サンクトペテルブルクの『バルト工場』は2021年以降にロシア海軍向けの大型水上艦の建造を再開する
- カテゴリ:ロシアの造船業

『タス通信』より
2018年6月19日17時27分配信
【『バルト工場』は2021年以降に軍用艦の建造へ復帰できる】
サンクトペテルブルク、6月19日/タス通信
サンクトペテルブルクの『バルト工場』は、実現化するプロジェクトの遠海ゾーン軍用艦の建造へ2021年以降に復帰できる。
同社が加入している『統合造船業営団』のトップ、アレクセイ・ラフマノフは、バルト工場の敷地内での『統合造船業営団』及び海軍の政府機関代表者会議の後、報道陣へ語った。
「私たちは、『バルト工場』の、ここ15年間の1等軍用艦(註:戦列艦、ロケット巡洋艦、航空母艦など)の建造経験を考慮して、このテーマについて討議いたしました。
我々は、まさしく、このセグメントについて御話ししており、これに関する討議を続けています。
我々は国防省と共に、遠海ゾーン艦を製造する方向への動きを形成していきます。
全てが進水し、『バルト工場』が民間から発注された作業を成功裏に完了した場合、軍の発注の復活を始める事ができるでしょう。
僕が思いますに、それは、2021年~2022年よりも前にはならないでしょうね」
ラフマノフは報道陣へ話した。
彼は、そのような決定が採択された場合、多角化製造の要素になる事を指摘した。
「我々は、それ(註:『バルト工場』の現在の民間船建造)を終わらせても、『統合造船業営団』の造船所を軍用と民間に分ける事は致しません。
各造船所は、国家防衛発注へ参加する事も、民間船を建造する事も出来ます。
我々は、1等艦の建造へ向かう意向を堅持しており、これは『バルト工場』についても同様です」
ラフマノフは指摘した。
『バルト工場』はサンクトペテルブルクの造船企業であり、『統合造船業営団』へ加入している。
同社は、原子力砕氷船及び海上原子力発電所の建造を専門としている。
【『バルト工場』公式サイト】

サンクトペテルブルクの『バルト工場』は、1856年5月26日に設立されたロシアの老舗の造船所です。
当初は、主にロシア帝国海軍の大型水上艦~戦列艦を建造しており、1910年代には、戦列艦「セヴァストーポリ」型4隻を建造しました。


ソヴィエト連邦成立後、『オルジョニキーゼ記念造船工場』と改名され、1930年代末には戦列艦「ソヴィエツキー・ソユーズ」の建造に着手しましたが、大祖国戦争の為、完成には至りませんでした。


大祖国戦争終了後は、ソ連海軍向けの水上艦や、民間船(タンカーなど)を建造し、1970年代には民間のタンカーをベースにしたプロジェクト1559V大型海洋給油船を6隻建造しました。
[ロシア海軍の給油船(補給艦)ボリス・チリキン級]
1970年代初頭からは原子力砕氷船の建造を開始しました。
[原子力砕氷船「アルクチカ」級]
1970年代末からはプロジェクト1144重原子力ロケット巡洋艦(「キーロフ」型)の建造を開始しました。
1144シリーズは4隻が建造され、最終艦「ピョートル・ヴェリキー」は1998年に就役しました。
[ロシア海軍北方艦隊旗艦・ナヒーモフ勲章授与・重原子力ロケット巡洋艦ピョートル・ヴェリキーで就役20周年記念式典が開催された]
この他、1980年代後半には大型原子力偵察艦SSV-33「ウラル」を建造しています。
[原子力偵察艦SSV-33ウラルは解体される]
このように、1970年代からは大型原子力水上艦船の建造を専門にするようになりましたが、ソ連邦解体後、大型原子力水上艦船の新たな発注は途絶えました。
1990年代末から2000年代初頭に掛けて、インド海軍向けの「タルワー」級フリゲート3隻を建造しました。
[「タルワー」級フリゲート(プロジェクト1135.6)]
2000年代には2隻のプロジェクト21900ディーゼルエレクトリック砕氷船を建造しました。
砕氷船「モスクワ」(2008年12月11日就航)

砕氷船「サンクトペテルブルク」(2009年12月2日就航)

しかし、ソ連邦解体後の大幅な受注減で資金繰りに行き詰った『バルト工場』は2011年に破産し、ロシア造船業の総元締である『統合造船業営団』の直接の管理下で会社の再生が進められました。
翌2012年、海上原子力発電所「アカデミック・ロモノソフ」の建造を再開しました。
[バルト工場は水上原子力発電所の建造を再開する]

2011年6月にロシアとフランスが締結したヘリコプター揚陸ドック艦(ヘリコプター母艦)「ミストラル」級2隻の建造契約に基づき、『バルト工場』は、2012年10月から2014年4月に掛けて2隻の「ミストラル」級の船体後部を建造しました。
(2隻の船体後部はフランスのサンナゼール造船所へ回航され、同地で前部と接合)

[ロシアで建造されたミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦ウラジオストクの船体後部は進水した]

[ロシアで建造されたミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦セヴァストーポリの船体後部は進水した]
2013年11月5日には、新世代の原子力砕氷船プロジェクト22220の1番船「アルクチカ」を起工しました。
[新型原子力砕氷船がサンクトペテルブルクのバルト工場で建造される]
2015年5月26日には2番船「シビーリ」、2016年7月25日には3番船「ウラル」が起工されました。
1番船「アルクチカ」は2016年6月16日、2番船「シビーリ」は2017年9月22日に進水しました。
「アルクチカ」進水
「シビーリ」進水
プロジェクト22220は、2022年までに3隻の就航が予定されています。
21世紀になってからは、一部の例外を除き、ロシア海軍向けの水上艦を建造していない『バルト工場』ですが、2021年以降、海軍向けの艦(遠海ゾーン艦)の建造を再開する事になりました。
具体的に、どのような艦を建造するのかは明らかにされていませんが、可能性が高いのは、原子力駆逐艦「リデル」級と汎用揚陸艦「セヴァストーポリ」型(「プリボイ」級)でしょう。
[プロジェクト「リデル」原子力駆逐艦]
[新世代汎用揚陸艦セヴァストーポリ型]
『バルト工場』は、以前には、「リデル」級と「セヴァストーポリ」型の建造候補として挙げられた事も有ります。
[ロシア海軍将来駆逐艦リデル級はサンクトペテルブルクのセーヴェルナヤ・ヴェルフィとバルト工場が協同で建造する]
[ロシア造船業界はミストラル級のようなヘリ空母を建造する用意がある]
現時点では、双方ともサンクトペテルブルクの『北方造船所』での建造が有力視されていますが、大型水上艦の建造を1か所の造船所だけに集中させるのでは、『北方造船所』の負担ばかりが大幅に増える事になり、建造の遅延を招く恐れがあります。
[サンクトペテルブルク市の北方造船所は2019年末以降にロシア海軍の為の汎用揚陸艦プリボイ級と新世代駆逐艦リデル級を建造できる]
そこで、原子力砕氷船「アルクチカ」型の建造が一段落した後の『バルト工場』にも海軍の大型水上艦を建造させる事になったようです。
将来的には、新世代航空母艦の建造にも参加するかもしれません。
[ロシア新世代航空母艦]
『バルト工場』は、以前には新世代航空母艦の建造候補として挙げられています。
[ロシアの2つの造船所はロシア海軍の為の将来正規空母を建造できる]
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