ロシア海軍の為の2万5千トン級汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻は2020年5月にクリミア半島で起工される?

『タス通信』より
2019年11月17日14時9分配信
【情報筋:ロシアの汎用揚陸艦は900名の海軍歩兵を移送できる】
モスクワ、11月17日/タス通信
(ロシア)海軍は、2020年にクリミアでの起工が計画されている最初のロシア製汎用揚陸艦の要目を定めた。
各々の艦は25000トンの排水量を得て、900名の海軍歩兵を移送できる。
『タス通信』は日曜日に造船分野の情報提供者より伝えられた。
「このプロジェクトの汎用揚陸艦は、20機以上の重ヘリコプターを搭載でき、揚陸艇の為のドック室を得て、約900名の2個海軍歩兵強化大隊の移送が可能となります」
対談者の1人は話した。
他の情報提供者は、汎用揚陸艦の排水量は、(以前の)計画よりも大きくなると述べた。
「海軍は、クリミアの工場『ザリフ』で2020年5月に集中起工される2隻の汎用揚陸艦の戦術-技術的課題を提示しました。
各艦は約25000トンの排水量を有し、全長は220メートルになります」
対談者は話した。
以前には、ヘリコプター母艦の排水量は約15000トンになると伝えられた。
『タス通信』は、情報提供者から提示された情報を公式に確認していない。
来たる2020年5月、最初の2隻のロシア製ヘリコプター母艦が造船工場『ザリフ』(ケルチ)で起工されると9月に『タス通信』は造船分野の情報提供者より伝えられた。
その後、『ザリフ』でのヘリコプター母艦建造計画の情報は、クリミア共和国の産業政策担当副長官エレーナ・イレクチャンにより確認された。

[艦について]
ヘリコプター母艦とも呼ばれる汎用揚陸艦は、様々な用途の重ヘリコプターグループの搭載(「ミストラル」は16機、アメリカの「ワスプ」型は30機以上)、数百名から1000名の海軍歩兵の移送が可能である。
汎用揚陸艦は、揚陸部隊の上陸と装甲車両の移送を保障する艇の為のドックを装備する。
2011年6月にロシアはフランスへ2隻の「ミストラル」級ヘリコプター揚陸ドック艦(ヘリコプター空母)を発注し、「ウラジオストク」、「セヴァストーポリ」と命名された艦は2014年と2015年に引き渡される筈でしたが、フランスはウクライナ情勢に関連して引き渡しを凍結しました。
2015年8月5日、ロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチンとフランス大統領フランソワ・オランドは電話で会談し、「ミストラル」級ヘリコプター揚陸ドック艦の建造・供給契約の終了(破棄)を決定しました。
[ロシアとフランスはロシア海軍向けミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦の契約を終了させた]
フランスはロシアへ補償金として約9億5000万ユーロを支払い、2隻の「ミストラル」級に設置されたロシア製機器は全て取り外してロシアへ返却されました。
[ロシア海軍向けミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦の契約終了によりフランスはロシアへ9億4975万4849ユーロを支払う]
[ロシア海軍向けだった2隻のミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦から取り外されたロシア製機器は全てロシアへ到着した]
[ロシア向けだった2隻のミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦から取り外されたロシア製機器はロシア海軍へ引き渡される]
その後、2隻の「ミストラル」級はエジプトへ売却されました。
(1番艦は「ガマール・アブドゥル=ナーセル」、2番艦は「アンワル・アッ=サーダート」と改名)
「ガマール・アブドゥル=ナーセル」(旧「ウラジオストク」):2016年6月2日にエジプト海軍へ引き渡し。

「アンワル・アッ=サーダート」(旧「セヴァストーポリ」):2016年9月16日にエジプト海軍へ引き渡し。

一方、ロシアは、以前からロシア版ミストラルとも言える大型の全通甲板ヘリコプター揚陸艦(汎用ヘリコプター揚陸艦)の設計を進めており、2015年6月には、汎用ヘリコプター揚陸艦の概念設計案「ラヴィーナ」の詳細が公表されました。
[ロシア海軍将来汎用揚陸ヘリコプター搭載艦プロジェクト「ラヴィーナ」]
[ロシア海軍の為の将来大型揚陸艦は複数のヴァージョンが設計されている]
[ロシア海軍の為の新たなヘリコプター揚陸艦の設計は進められている]
[汎用揚陸ヘリコプター母艦「ラヴィーナ」]
満載排水量:24000トン
全長:200メートル
幅:33メートル
吃水:5メートル
速力:22ノット
航続距離:5000海里
自立行動期間:60日
乗員:320名
積載能力:海軍歩兵隊員500名、各種戦闘車両50両
搭載機:ヘリコプター×16機(Ka-29、Ka-52K、Ka-27)
搭載艇:揚陸艇×6隻
兵装:AK-176MA 76mm単装砲×1基
高射ミサイル砲複合体「パーンツィリ-M」×2基
高射砲複合体「パラシ」×3基
AK-630M2「ドゥエト」30mm機関砲×2基
この概念設計案「ラヴィーナ」をベースにして、ロシア海軍向けとなる汎用ヘリコプター揚陸艦が設計され、実際に建造されることになります。
[ロシア海軍の為の将来汎用ヘリコプター母艦プリボイ級の設計作業は進められている]
汎用ヘリコプター揚陸艦の為に新たな戦闘情報管理システムも開発されます。
[ロシア海軍将来汎用揚陸艦の為の新たな戦闘情報管理システムが開発される]
搭載機は、元々は「ミストラル」用に開発された艦上攻撃ヘリコプターKa-52K「カトラン」などになります。
[ロシア海軍の為の艦上攻撃ヘリコプターKa-52Kカトランは4機のプロトタイプが製造された]
この他、ソ連時代に生産された戦闘輸送ヘリコプターKa-29も搭載されるようです。
Ka-29は1990年代以降は予備役として保管されていましたが、2016年から修復が始まりました。
[ロシア海軍太平洋艦隊の艦上輸送戦闘ヘリコプターKa-29は飛行訓練を行なった]
「ロシア版ミストラル」の建造は『2018-2027年の国家軍備プログラム』の枠組みで開始される予定です。
[ロシア造船業界はロシア海軍の為の汎用ヘリコプター揚陸艦の建造を開始する準備を整えている]
汎用ヘリコプター揚陸艦の機関は、ディーゼル/ガスタービン複合推進CODAG(COmbined Diesel And Gas turbine)になるようです。
これはディーゼルが巡航用、ガスタービンが増速用であり、ロシア海軍の新型艦では、プロジェクト22350フリゲートに採用されています。
[ロシア新世代艦のガスタービンとディーゼル]
ロシア国防省(ロシア海軍)は、クリミア半島のセヴァストーポリ市の要望に応え、汎用ヘリコプター揚陸艦の1番艦に「セヴァストーポリ」の名前を付ける事を決定しています。
[ウラジオストクとセヴァストーポリの名はロシア海軍の将来ヘリコプター揚陸艦へ与えられる]
[ロシア海軍の為の将来汎用ヘリコプター母艦プリボイ級の1番艦はセヴァストーポリと命名される]
新世代汎用揚陸艦の建造場所としては、以前にはサンクトペテルブルクの『北方造船所』などが有力視されていましたが、最近(2019年9月)になって、クリミア半島ケルチ市の造船工場『ザリフ』で建造する案が浮上してきました。
[ロシア海軍の為の新世代汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻は2020年5月にクリミア半島ケルチ市のザリフ造船所で起工される]

ただ、ロシア統合造船業営団総裁アレクセイ・ラフマノフ氏は、この情報を即座に否定しました。
『ロシア通信社ノーボスチ』より
2019年9月11日12時3分配信
【『統合造船業営団』はクリミアでのヘリコプター母艦建造計画の報道へ反論した】
この時、ラフマノフ氏は
「そのような話は未だ何も有りませんし、未だプロジェクトは有りません。
何処で建造するのかは、国が決める事です」
と言いました。
そして今回、、再び2020年5月に造船工場『ザリフ』で2隻の汎用揚陸艦を起工するという話が出てきました。
建造される汎用揚陸艦の排水量は、以前の15000トンから25000トンに増加しました。
全長は220メートル、搭載機(ヘリコプター)20機以上、輸送兵員数は900名との事ですから、汎用揚陸艦概念設計案「ラヴィーナ」よりも大きくなりました。
なお、前回の話を否定した『統合造船業営団』は、今回は何も言ってません。
つまり、少なくとも否定はしておりません。
無論、これは公式筋の情報では有りませんが、1度ならず2度までも「2020年5月に造船工場『ザリフ』で汎用揚陸艦2隻が起工される」という話が出ている事から、この方向性で固まりつつあるようです。
以前には、汎用揚陸艦はサンクトペテルブルクの造船所~『北方造船所』或いは『バルト工場』での建造が有力視されていましたが、この両社は、ロシア海軍向けの水上戦闘艦(『北方造船所』)や、ロスアトム向けの原子力砕氷船(『バルト工場』)の建造で多忙を極めております。
そこで、『バルト工場』と同クラスの大型乾ドックを有しており、しかも現在は比較的小型の艦船しか建造していない造船工場『ザリフ』に白羽の矢が立ったというのは、充分に有り得る話です。
更には、クリミア共和国側からの働きかけも有るでしょう。
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