2019年7月1日の火災事故で損傷したロシア海軍の深海調査原潜AS-31(ロシャリク)の修理作業は2021年に延期された
- カテゴリ:ロシア海軍の特務原潜

『タス通信』より
2020年6月25日9時36分配信
【情報筋:特殊潜水艦「ロシャリク」の復旧作業は2021年に延期された】
モスクワ、6月25日/タス通信
2019年7月1日に火災で損傷した原子力水中有人装置AS-31(非公式名「ロシャリク」)の復旧作業は2021年に延期された。
『タス通信』は2名の情報提供者より伝えられた。
「今年には、特殊潜水艦ロシャリクの原子炉の活動ゾーン(炉心)を降ろす操作の実行は有りません。それは2021年に振り替えられました。
先ず初めに、艦船修理センター『ズヴェズドーチカ』でこのような操作を行なうのは、古い装置AS-15になります」
情報提供者の内の1人は話した。
2人目の情報提供者は、この情報を確認し、「AS-31は、活動ゾーン(炉心)の撤去と、その後の修理の最初では有りません」と指摘した。
『ズヴェズドーチカ』広報サービスは、『タス通信』が情報提供者より提示された情報についてコメントしなかった。
「ロシャリク」は、修理の為、艦船修理センター『ズヴェズドーチカ』(『統合造船業営団』へ加入)へ2019年秋に送り届けられた。
国防省は2019年7月2日に、軍用科学研究深海装置で火災が発生し、それが故に14名の潜水艦士官が死亡したと発表した。
装置はセヴェロモルスク海軍基地へ送り届けられ、委員会は災害の原因を調査する為の作業を開始した。
[AS-31とAS-15]
秘密の潜水艦AS-31の存在は、2003年に『セヴマシュ』の社内新聞である新聞『コラベル』の発表により知られるようになった。
この時、同時に非公式名「ロシャリク」についても言及された。
新聞によると、労働者は、新たな潜水艦の複数の球形の区画から成る強度船体が、1970年~1980年代の人気アニメ映画の主役であるボールから成る馬の玩具に似ている事から、このニックネームを付けた。

公開情報源によると、潜水艦AS-31はプロジェクト1083に属しており、2003年に進水した。
「ロシャリク」よりも先に修理が始まる深海装置AS-15は、公開情報源によると、プロジェクト1910「カシャロート」特殊潜水艦の2隻目であり、1983年に進水した。
2000年、AS-15は沈没した潜水艦「クルスク」の捜索及び救助活動に参加した。


「ロシャリク」と同様、AS-15は、ロシア連邦国防省深海調査総局の管轄下に在る。
2019年7月1日、ロシア海軍の「科学研究深海装置」は、ロシア領海内での海底調査中に火災が発生し、乗組員14名が死亡しました。
[ロシア海軍の深海調査原潜で火災が発生し、乗員14名が死亡した]
ロシア国防省は、事故を起こした「科学研究深海装置」の名前などは一切公表していませんが、プロジェクト10831「ロシャリク」原子力深海ステーションのようです。

原子力深海ステーションAS-12は、1988年頃にセヴェロドヴィンスク造船所『セヴマシュ』で起工され、2003年8月頃に進水、2010年頃に就役しました。
船体はチタン製です。
同級に関しては詳細は未だ不明です。
艦名については「AS-31」という説も有り、今回の『タス通信』の記事では、AS-31と記されています。
明確な要目も不明ですが、水中排水量は2100トン、全長は60メートル、幅は7メートル、水中速力は30ノット、潜航深度は少なくとも1000m以上(未確認情報によれば最大6000m)、乗員は25名と推定されています。
ロシア海軍の第4世代通常動力潜水艦プロジェクト677「ラーダ」とほぼ同サイズの小型原潜のようです。
「ロシャリク」級特務原潜AS-12(AS-31?)



ロシャリク級は、以前には戦略原子力潜水艦プロジェクト667BDR(デルタIII級)K-129を改造した特殊用途原子力潜水艦プロジェクト09786(デルタ・ストレッチ)BS-136「オレンブルク」を母艦としており、同艦に搭載されて海洋で行動していました。


2012年9月には北極圏へ行き、ロモノソフ海嶺とメンデレーエフ海嶺の海底を調査しています。
『イズべスチヤ』より
2012年10月29日配信
【軍用原子力バチスカーフ「ロシャリク」は北極圏を探った】
北極圏で行動する母艦BS-136「オレンブルク」(2012年9月27日)

ロシャリクは、2015年にも2回の遠距離航海を行なっています。
[ロシア海軍の特務原潜ロシャリクは2015年に2度の遠征を行なっていた]
2016年12月末にプロジェクト09787特殊用途原子力潜水艦「ポドモスコヴィエ」が再就役してからは、同艦を母艦としているようです。
[改造を終えた特務原潜ポドモスコヴィエ(モスクワ州)はロシア海軍へ引き渡された]

事故後、ロシャリクと搭載母艦(プロジェクト09787特殊用途原子力潜水艦BS-64「ポドモスコヴィエ」)は北方艦隊基地セヴェロモルスクへ入港しました。


この事故の詳細や事故を起こした艦の名前は相変わらず公表されていませんが、ロシア国防省は、事故で死亡した乗員14名の名前は公表しています。
[2019年7月1日のロシア海軍の深海調査原潜の火災事故で死亡した乗組員14名の氏名が公表された]
死亡したのは艦長を始めとして佐官クラスの年長者が殆どですが、おそらくは、火災事故発生の際、若い乗組員(つまり、将来のロシャリク運用の中核となる人々)を助ける為、自分達が犠牲になったのでしょう。
(ロシャリクの標準乗員は25名なので、おそらく11名程度が生存している)
火災事故で損傷したロシャリクは、2019年11月初頭にセヴェロドヴィンスクの艦船修理センター『ズヴェズドーチカ』へ回航されました。

[2019年7月1日の火災事故で損傷したロシア海軍の深海調査原潜の修理は9月に始まる]
[2019年7月1日の火災事故で損傷したロシア海軍の深海調査原潜AS-31は修理の為にセヴェロドヴィンスクへ運ばれた]
[2019年7月1日の火災事故で損傷したロシア海軍の深海調査原潜AS-31(ロシャリク)の修理作業が始まった]
機関部分以外の損傷は激しく、船体の一部を含め、殆どの機器は交換される事になるようです。
まず初めに、原子炉の核燃料棒が撤去される予定でしたが、今回の記事の通り、2021年に延期されました。
延期の理由は、ロシャリクよりも古い原子力深海ステーションAS-15のオーバーホールを先に行なう事になった為です。

プロジェクト1910「カシャロート」(NATOコード名「ユニフォーム」)原子力深海ステーションAS-15は、1983年2月23日に起工され、1988年4月29日に進水、1991年12月30日にロシア海軍へ納入されました。

2005年にセヴェロドヴィンスクの艦船修理センター『ズヴェズドーチカ』へ回航され、修理と近代化が始まりました。
それから15年経っても修理は完了していませんが、今回、ロシャリクに先駆けて修理と近代化を行なう事になったようです。
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