ロスアトムはロシア軍(海軍)の為の新たな液体金属冷却原子炉を開発する
- カテゴリ:ロシア海軍ニュース

『ロシア通信社ノーボスチ』より
2018年5月18日3時3分配信
【ロスアトムは軍の為の重金属原子炉の開発を行なう】
モスクワ、5月18日-ロシア通信社ノーボスチ
ロシア原子力部門の専門家は、防衛目的の重液体金属冷却原子炉の分野での開発作業を行なう。
国営企業『ロスアトム』傘下の株式会社『試作設計局ギドロプレス』(ポドリスク、モスクワ州)の年次公式報告書の資料には、こう記載されている。
「重液体金属冷却原子炉の作業は、国家防衛発注の枠組みで遂行されます」
公開されている同社の中央情報サイトで閲覧可能な2017年の報告書では、こう述べられた。
これは、構造設計、更には科学研究及び試験設計作業についての話である。
重液体金属冷却は、鉛あるいは鉛ビスマス合金に関連する。
国内の原子力部門は、原子力潜水艦の為の鉛ビスマス冷却の高速中性子原子炉の作成作業のユニークな経験を蓄積している。
最終的に、これらの核動力装置の開発は、最も高速かつ高機動のソヴィエトのプロジェクト705及び705K原子力潜水艦の為に行なわれ、外国からは「アルファ」の名前で呼ばれ、その高速性によりギネスブックに記載された。
これらの潜水艦の原子炉は、コンパクトで高密度の立体エネルギーを排出した(別の言い方をすれば、小さなサイズの原子炉で高出力を得られる能力を有していた)。
プロジェクト705及び705Kのもう1つの利点は、自動制御複合体、潜水艦、動力装置が完全に自動化されていた事にあった。
1977年から1981年に、ソヴィエト社会主義共和国連邦海軍へ6隻のプロジェクト705原子力潜水艦が引き渡された。
1990年代には、これらは海軍から除籍され、その実際の就役期間は、見積もりよりも非常に短期間であった。
原子力潜水艦に使用されていた鉛-ビスマス重液体金属冷却原子炉の転用の枠組みにおいて、『ギドロプレス』は、民間用途の原子力発電の作成の為、小出力の高速中性子原子炉プロジェクトSVBR(鉛-ビスマス高速炉)型を開発した。
現在は、原子炉プロジェクトSVBR-100が実現している~これは、多目的使用の為の小出力原子炉モジュールのイノベーションである。
この他、『ギドロプレス』の2016年の年次報告書に記載されているように、同社はプロジェクトSVIR(鉛ービスマス統一炉)の開発を完了した。
この小出力原子炉は、水中発電モジュールの為のものであり、北極大陸棚の石油・天然ガス産地に整備される氷面下の機器装置複合体の運転及び電力保障の為に意図されている。
一連の情報リソースで提示されているように、鉛-ビスマス重金属冷却原子炉は、ロシアの無人戦闘水中装置に使用できる。
『試作設計局ギドロプレス』は、水圧-水蒸気発電炉及び鉛-ビスマス冷却高速中性子炉の主要設計者の地位に在る。
ソ連海軍で初めて液体金属(鉛ビスマス合金)冷却原子炉を搭載したプロジェクト645(NATOコード名「ノヴェンバー」)巡洋潜水艦K-27は、1963年10月30日に竣工し、北方艦隊へ配備後、何度か北極海や大西洋への遠征を行ないましたが、1968年5月24日に原子炉事故を起こして乗組員9名が死亡した後は運用が停止され、1979年2月1日に除籍されました。

その後、液体金属(鉛ビスマス合金)冷却原子炉を搭載するプロジェクト705/705K「リラ」(NATOコード名「アルファ」)巡洋潜水艦(1992年6月3日から原子力大型潜水艦)がレニングラード及びセヴェロドヴィンスクで7隻建造され、1971年から1981年に掛けて就役し、全艦が北方艦隊へ配備されました。

[アドミラルティ造船所(レニングラード)建造艦]
K-64
1968年6月2日起工/1969年4月22日進水/1971年12月31日竣工
1972年2月予備役編入/1974年4月19日に戦闘編制から除外/1978年2月9日に海軍から除籍
1978年以降に船体を切断、解体
K-316(1992年6月3日からB-316)
1969年4月26日起工/1974年7月25日進水/1978年9月30日納入/1978年12月30日就役
1990年4月19日に海軍から除籍/1995-1996年に解体
K-373(1992年6月3日からB-373)
1972年6月26日起工/1978年4月19日進水/1979年12月29日納入/1980年1月18日就役
1990年4月19日に海軍から除籍/2008-2009年に解体
K-463(1992年6月3日からB-463)
1975年6月26日起工/1981年3月31日進水/1981年12月30日就役
1990年4月19日に海軍から除籍/1994-2002年に解体
[セヴマシュ(セヴェロドヴィンスク)建造艦]
K-123(1992年6月3日からB-123):プロジェクト705K
1967年12月29日起工/1976年4月4日進水/1977年12月12日納入/1978年2月17日就役
1983年12月21日からセヴェロドヴィンスクで修理/1992年7月21日再就役
1996年7月31日に戦闘編制から除外
2007-2008年に解体
K-432(1992年6月3日からB-432):プロジェクト705K
1968年11月12日起工/1977年11月3日進水/1978年12月31日納入/1979年1月10日就役
1990年4月19日に戦闘編制から除外/1996年4月19日に海軍から除籍
1996-2002年に解体
K-493(1992年6月3日からB-493):プロジェクト705K
1972年2月21日起工/1980年9月21日進水/1981年9月30日納入/1981年10月1日就役
1990年4月19日に戦闘編制から除外/1996年4月19日に海軍から除籍
1996-2002年に解体
しかし、こちらも液体金属冷却原子炉の取り扱いの難しさの為に稼働率は低く、K-64は1972年に(書類上は1978年)、K-123以外の5隻は1990年に退役し、残るK-123(1992年からB-123)も1996年に退役しました。
ソ連邦解体後は、軍事用途(原子力潜水艦用)の液体金属冷却原子炉を民間用途に転用した原子炉が幾つか開発されています。
試験設計局『ギドロプレス』公式サイトより
【原子炉CVBR-100】
【原子炉CVBR-10】
そして今、ロシアで再び軍用の液体金属冷却原子炉が開発される事になりました。
開発元の試験設計局『ギドロプレス』は国家防衛発注により開発するとしか言っておらず、具体的に液体金属冷却原子炉を何処へ使うのかという事は明らかにしておりません。
しかし、液体金属(鉛ビスマス合金)冷却原子炉は無人戦闘水中装置に使用できるとの事ですから、現在開発中の大洋多目的システム(原子力推進水中無人機)「ポセイドン」の動力として使われる可能性が高いようです。
[ロシア海軍の大洋多目的システム(原子力推進水中無人機)ポセイドンは2メガトンの核弾頭を搭載する]
- 関連記事
-
- ロシア海軍太平洋艦隊及び北方艦隊の戦略原潜は弾道ミサイル発射演習を行なった
- ルビーン設計局はロシア海軍の潜水艦の為の非大気依存発電装置(AIP機関)の開発を進めている
- ロスアトムはロシア軍(海軍)の為の新たな液体金属冷却原子炉を開発する
- ロシア海軍艦船のモザンビークへの寄港手続きは簡略化される
- ロシア海軍は40台の遠隔操作無人水中装置を購入する
スポンサーサイト