ロシア海軍のプロジェクト971原子力巡洋潜水艦(アクラ級)へ650mm魚雷が復活する

『インタファクス-軍事ニュース出張所(AVN)』より
2018年3月25日10時31分配信
【プロジェクト971原子力潜水艦は、それぞれ航空母艦を撃沈可能な魚雷兵器を有する-製造者】
モスクワ、3月25日、インタファクス-AVN
コンツェルン『ギードロプリボール』(水中機器)が製造する口径650mmの6576A型魚雷は、世界で最も強力である。
日曜日、同社の将来計画部長グレブ・チーホノフは述べた。
「これに比類するものなど、何処にも有りません。
この製品1つで、航空母艦を撃沈できます」
彼はテレビ局『ズヴェズダー』の生放送で話した。
「西側には、口径533mmより大きいものは有りません。
我々が作成するこの6576A魚雷の特性はユニークです~高速、長射程、爆薬を積んでいます」
グレブ・チーホノフは話した。
「3本の魚雷を含むワンセットは、1つの水中音響機器に対抗します」
彼は説明した。
「従いまして、この潜水艦(プロジェクト971)は、機雷複合体~機雷-魚雷、機雷-ロケットの課題を解決します。
これらの複合体の開発は、我がコンツェルンで展開しております」
彼は付け加えた。
プロジェクト971潜水艦の魚雷弾数は40本から成り、しかも、その半分は口径650㎜で増強される。
グレブ・チーホノフ氏が出演したテレビ局『ズヴェズダー』の番組(北方艦隊のプロジェクト971原子力巡洋潜水艦の特集)
この動画で9:18辺りから登場する人物がグレブ・チーホノフ氏です。
口径650mmの6576型魚雷「キート」の開発は1969年から始まり、1975年から発射試験が行なわれ、1976年11月19日に軍備採用されました。
6576型魚雷は、650mm魚雷発射管を装備するソ連海軍のプロジェクト671RT/RTM(ヴィクターII/III級)原子力潜水艦に搭載されました。
この他、1980年代から就役した第3世代原子力潜水艦(プロジェクト949/949A、プロジェクト945、プロジェクト971)にも当初は搭載されました。
1982年には第3世代原子力潜水艦用として改良型の6576Aの開発が始まり、1990年から北方艦隊の原子力潜水艦で発射試験が行なわれ、1991年4月25日に軍備採用され、魚雷の生産が始まりました。
6576A型魚雷は、650mm魚雷発射管を装備するロシア海軍の原子力潜水艦~プロジェクト949A(オスカーII級)、プロジェクト971(アクラ級)、プロジェクト671RTMK(改ヴィクターIII級)に搭載されました。

[6576A型魚雷]
全長:11.3m
幅(直径):650mm
発射重量:4759kg
弾頭重量:557kg
最大速力:50ノット
射程距離:50km(50ノット)/100km(35ノット)
発射深度:最大480m
しかし、2000年8月12日に6576A型魚雷を搭載するプロジェクト949A原子力水中巡洋艦「クルスク」が艦首で爆発事故を起こして沈没しました。
乗組員は全員死亡しました。
[巡航ミサイル原潜「クルスク」]

この「クルスク」の爆発の原因については西側でも色々な説が唱えられましたが、ロシア側は、6576A型魚雷が爆発した可能性が高いと判断しました。
爆沈事故時に「クルスク」が搭載していた6576A型魚雷

この為、「クルスク」爆沈事故の後、6576A型魚雷はロシア海軍の原子力潜水艦から撤去されました。
650mm魚雷が撤去された後、650mm魚雷発射管は機雷射出のみに使用されるようになりました。
そして、650mm魚雷がロシア海軍の原子力潜水艦から姿を消して10数年の歳月を経て、6576A型魚雷がプロジェクト971原子力巡洋潜水艦で復活する事になりました。

ロシア・ソ連潜水艦総合情報サイト『ディープストーム』より
【プロジェクト971「シチューカ-B」】
プロジェクト971「シチューカ-B」原子力巡洋潜水艦(NATOコード名「アクラ」級)は、1985年から2001年に掛けて14隻がソ連/ロシア海軍へ就役し、更に1隻がインド海軍へリースする為に建造され、2012年に引き渡されています。
既に2隻が除籍・解体されており、現在、ロシア海軍に在籍しているのは12隻です。
[コムソモリスク・ナ・アムーレ(アムール造船工場)建造艦]:太平洋艦隊へ配備
・K-284(工場番号501):1993年4月13日に「アクラ」と命名
1983年11月11日起工/1984年6月22日進水/1984年12月30日納入/1985年1月15日就役
1994年頃退役、2004~2008年に極東艦船修理工場『ズヴェズダー』で解体
・K-263(工場番号502):1993年4月13日に「デリフィン」と命名、2002年2月9日に「バルナウル」と改名
1985年5月9日起工/1986年5月28日進水/1987年12月30日納入/1988年1月11日就役
・K-322(工場番号513):1993年4月13日に「カシャロート」と命名
1986年9月5日起工/1987年7月18日進水/1988年12月30日納入/1989年3月1日就役
・K-391(工場番号514):1993年4月13日に「キート」と命名、1997年9月1日に「ブラーツク」と改名
1988年2月23日起工/1989年4月14日進水/1989年12月29日納入/1990年1月13日就役
・K-331(工場番号515):1993年4月13日に「ナルヴァル」と命名、2001年1月24日に「マガダン」と改名
1989年12月28日起工/1990年6月23日進水/1990年12月30日納入/1991年1月23日就役
・K-419(工場番号516):1993年4月13日に「モルシュ」と命名、1998年1月29日に「クズバス」と改名
1991年7月28日起工/1992年5月18日進水/1992年12月31日納入/1993年1月30日就役
[近代化された原子力巡洋潜水艦クズバスはロシア海軍太平洋艦隊へ復帰した]
・K-295(工場番号517):1993年4月13日に「ドラコン」と命名、1999年8月30日に「サマーラ」と改名
1993年11月7日起工/1994年7月1日進水/1995年7月17日納入/1995年7月29日就役
・K-152(工場番号518):1993年4月13日に「ネルパ」と命名
1993年起工/2006年6月24日進水/2009年12月28日就役
2012年1月23日、インド海軍へリース、「チャクラ」と改名
・工場番号519号艦(「イルビス」?)
1994年起工
2007年、工事進捗度60パーセントで建造停止
・工場番号520号艦
1990年起工
1992年3月18日、工事進捗度25パーセントで建造中止、その後に解体
・工場番号521号艦
1991年起工
1992年3月18日、工事進捗度12パーセントで建造中止、その後に解体
[セヴェロドヴィンスク(セヴマシュ)建造艦]:北方艦隊へ配備
・K-480(工場番号821):1991年7月24日に「バルス」と命名、1998年4月27日に「アク・バルス」と改名
1985年2月22日起工/1988年4月16日進水/1988年12月29日納入・就役
2002年10月1日除籍、2010年に艦船修理センター『ズヴェズドーチカ』で解体
・K-317(工場番号822):1990年10月10日に「パンテーラ」と命名
1986年11月6日起工/1990年5月21日進水/1990年12月27日納入/1990年12月30日就役
・K-461(工場番号831):1991年6月25日に「ヴォルク」と命名
1987年11月14日起工/1991年6月11日進水/1991年12月29日納入/1992年1月27日就役
・K-328(工場番号832):1991年1月24日に「レオパルド」と命名
1988年10月26日起工/1992年6月28日進水/1992年12月30日納入/1993年1月15日就役
・K-154(工場番号833):1991年7月24日に「チグル」と命名
1989年9月10日起工/1993年6月26日進水/1993年12月29日納入/1994年1月5日就役
・K-157(工場番号834):1993年4月6日に「ヴェプリ」と命名
1990年7月13日起工/1994年12月10日進水/1995年11月25日納入/1995年12月30日就役
・K-335(工場番号835):1993年2月22日に「ゲパルド」と命名
1991年9月23日起工/1999年9月17日進水/2001年12月3日納入/2001年12月4日就役
[ロシア海軍北方艦隊の親衛原子力巡洋潜水艦ゲパルトはオーバーホールを終えて復帰した]
・K-337(工場番号836):1994年1月25日に「クーグアル」と命名
1992年8月18日起工
1998年1月22日建造中止
2003年以降に解体(原子炉などは「ボレイ」級戦略原子力潜水艦「ユーリー・ドルゴルーキー」へ流用)
・K-333(工場番号837):1995年2月7日に「ルイシ」と命名
1993年8月31日起工
1997年10月6日建造中止
2004年以降、解体(原子炉などは「ボレイ」級戦略原子力潜水艦「アレクサンドル・ネフスキー」へ流用)
この内、「レオパルド」、「ヴォルク」、「ブラーツク」、「サマーラ」の4隻がセヴェロドヴィンスクの艦船修理センター『ズヴェズドーチカ』で大規模な近代化改装(プロジェクト971M)を行ないます。
[近代化改装されるプロジェクト971M原子力巡洋潜水艦レオパルドは2018年にロシア海軍へ復帰する]
北方艦隊の「ヴォルク」は、2014年8月にセヴェロドヴィンスクへ回航されています。
[ロシア海軍北方艦隊のアクラ級原潜ヴォルクはセヴェロドヴィンスクで近代化改装を行なう]
太平洋艦隊の「ブラーツク」と「サマーラ」も、2014年9月末にセヴェロドヴィンスクへ回航されています。
[ロシア海軍太平洋艦隊の原潜ブラーツクとサマ―ラはセヴェロドヴィンスクの艦船修理工場へ到着した]
近代化改装されるプロジェクト971Mは、533mm魚雷発射管から射出できる巡航ミサイル「カリブル」を搭載します。
[巡航ミサイル「カリブル」対地攻撃型は2500kmの最大射程を有する]
[ロシア海軍はシリアのテロ組織へ100発の巡航ミサイル"カリブル"を発射した]
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