
重航空巡洋艦「アドミラル・クズネツォフ」の後継となる将来原子力航空母艦は、予備設計が進められています。
[ロシア将来航空母艦]
艦種は「駆逐艦」とされていますが、実質的には「ピョートル・ヴェリキー」(プロジェクト11442)の後継となる将来原子力駆逐艦「リデル」の設計も進められています。
[ロシア将来駆逐艦プロジェクト「リデル」]
コロリョーフ提督は、特に「海上での空母グループの全ての種類の保護と防衛」について考慮すると述べているので、対空・対潜・対魚雷防衛能力などが重視されるようです。
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