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ロシア海軍の為の新世代汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻は2020年5月にクリミア半島ケルチ市のザリフ造船所で起工される

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『タス通信』より
2019年9月11日9時38分配信
【情報筋:ロシアの最初の2隻のヘリコプター母艦はクリミアの造船所で2020年春に起工される】
モスクワ、9月11日/タス通信

ロシアの最初の2隻の汎用揚陸艦は、クリミア造船工場『ザリフ』で2020年5月に起工される。
水曜日、『タス通信』は、2名の造船分野の情報提供者より伝えられた。

「ロシア史上初の排水量15000トンの2隻の汎用揚陸艦は、ケルチの造船工場『ザリフ』で2020年の起工が計画されております」
対談者の1人は話した。
彼は、トップ艦の海軍への引き渡しは、今の国家軍備プログラムの完了までに計画されていると付け加えた。
それは2027年末までとなる。

他の情報提供者は明らかにした。
「双方の艦の起工は、2020年5月に行なわれます」
彼は、各艦の排水量は15000トンである事を確認した。
彼によると、は、様々なクラスの10機以上のヘリコプターを搭載でき、更には、揚陸艇の為の大型ドック室を得る。

対談者は更に伝えた。
「新たな艦の技術設計開発は最終段階に在り、それが完了した後、数ヶ月以内には汎用揚陸艦の建造契約へ署名します」

『タス通信』は、情報提供者より提供された情報を公式に確認していない。

[汎用揚陸艦]
以前、造船分野の他の情報提供者は、国防省によるロシア初の汎用揚陸艦の戦術-技術的課題の形成の完了は、2019年末よりも遅くはならないと『タス通信』へ伝えた。
彼によると、汎用揚陸艦のトップの建造及び発注者への引き渡しは、2027年までの国家軍備プログラムの枠内で計画されており、生産艦は2030年初頭になる。

ケルチ工場『ザリフ』は、全長300メートル、幅50メートルまでのを建造する為の造船場所を有しており、排水量15万トン以上のを建造できる。

ヘリコプター母艦とも呼ばれる汎用揚陸艦は、様々な用途の重ヘリコプターの大規模グループの搭載(「ミストラル」は16機、アメリカ「ワスプ」型は30機以上)、更には数百名から1000名の海軍歩兵隊員の移送が可能である。
この他、汎用揚陸艦は、揚陸部隊の上陸、装甲車両の移送を保障する及び他の水上手段の為のドックを有する。



2011年6月にロシアフランスへ2隻の「ミストラル」級ヘリコプター揚陸ドック艦(ヘリコプター空母)を発注し、「ウラジオストク」、「セヴァストーポリ」と命名された艦は2014年と2015年に引き渡される筈でしたが、フランスウクライナ情勢に関連して引き渡しを凍結しました。

2015年8月5日、ロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチンフランス大統領フランソワ・オランドは電話で会談し、「ミストラル」級ヘリコプター揚陸ドック艦の建造・供給契約の終了(破棄)を決定しました。
[ロシアとフランスはロシア海軍向けミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦の契約を終了させた]

フランスロシアへ補償金として約9億5000万ユーロを支払い、2隻の「ミストラル」級に設置されたロシア製機器は全て取り外してロシアへ返却されました。
[ロシア海軍向けミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦の契約終了によりフランスはロシアへ9億4975万4849ユーロを支払う]
[ロシア海軍向けだった2隻のミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦から取り外されたロシア製機器は全てロシアへ到着した]
[ロシア向けだった2隻のミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦から取り外されたロシア製機器はロシア海軍へ引き渡される]

その後、2隻の「ミストラル」級エジプトへ売却されました。
(1番艦は「ガマール・アブドゥル=ナーセル」、2番艦は「アンワル・アッ=サーダート」と改名)

「ガマール・アブドゥル=ナーセル」(旧「ウラジオストク」):2016年6月2日にエジプト海軍へ引き渡し。
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「アンワル・アッ=サーダート」(旧「セヴァストーポリ」):2016年9月16日にエジプト海軍へ引き渡し。
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一方、ロシアは、以前からロシア版ミストラルとも言える大型の全通甲板ヘリコプター揚陸艦(汎用ヘリコプター揚陸艦)の設計を進めており、2015年6月には、汎用ヘリコプター揚陸艦の概念設計案「ラヴィーナ」の詳細が公表されました。
[ロシア海軍将来汎用揚陸ヘリコプター搭載艦プロジェクト「ラヴィーナ」]
[ロシア海軍の為の将来大型揚陸艦は複数のヴァージョンが設計されている]
[ロシア海軍の為の新たなヘリコプター揚陸艦の設計は進められている]

[汎用揚陸ヘリコプター母艦「ラヴィーナ」]
満載排水量:24000トン
全長:200メートル
幅:33メートル
吃水:5メートル
速力:22ノット
航続距離:5000海里
自立行動期間:60日
乗員:320名
積載能力:海軍歩兵隊員500名、各種戦闘車両50両
搭載機:ヘリコプター×16機(Ka-29、Ka-52K、Ka-27)
搭載艇:揚陸艇×6隻
兵装:AK-176MA 76mm単装砲×1基
高射ミサイル砲複合体「パーンツィリ-M」×2基
高射砲複合体「パラシ」×3基
AK-630M2「ドゥエト」30mm機関砲×2基


この概念設計案「ラヴィーナ」をベースにして、ロシア海軍向けとなる汎用ヘリコプター揚陸艦が設計され、実際に建造されることになります。
[ロシア海軍の為の将来汎用ヘリコプター母艦プリボイ級の設計作業は進められている]

汎用ヘリコプター揚陸艦の為に新たな戦闘情報管理システムも開発されます。
[ロシア海軍将来汎用揚陸艦の為の新たな戦闘情報管理システムが開発される]


搭載機は、元々は「ミストラル」用に開発された艦上攻撃ヘリコプターKa-52K「カトラン」などになります。
[ロシア海軍の為の艦上攻撃ヘリコプターKa-52Kカトランは4機のプロトタイプが製造された]


この他、ソ連時代に生産された戦闘輸送ヘリコプターKa-29も搭載されるようです。
Ka-29は1990年代以降は予備役として保管されていましたが、2016年から修復が始まりました。
[ロシア海軍太平洋艦隊の艦上輸送戦闘ヘリコプターKa-29は飛行訓練を行なった]

「ロシア版ミストラル」の建造は『2018-2027年の国家軍備プログラム』の枠組みで開始される予定です。
[ロシア造船業界はロシア海軍の為の汎用ヘリコプター揚陸艦の建造を開始する準備を整えている]

汎用ヘリコプター揚陸艦の機関は、ディーゼル/ガスタービン複合推進CODAG(COmbined Diesel And Gas turbine)になるようです。
これはディーゼルが巡航用、ガスタービンが増速用であり、ロシア海軍の新型艦では、プロジェクト22350フリゲートに採用されています。
[ロシア新世代艦のガスタービンとディーゼル]

ロシア国防省(ロシア海軍)は、クリミア半島セヴァストーポリ市の要望に応え、汎用ヘリコプター揚陸艦の1番艦に「セヴァストーポリ」の名前を付ける事を決定しています。
[ウラジオストクとセヴァストーポリの名はロシア海軍の将来ヘリコプター揚陸艦へ与えられる]
[ロシア海軍の為の将来汎用ヘリコプター母艦プリボイ級の1番艦はセヴァストーポリと命名される]


新世代汎用揚陸艦の建造場所としては、以前にはサンクトペテルブルク『北方造船所』などが有力視されていましたが、最近になって、クリミア半島ケルチ市造船工場『ザリフ』で建造する案が浮上してきました。
[クリミア共和国ケルチ市のザリフ造船所はロシア海軍将来空母の建造へ参加できる]
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新世代汎用揚陸艦の排水量も、以前には25000~30000トンクラスになると言われていましたが、それよりも小さい15000トン程度になるようです。
ヘリコプターの搭載機数は10機程度になるようです。
(つまり、上記の「ラヴィーナ」の小型版)

ソ連邦時代に2隻が建造され、黒海艦隊へ配備された対潜巡洋艦(ヘリコプター巡洋艦)「モスクワ」型(プロジェクト1123)の満載排水量が15280トンでしたから、大体「モスクワ」型と同クラスの艦になるようです。
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新世代汎用揚陸艦の1番艦(セヴァストーポリ)は、2027年末までにロシア海軍へ引き渡される予定との事です。


なお、ロシア統合造船業営団総裁アレクセイ・ラフマノフ氏は、この情報を否定しました。
『ロシア通信社ノーボスチ』より
2019年9月11日12時3分配信
【『統合造船業営団』はクリミアでのヘリコプター母艦建造計画の報道へ反論した】
ラフマノフ氏は
「そのような話は未だ何も有りませんし、未だプロジェクトは有りません。
何処で建造するのかは、国が決める事です」
と言っています。

つまり、現段階においては「そういう提案も有る」といった程度のものでしょう。
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