近代化されるロシア海軍太平洋艦隊のフリゲート"マルシャル・シャーポシニコフ"は最新高射ミサイル-砲複合体パーンツィリ-Mを装備する

『イズベスチヤ』より
2020年6月15日0時1分配信
【「パーンツィリ」の生育:フリゲート「マルシャル・シャーポシニコフ」は新たな対空防衛を装備する】
近代化を経た艦は、撃ち抜けない高射防御を得る。

近代化されるフリゲート「マルシャル・シャーポシニコフ」は、撃ち抜けない盾を得る。
『イズベスチヤ』へ軍当局の情報提供者が話したように、現在、艦への高射ミサイル-砲複複合体「パーンツィリ-M」の設置の可能性の問題が検討されている。
新たなシステムの火力は、半径20-30kmで、あらゆる敵の航空機、ヘリコプター、有翼ミサイル、爆弾、無人機の破壊を可能にする。
専門家は、複合体はフリゲートの傷つけ難さを保障し、その主砲は極超音速ミサイル「ツィルコン」となるべきであると指摘した。
[火力の疾風射]
現在、プロジェクト1155「ウダロイ」フリゲート「マルシャル・シャーポシニコフ」へ高射ミサイル-砲複複合体「パーンツィリ-M」を設置する為の幾つかの選択肢が検討されていると国防省の情報提供者は『イズベスチヤ』へ話した。
実の所、対談者によれば、新たな対空防衛複合体の最適な配置場所を決める事に関連し、幾つかの技術的な困難さが存在する。
現在、艦の艦尾部分や中央部分への配置の可能性が検討されている。
「シャーポシニコフ」が運用を始めた1986年の時点では、艦には他の要件が課せられており、現代のものとは寸法が著しく異なる対空防衛複合体が海軍の軍備として在った。
今、フリゲートは艦船修理センター『ダーリザヴォード』に在り、その近代化を完了する。
作業の枠組みで、上部構造物の20パーセント以上が既に取り外され、ゼロから再建され、更には船外機器も交換されている。
最新の機器、更にはミサイル、砲システムを艦へ設置する為には、変更が必要である。
「シャーポシニコフ」は大型対潜艦として建造され、打撃ミサイル兵器や強力な対空防衛兵器を持っておらず、専ら潜水艦ハンターとして特化されていた。
海上において、このような大型対潜艦は、打撃ミサイルと高射複合体を有するプロジェクト956「ソブレメンヌイ」駆逐艦と一緒に行動しなければならなかった。
その結果、このような艦は、敵の潜水艦を効果的に破壊する事は出来たものの、陸上の施設へ打撃を与える事は出来ず、ミサイルや航空機の前には無防備だった。
大型対潜艦は、近接ゾーン高射ミサイル複合体「キンジャール」と、30mm高射砲兵器AK-630で武装している。
「パーンツィリ-M」は、ロシアの高射ミサイル-砲複合体の艦載ヴァージョンであり、その地上ヴァージョンは「パーンツィリ-S」と呼ばれていると軍事歴史家ドミトリー・ボルテンコフは『イズベスチヤ』へ伝えた。
「パーンツィリの登場により、フリゲートの対空防衛能力は大幅に向上します」
専門家は説明した。
「特に、有翼ミサイル、無人飛行装置、自立誘導航空爆弾の攻撃を撃退する際、パーンツィリは、ソヴィエト社会主義共和国連邦時代に開発されたキンジャールよりも、到達距離と目標撃破の有効性において著しく優越しております。
複合体の陸上ヴァージョンは、シリアで戦闘の洗礼を経ており、それは良い売り込みとなりました。
高射ミサイル-砲複合体は、既に海軍の艦でテストされています。
特に、それは、プロジェクト"カラクルト"小型ロケット艦オジンツォボへ設置さ、現在、試験を完了し、海軍への引き渡しを準備しております。
今後、全ての同型の小型ロケット艦は新たな高射システムを装備します」
「パーンツィリ-M」戦闘ブロックは、8基の高射装置と2基の6銃身30mm自動砲を統合したものである。
複合体は、有翼ミサイル、対艦ミサイル、誘導爆弾、無人飛行装置、更には航空機及びヘリコプターの大規模な攻撃から様々な排水量の艦を防護する為に意図されている。
「パーンツィリ」では、2面対空防衛の原則が実現している。
このような複合体は、距離20-30kmの、事実上あらゆる敵の航空打撃からの艦船の防護を可能にし、高射ミサイルにより攻撃する。
突破した目標は、30mm速射砲に迎えられる。
その能力は、艦から半径4kmで目標の破壊の完了を可能にする。
同様の「キンジャール」と比較すると、それは武装としてミサイルのみを有しており、距離12kmまでの目標を撃破できる。
[海上の万能者]
近代化の完了後、「マルシャル・シャーポシニコフ」は汎用艦となる。
それは敵潜水艦を追跡し、破壊するのみならず、海上および地上目標へ強力なミサイル打撃を与える。
以前、『イズベスチヤ』は、フリゲートは近代化中に「カリブル」の為の発射装置が設置されると記した。
このミサイルは、少なくとも1400kmの射撃距離を有しており、低高度飛翔及び高精度航法システムにより、この弾丸は、ハイテクノロジー探知手段からは視認できなくなる。
発射装置の構造は、極超音速ミサイル「ツィルコン」の発射を助ける事を可能にする。
このミサイルは、速度マッハ8-9まで加速し、距離500km以上の目標の攻撃を可能にする。
その打撃は撃退し難い:対ミサイル対空防衛システムは、それを簡単に補足する事など出来ない。
加えて、フリゲートは、「ステルス」技術により作られた100mm砲装置A-190-01を得る。
その傾斜した未来的な側面は、敵のレーダーからは事実上見えない。
艦の近代化は、望むほどに迅速では無い:「マルシャル・シャーポシニコフ」は、昨年末に海軍への引き渡しが計画されていた。
今後は、同様のプロジェクトの下で、太平洋艦隊の一員として加入している艦の更新が計画されている。
長年に渡り、同プロジェクト大型対潜艦は、ロシア海軍の水上部隊の中核であり、ワークホースであると考えられていた。
彼らは、ロシア領海の外で一度ならず人道的活動へ参加していた事をドミトリー・ボルテンコフは指摘した。
「マルシャル・シャーポシニコフは、恐らく、それらの中で最も有名でしょう。
1988年~1989年のタンカー戦争中、それはペルシャ湾で船団を先導しました。
1990年には、内戦が始まったエチオピアからソヴィエト市民を避難させました。
1990~1991年には、ペルシャ湾で勤務に就き、『砂漠の嵐』作戦を監視しました。
2010年5月、シャーポシニコフは、アデン海峡でソマリア海賊に捕らわれたタンカー・モスクワ大学の乗組員を1人も失う事無く解放しました。
この活動は、世界中のメディアで積極的に報じられました。
その後、艦は船員の間で『海賊の脅威』というニックネームを受けました」
プロジェクト1155「ウダロイ」の下で合計12隻の大型対潜艦が建造された(更なる1隻は改善プロジェクト1155.1として)。
今、海軍には、このような艦が8隻含まれている。
それらは太平洋艦隊と北方艦隊の一員である。
プロジェクト1155大型対潜艦の8番艦「マルシャル・シャーポシニコフ」は、1983年5月25日にカリーニングラードの沿バルト造船工場『ヤンターリ』で起工され、1984年12月27日に進水し、1985年12月30日にソ連海軍へ納入されました。
1986年2月2日に太平洋艦隊へ編入され、正式に就役しました。

1987年10月1日から12月26日まで太平洋艦隊基地への移動航海を行ないました。
この間、モザンビーク、ルアンダ、セーシェル諸島、インド、ベトナムを訪問しました。
1988年7月14日から1989年2月13日までペルシャ湾で行動し、41隻の船を護送しました。

1990年にはエチオピアからソ連民間人を避難させ、この間にアブダビとアデンへ寄港しました。

1990年8月14日から18日まで朝鮮共和国のウォンサン(元山)港を訪問しました。
1990年12月15日から1991年8月30日までペルシャ湾で行動し、この間にアブダビとアデンへ寄港しました。

1992年11月から1994年4月までウラジオストクの艦船修理工場『ダーリザヴォード』でオーバーホールが行なわれました。
2003年4月16日にウラジオストクを出航し、5月にインド洋で黒海艦隊の艦船と合同演習を行ない、その後、インドを訪問しました。
[ロシア海軍、インド洋遠征(2003年4~5月):その1・太平洋艦隊のウダロイ級大型対潜艦]
2003年10月にはハワイの真珠湾を訪問しました。

2004年8月30日から9月30日まで日本の呉を訪問し、9月4日には日本海上自衛隊と捜索救助合同演習を行ないました。
2005年8月には中国の青島港を訪問しました。
2006年3月にはグアム島を訪問しています。

2008年9月15日から17日まで日本海で実弾射撃訓練を行ない、帰投した直後に火災事故が発生しました。
[大型対潜艦マルシャル・シャーポシニコフで火災発生 ]
2009年3月に修理を完了し、艦隊へ復帰しました。
「マルシャル・シャーポシニコフ」は、これまでに3度に渡りアデン湾海賊対処任務へ就いており、1度目は2010年2月24日に出港しています。
[大型対潜艦「シャーポシニコフ元帥」支隊はソマリアへ出発した]
アデン湾到着後の「マルシャル・シャーポシニコフ」艦内で打ち合わせを行なうロシア海軍海賊対処部隊幹部とアメリカ及びシンガポール海軍のアデン湾派遣部隊指揮官
(2010年4月8日)

2010年5月6日、ソマリア海賊に乗っ取られたロシアのタンカー「モスクワ大学」を解放しました。

【ソマリア海賊:露タンカー乗っ取り 翌日に解放】

『ロシア通信社ノーボスチ』情報グラフィックより。
2012年5月7日配信
【乗っ取られたタンカー「モスクワ大学」の突入解放作戦】
この時のロシア海軍海賊対処部隊指揮官は、第44対潜艦旅団司令官イリダル・アフメロフ1等海佐でした。
[ソマリア海賊対処部隊指揮官イリダル・アフメロフの華麗な戦歴]
タンカー「モスクワ大学」を乗っ取ろうとしたソマリア海賊は1名が射殺され、10名が拘束されました。


しかし、拘束された10名も、ボートに乗せられて海上へ放逐され、その後、死亡しました。


結果的に、「モスクワ大学」を襲撃したソマリア海賊は、11名全てが死亡しました。
[アデン湾における大型対潜艦マルシャル・シャーポシニコフの活躍を描いた映画が撮影される]
「マルシャル・シャーポシニコフ」は2010年6月25日に帰投しました。
2012年4月下旬に黄海で実施されたロシア-中国海軍合同演習『海洋協同-2012』へ参加しました。
[ロシア-中国海軍合同演習「海洋協同-2012」(2012年4月)]
2012年11月2日から2013年4月21日まで遠距離航海を行ない、2度目のアデン湾海賊対処任務に就きました。
[ロシア太平洋艦隊アデン湾派遣部隊はウラジオストクへ戻った]
2014年3月中旬から7月初頭までインド洋への遠距離航海を行ない、この間に3度目のアデン湾海賊対処任務を遂行しました。
[ロシア太平洋艦隊インド洋遠征(2014年3月-7月)]
2014年10月から12月までオーストラリア沖への遠距離航海を行ないました。
[オーストラリア沖へ行ったロシア海軍太平洋艦隊の軍艦はウラジオストクへ帰ってきた]
2015年3月下旬から4月上旬まで日本海で演習を行ないました。
[ロシア海軍太平洋艦隊は日本海で演習を行なう]
[ロシア海軍太平洋艦隊は演習を実施した]
2015年6月下旬から7月初頭にオホーツク海で実施された演習へ参加しました。
[ロシア海軍太平洋艦隊はオホーツク海で対潜演習を実施した]
[ロシア海軍太平洋艦隊の『決闘』演習がオホーツク海で行なわれた]
2015年10月26日に宗谷海峡を東進し、11月16日に同海峡を西進したのを最後に、洋上での活動は見られなくなりました。
『日本国防衛省・統合幕僚監部公式サイト』より
2015年10月26日発表
【ロシア海軍艦艇の動向について】
『日本国防衛省・統合幕僚監部公式サイト』より
2015年11月16日発表
【ロシア海軍艦艇の動向について】
2016年春からウラジオストクの艦船修理工場『ダーリザヴォード』で近代化改装工事が始まりました。


2基の「ラストルブ」対潜ミサイル4連装発射筒、AK-100 100mm単装砲2番砲塔、ガスタービンエンジンなどが撤去されました。
ガスタービンエンジンは『クロンシュタット海洋工場』へ送られ、修復されました。
[クロンシュタット海洋工場はロシア海軍の全ての艦艇用ガスタービンエンジンを修理する]
「マルシャル・シャーポシニコフ」は、近代化改装により対艦ミサイル「ウラン」を装備します。
[ロシア海軍太平洋艦隊の大型対潜艦マルシャル・シャーポシニコフは近代化改装によりウラン対艦ミサイルを装備する]
「ウラン」4連装発射筒(3R-60U)は、「ラストルブ」対潜ミサイル4連装発射筒の在った場所に設置されるようです。

この他、有翼ミサイル「カリブル」用の垂直発射機3S-14も装備されます。
ブログ『BMPD』より
2017年8月19日配信
【大型対潜艦「マルシャル・シャーポシニコフ」の近代化で2基の汎用垂直発射装置3S-14モジュールが設置される】
3S-14発射機は100mm単装砲2番砲塔の有った場所に設置されました。

2018年2月16日、「マルシャル・シャーポシニコフ」で、溶接作業中に木製足場へ引火した事により火災が発生しました。
[ウラジオストクで近代化改装中のロシア海軍太平洋艦隊の大型対潜艦マルシャル・シャーポシニコフで火災が発生した]
その後、『ダーリザヴォード』の乾ドックへ入渠しました。
[近代化改装中のロシア海軍太平洋艦隊の大型対潜艦マルシャル・シャーポシニコフ近影(2018年7月11日)]
2019年11月13日までに乾ドックを出ました。
[近代化改装中のロシア海軍太平洋艦隊のフリゲート(大型対潜艦)マルシャル・シャーポシニコフはウラジオストクの乾ドックを出た]
その後、『ダーリザヴォード』の岸壁で艤装工事が進められています。
「マルシャル・シャーポシニコフ」はAK-100 100mm砲の1番砲塔も撤去され、代わりにロシア海軍の新世代水上艦にも装備されているA-190-01「ウニヴェルサール」100mm単装砲が設置されます。
[近代化改装されるロシア海軍太平洋艦隊のフリゲート"マルシャル・シャーポシニコフ"は新たな100mm砲を得る]
更に、「マルシャル・シャーポシニコフ」には、最新の高射ミサイル-砲複合体「パーンツィリ」も装備されるようです。
[ロシア海軍は最初の新型高射複合体パーンツィリ-MEを受領する]
「マルシャル・シャーポシニコフ」は、2020年後半(つまり7月以降)に工場岸壁での係留試験を開始し、それが終わった後に航行試験を行ないます。
[近代化されるロシア海軍太平洋艦隊のフリゲート"マルシャル・シャーポシニコフ"は2020年後半に係留試験と洋上試験を行なう]
[近代化されるロシア海軍太平洋艦隊のフリゲート"マルシャル・シャーポシニコフ"の洋上試験は延期される]
「マルシャル・シャーポシニコフ」の再就役は、2020年末に予定されています。
[ロシア海軍太平洋艦隊のフリゲート"マルシャル・シャーポシニコフ"の近代化改装は2020年末に完了する]
[近代化改装されるロシア海軍太平洋艦隊の大型対潜艦(フリゲート)マルシャル・シャーポシニコフと原子力水中巡洋艦イルクーツクは極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"を使用できる]
近代化改装後の「マルシャル・シャーポシニコフ」は、大型対潜艦からフリゲートへ類別変更されます。
[近代化改装されるプロジェクト1155大型対潜艦はフリゲートへ艦種変更される]
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