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大型揚陸艦イワン・グレンは2013年秋に航海試験を開始する

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『イズベスチヤ』より
2012年12月25日
【揚陸艦「イワン・グレン」は来年に試験を行なう】

国防省は、工場「ヤンターリ」との艦船設計上の紛争を解決する
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ロシア海軍総司令部は、新たな大型揚陸艦「イワン・グレン」の航海試験時期を設定する。
防衛産業企業体の情報提供者が『イズべスチヤ』へ伝えた所によると、同艦は今年5月に進捗度70パーセントで進水し、2013年秋に試験へ出発する予定である。

「その結果により、大型揚陸艦は、2013年か、或いは2014年初頭に海軍へ採用されるでしょう」
彼は話した。

同艦は、最も尊敬されるソ連海軍の砲技術専門家の1人である海軍中将に因んで命名された。
建造は、2004年からカリーニングラード工場「ヤンターリ」で実施されている。

同艦は、起工時からトラブルに見舞われている。
当初の計画によると、それは、海洋からロシアの内陸河川へ移動できる小型揚陸艦だった。
その後、技術目標が変更され、海軍歩兵中隊と全ての機器及び兵器の増加、沿岸への陸揚げの為のポンツーン、2機の揚陸輸送ヘリコプターKa-29に対応する為、艦の排水量は5000トンになった。

状況に精通している防衛産業企業体の代理人は、合計で技術目標は3度に渡り変更され、建造過程においては、22回に渡る船体レイアウト、航行装置、艦載システムの変更が行なわれたと語った。

「お互いの誤解は、発注者と(契約)履行者を苦しめました。
資金は少なく、工場は、軍事輸送を行なう為、砲及びミサイル装置の撤去を示唆されました。
軍は、大型揚陸艦の為に必要な資金を常時供給すると約束しましたが、その後、彼らは、またもや資金が無い為、全てではないが、兵装を減らすと言い出しました。
3基の砲装置は撤去され、代わりに、北方及び遠隔地域の軍部隊への物資供給の為の標準コンテナ区画が設計されました」

彼は話した。

「イワン・グレン」の建造契約は今年の11月で満了を迎えた。
国防省は、「ヤンターリ」が2011年と2012年に起工した作業全てを完了させる事を条件に、契約の延長に同意した。
工場の代表は、資金供給が不十分であるが故に、この条件は実現できない事を表明した。
最終的に、12月、当事者は、契約延長で合意した。
軍当局は、全ての借金の返済を約束し、その代わり造船所は来年秋までに艦の建造を完了させる。

事実としては、全ての意見の相違を克服し、遠ざける事は出来なかった。
「ヤンターリ」の代理人は、同艦の進捗状況は70パーセントと評した。
しかし海軍総司令部の対談者は、50パーセント以下と見ていると『イズベスチヤ』に語った。

「それは、形成されている船体に変更を加える必要が有ります。
特に、バラストタンク及び積載-荷揚の為のランプの仕上げの為に。
ランプは、艦首及び艦尾部分に在り、沿岸へ部隊員及び装備を陸揚げするものです。
航海試験の期日は(来年)秋と設定されましたが、私共は、大いに疑問を感じております。
2014年中期に実行できれば良い方じゃないですかね」

総司令部の士官は述べた。

大型揚陸艦の元士官の一人は、このクラスの艦自身に疑問があり、揚陸は実質的に沿岸(ポンツーンなしの場合)から離脱する為のものであると言う。

「上陸の為には、乗組員、特に、操舵当直の高度の訓練が必要です。
彼は、正確に沿岸方向へ向かわなければなりません。
些細なミスを犯しても、艦は斜方向に上がり、機器は沿岸で動かなくなります」

彼は話した。

彼によると 「イワン・グレン」にポンツーンは必要ない。
それは沿岸への上陸にとって必要なものではない。

排水量5000トンの艦は、迅速に陸揚げを行ない、速やかに交戦ゾーンから離脱しなければなならい。
ポンツーンは、数千トンの荷物を運ぶ大型の貨物船や輸送船に必要なものである。

「ポンツーンを降ろしている間に、艦は10回は破壊されている事でしょうよ。
ポンツーンは、1個海軍歩兵中隊しか降ろせませんからね。これは馬鹿げていますよ」

士官は確言した。

独立軍事専門家で海軍の歴史に関する著書を執筆するドミトリー・ボルテンコフは、これに同意した。

「大型揚陸艦イワン・グレンは、上陸部隊を揚陸させるのに沿岸へ艦を上げる為に造られました。
この概念は、1世紀前の物です。
現在、全世界は、いわゆる水平線からの上陸に移行しています~ヘリコプターや揚陸艇の力添えを得る。
しかしながら、海軍の考えでは、艦の進捗度が70パーセントならば、完成させる事も合理的ではあります。
特に今、新たな艦は僅かしか有りません。
イワン・グレンは、古い大型揚陸艦の一部と交代させる事は出来るでしょう」

彼は『イズベスチヤ』に説明した。

しかし、地政学問題高等学院副校長コンスタンチン・シフコフ『イズベスチヤ』に対し、「イワン・グレン」は、ロシア海軍の揚陸能力を著しく増大させると説明した。

「遠隔地で独立して任務を遂行する西側列強の海軍とは異なり、我が国の海軍は、沿岸地域で陸上部隊を支援する事を目的としております。
イワン·グレン型の大型揚陸艦が短期間で沿岸へ直接に海軍歩兵中隊装甲車両、火砲、対空防衛装置の上陸を達成出来るのは、まさに驚異的です」

シフコフ氏は『イズベスチヤ』に表明した。

プロトタイプの大型揚陸艦「イワン・グレン」は、アメリカではLST(戦車を揚陸する為の艦)と見なされている。
それはアメリカ合衆国軍の隠語で「大きな緑の鯨」と呼ばれている。
LSTは、沿岸においては非常に脆弱であり、耐航性は低い。
現在、アメリカ合衆国海軍「クジラ」を放棄している。


[新型揚陸艦イワン・グレン]

プロジェクト11771大型揚陸艦「イワン・グレン」は、2004年12月24日に起工されました。

それから約8年後の2012年5月18日に進水しました。
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[新型揚陸艦イワン・グレンは進水する]

今回の記事によると、「イワン・グレン」は、資金不足のために砲兵装が廃止されたとの事です。

当初は、この図のように76mm単装砲などが搭載される筈でした。
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が、資金不足の為、砲兵装は無くなりました。
おそらくは、この図で前部に2基が設置されている反応火力一斉射撃システム(多連装ロケット発射機)も無くなっているでしょう。

以前にも報じられていますが、「イワン・グレン」は起工された後も3度に渡り大幅な設計変更が行なわれ、22回の大小さまざまな変更が加えられています。
[新型揚陸艦イワン・グレンの建造に50億ルーブルが費やされた]


今回の記事には何人かの海軍及び業界関係者や軍事専門家が登場していますが、「イワン・グレン」を高く評価する人は一人しか居ません。

ロシア地政学問題高等学院副校長コンスタンチン・シフコフ
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「イワン・グレン」には陸揚げの為のポンツーンが装備されているのが特徴ですが、大型揚陸艦に乗っていたロシア海軍士官は、このポンツーンは全く意味のない装備と酷評しています。
「イワン・グレン」は、300名の海軍歩兵、13輌の主力戦車或いは36輌の装甲兵員輸送車両を積載できますが、ポンツーンを使ってこれらの部隊を揚陸している間に、艦自体は敵の攻撃で完全に破壊されているだろうと。



「イワン・グレン」型2番艦の建造は、いちおう検討されていますが、まだ決定されていません。
[新型揚陸艦イワン・グレンの2番艦が建造されるかもしれない]
というか、建造される可能性は限りなく低いでしょう。

「ヤンターリ」は、ロシア海軍向けのプロジェクト11356M警備艦(フリゲート)3隻を建造中であり、更には、近い内に4隻目以降の建造も開始されます。
プロジェクト11356M警備艦は、2016年までに6隻がロシア海軍へ引き渡される計画です。
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プロジェクト11771大型揚陸艦の2隻目以降を建造する余裕は、当分の間「ヤンターリ」には無さそうです。
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