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原子力巡洋艦ピョートル・ヴェリキーはロシアの対弾道ミサイル防衛の一翼を担う

『イズべスチヤ』より
2012年9月20日15時40分配信
【「ピョートル・ヴェリキー」は対ミサイル防衛試験を行なった】

原子力巡洋艦は、ロシアの対ミサイル防衛の構成要素としての準備が出来ている。
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現在、北海航路ゾーンにおいて遠距離航海を行なっている重原子力ロケット巡洋艦「ピョートル・ヴェリキー」乗組員は、ロシア連邦対ミサイル防衛システムとしての活動を果たすための演習を実施した。
ロシア軍当局の情報提供者が『イズベスチヤ』に伝えた所によると、北方艦隊旗艦は、ロシア対ミサイル防衛システムの海上部門の一翼となっている。

「北極圏の北海航路ゾーンを航行中のピョートル・ヴェリキーは、ロシアの対ミサイル防衛総合システムの海洋セグメントにおける対ミサイル防衛試験を実施しました。
これは、最近に設立された航空宇宙防衛軍と合同で行なわれました」

国防省の代理人は話した。

更に彼は、北方艦隊旗艦の航海が、世界の大洋の戦略的に重要な海域におけるロシア海軍の艦船の常時滞在を復活させる我が国(ロシア)の海洋ドクトリンの枠組みにおいて実施されている事を強調した。
この航海において、一連の任務-救助活動、結氷状態の偵察、その他-が果たされた。

「重原子力ロケット巡洋艦の対ミサイル防衛演習が行なわれたポイントは、北極圏の特に重要な海域であり、ここにはアメリカの地上配置弾道ミサイルの主要な飛翔軌道が長く横たわっています」
対談者は『イズベスチヤ』に説明した。

重原子力ロケット巡洋艦「ピョートル・ヴェリキー」の対ミサイル・対空防衛の主要システムは、高射ミサイル複合体S-300F「フォルト」(48発のミサイル)及び中距離射程(200km)のS-300FM「フォルト-M」である。
同艦は、近距離ゾーンで航空目標を破壊する為の高射ミサイル複合体「キンジャール」の発射装置16基(ミサイル128発)と、6基の高射ミサイル-砲複合体「コールチク」を有する。

海軍機器の専門家で雑誌『武器輸出』の編集長アンドレイ・フロロフ氏は、「ピョートル・ヴェリキー」は、このような任務に適した艦は、同艦以外にはロシア海軍に存在していないという現実故にロシア対ミサイル防衛の海洋セグメントの構成要素として使用される事を指摘した。

「ロシア海軍において、弾道ミサイルを迎撃するのに最も適した対ミサイル・対空防衛複合体を有しているのはピョートル・ヴェリキーのみであります。
ですが一般論といたしましては、このような目的の為に重原子力ロケット巡洋艦を使用するのは過剰すぎるでしょう」

彼は述べた。

更にアンドレイ・フロロフは、海洋対ミサイル防衛の設立に関し、国防省が同プロジェクトの他の巡洋艦「アドミラル・ナヒーモフ」のオーバーホール及び近代化の実施を決定しており、加えてロケット巡洋艦「アドミラル・ラーザレフ」のオーバーホールも可能である事を指摘した。

「これらの多用途原子力艦が復帰すれば、対ミサイル-対空防衛構成戦力の能力は、当然ながら増加します。
ですが国家及び国防省の指導者が、効果的なロシアの対ミサイル防衛の海洋コンポーネントが必要であると考慮した場合には、新たな艦を建造しなければなりません。
その為の適切な候補といたしましては、現在開発中である駆逐艦クラスの艦が有ります」

彼は説明した。

プロジェクト1144「オルラーン」重原子力ロケット巡洋艦「ピョートル・ヴェリキー」北方計画設計局により設計された。
1998年、同艦はロシア連邦海軍の兵器として採用された。
満載排水量-25860トン、自立行動期間-60日、乗組員-635名、速力-32ノット(時速60キロ)。

対ミサイル・対空防衛以外の巡洋艦の兵装は、20基の対艦ミサイルP-700「グラニート」自動砲AK-130対潜ロケット魚雷複合体RPK-6M「ヴォドパード」 である。
艦上には、2機の対潜ヘリコプターKa-27が配置されている。

全天候型3次元電波位置特定システム「フレガート-MAE」は、高度30km、距離300km以内の敵目標を探知できる。


[ロシア北方艦隊北極圏演習(2012年9月) ]
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重原子力ロケット巡洋艦「ピョートル・ヴェリキー」は、2012年9月12日にセヴェロモルスクを出港しました。

9月14日にカルスキエボロタ海峡を通過、9月17日にはヴィリキツキー海峡を通過しました。

9月20日には、ノヴォシビルスク諸島コテリヌイ島ヘリコプターKa-27の着陸時にトラブルを起こしましたが、死亡者及び負傷者は居ませんでした。


その「ピョートル・ヴェリキー」ですが、今回の記事によると、北極海遠征中に対弾道ミサイル迎撃試験を実施したようです。
(いつどこで実施したのかまでは明らかにされていませんが)

プロジェクト1144「オルラーン」重原子力ロケット巡洋艦(キーロフ型)は、艦対空ミサイルS-300F「フォルト」を搭載していますが、最終艦「ピョートル・ヴェリキー」には、改良型のS-300FM「フォルト-M」が搭載されています。
[高射ミサイル複合体S-300F「フォルト」/S-300FM「フォルト-M」]
[原子力巡洋艦「ピョートル・ヴェリキー」その1]
[原子力巡洋艦「ピョートル・ヴェリキー」その2]

「フォルト-M」は地上タイプのS-300PMU-2と同じ48N6E2ミサイルを使用しており、このミサイルは弾道ミサイル迎撃能力も持っています。

S-300PMU-2「ファヴォリート」
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つまり、現在のロシア連邦海軍の水上艦で弾道ミサイル迎撃能力を持っているのは「ピョートル・ヴェリキー」だけという事になります。

この他、近い将来に起工される新世代多用途駆逐艦も、対弾道ミサイル防衛に使われる事が想定されているようです。
[ロシア海軍新世代駆逐艦の建造計画は現司令部に承認された]
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