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ロシア海軍の為の超音速打撃ミサイル"オーニクス-M"の開発は進められている

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『タス通信』より
2019年9月25日9時35分配信
【情報筋:ロシアは射程800kmの有翼ミサイル「オーニクス-M」を開発している】
モスクワ、9月25日/タス通信

科学生産合同『機械製造』は、最大射程距離800kmで海上及び地上目標への攻撃精度が増大した海上配置有翼ミサイル「オーニクス-M」を開発している。
ミサイルの飛翔試験は数ヶ月以内に始まる。
『タス通信』は、ロシア連邦防衛産業企業体の2名の情報提供者より伝えられた。

「現用兵器である有翼ミサイル"オーニクス"をベースに、新たなヴァージョン-オーニクス-Mが開発されます。
これは800kmの最大攻撃距離を得ます」

対談者の1人は話した。

情報提供者は説明した。
「ミサイルは改善された制御システムを装備し、海上や地上の目標を、より正確に攻撃できます」
更に、電波電子戦闘手段の影響からのミサイルの防護は向上していると対談者は付け加えた。

他の防衛分野の情報提供者は、「オーニクス」最新ヴァージョンの飛行-設計試験は、9月上旬にバレンツ海エリアの北方艦隊海上射爆場で開始される筈だったと『タス通信』へ話した。
この試験の安全保障の為、民間船舶航行及び民間機の飛行は、数か所の海域で禁止された。
「しかし、製品の試験モデルに追加の点検が必要だったが故に、発射は実行されませんでした」
「オーニクス-Mの飛翔試験は、1~2ヶ月以内に始まる予定です」

対談者は話した。

情報提供者によると、現用兵器である「オーニクス」、近代化されるミサイルは、通常弾頭並びに核弾頭の搭載が可能である。
「オーニクス-M」の最大速度及び重量-寸法特性は、ベースヴァージョンのミサイルのままである。
「オーニクス」を開発した科学生産合同『機械製造』は、情報提供者から提示された情報にコメントしなかった。

[有翼の「オーニクス」]
以前、科学生産合同『機械製造』は、「オーニクス」の改良を計画していると述べたが、具体的な特性は如何なるものになるのかという話については明らかにしなかった。
「はい、私共は、この対艦ミサイル複合体の有効性を高める為、ミサイル"オーニクス"の飛行特性の向上を提案しております」
9月13日に同社の代理人は『タス通信』へ話した。

製造者のデータによると、「オーニクス」と輸出ヴァージョン(ミサイル「ヤーホント」)の射程距離は、今日において300kmである。
ミサイルの最大飛翔速度は、高空でマッハ2.5であり、弾頭部分の重量は250kgである。

ミサイル「オーニクス」を有する対艦ミサイル複合体P-800の開発は1982年に始まり、2002年に軍備採用された。
複合体水上艦及び潜水艦の兵装であり、例えば、このミサイルは、プロジェクト885多目的潜水艦のトップ「セヴェロドヴィンスク」に搭載されている。

「オーニクス」をベースにしてロシア-インドミサイル「ブラモス」が作成された。
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MAKS-2019において、合同会社『ブラモス』インド側のトップ、クマール・ミシュラは、有翼ミサイル「ブラモス」の射程距離は800kmまで延長できると『タス通信』へ伝えた。
この時、彼は、このような技術的可能性は存在する事を指摘した。




【株式会社「軍事産業団体・科学生産合同『機械製造』」】

[新世代超音速対艦ミサイル「オーニクス」(ヤーホント)]

汎用対艦有翼ミサイル「オーニクス」(輸出名「ヤーホント」)の開発は1981年6月5日に正式決定され、1982年3月10日には科学生産合同『機械製造』による予備設計案が採用されました。

潜水艦による水中発射試験を行なう為、プロジェクト670M原子力潜水艦K-452が1986年6月25日から1992年7月10日までプロジェクト06704改造を実施しました。
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K-452(1992年6月3日からB-452)は、1992年から1998年まで「オーニクス」ミサイルの発射試験に従事しました。

水上艦による水上発射試験の為にプロジェクト1234小型ロケット艦「ナカト」が改造され、1996年から発射試験が行なわれました。
[「オーニクス(ヤホント)」試験艦「ナカト」]
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「ナカト」による「オーニクス」の発射試験は、1990年代末に資金難で中断された後2000年代初頭に再開され、「オーニクス」は2002年9月23日付でロシア海軍へ軍備採用されました。
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一方、「オーニクス」搭載艦として、プロジェクト885「ヤーセン」原子力水中巡洋艦プロジェクト22350フリゲートの建造も始まりましたが、財政難などにより工事は遅延し、就役は大幅に遅れました。
[プロジェクト885ヤーセン原子力水中巡洋艦]
[プロジェクト22350フリゲート(アドミラル・ゴルシコフ」型)]

ロシア海軍原子力水中巡洋艦「セヴェロドヴィンスク」は、就役前の2013年11月上旬に初めて「オーニクス」を発射しています。
[原子力潜水艦セヴェロドヴィンスクは超音速対艦ミサイル「オーニクス」を発射した]

「オーニクス」は、近代化改装されるプロジェクト11442重原子力ロケット巡洋艦、プロジェクト949A原子力水中巡洋艦にも搭載されます。
[ロシア海軍北方艦隊の重原子力ロケット巡洋艦アドミラル・ナヒーモフの近代化改装は2022年末に完了する]
[近代化改装されるロシア海軍太平洋艦隊のプロジェクト949A原子力水中巡洋艦(オスカーII級)の1隻目は2021年以降に復帰する]

「オーニクス」は、対地/対艦ミサイル「カリブル」と共用の汎用ミサイル垂直発射機3S-14UKSKから発射されます。
[汎用ミサイル垂直発射機3S-14UKSK]

「オーニクス」の地上発射型である「バスチオン」は、ロシア海軍の各艦隊(北方艦隊、太平洋艦隊、黒海艦隊、バルト艦隊)へ配備されています。


「バスチオン」は、2016年11月15日にシリア領内テロ組織を攻撃しています。
現在の所、これが「オーニクス」系列ミサイルの唯一の実戦での使用例です。

[ロシア海軍黒海艦隊の最新警備艦アドミラル・グリゴロヴィチはシリア領内のテロ組織へ巡航ミサイルを発射した]


軍備採用から10年以上経過した2016年初頭までに、科学生産合同『機械製造』「オーニクス」のソフトウェア面での改良を行ないました。
[ロシア海軍の超音速対艦ミサイル"オーニクス"は近代化される]

科学生産合同『機械製造』は、「オーニクス」の更なる改良を計画しています。
[ロシア海軍の超音速対艦ミサイル"オーニクス"は更に改良される]

今回の記事で初めて名前が出た「オーニクス-M」が、その更なる改良型になるようです。

「オーニクス-M」は、ミサイルのサイズや最大速度は、元の「オーニクス」と同一ですが、最大射程距離が800kmに延伸され、攻撃精度も向上します。

元の「オーニクス」の射程距離が300kmですから、2.6倍に増大する事になります。

一見すると無理があるようですが、元々、「オーニクス」(ヤーホント)の射程距離300kmというのは、技術的理由ではなく、政治的理由(ミサイル技術管理レジームにより、最大射程300kmを超えるミサイルは外国へ輸出できない)により決められたものです。

輸出を考慮せず、自国(ロシア海軍)だけで使うのならば、射程を300kmに抑える必要は無いわけです。


科学生産合同『機械製造』は、ソヴィエト連邦時代には2種類の超音速対艦ミサイルを開発しています。
[長距離打撃ミサイル複合体バザーリト/ヴルカーン]
[有翼ミサイル複合体グラニートは軍備採用30周年を迎えた]

現在は、極超音速対艦ミサイル「ツィルコン」の開発を進めています。
極超音速対艦ミサイル「ツィルコン」
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