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新型砕氷船イリヤー・ムーロメツ、ロシア海軍へ就役(2017年11月30日)

2017年11月30日、プロジェクト21180砕氷船「イリヤー・ムーロメツ」はロシア連邦海軍へ就役しました。


『ロシア通信社ノーボスチ』より
2017年11月30日11時17分配信
【最新のディーゼルエレクトリック砕氷船「イリヤー・ムーロメツ」は(ロシア)海軍へ引き渡された】
サンクトペテルブルク、11月30日-ロシア通信社ノーボスチ

ロシア海軍の為に建造された新世代ディーゼルエレクトリック砕氷船プロジェクト21180「イリヤー・ムーロメツ」の(海軍)旗掲揚式典がサンクトペテルブルクで開催された。
『ロシア通信社ノーボスチ』特派員は現地より報告した。

「総司令部は、定例通りに契約に厳密に沿って我々が船を受領した事に満足しております。
30年以上に渡り、海軍はこのようなクラスの船を受領していませんでした」
海軍副総司令官(軍備担当)ヴィクトール・ブルスクは式典においてこう話した。

砕氷船「イリヤー・ムーロメツ」『アドミラルティ造船所』で2015年4月23日に起工され、2016年6月に進水した。
同船は海軍の北極圏グループへ加わる。
その全長は85メートル、幅20メートル、吃水7メートル、速力15ノット、砕氷能力は1メートル。
砕氷船の乗組員は32名で構成される。

プロジェクト21180は、新たな原理の電気動力と現代的な発電装置を有する新世代砕氷船である。
360度の回転が可能な砕氷船の円筒スクリュー装置は船体表面の外部に有り、「イリヤー・ムーロメツ」が如何なる方向へ移動し、素早く航路を転換する事を可能にする。

この多機能船は、艦船を曳航できる事を含め、結氷条件下での海軍戦力の展開を助ける。
これに加え、「イリヤー・ムーロメツ」は、船倉及び最上甲板のコンテナで貨物を輸送し、水路調査を行ない、更には救助活動へ参加できる。

船は、事故施設の火災の消火、流出した油の処理あるいは揚陸部隊の移送に使用できる。
砕氷船は26トンの貨物積載クレーンとヘリコプター発着場を船首に装備する。



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現在のロシアは、原子力砕氷船「アルクチカ」型を筆頭に各種砕氷船を保有していますが、これらの砕氷船ロシア海軍の所属ではありません。

ソ連邦海軍時代には、プロジェクト97砕氷船が8隻建造され、1960年から1970年に掛けて就役しました。
プロジェクト97『アドミラルティ造船所』で建造されました。

先代の砕氷船「イリヤー・ムーロメツ」(プロジェクト97K)は1965年12月にソ連海軍へ納入され、太平洋艦隊へ配備されました。
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ソ連邦解体後の1993年6月にロシア海軍から除籍されました。

初代「イリヤー・ムーロメツ」が姿を消してから20年以上経った2015年4月23日、プロジェクト21180砕氷船の1番船として新たな「イリヤー・ムーロメツ」が起工されました。
[ロシア海軍の為の新型砕氷船イリヤー・ムーロメツは2015年4月23日に起工される]
[ロシア海軍の新型砕氷船イリヤー・ムーロメツは起工された]


2代目「イリヤー・ムーロメツ」は2016年6月10日に進水しました。
[ロシア海軍の新型砕氷船イリヤー・ムーロメツは進水した]


進水後、『アドミラルティ造船所』の岸壁で艤装工事が進められ、係留試験が行なわれました。
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「イリヤー・ムーロメツ」は、2017年7月22日から洋上試験~工場航行試験の第1段階を開始しました。
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第1段階試験は8月29日に終了しました。
[ロシア海軍の新型砕氷船イリヤー・ムーロメツは洋上試験の第1段階を終えた]

続いて9月上旬まで工場航行試験の第2段階が実施されました。
『ロシア通信社ノーボスチ』より
2017年9月14日1時7分配信
【最新砕氷船「イリヤー・ムーロメツ」は工場試験弾2段階を実行した】


これで工場航行試験は完了し、10月4日から最終洋上試験である国家受領試験が始まる予定でしたが、1日遅れて10月5日にサンクトペテルブルクを出航しました。
[ロシア海軍の新型砕氷船イリヤー・ムーロメツは2017年10月4日に最終洋上試験を開始する]
[ロシア海軍の新型砕氷船イリヤー・ムーロメツの最終洋上試験はバルト海で始まった]


「イリヤー・ムーロメツ」の国家受領試験は11月下旬に完了し、2017年11月30日にサンクトペテルブルク『アドミラルティ造船所』ロシア海軍旗の初掲揚式典、即ちロシア海軍への就役式典が開催されました。
同時に造船所からロシア海軍への納入証書への署名も行われたようです。
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今後、「イリヤー・ムーロメツ」北方艦隊基地へ回航されます。

2012年頃からロシア海軍北極圏での活動を活発化させておりますが、この海域での活動には砕氷船は必要不可欠です。

これまではロシア海軍(北方艦隊)の艦船が北極圏の結氷海域を航行する際は、アトムフロート(ロスアトム傘下)の原子力砕氷船の助けを借りていましたが、アトムフロート原子力砕氷船は他にも仕事があり(民間船舶の先導など)、海軍が何時でも自由に利用できるわけではありません。

そこで、何時でも自由に使える自前の砕氷船が建造される事になりました。

ただ、現在の所、「イリヤー・ムーロメツ」の同型船の建造予定は無く、その代わりに砕氷能力を有する哨戒艦の建造が進められています。
[プロジェクト23550砕氷哨戒艦イワン・パパ―ニンは2020年にロシア海軍へ引き渡される]
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