サンクトペテルブルクの『バルト工場』はロシア海軍の大型水上艦の建造へ参加する
- カテゴリ:ロシアの造船業

『ロシア通信社ノーボスチ』より
2018年6月25日16時7分配信
【海軍はバルト工場での軍用艦の建造を認可すると情報筋は伝えた】
サンクトペテルブルク、6月25日-ロシア通信社ノーボスチ
ロシア連邦海軍は、フリゲート級か、それ以上の艦の建造の為のフィールドの1つとして『バルト工場』を検討している。
『ロシア通信社ノーボスチ』は、防衛産業企業体の情報提供者より伝えられた。
「バルト工場は、如何なる艦も建造できます。
フリゲート級に始まり、排水量が今の大型対潜艦に匹敵する艦を。
ですが、これは、更なる可能性が評価できます」
彼は話した。
「バルト工場が大きな排水量の艦の建造へ着手する場合、それは、必ず他の企業との協業により行なわれます」
対談者は付け加えた。
【『バルト工場』公式サイト】

サンクトペテルブルクの『バルト工場』は、1856年5月26日に設立されたロシアの老舗の造船所です。
当初は、主にロシア帝国海軍の大型水上艦~戦列艦を建造しており、1910年代には、戦列艦「セヴァストーポリ」型4隻を建造しました。


ソヴィエト連邦成立後、『オルジョニキーゼ記念造船工場』と改名され、1930年代末には戦列艦「ソヴィエツキー・ソユーズ」の建造に着手しましたが、大祖国戦争の為、完成には至りませんでした。


大祖国戦争終了後は、ソ連海軍向けの水上艦や、民間船(タンカーなど)を建造し、1970年代には民間のタンカーをベースにしたプロジェクト1559V大型海洋給油船を6隻建造しました。
[ロシア海軍の給油船(補給艦)ボリス・チリキン級]
1970年代初頭からは原子力砕氷船の建造を開始しました。
[原子力砕氷船「アルクチカ」級]
1970年代末からはプロジェクト1144重原子力ロケット巡洋艦(「キーロフ」型)の建造を開始しました。
1144シリーズは4隻が建造され、最終艦「ピョートル・ヴェリキー」は1998年に就役しました。
[ロシア海軍北方艦隊旗艦・ナヒーモフ勲章授与・重原子力ロケット巡洋艦ピョートル・ヴェリキーで就役20周年記念式典が開催された]
この他、1980年代後半には大型原子力偵察艦SSV-33「ウラル」を建造しています。
[原子力偵察艦SSV-33ウラルは解体される]
このように、1970年代からは大型原子力水上艦船の建造を専門にするようになりましたが、ソ連邦解体後、大型原子力水上艦船の新たな発注は途絶えました。
1990年代末から2000年代初頭に掛けて、インド海軍向けの「タルワー」級フリゲート3隻を建造しました。
[「タルワー」級フリゲート(プロジェクト1135.6)]
2000年代には2隻のプロジェクト21900ディーゼルエレクトリック砕氷船を建造しました。
砕氷船「モスクワ」(2008年12月11日就航)

砕氷船「サンクトペテルブルク」(2009年12月2日就航)

しかし、ソ連邦解体後の大幅な受注減で資金繰りに行き詰った『バルト工場』は2011年に破産し、ロシア造船業の総元締である『統合造船業営団』の直接の管理下で会社の再生が進められました。
翌2012年、海上原子力発電所「アカデミック・ロモノソフ」の建造を再開しました。
[バルト工場は水上原子力発電所の建造を再開する]

2011年6月にロシアとフランスが締結したヘリコプター揚陸ドック艦(ヘリコプター母艦)「ミストラル」級2隻の建造契約に基づき、『バルト工場』は、2012年10月から2014年4月に掛けて2隻の「ミストラル」級の船体後部を建造しました。
(2隻の船体後部はフランスのサンナゼール造船所へ回航され、同地で前部と接合)

[ロシアで建造されたミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦ウラジオストクの船体後部は進水した]

[ロシアで建造されたミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦セヴァストーポリの船体後部は進水した]
2013年11月5日には、新世代の原子力砕氷船プロジェクト22220の1番船「アルクチカ」を起工しました。
[新型原子力砕氷船がサンクトペテルブルクのバルト工場で建造される]
2015年5月26日には2番船「シビーリ」、2016年7月25日には3番船「ウラル」が起工されました。
1番船「アルクチカ」は2016年6月16日、2番船「シビーリ」は2017年9月22日に進水しました。
「アルクチカ」進水
「シビーリ」進水
プロジェクト22220は、2022年までに3隻の就航が予定されています。
21世紀になってからは、一部の例外を除き、ロシア海軍向けの水上艦を建造していない『バルト工場』ですが、2021年以降、海軍向けの艦(遠海ゾーン艦)の建造を再開する事になりました。
[サンクトペテルブルクの『バルト工場』は2021年以降にロシア海軍向けの大型水上艦の建造を再開する]
今回の記事に登場する「防衛産業企業体の(匿名希望の)情報提供者」によると、ロシア海軍は、「フリゲート級」や、それよりも大型の水上艦(排水量が大型対潜艦に匹敵する艦)の建造を『バルト工場』にやらせる意向のようです。
現在の所、ロシア海軍向けとして計画され、建造開始が2020年以降となる「フリゲート級の艦」「排水量が大型対潜艦に匹敵する艦」と言えば、プロジェクト22350M(改アドミラル・ゴルシコフ型)フリゲートくらいしか有りません。
[ロシア海軍の次世代フリゲート・プロジェクト22350M(改アドミラル・ゴルシコフ型)の排水量は約8000トンになる]
[ロシア海軍の次世代フリゲート・プロジェクト22350M(改アドミラル・ゴルシコフ型)の建造開始は2020年以降になる]
また、『バルト工場』が「大きな排水量の艦」を建造する場合は、必ず他の企業と協同で行なうとの事ですが、これは、おそらくは原子力駆逐艦「リデル」級や汎用揚陸艦「セヴァストーポリ」型(「プリボイ」級)、新世代航空母艦の事でしょう。
[プロジェクト「リデル」原子力駆逐艦]
[新世代汎用揚陸艦セヴァストーポリ型]
[ロシア新世代航空母艦]
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