ロシア海軍の為の極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"の開発は滞りなく進んでいる
- カテゴリ:極超音速対艦ミサイル「ツィルコン」
『タス通信』より
2019年2月20日19時36分配信
【プーチン:極超音速ミサイル「ツィルコン」に関する作業は成功裏に行なわれ、期限内に完了する】
モスクワ、2月20日/タス通信
ロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチンは、極超音速ミサイル「ツィルコン」の作業に関し、マッハ9までの速度の発揮が可能となり、スケジュール通りに進められ、期限内に完了すると述べた。
「今日は、貴方達へ、将来の新製品の1つについて、更に公式に報告する機会があります」
ロシアの指導者は、連邦教書演説で話し、昨年の教書の発表中、新兵器について話した事を想い起こした。
「では、この内緒の場所で、貴方達へこっそりと御話ししましょうか。
まあこういったわけで、将来の製品の1つについてなんですが、その作業は、成功裏に計画時期に沿って行われておりまして、無論、完了いたします。
それでは、正真正銘、極超音速ミサイル"ツィルコン"について御話ししようと思います」
プーチンは、このミサイルは、約マッハ9の飛翔速度の発揮が可能であり、距離1000km以上を飛翔できると説明した。
それは、海上の、そして地上の目標の撃破が可能である。
「それは、既に製造及び建造された高精度ミサイル兵器複合体カリブルを含む量産水上艦及び潜水艦といった海上搭載艦への適応が見込まれています」
大統領は説明し、新たな兵器が戦闘当直へ置かれるのは、浪費では無い事を特に強調した。
ロシアの指導者は更に、ロシアの国益保護の為、国家軍備プログラムの規定よりも2~3年早くロシア連邦海軍へ7隻の新たな多目的潜水艦が引き渡され、近い内に5隻の遠海ゾーン水上艦が起工されると伝えた。
更に、このようなクラスの16隻の艦が、2027年までに海軍へ導入される。
極超音速対艦ミサイル「ツィルコン」(ジルコン、風信子石)は、以前に長距離超音速有翼ミサイル「バザーリト」/「ヴルカーン」や「グラニート」、そして超音速ミサイル「オーニクス」を開発した科学生産合同『機械製造』が新たに開発しているミサイルです。
[長距離打撃ミサイル複合体バザーリト/ヴルカーン]
[有翼ミサイル複合体グラニートは軍備採用30周年を迎えた]
[ロシア海軍の超音速対艦ミサイル"オーニクス"は近代化される]
科学生産合同『機械製造』は、長距離超音速有翼ミサイル「グラニート」の直接の後継となる筈だった「ボリード」(最大射程800km、飛翔速度マッハ4)の開発を1980年代末から開始し、1991年にはエンジンの最初の試験が行われたのですが、1990年代末には開発は中止されました。
「ツィルコン」の開発には、「ボリード」の開発作業の経験もフィードバックされているようです。
「ツィルコン」に関しては、ミサイルの名前以外の確たる情報は出ていませんが、射程距離は400~500km程度、飛翔速度はマッハ5~マッハ6以上になるようです。
「ツィルコン」の発射試験は2015年秋頃から始まっています。
[ロシア海軍の為の極超音速巡航ミサイル"ツィルコン"の試験が始まった]
「ツィルコン」の試験は、アルハンゲリスク州のネノクサ村に在るロシア海軍のミサイル発射試験場で行なわれており、初期には失敗した事も有るようです。
[ロシア海軍の為の巡航ミサイルは試射中にアルハンゲリスク州ネノクサ村の住宅へ落下した]



「ツィルコン」の発射試験は秘密裡に行なわれていますが、2016年4月に行なわれた試験では最大速度マッハ8を記録しました。
[ロシア海軍の為の極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"は発射試験で最大速度マッハ8に達した]
「ツィルコン」の試験完了と生産開始は、2018年からスタートする新たな国家軍備プログラム(2018-2027年の国家軍備プログラム)において実現する事になります。
[ロシア海軍の為の極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"は新たな2018-2027年の国家軍備プログラムにおいて開発を完了し、生産を開始する]
2019年には海上(水上艦及び潜水艦)での「ツィルコン」の発射試験が始まります。
[ロシア海軍の為の極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"は2019年から北方艦隊で発射試験を開始する]
これまでに「ツィルコン」は、ネノクサ村のミサイル発射試験場から10回以上の発射試験が行なわれています。
[ロシア海軍の為の極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"は10回以上の発射試験を行なった]
「ツィルコン」は、超音速対艦ミサイル「オーニクス」と対地/対艦巡航ミサイル「カリブル」の両方を発射できる汎用垂直発射機3S-14UKSKから発射できます。
(つまり、「カリブル」や「オーニクス」と発射機を共有できる)
「ツィルコン」は、今後に大規模な近代化改装が行なわれる重原子力ロケット巡洋艦「ピョートル・ヴェリキー」に装備されます。
[ロシア海軍の重原子力ロケット巡洋艦ピョートル・ヴェリキーは近代化改装により極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"を装備するかもしれない]
[ロシア海軍北方艦隊の重原子力ロケット巡洋艦ピョートル・ヴェリキーの近代化改装は2020年に始まる]
現在、大規模な近代化改装が行なわれている重原子力ロケット巡洋艦「アドミラル・ナヒーモフ」も装備する事になります。
[ロシア海軍の重原子力ロケット巡洋艦アドミラル・ナヒーモフの近代化改装は2022年に完了する]
大規模な近代化改装が行なわれる4隻のプロジェクト949A原子力水中巡洋艦(オスカーII級巡航ミサイル原潜)にも装備されます。
[ロシア海軍のプロジェクト949A原子力水中巡洋艦(オスカーII級)は近代化改装により極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"を装備する]
「ツィルコン」は、実質的には「グラニート」の後継という位置付けになるようです。
この他、現在、設計作業が進められており、2020年代から建造が始まるロシア海軍第5世代原子力潜水艦「ハスキー」級にも装備されます。
[ロシア第5世代多目的原子力潜水艦プロジェクト「ハスキー」]
基本的には大型水上艦及び原子力潜水艦に搭載される「ツィルコン」ですが、より小型の艦へ搭載する為の小型ヴァージョンも開発されます。
[ロシア海軍の小型艦の為に極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"軽量化型が開発される]
今回、ロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチン氏は、「ツィルコン」は約マッハ9の速度を発揮できると言っていますから、現在は、以前の試験での最高記録マッハ8を超える速度を出せるようです。
流石に射程距離1000km以上というのは非現実的な数字ですが、要するにプーチン氏は、極超音速対艦ミサイル「ツィルコン」の開発は滞りなく進んでいると言いたいようです。
更にプーチン氏は、『2018~2027年の国家軍備プログラム』において7隻の新たな多目的潜水艦がロシア海軍へ引き渡され、近い内に5隻の遠海ゾーン水上艦が起工されるとも述べました。
「7隻の新たな多目的潜水艦」がどのタイプを指すのかには言及していませんが、おそらくは「ヤーセン」級多目的原子力潜水艦でしょう。
「国家軍備プログラムの規定よりも2~3年早く」というのは、要するに2027年よりも2~3年早くという事でしょう。
[プロジェクト885ヤーセン原子力水中巡洋艦]
「5隻の遠海ゾーン水上艦」についても、具体的な事は言っておりませんが、おそらくはプロジェクト22350フリゲートや大型揚陸艦、汎用ヘリコプター母艦の事でしょう。
[ロシア海軍は更に2隻のプロジェクト22350(アドミラル・ゴルシコフ型)フリゲートを追加発注するかもしれない]
[ロシア海軍の為に2~3隻のプロジェクト11711大型揚陸艦(イワン・グレン型)が追加建造される]
[新世代汎用揚陸艦セヴァストーポリ型]
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