ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフの為のムルマンスク艦船修理工場の乾ドック結合・拡張工事の準備は進められている
- カテゴリ:ロシアの造船業

『Mil.Press FLOT』(フロートコム)より
2019年5月24日17時3分配信
【『第35艦船修理工場』は「アドミラル・クズネツォフ」の為の乾ドックを作成する作業の準備を始めた】
艦船修理センター『ズヴェズドーチカ』の専門家は、『第35艦船修理工場』の乾ドック結合の為の技術的文書の準備を続けている。
そこでは、2020年にプロジェクト11435重航空巡洋艦「アドミラル・クズネツォフ」のドック修理が始まる。
『Mil.Press FlotProm』は『ズヴェズドーチカ』より伝えられた。
然るべき作業は今年には始まるが、詳細な情報は知られていない。
新たな施設は、沈没した浮きドックPD-50と同様のタイプの水上艦及び潜水艦のドック入りを可能にすると業界の情報提供者は話した。
彼は、ドック結合プロジェクトは2010年代初頭には準備されていたが、この時には資金供給は具現化されなかったと付け加えた。
重航空巡洋艦「アドミラル・クズネツォフ」のロシア海軍への引き渡しは2021年に計画されているが、それは3~4ヶ月遅れる可能性が有る。
2019年3月19日、『統合造船業営団』総裁アレクセイ・ラフマノフは発言した。
[『Mil.Press FlotProm』参照]
2019年10月30日、『第82艦船修理工場』の浮きドックPD-50(『ロスネフチ』が所有)から「アドミラル・クズネツォフ」が出渠する際、異常事態が発生し、その結果、ドックは沈んだ。
そのクレーンの1つが巡洋艦の甲板へ落下した。
艦は事故後、『第35艦船修理工場』の領域へ曳航された。
この時、『統合造船業営団』は、浮きドックの事故は、重航空巡洋艦「アドミラル・クズネツォフ」の修理及び近代化の完了時期には影響を及ぼさない事を認めた。
その後、事故の結果、巡洋艦は52ヶ所に損傷を受けた事が判明した。
『統合造船業営団』は、その除去には約7000万ルーブルの費用が掛かると評価した。
重航空巡洋艦「アドミラル・クズネツォフ」(プロジェクト11435)の全長は306メートル、最大幅72メートル、満載排水量59000トン。
1990年に竣工した艦の修理及び近代化の契約は、2018年4月に署名された。
それは『第35艦船修理工場』が実行する。
作業には600億ルーブルの費用が掛かる。
それは2020年末の完了が見込まれており、その後、7ヶ月間に及ぶ試験が行なわれ、艦は2021年には海軍へ復帰する。
[重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフ近代化改装]
現在、「アドミラル・クズネツォフ」は寿命を延長するなどの近代化改装が行なわれています。
近代化改装の全容は明らかにされていませんが、兵装、電子機器、通信機器、航空艤装、戦闘情報管理システム、航空機管制複合体、火災探知システムなどは新型に変更される事になるでしょう。
[ロシア海軍の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフは近代化改装により兵装を変更する]
[ロシア海軍の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフは近代化改装により新たな通信システムを受け取る]
[ロシア海軍将来汎用揚陸艦の為の新たな戦闘情報管理システムが開発される]
[ロシア海軍唯一の空母アドミラル・クズネツォフは航空隊と戦闘情報管理ステムを近代化する]
[ロシア海軍北方艦隊のウシャコーフ勲章授与・重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフは近代化改装により新たな航空機管制複合体を装備する]
機関(蒸気タービン)自体は変更されませんが、蒸気発生用のボイラーは8基全てが交換されます。
近代化改装を終えた「アドミラル・クズネツォフ」は、少なくとも20年間の就航が可能となります。
つまり、2040年頃までは現役に留まるという事です。
[ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフは近代化改装後、少なくとも2040年まで現役に留まる]
以前には「アドミラル・クズネツォフ」の近代化改装は2017年から始まる予定でしたが、2018年に延期されました。
[ロシア海軍の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフの近代化改装はムルマンスク艦船修理工場で2018年から始まる]
プロジェクト11435重航空巡洋艦(アドミラル・クズネツォフ)を設計した『ネフスキー計画設計局』は、「アドミラル・クズネツォフ」の近代化改装案を作成しています。
[ネフスキー計画設計局はロシア海軍唯一の空母アドミラル・クズネツォフの近代化改装の為の準備を進めている]
「アドミラル・クズネツォフ」には、新たな淡水化装置が設置されます。
「アドミラル・クズネツォフ」の近代化改装の契約は、2018年4月23日に締結されました。
[ロシア海軍北方艦隊のウシャコーフ勲章授与・重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフの近代化改装の契約は締結された]
「アドミラル・クズネツォフ」は、近代化改装により新型の高射ミサイル砲複合体「パーンツィリ-M」が装備されます。
[近代化改装されるウシャコーフ勲章授与・重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフは新たな高射ミサイル砲複合体パーンツィリ-Mを装備する]
更には、ロシア海軍の新型フリゲート・プロジェクト22350(「アドミラル・ゴルシコフ」型)で初めて採用される最新の高射ミサイル複合体「ポリメント-リドゥート」の装備も計画されています。
[近代化改装されるウシャコーフ勲章授与・重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフは最新高射ミサイル複合体ポリメント-リドゥートを装備する]
「アドミラル・クズネツォフ」の近代化改装の費用については、これまでに様々な数字が出ていましたが、結局、約600億ルーブルに落ち着いたようです。
[ロシア海軍北方艦隊のウシャコーフ勲章授与・重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフの近代化改装の費用は約600億ルーブルになる]
2018年7月下旬から「アドミラル・クズネツォフ」のボイラーの撤去作業が始まりました。
[近代化改装されるロシア海軍北方艦隊のウシャコーフ勲章授与・重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフのボイラーの撤去作業が始まった]
「アドミラル・クズネツォフ」は、まず始めに蒸気タービン機関の修復を行ないます。
(8基のボイラーは全て交換し、タービンエンジンはリビルド)
[近代化改装されるロシア海軍北方艦隊のウシャコーフ勲章授与・重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフは蒸気タービンエンジンを修復する]
「アドミラル・クズネツォフ」は、ボイラー交換工事の準備を行なっています。
(9月2日の時点で飛行甲板上に新品のボイラーが確認できる)
【Capt(N)氏のツイート(2018年9月3日21時38分)】
「アドミラル・クズネツォフ」は、8基のボイラー(KVG-4)を、新たに製造された高圧ボイラーKVG-4と交換します。
『Mil.Press FLOT』(フロートコム)より
2018年9月4日8時0分配信
【情報筋:「アドミラル・クズネツォフ」の新たなロシア製ボイラーは25年と見積もられている】
新たなボイラーKVG-4の寿命は25年になります。
「アドミラル・クズネツォフ」は、2018年9月17日にムルマンスク北東のロスリャコヴォの第82艦船修理工場の大型浮きドックPD-50へ入渠しました。


[近代化改装されるロシア海軍北方艦隊のウシャコーフ勲章授与・重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフは大型浮きドックPD-50へ入った]
2018年10月30日未明、大型浮きドックPD-50へ入渠していた「アドミラル・クズネツォフ」の出渠作業中、突然に電力供給が止まり、浮きドックは沈没しました。
[重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフを修理中の浮きドックPD-50で事故が発生した]
この事故により、浮きドックPD-50のクレーン1基が「アドミラル・クズネツォフ」の飛行甲板へ落下し、甲板を損傷しました。
具体的には、飛行甲板に直径5メートル程の穴が開きました。
「アドミラル・クズネツォフ」は、事故後にロスリャコヴォからムルマンスクの第35艦船修理工場へ回航され、第24埠頭(「アドミラル・クズネツォフ」がいつも停泊している場所)へ係留されました。
「アドミラル・クズネツォフ」の修理(近代化改装)作業は第35艦船修理工場の岸壁で続けられますが、現段階での作業は艦内で実施されるものが殆どであり、飛行甲板上に「障害物」が横たわっていても関係無いようです。
[浮きドックPD-50の沈没事故は重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフの修理作業を妨げない]
一方、「アドミラル・クズネツォフ」から取り外された蒸気タービンエンジンは、サンクトペテルブルクの『キーロフ-エネルゴマシュ』などへ送られ、修復されます。
その完了は2020年に予定されています。
[近代化改装中のロシア海軍北方艦隊のウシャコーフ勲章授与・重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフの蒸気タービンエンジン修復は2020年に完了する]
10月30日の浮きドック事故で「アドミラル・クズネツォフ」が受けた損傷は計52ヶ所に及び、その修復費用は約7000万ルーブルと見積もられています。
[浮きドックPD-50の沈没事故による航空母艦アドミラル・クズネツォフの損傷復旧には約7000万ルーブルの費用が掛かる]
「アドミラル・クズネツォフ」の近代化改装には約600億ルーブルが計上されているので、7000万ルーブルは、その1パーセントにも満たない数字です。
更に、損傷を受けた部分は、元々近代化改装工事の過程で交換する予定だった箇所なので、損傷を受けようが受けまいが、どのみち近代化改装予算の範囲内で交換する事になります。
従いまして、今回の事故の損傷復旧の為、新たに7000万ルーブルを出費する必要は無いわけです。
[浮きドックPD-50の沈没事故による航空母艦アドミラル・クズネツォフの損傷復旧の為の追加支出の必要は無い]
「アドミラル・クズネツォフ」の飛行甲板へ落下したクレーンは、12月下旬に撤去されました。
[浮きドックPD-50の沈没事故により航空母艦アドミラル・クズネツォフの飛行甲板へ落下したクレーンは完全に撤去されている]
「アドミラル・クズネツォフ」の火災探知システムは、予算の都合の為か、半分だけが新型に取り換えられることになるようです。
[近代化改装されるロシア海軍北方艦隊のウシャコーフ勲章授与・重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフは火災探知システムの半分を新型に替える]
更には、電力供給体系(ケーブル線)の一部も更新されます。
[近代化改装されるロシア海軍北方艦隊のウシャコーフ勲章授与・重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフは電力供給体系を部分的に更新する]
2019年3月、『統合造船業営団』総裁アレクセイ・ラフマノフ氏は、「アドミラル・クズネツォフ」の近代化改装工事の完了と海軍への引き渡しが、2021年末よりも3~4ヶ月遅れるかもしれないと発言しました。
[ロシア海軍北方艦隊のウシャコーフ勲章授与・重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフの近代化改装の完了は2021年末よりも3~4ヶ月遅れるかもしれない]
3~4ヶ月遅れるかもしれない理由は、沈没した浮きドックPD-50に代わる「アドミラル・クズネツォフ」が入渠できるドックの確保に関する問題です。
[ロシアは事故で沈没した大型浮きドックPD-50に代わる新たな浮きドックの外国への発注は計画していない]
現在の『第35艦船修理工場』の乾ドックのサイズでは、「アドミラル・クズネツォフ」は入渠できませんが、同社の2つの乾ドックを結合し、「アドミラル・クズネツォフ」が入渠できるサイズに拡張する計画は以前から有り、これが実行に移される事になりました。
現在、その為の準備が進められています。


[ムルマンスクの第35艦船修理工場は再構築(ペレストロイカ)される]
[ムルマンスクの第35艦船修理工場はロシア海軍空母アドミラル・クズネツォフ近代化改装の為にドックを拡張する]
ドックの拡張工事完了後、「アドミラル・クズネツォフ」はドックへ入ります。
ただ、それは早くても2020年になり、これに伴い、「アドミラル・クズネツォフ」の改装工事の完了も遅れる事になりますが。
[近代化改装中のロシア海軍北方艦隊のウシャコーフ勲章授与・重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフは2020年にドックへ入る]
結合・拡張された『第35艦船修理工場』の新たな乾ドックは、「アドミラル・クズネツォフ」以外にも、北方艦隊の大型水上艦や原子力潜水艦などの整備や修理に使われる事になるでしょう。
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