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ロシア海軍総司令官は語る

12月19日、ロシア海軍総司令官ヴィクトル・チルコフ大将は、今後のロシア海軍の展望について記者団に語りました。
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ロシア連邦軍機関紙『クラースナヤ・ズヴェズダー』より
2012年12月20日22時45分配信
【海軍への補充】

原子力潜水艦「セヴェロドヴィンスク」は2013年にロシア海軍の編制へ加入するだろう。
ロシア連邦海軍総司令官ヴィクトル・チルコフ大将は記者団に伝えた。



「現在、潜水艦は全力試験を行なっております。
潜水艦の艦内に数多くの新たな技術システム及び兵器システムが存在する事を考慮し、今、海軍と業界の共同作業は活動段階にある事は注目されます」

彼は話した。

この他、チルコフ大将は、原子力潜水艦「ウラジーミル・モノマーフ」「セヴマシュプレドプリャーチェ」造船台での建造作業を今月末に終えると伝えた。
「12月30日、この原子力潜水艦は、セヴマシュプレドプリャーチェの造船台を出る予定です。続いて、作業は完了するでしょう」
彼は表明した。

加えて、ロシア海軍は2016年までにプロジェクト1135.6警備艦6隻を受領し、2013年には大型揚陸艦「イワン・グレン」を受領する。

「2010年、沿バルト造船工場ヤンターリは、国防省の発注を受け、ロシア海軍の為のプロジェクト1135.6警備艦シリーズ6隻の建造を開始しました。
既に、このシリーズの最初の3隻~アドミラル・グリゴロヴィチ、アドミラル・エッセン、アドミラル・マカロフ~の船体は形成されています。
今年2月29日のアドミラル・マカロフの同工場での起工には、ロシア連邦政府副首相ドミトリー・ロゴージン閣下も参加しました。
間もなく、アドミラル・ブタコフと命名される4隻目のフリゲートの建造が開始されます。
全てのシリーズは、2016年までに海軍へ引き渡される予定です」

V.チルコフ氏は話した。

フリゲート以外にも、同工場ではロシア海軍の為のプロジェクト11711(カリーニングラード造船所で1960-1970年代に建造されたプロジェクト1171の発展型)大型揚陸艦「イワン・グレン」が建造されている。

海軍総司令官は、海軍の更なる発展の課題について触れた。
将来戦略用途ロケット複合体搭載艦を作成する作業は、第4世代原子力艦ロシア海軍で配置に就いている期間に実施される。
2020年までに、ロシア海軍は、戦略非核抑止戦力グループを設立する必要がある。

「海軍の戦略非核抑止戦力の基礎グループは、長射程精密兵器を装備し、中長期的には、原子力水中巡洋艦プロジェクト885M、近代化される原子力水中巡洋艦プロジェクト949M及び重原子力ロケット巡洋艦プロジェクト11442で構成されます」
ヴィクトル・チルコフ大将は表明した。

海軍総司令官は、このような戦力の中核として航空艦を持たなければならない事を強調した。
「将来的には、外国で建造されたヘリコプター揚陸ドック艦と共に、このような戦力の基礎は、新たな世代の航空艦になります」
彼はこう話し、それ(新世代航空艦)は、前世代の重航空巡洋艦とは違い、大きな排水量を有する根本的に新しい汎用戦闘艦とならなければならないと説明した。

その主要兵器は、空中で、海上で、水中で、そして多分宇宙で動作する有人及び無人(ロボット化された)戦闘手段となる。
この艦の有効性は、電波方向探知(レーダー)監視・追跡航空機と、更には偵察-打撃無人飛行装置で構成される航空グループの実在により定義される。

ヴィクトル・チルコフ氏は、この艦の作成は、航空母艦の設計と建造なくして提供されない事を強調した。
「充分に価値のある海洋航空母艦複合体の作成には、適切な艦の駐留場所、必要なインフラストラクチュア(社会的なものを含む)、飛行装置、艦の乗組員及び艦載航空隊の為の訓練センター、その他の要素が想定されます。
海洋航空母艦複合体の為の基盤は、2020年までに作成されなければなりません」

総司令官は強調した。

次に、ロシア海軍の水上戦力の基礎は、提督によると、ロボット工学手段を備えるモジュール設計艦となる。
「中期的には、海軍の遠海及び近海ゾーンにおける水上戦力の基礎は、プロジェクト22350フリゲート、プロジェクト20380コルベットになります。
これらは、広範囲に渡りロボット工学手段を装備したモジュール建造艦と交換されます」

ヴィクトル・チルコフ氏は表明した。

大洋ゾーン艦の基礎は、中長期的には、重要な対空防衛潜在力を含めた高い打撃力及び防衛力を有する新たなプロジェクトの駆逐艦になる。
更に海軍総司令官は、これらのアプローチを実行する為の最初の艦は、水域保護用の将来コルベットになると伝えた。

「この艦の開発は、既に進行中であります。
この艦は、沿岸エリアでの艦船や他の軍及び手段に対する最も複雑な任務:対潜水艦、対機雷戦、対艦、対空、機雷敷設、海岸付近の陸上グループの揚陸部隊への火力支援を実行する計画となっております」

総司令官は表明した。

彼は、水域保護用コルベットは、より大きな排水量のモジュール設計艦への移行に当たっての「牽引役」と見られていると説明した。
その後、水域コルベットによる海軍のモジュール及び複合ロボット戦闘システムへのアプローチは、他の艦に拡散され、革新的な形状の将来海軍が形成される。


記事冒頭では新たな原子力潜水艦について語られていますが、記事の大半は新たな水上艦に関するものです。
当ブログで以前に紹介したものも含まれています。
[ロシア第5世代原子力潜水艦は2030年以降に建造される]
[新世代戦略原潜ユーリー・ドルゴルーキー、12月30日に就役?]
[ロシア海軍の戦略非核戦力は多用途原潜と原子力巡洋艦から成る]

今回、チルコフ提督は、ロシア海軍将来航空母艦についても述べています。

今年(2012年)5月6日にロシア海軍総司令官に就任したチルコフ提督は、これまでにも将来航空母艦について何度も発言しています。
[ロシアは新たな駆逐艦及び巡洋艦及び空母の建造計画を続行する]
[ロシア海軍は空母を必要とする]


そして今回、チルコフ提督は、ロシア将来航空母艦は、以前の重航空巡洋艦とは違う汎用艦になると述べました。
「以前の重航空巡洋艦とは違う」と言うのは、要するに、対艦/対地用の長距離有翼ミサイルを装備しないという事です。
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チルコフ提督の言う「空中で、海上で、水中で、そして多分宇宙で動作する有人及び無人(ロボット化された)戦闘手段」とは、艦載の有人航空機及び無人航空機という意味です。
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将来航空母艦への無人航空機搭載については、2009年2月下旬にロシア造船業の総元締めである統合造船業営団の幹部が表明しています。
[ロシアは、5~6万トンの新世代原子力空母を建造する]

この時、アナトーリー・シレモフ氏は、こう述べています。
「艦は、用途に沿って機能しなければならない為、私達は、ミサイルの装備を拒否します。
航空母艦であるなら、艦の全ての構造は、打撃用兵器を装備する戦闘用航空機を搭載する為に開発されなければなりません」

ここで言う「ミサイル」とは、対艦/対地用有翼ミサイルを指しています。

以前は偵察用無人機を搭載すると言われておりましたが、今回のチルコフ提督の発言によると、「偵察-打撃無人飛行装置」が搭載されるとの事です。


今年11月下旬、ロシアが新たな「重航空巡洋艦」を開発するかのように報じられた事が有りました。
[ロシアは新たな原子力空母を開発する]

元々はイタル-タスの記事ですが、これが『ロシアの声』日本語版で紹介された為に、ロシアが再び「重航空巡洋艦」を建造すると勘違いした日本人は少なくなかったようです。

しかし、「重航空巡洋艦」云々は、この記事に登場する「ロシア連邦政府軍事産業委員会の情報提供者」の個人的な見解に過ぎません。

今回のチルコフ提督の発言を見ても、ロシアが再び「重航空巡洋艦」を建造する可能性は限りなくゼロに近いと言わざるを得ません。

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