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ロシア海軍の新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフ型は指揮艦として使用される

『イズベスチヤ』より
2020年7月24日0時1分配信
【海上戦闘:ロシアのヘリコプター母艦は浮かぶ司令部となる】

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汎用揚陸艦は、司令部とその職員の為の超遠距離通信システムと作業場所を備える。

ロシア初のヘリコプター母艦プロジェクト23900「イワン・ロゴフ」「ミトロファン・モスカレンコ」は、浮かぶ司令部となる。
建造中に艦は、最新の遠距離通信システム、自動指揮システムと衛星端末ステーションを受け取る。
更に、司令部要員を配置する為の場所も備えられる。
専門家によると、ヘリコプター母艦から直接に艦船連合部隊、航空機、地上部隊を指揮する能力は、軍の作戦行動の効率性を急激に向上させる。

[「寄せ波」の力]
汎用揚陸艦プロジェクト23900
の能力は、ヘリコプター海軍歩兵隊員の輸送に限定されない。
『イズベスチヤ』軍当局及び軍事産業委員会の情報提供者より伝えられたように、これらは、海上、地上、航空グループの戦闘指揮の為に必要な全ての機器が設置される。

ヘリコプター母艦は、超遠距離通信システム、自動指揮システムと他の司令部用の設備を備える。
汎用揚陸艦の艦内には、コンピュータ端末と作業場を有する特殊司令室が据え付けられる。

7月20日・月曜日、ウラジーミル・プーチン大統領は、シリーズのトップ艦「イワン・ロゴフ」の起工記念板を取り付けた。
国家元首は、最新の汎用揚陸艦には最先端の兵装、指揮、遠距離通信システムが装備される事を指摘した。
彼は、このような艦はロシア海軍全体の戦闘ポテンシャルを大幅に強化し、その戦略的能力を向上させる事を強調した。

プロジェクト23900「プリボイ」汎用揚陸艦は、制裁が故にロシアへ引き渡されなかったフランスヘリコプター母艦を代替しなければならない。
これに関し、2010年代初頭に「ミストラル」購入交渉が進められた時、それは先ず第一に指揮艦として使用される計画である事が特に指摘された。

新たな汎用揚陸艦は、例えば、飛行中隊を指揮できると元海軍総参謀長ワレンチン・セリヴァノフは考える。

「指揮所を配置する為には、大型艦が必要です」
専門家は指摘した。
「司令部要員の為の船室が必要です。
指揮所が配置される大広間は、沿岸司令部とのスムーズな情報交換を維持できる現代的かつ保護された通信手段を備える必要が有ります。
モニターで、当直士官は、リアルタイムモードで特定地域の全ての艦及び航空機の動向を追跡できます。
必要に応じ、司令官は、その隣人の事情を確認できます。
即ち、黒海に居て、地中海たバルト海で何が起こっているのかを見る事~徹底した情報は、司令部が正しい決定を下すのを助けます」


ソヴィエト時代には、このような目的の為に巡洋艦潜水母艦が使用され、指揮所を配置する為の充分な区画が有ったとワレンチン・セリヴァノフは付け加えた。

今日においては、アメリカのみに指揮艦が存在する事を軍事歴史家ドミトリー・ボルテンコフは指摘した。
それらは新しくは無いが、現代的な設備を装備している。
ソヴィエト連邦でも、このようなものだった。
それはロシアも必要としている。

「汎用揚陸艦が遠距離通信複合体を得ると大統領が話した事は偶然では有りません。
そのお陰により、司令官は艦内から中央司令部へ状況を報告し、新たなる導入を受け取る事が出来ます」
ドミトリー・ボルテンコフ
『イズベスチヤ』へ話した。
「汎用揚陸艦の寸法は、指揮組織の配置に、より適切です。
司令部士官は、彼らが居住し、作業する場所が必要です。
そして、それは1人や2人では無く、数十人です。
普通の戦闘艦で、たくさんの要員と指揮システムを配置する事は、かなりの問題です。
何れにせよ、汎用揚陸艦は単独では行動せず、護衛付きのみで航行しますから、従いまして、浮揚司令部の役割の為の最良の候補は、他に見出せません」


[見える場所で]
司令部艦
の作成は、切実な決定であると専門家は考えている。
世界の大洋におけるロシア海軍の存在は常に増しており、グループのより効果的な指揮を保障する必要性は拡大している。

「インド洋や地中海の何処かに居る艦船グループは、モスクワからよりも、そこから直接指揮する方が良いでしょう。
その場所の司令官は、状況をより良く見て、より素早く決定を下す事が出来ます」
ドミトリー・ボルテンコフ
は締め括った。

以前に『イズベスチヤ』が伝えたように、今週にケルチで起工された艦の為、既にチームが選ばれている。
海軍総司令部は、乗組員の組織構造とスタッフの配置へ取り組んでいる。
船員に加え、その構成には、航空隊及び海軍歩兵の代表が加わる。
航空機材の地位に特別な注意が払われる。
専門家の資格は、ロシアの基地から離れて機材の戦闘能力を維持し、限られた器具や機器の一式を持ち、困難な条件下で、あらゆる複雑な修理を行なう為、高度の要件に沿っていなければならない。

チームは2022年には充足しなければならない。
この時期までに、乗組員の訓練の為の練習プログラムが作られる。
その承認後、船員は訓練へ着手し、その後、彼らは建造される艦へ受け入れられる。

プロジェクト23900「プリボイ」汎用揚陸艦は、『ネヴァ川計画設計局』により開発された。
艦を建造するのは、ケルチ造船工場『ザリフ』である。
以前、今春に国防省と同社が締結した契約の価格は1000億ルーブルになると伝えられた。

この数十年間、ロシアには汎用揚陸艦は1隻も無かった。
ソヴィエトヘリコプター母艦プロジェクト1123「コンドル」対潜巡洋艦「モスクワ」「レニングラード」は、1990年代にスクラップの為にインドへ売却された。
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ヘリコプターは、重航空巡洋艦にも配置できた。
しかし、ソヴィエト連邦崩壊後、「アドミラル・クズネツォフ」を除き、全て海軍から除籍された。

ポストソヴィエト時代には、ヘリコプター母艦の建造の問題は提起されなかった。
それは、この時に採用されていた軍事ドクトリンでは提示されていなかった遠く離れた沿岸で行動する為に必要であると考えられた。
そして、2011年のフランスへの「ミストラル」の発注の決定には、このような艦は、如何なる任務を遂行できるのかという長期の議論を伴った。

パリ・モスクワ間の合意の条件において、フランスは2隻のヘリコプター母艦の建造を約束した。
更に2隻の艦が、フランスのプロジェクトの下でロシアの工場で建造されなければならなかった。
このタイプの最初の2隻の汎用揚陸艦の乗組員の募集は2013年秋に始まった。
400名から成る乗組員グループは、練習艦「スモールヌイ」で2014年6月にサンナゼールへ到着した。
9月と10月には、建造されたヘリコプター母艦の内の1隻がロシア人を乗せ、2度に渡って10日間出航した。
しかし、ロシア人乗組員が既に海上で「ミストラル」をマスターしていた2015年、第5共和国のトップ、フランソワ・ホランドは、制裁が故にロシア連邦への艦の引き渡しを拒否した。



2011年6月にロシアフランスへ2隻の「ミストラル」級ヘリコプター揚陸ドック艦(ヘリコプター空母)を発注し、「ウラジオストク」、「セヴァストーポリ」と命名された艦は2014年と2015年に引き渡される筈でしたが、フランスウクライナ情勢に関連して引き渡しを凍結しました。

2015年8月5日、ロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチンフランス大統領フランソワ・オランドは電話で会談し、「ミストラル」級ヘリコプター揚陸ドック艦の建造・供給契約の終了(破棄)を決定しました。
[ロシアとフランスはロシア海軍向けミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦の契約を終了させた]

フランスロシアへ補償金として約9億5000万ユーロを支払い、2隻の「ミストラル」級に設置されたロシア製機器は全て取り外してロシアへ返却されました。
[ロシア海軍向けミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦の契約終了によりフランスはロシアへ9億4975万4849ユーロを支払う]
[ロシア海軍向けだった2隻のミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦から取り外されたロシア製機器は全てロシアへ到着した]
[ロシア向けだった2隻のミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦から取り外されたロシア製機器はロシア海軍へ引き渡される]

その後、2隻の「ミストラル」級エジプトへ売却されました。
(1番艦は「ガマール・アブドゥル=ナーセル」、2番艦は「アンワル・アッ=サーダート」と改名)

「ガマール・アブドゥル=ナーセル」(旧「ウラジオストク」):2016年6月2日にエジプト海軍へ引き渡し。
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「アンワル・アッ=サーダート」(旧「セヴァストーポリ」):2016年9月16日にエジプト海軍へ引き渡し。
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一方、ロシアは、以前からロシア版ミストラルとも言える大型の全通甲板ヘリコプター揚陸艦(汎用ヘリコプター揚陸艦)の設計を進めており、2015年6月には、汎用ヘリコプター揚陸艦の概念設計案「ラヴィーナ」の詳細が公表されました。
[ロシア海軍将来汎用揚陸ヘリコプター搭載艦プロジェクト「ラヴィーナ」]

この概念設計案「ラヴィーナ」をベースにして、実際にロシア海軍向けとして建造される汎用ヘリコプター揚陸艦が設計されました。
[ロシア海軍の為の将来大型揚陸艦は複数のヴァージョンが設計されている]
[ロシア海軍の為の新たなヘリコプター揚陸艦の設計は進められている]
[ロシア海軍の為の将来汎用ヘリコプター母艦プリボイ級の設計作業は進められている]

汎用ヘリコプター揚陸艦の為に新たな戦闘情報管理システムも開発されます。
[ロシア海軍将来汎用揚陸艦の為の新たな戦闘情報管理システムが開発される]


搭載機は、元々は「ミストラル」用に開発された艦上攻撃ヘリコプターKa-52K「カトラン」などになります。
[ロシア海軍の為の艦上攻撃ヘリコプターKa-52Kカトランは4機のプロトタイプが製造された]


この他、ソ連時代に生産された戦闘輸送ヘリコプターKa-29も搭載されるようです。
Ka-29は1990年代以降は予備役として保管されていましたが、2016年から修復が始まりました。
[ロシア海軍太平洋艦隊の艦上輸送戦闘ヘリコプターKa-29は飛行訓練を行なった]

汎用ヘリコプター揚陸艦の機関は、ディーゼル/ガスタービン複合推進CODAG(COmbined Diesel And Gas turbine)になるようです。
これはディーゼルが巡航用、ガスタービンが増速用であり、ロシア海軍の新型艦では、プロジェクト22350フリゲートに採用されています。
[ロシア新世代艦のガスタービンとディーゼル]


新世代汎用揚陸艦の建造場所としては、以前にはサンクトペテルブルク『北方造船所』などが有力視されていましたが、2019年になって、クリミア半島ケルチ市造船工場『ザリフ』で建造する案が浮上してきました。
【造船工場『ザリフ』公式サイト】
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[ロシア海軍の為の新世代汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻は2020年5月にクリミア半島ケルチ市のザリフ造船所で起工される]
[ロシア海軍の為の2万5千トン級汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻は2020年5月にクリミア半島で起工される?]
[ロシア海軍の為の新たな汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻は2020年にケルチ(ザリフ造船所)で起工され、2025年と2026年に就役する]
[ロシア海軍の為の2万5千トン級汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻は2020年5月上旬(5月9日まで)にクリミア半島で起工される]

造船工場『ザリフ』も、ロシア海軍新世代汎用揚陸艦を建造する用意がある事を認めました。
[クリミア半島ケルチのザリフ造船所はロシア海軍の為の2万5千トン級汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)を建造する準備を整えている]

2隻の汎用揚陸艦の建造費は、ほぼ1000億ルーブルになるようです。
[ロシア海軍の為の新世代汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻の建造費は1000億ルーブルになる]
因みに1000億ルーブルは、プロジェクト22350(「アドミラル・ゴルシコフ」型)フリゲート4隻分に相当します。

当初、2隻の汎用揚陸艦の起工は、2020年5月9日の大祖国戦争勝利75周年記念日に予定されており、起工に先立つ建造契約の締結は、2020年4月末までに行なわれる予定でした。
[ロシア海軍の為の新世代汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻は大祖国戦争勝利75周年記念日の2020年5月9日に起工される]
[ロシア海軍の為の新世代汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻の建造契約は2020年4月末までに締結される]

しかし、最近の新型コロナウイルス流行の影響により艦の起工は延期され、これに伴い建造契約の締結も先送りされ、5月22日までに締結されました。
[ロシア海軍の為の新世代汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻の建造契約が締結された]
[クリミア半島のザリフ造船所はロシア海軍のプロジェクト23900汎用揚陸艦の建造準備を進めている]

2隻の汎用揚陸艦の起工は6月29日に予定されていましたが、またも延期となりました。
[ロシア海軍のプロジェクト23900(セヴァストーポリ型)汎用揚陸艦の起工は延期された]

その後、起工日は7月16日に決まりましたが、これも延期され、2020年7月20日に起工式典が開催されました。

[ロシア海軍のプロジェクト23900汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフとミトロファン・モスカレンコはクリミア半島のザリフ造船所で起工された]

プロジェクト23900汎用揚陸艦は、フランス「ミストラル」級の影響を大きく受けているようです。
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2隻の汎用揚陸艦の艦名は、以前には「セヴァストーポリ」「ウラジオストク」が有力視されていましたが、結局、旧ソ連時代のプロジェクト1174大型揚陸艦の1番艦と3番艦の名前を受け継いだ「イワン・ロゴフ」「ミトロファン・モスカレンコ」となりました。

プロジェクト1174大型揚陸艦「イワン・ロゴフ」(1978年6月15日就役、1995年8月4日除籍)
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プロジェクト1174大型揚陸艦「ミトロファン・モスカレンコ」(1990年9月23日就役、2006年12月18日除籍)
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