クルイロフ国立科学センターはロシア海軍の新型艦の為の風洞及び水槽試験を行なっている
- カテゴリ:ロシアの造船業


『ロシア連邦国防省公式サイト』より
ロシア海軍情報供給部発表
2017年6月2日0時0分配信
【ロシア海軍の為の新世代戦闘艦の作成には独自の技術が用いられている】
造船プログラムの枠組みにおけるロシア海軍の為の新世代戦闘艦の作成と設計には、『クルイロフ国立科学センター』(サンクトペテルブルク)の新たな技術が用いられている。
特に、将来戦闘艦の大規模スケールモデルの空気力学試験の為、『クルイロフセンター』はユニークな風洞空気力学設備を開発している。
空気力学試験は、海軍の将来艦及び個々の施設と駐留インフラストラクチュアの風荷重と空力弾性の安定性の確定と、設計段階で作られたこれらのパラメータの評価を可能にし、艦の設計に必要な変更をタイムリーに加え、なおかつ、将来的に海軍の艦と支援船の建造後の段階で大きな労力と費用の掛かる改正を避ける事を可能にする。
これとは別に、風洞空気力学設備の助力による試験は、その艦上に海軍航空隊を載せる事が可能な様々なクラスの戦闘艦の設計にも必要である。
『クルイロフセンター』の風洞空気力学設備は、最先端科学技術と自前の空気力学研究室での長年に渡る作業の経験から実現した。
これは、空気の境界層のシミュレートと、大規模な模型試験における良質な詳細な検討、風荷重の判定精度の著しい向上を可能にするロシアで唯一の設備である。
更に、ロシア海軍の大きな排水量の将来戦闘艦の殆ど全てのクラスのモデルは、『クルイロフセンター』の世界最大の深水槽(水槽は、全長600m及び670mの2つの部分から成る)で試験が実施される。
水槽は、水上艦(船)及び潜水艦の深海及び表面付近の条件下での曳航及び自走試験の為、更には、スクリュー推進軸及び個々の推進複合体の試験の為に意図されている。
それと同時に、深水槽は、ポリマー添加剤を使用する事により、自然条件下での将来艦の船体を覆う水流をシミュレートできる。
浅い吃水を有する海軍の将来艦船のモデルの試験の為には、荒波の条件を作成できる浅水槽が使用される。
ロシア海軍の為の砕氷クラスの戦闘艦、北極圏の砕氷哨戒艦の建造開始に関連し、北極で使用する為の将来モデルと設計された艦船は、『クルイロフセンター』の正確に結氷条件下での運航を正確に再現する事が可能な100mの氷水槽で試験が行なわれる。
氷水槽は、工学施設との連携プロセスによる最大限の可視化の性質を有する。
この為、水槽の底には、下からの映像と写真の撮影が可能な大きな観測窓が内蔵されている。
また、水槽の両側には2つの観測回廊が有る:1つは上方からモデルの動きを直接観察する為、もう1つは水面の横から。
このように、海軍総司令部の要望に沿った砕氷クラスの将来戦闘艦は、既に設計段階に在り、艦船の船体の全体的な氷荷重の計算を行なう事を可能にし、氷荷重を低減する技術を開発し、ロシア海軍の砕氷船及び砕氷クラスの艦の船体の設計技術を効果的に向上させる事が出来る。
現在、風洞空気力学設備、深水槽と氷水槽では、既に海軍の為に設計された艦船の試験が行なわれている。
【『クルイロフ国立科学センター』公式サイト】
今回のロシア海軍広報部発表で取り上げられている『クルイロフ国立科学センター』は、ロシア海軍向けなどの艦船の形状を研究する機関であり、艦船設計局とは違います。
『クルイロフ国立科学センター』には実験用の風洞や大型水槽などが有り、ここで模型を使って様々な艦船の形状の実験を行ない、今後建造されるロシア海軍の新型艦の大まかな外形を決定して艦船設計局へ提示し、設計局は、これを基にして実際に建造される艦の設計を行ないます。
いわば、『中央航空流体力学研究所』(ツアギ)の海上版とでもいうべき機関です。
『クルイロフ国立科学センター』は実験結果を基にして次世代艦の大まかな形状を決め、概念設計案として仕上げます。
この概念設計案をベースにして艦船設計局が艦を設計します。
最近では、ロシア海軍の次世代水上艦~航空母艦、駆逐艦、汎用ヘリコプター揚陸艦の概念設計案3タイプをを作成しています。
多目的重空母「シトルム」

駆逐艦「シクヴァル」

汎用揚陸艦「ラヴィーナ」

無論言うまでも無く、これらの概念設計案は、風洞や水槽などの実験施設での実験を重ねて作られたものです。
もちろん、復元性、耐航性、航洋性なども全て計算された上で作られています。
最近では、北極圏の結氷条件下での運用を前提にしたロシア海軍の新型艦船の為の各種試験を行なう機会が増えています。
[ロシア海軍の為のプロジェクト23550砕氷哨戒艦イワン・パパ―ニンはサンクトペテルブルクで起工された]
[新世代砕氷船イリヤー・ムーロメツは2017年秋にロシア海軍へ引き渡される]
[ロシア海軍の為の新たな北極圏複合補給艦プロジェクト03183の開発は2018年までに完了する]
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