ロシア海軍の為の極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"の試験は進められている
- カテゴリ:極超音速対艦ミサイル「ツィルコン」

『タス通信』より
2019年8月29日20時48分配信
【ロシアは極超音速ミサイル「ツィルコン」の試験を行なっている】
ジュコーフスキー/モスクワ州、8月29日/タス通信
極超音速対艦ミサイル「ツィルコン」の試験は集中的に行なわれており、発注者と合意した時期に完了する。
木曜日、航空サロンMAKS-2019において、コーポレーション『戦術ロケット兵器』総取締役ボリス・オブノソフは報道陣へ伝えた。

「作業は集中的に行なわれており、発注者と合意した時期に完了します」
オブノソフは話したが、具体的な時期は言わなかった。
彼は更に、地上目標へ打撃を与える為の「ツィルコン」を作成する可能性についての話は、対艦ヴァージョンのミサイルの試験を完了させる必要が有る為に、未だ時期尚早である事を指摘した。
2月20日にロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチンが連邦教書演説で述べたように、新たなロシアの極超音速ミサイル「ツィルコン」は、約マッハ9の速度の発揮が可能であり、その射程は1000km以上となる。
国家元首は、「ツィルコン」が海上の、そして地上の目標の撃破が可能である事を指摘した。
大統領は更に、新たなミサイルは、既に製造或いは建造されたミサイル複合体「カリブル」を有する艦及び潜水艦への適応が見込まれていると述べた。
極超音速対艦ミサイル「ツィルコン」(ジルコン、風信子石)は、以前に長距離超音速有翼ミサイル「バザーリト」/「ヴルカーン」や「グラニート」、そして超音速ミサイル「オーニクス」を開発した科学生産合同『機械製造』が新たに開発しているミサイルです。
[長距離打撃ミサイル複合体バザーリト/ヴルカーン]
[有翼ミサイル複合体グラニートは軍備採用30周年を迎えた]
[ロシア海軍の超音速対艦ミサイル"オーニクス"は近代化される]
科学生産合同『機械製造』は、長距離超音速有翼ミサイル「グラニート」の直接の後継となる筈だった「ボリード」(最大射程800km、飛翔速度マッハ4)の開発を1980年代末から開始し、1991年にはエンジンの最初の試験が行われたのですが、1990年代末には開発は中止されました。
「ツィルコン」の開発には、「ボリード」の開発作業の経験もフィードバックされているようです。
「ツィルコン」に関しては、ミサイルの名前以外の確たる情報は出ていませんが、射程距離は400~500km程度、飛翔速度はマッハ5~マッハ6以上になるようです。
「ツィルコン」の発射試験は2015年秋頃から始まっています。
[ロシア海軍の為の極超音速巡航ミサイル"ツィルコン"の試験が始まった]
「ツィルコン」の試験は、アルハンゲリスク州のネノクサ村に在るロシア海軍のミサイル発射試験場で行なわれており、初期には失敗した事も有るようです。
[ロシア海軍の為の巡航ミサイルは試射中にアルハンゲリスク州ネノクサ村の住宅へ落下した]



「ツィルコン」の発射試験は秘密裡に行なわれていますが、2016年4月に行なわれた試験では最大速度マッハ8を記録しました。
[ロシア海軍の為の極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"は発射試験で最大速度マッハ8に達した]
「ツィルコン」の試験完了と生産開始は、2018年からスタートする新たな国家軍備プログラム(2018-2027年の国家軍備プログラム)において実現する事になります。
[ロシア海軍の為の極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"は新たな2018-2027年の国家軍備プログラムにおいて開発を完了し、生産を開始する]
これまでに「ツィルコン」は、ネノクサ村のミサイル発射試験場から10回以上の発射試験が行なわれています。
[ロシア海軍の為の極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"は10回以上の発射試験を行なった]
2019年2月20日、ロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチン氏は、教書演説において極超音速対艦ミサイル「ツィルコン」の開発は順調に進んでいると発言しています。
[ロシア海軍の為の極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"の開発は滞りなく進んでいる]
これまでに地上からの発射試験のみが行なわれている「ツィルコン」ですが、2019年末には北方艦隊のプロジェクト22350フリゲートの1番艦「アドミラル・ゴルシコフ」(2018年7月28日就役)により初の海上発射試験が行なわれます。
[ロシア海軍の新たな極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"は2019年末にフリゲート"アドミラル・ゴルシコフ"で洋上発射試験を行なう]
潜水艦(水中)からの発射試験は、2020年に最新鋭の原子力水中巡洋艦K-561「カザン」(2019年末に就役予定)で行なわれる事になるようです。
[ロシア海軍の新たな極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"は2020年に原子力水中巡洋艦カザンで水中からの発射試験を行なう]
「ツィルコン」の海上での発射試験は2022年末までには完了し、2023年にはロシア海軍の軍備として採用されます。
[極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"は2023年にロシア海軍へ制式採用される]
「ツィルコン」は、超音速対艦ミサイル「オーニクス」と対地/対艦巡航ミサイル「カリブル」の両方を発射できる汎用垂直発射機3S-14UKSKから発射できます。
(つまり、「カリブル」や「オーニクス」と発射機を共有できる)
「ツィルコン」は、ロシア海軍の新世代艦であるプロジェクト22350フリゲート及びプロジェクト22350Mフリゲート、プロジェクト885/885M「ヤーセン」原子力水中巡洋艦に装備されます。
この他、現在、大規模な近代化改装が行なわれている重原子力ロケット巡洋艦「アドミラル・ナヒーモフ」にも装備されます。
[ロシア海軍の重原子力ロケット巡洋艦アドミラル・ナヒーモフの近代化改装は2022~2023年に完了する]
更に、今後に大規模な近代化改装が行なわれる同型艦の「ピョートル・ヴェリキー」にも装備されます。
[ロシア海軍の重原子力ロケット巡洋艦ピョートル・ヴェリキーは近代化改装により極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"を装備するかもしれない]
[ロシア海軍北方艦隊の重原子力ロケット巡洋艦ピョートル・ヴェリキーの近代化改装は2020年に始まる]
同様に大規模な近代化改装が行なわれる4隻のプロジェクト949A原子力水中巡洋艦(オスカーII級巡航ミサイル原潜)にも装備されます。
[ロシア海軍のプロジェクト949A原子力水中巡洋艦(オスカーII級)は近代化改装により極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"を装備する]
「ツィルコン」は、実質的には「グラニート」の後継という位置付けになるようです。
この他、現在、設計作業が進められており、2020年代から建造が始まるロシア海軍第5世代原子力潜水艦「ハスキー」/「ライカ」級にも装備されます。
[ロシア第5世代多目的原子力潜水艦プロジェクト「ハスキー/ライカ」]
基本的には大型水上艦及び原子力潜水艦に搭載される「ツィルコン」ですが、より小型の艦へ搭載する為の小型ヴァージョンも開発されます。
[ロシア海軍の小型艦の為に極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"軽量化型が開発される]
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