新世代汎用ヘリコプター揚陸ドック艦セヴァストーポリは2025年にロシア海軍へ引き渡される

『ロシア通信社ノーボスチ』より
2019年6月5日3時10分配信
【情報筋は最初のロシア版「ミストラル」の開発について話した】
モスクワ、6月5日-ロシア通信社ノーボスチ
ヘリコプター母艦「ミストラル」型と同類の汎用ドック艦の設計を、ロシアは2020年に始める。
このような艦は海軍により2隻が発注され、その内の1隻目は2025年の受領を計画している。
『ロシア通信社ノーボスチ』は情報筋より伝えられた。
「2020年には、ミストラルと同類の汎用ドック艦の技術的開発への移行が計画されております。
2隻の艦の発注が計画されており、この内の1隻の(海軍への)引き渡しは、2025年を目標にしております」
対談者は話した。
彼は、競作に基づき、ロシアの計画設計局の1つから、より良い設計が選ばれる事を指摘した。
このような艦は、各々が12~16機のヘリコプターの搭載を可能にする。
情報提供者は、このヘリコプター母艦は、『統合造船業営団』総裁アレクセイ・ラフマノフが何度も作成計画を表明した遠征探検艦に非ず、他の独自プロジェクトである事を強調した。
12億ユーロの価格の2隻の「ミストラル」型ヘリコプター母艦の供給契約は、フランスのDCNS/STXと『ロソボロネクスポルト』の間で2011年に締結された。
「ウラジオストク」と命名された1番艦をフランスは2014年11月に引き渡さなければならなかったが、ウクライナの出来事に関連し、ロシアに対する制裁が導入されたが故に、フランス大統領フランソワ・オランドは契約履行の停止を決定した。
2018年8月、国産ヘリコプター母艦の作成の必要性に関するプレス討論会が開催された。
産業省のトップ、デニス・マントゥロフは、ロシアはヘリコプター母艦と共に、艦上にヘリコプターを搭載可能な汎用揚陸艦を建造すると語った。
次に、『統合造船業営団』のトップ、アレクセイ・ラフマノフは、『統合造船業営団』が海軍の為の遠征探検艦を建造すると『ロシア通信社ノーボスチ』へ伝えた。
その後、マントゥロフは『ロシア通信社ノーボスチ』のインタビューに対し、ロシアはヘリコプター母艦の建造が可能であると話した。
2011年6月にロシアはフランスへ2隻の「ミストラル」級ヘリコプター揚陸ドック艦(ヘリコプター空母)を発注し、「ウラジオストク」、「セヴァストーポリ」と命名された艦は2014年と2015年に引き渡される筈でしたが、フランスはウクライナ情勢に関連して引き渡しを凍結しました。
2015年8月5日、ロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチンとフランス大統領フランソワ・オランドは電話で会談し、「ミストラル」級ヘリコプター揚陸ドック艦の建造・供給契約の終了(破棄)を決定しました。
[ロシアとフランスはロシア海軍向けミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦の契約を終了させた]
フランスはロシアへ補償金として約9億5000万ユーロを支払い、2隻の「ミストラル」級に設置されたロシア製機器は全て取り外してロシアへ返却されました。
[ロシア海軍向けミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦の契約終了によりフランスはロシアへ9億4975万4849ユーロを支払う]
[ロシア海軍向けだった2隻のミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦から取り外されたロシア製機器は全てロシアへ到着した]
[ロシア向けだった2隻のミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦から取り外されたロシア製機器はロシア海軍へ引き渡される]
その後、2隻の「ミストラル」級はエジプトへ売却されました。
(1番艦は「ガマール・アブドゥル=ナーセル」、2番艦は「アンワル・アッ=サーダート」と改名)
「ガマール・アブドゥル=ナーセル」(旧「ウラジオストク」):2016年6月2日にエジプト海軍へ引き渡し。

「アンワル・アッ=サーダート」(旧「セヴァストーポリ」):2016年9月16日にエジプト海軍へ引き渡し。

一方、ロシアは、以前からロシア版ミストラルとも言える大型の全通甲板ヘリコプター揚陸艦(汎用ヘリコプター揚陸艦)の設計を進めており、2015年6月には、汎用ヘリコプター揚陸艦の概念設計案「ラヴィーナ」の詳細が公表されました。
[ロシア海軍将来汎用揚陸ヘリコプター搭載艦プロジェクト「ラヴィーナ」]
[ロシア海軍の為の将来大型揚陸艦は複数のヴァージョンが設計されている]
[ロシア海軍の為の新たなヘリコプター揚陸艦の設計は進められている]
[汎用揚陸ヘリコプター母艦「ラヴィーナ」]
満載排水量:24000トン
全長:200メートル
幅:33メートル
吃水:5メートル
速力:22ノット
航続距離:5000海里
自立行動期間:60日
乗員:320名
積載能力:海軍歩兵隊員500名、各種戦闘車両50両
搭載機:ヘリコプター×16機(Ka-29、Ka-52K、Ka-27)
搭載艇:揚陸艇×6隻
兵装:AK-176MA 76mm単装砲×1基
高射ミサイル砲複合体「パーンツィリ-M」×2基
高射砲複合体「パラシ」×3基
AK-630M2「ドゥエト」30mm機関砲×2基
この概念設計案「ラヴィーナ」をベースにして、ロシア海軍向けとなる汎用ヘリコプター揚陸艦が設計され、実際に建造されることになります。
[ロシア海軍の為の将来汎用ヘリコプター母艦プリボイ級の設計作業は進められている]
汎用ヘリコプター揚陸艦の為に新たな戦闘情報管理システムも開発されます。
[ロシア海軍将来汎用揚陸艦の為の新たな戦闘情報管理システムが開発される]
搭載機は、元々は「ミストラル」用に開発された艦上攻撃ヘリコプターKa-52K「カトラン」などになります。
[ロシア海軍向けの艦上攻撃ヘリコプターKa-52Kカトランの試験完了の為にはロシア国防省との新たな契約が必要となる]
この他、ソ連時代に生産された戦闘輸送ヘリコプターKa-29も搭載されるようです。
Ka-29は1990年代以降は予備役として保管されていましたが、2016年から修復が始まりました。
[ロシア海軍太平洋艦隊の艦上輸送戦闘ヘリコプターKa-29は飛行訓練を行なった]
「ロシア版ミストラル」の建造は『2018-2027年の国家軍備プログラム』の枠組みで開始される予定です。
[ロシア造船業界はロシア海軍の為の汎用ヘリコプター揚陸艦の建造を開始する準備を整えている]
汎用ヘリコプター揚陸艦の機関は、ディーゼル/ガスタービン複合推進CODAG(COmbined Diesel And Gas turbine)となります。
これはディーゼルが巡航用、ガスタービンが増速用であり、ロシア海軍の新型艦では、プロジェクト22350フリゲートに採用されています。
[ロシア新世代艦のガスタービンとディーゼル]
汎用ヘリコプター揚陸艦の1番艦の建造費は約400億ルーブルになると見積もられています。
[ロシア海軍の為の将来汎用ヘリコプター母艦プリボイ級の1番艦の建造費は約400億ルーブルになる]
ロシア国防省(ロシア海軍)は、セヴァストーポリ市の要望に応え、汎用ヘリコプター揚陸艦の1番艦に「セヴァストーポリ」の名前を付ける事を決定しました。
[ウラジオストクとセヴァストーポリの名はロシア海軍の将来ヘリコプター揚陸艦へ与えられる]
[ロシア海軍の為の将来汎用ヘリコプター母艦プリボイ級の1番艦はセヴァストーポリと命名される]
そして今回、「匿名希望の情報提供者」は、ロシア海軍の為の新世代汎用ヘリコプター揚陸ドック艦の設計案が、複数の設計局による競作により選ばれる事を明らかにしました。
どの設計局が競作に参加するのかは明らかにされていませんが、以前、『北方計画設計局』が汎用ヘリコプター揚陸ドック艦を設計するという話が出た事が有りました。
[ロシア海軍の新世代汎用ヘリコプター揚陸艦セヴァストーポリ型の設計は『北方計画設計局』が担当する]
一方、以前から揚陸艦の設計を手掛けている『ネヴァ川計画設計局』は、約3万トンの汎用揚陸艦の設計案を提示するようです。
[ロシア海軍の為の新世代汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)の排水量は約30000トンになる]
つまり、『北方計画設計局』と『ネヴァ川計画設計局』の競作になるという事でしょう。
この他、ロシア海軍向けなどの艦船の形状を研究する『クルイロフ国立科学センター』は、2019年6月末に開催される兵器展示会『アルミヤ-2019』において、「排水量25000~27000トンの揚陸艦」の概念設計案を提示します。
[2019年6月末の兵器展示会『アルミヤ-2019』でロシア海軍の為の新世代艦(空母、揚陸艦、駆逐艦)の概要が示される]
なお、以前にロシアが導入を計画したフランスのヘリコプター揚陸艦「ミストラル」級も、ネーデルラントの揚陸艦「ヨハン・デ・ウィット」、スペインのヘリコプター揚陸艦「フアン・カルロス1世」との競争入札という形式を取っています。
記事中で触れられていますが、今回の汎用揚陸艦は、以前に何度か話が出た新型調査船とは別物です。
[大型揚陸艦イワン・グレン型をベースにしたロシア海軍の調査船が建造される]
[大型揚陸艦イワン・グレン型をベースにしたロシア海軍の調査艦は2024年に就役する]
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