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ロシア海軍の新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフ型は艦上無人攻撃機を搭載する

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『タス通信』より
2020年8月14日9時42分配信
【情報筋:ロシアのヘリコプター母艦は艦上打撃無人機を受け取る】
モスクワ、8月14日/タス通信

クリミア工場『ザリフ』で起工された2隻のロシア汎用揚陸艦は、戦術-技術的特性の変更により、16機の重ヘリコプターと、更に艦上打撃無人飛行装置を搭載する。
艦の設計排水量は3万トンに増加する。
『タス通信』は造船分野の情報提供者より伝えられた。

「艦の戦術-技術的特性は、設計中、めっきりと変更されました。
その排水量は30000トン(以前は25000トン)に増加し、一覧表の全てのヘリコプターを16機、更には艦上偵察・打撃無人機を搭載します。
艦は1000名の海軍歩兵を移送できます」

対談者は話した。

彼は、どのようなプロジェクトの無人機についての話であるのかは明らかにしなかった。

情報提供者によると、各々の汎用揚陸艦ドック室には、4隻までの揚陸艇が配置される。
彼は付け加えた。
「最初のヘリコプター母艦の海軍への引き渡しは2025年、2隻目は2027年に予定しております」

5月、ロシア国防省は、費用約1000億ルーブルの2隻のヘリコプター母艦の建造契約を締結した。
当初、1隻のヘリコプター母艦の排水量は25000トン、900名の海軍歩兵を移送し、20機の重ヘリコプターを搭載するものと見られていた。

[汎用揚陸艦]
ヘリコプター母艦
とも呼ばれる汎用揚陸艦は、様々な用途の重ヘリコプターグループの搭載(「ミストラル」は16機、アメリカ「ワスプ」型は30機以上)、数百名から1000名の海軍歩兵の移送が可能である。
汎用揚陸艦は、揚陸部隊の上陸と装甲車両の移送を保障するの為のドックを装備する。

このようなクラスの最初の2隻の国産艦~「イワン・ロゴフ」「ミトロファン・モスカレンコ」は、造船工場『ザリフ』で7月20日に起工された。
ロシアヘリコプター母艦は、ゼレノドリスク設計局が開発したプロジェクト23900の下で建造される。



2011年6月にロシアフランスへ2隻の「ミストラル」級ヘリコプター揚陸ドック艦(ヘリコプター空母)を発注し、「ウラジオストク」、「セヴァストーポリ」と命名された艦は2014年と2015年に引き渡される筈でしたが、フランスウクライナ情勢に関連して引き渡しを凍結しました。

2015年8月5日、ロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチンフランス大統領フランソワ・オランドは電話で会談し、「ミストラル」級ヘリコプター揚陸ドック艦の建造・供給契約の終了(破棄)を決定しました。
[ロシアとフランスはロシア海軍向けミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦の契約を終了させた]

フランスロシアへ補償金として約9億5000万ユーロを支払い、2隻の「ミストラル」級に設置されたロシア製機器は全て取り外してロシアへ返却されました。
[ロシア海軍向けミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦の契約終了によりフランスはロシアへ9億4975万4849ユーロを支払う]
[ロシア海軍向けだった2隻のミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦から取り外されたロシア製機器は全てロシアへ到着した]
[ロシア向けだった2隻のミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦から取り外されたロシア製機器はロシア海軍へ引き渡される]

その後、2隻の「ミストラル」級エジプトへ売却されました。
(1番艦は「ガマール・アブドゥル=ナーセル」、2番艦は「アンワル・アッ=サーダート」と改名)

「ガマール・アブドゥル=ナーセル」(旧「ウラジオストク」):2016年6月2日にエジプト海軍へ引き渡し。
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「アンワル・アッ=サーダート」(旧「セヴァストーポリ」):2016年9月16日にエジプト海軍へ引き渡し。
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一方、ロシアは、以前からロシア版ミストラルとも言える大型の全通甲板ヘリコプター揚陸艦(汎用ヘリコプター揚陸艦)の設計を進めており、2015年6月には、汎用ヘリコプター揚陸艦の概念設計案「ラヴィーナ」の詳細が公表されました。
[ロシア海軍将来汎用揚陸ヘリコプター搭載艦プロジェクト「ラヴィーナ」]

この概念設計案「ラヴィーナ」をベースにして、実際にロシア海軍向けとして建造される汎用ヘリコプター揚陸艦が設計されました。
[ロシア海軍の為の将来大型揚陸艦は複数のヴァージョンが設計されている]
[ロシア海軍の為の新たなヘリコプター揚陸艦の設計は進められている]
[ロシア海軍の為の将来汎用ヘリコプター母艦プリボイ級の設計作業は進められている]

汎用ヘリコプター揚陸艦の為に新たな戦闘情報管理システムも開発されます。
[ロシア海軍将来汎用揚陸艦の為の新たな戦闘情報管理システムが開発される]

搭載機は、元々は「ミストラル」用に開発された艦上攻撃ヘリコプターKa-52K「カトラン」などになります。
[ロシア海軍の為の艦上攻撃ヘリコプターKa-52Kカトランは4機のプロトタイプが製造された]


この他、ソ連時代に生産された戦闘輸送ヘリコプターKa-29も搭載されるようです。
Ka-29は1990年代以降は予備役として保管されていましたが、2016年から修復が始まりました。
[ロシア海軍太平洋艦隊の艦上輸送戦闘ヘリコプターKa-29は飛行訓練を行なった]

汎用ヘリコプター揚陸艦の機関は、ディーゼル/ガスタービン複合推進CODAG(COmbined Diesel And Gas turbine)になるようです。
これはディーゼルが巡航用、ガスタービンが増速用であり、ロシア海軍の新型艦では、プロジェクト22350フリゲートに採用されています。
[ロシア新世代艦のガスタービンとディーゼル]


新世代汎用揚陸艦の建造場所としては、以前にはサンクトペテルブルク『北方造船所』などが有力視されていましたが、2019年になって、クリミア半島ケルチ市造船工場『ザリフ』で建造する案が浮上してきました。
【造船工場『ザリフ』公式サイト】
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[ロシア海軍の為の新世代汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻は2020年5月にクリミア半島ケルチ市のザリフ造船所で起工される]
[ロシア海軍の為の2万5千トン級汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻は2020年5月にクリミア半島で起工される?]
[ロシア海軍の為の新たな汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻は2020年にケルチ(ザリフ造船所)で起工され、2025年と2026年に就役する]
[ロシア海軍の為の2万5千トン級汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻は2020年5月上旬(5月9日まで)にクリミア半島で起工される]

造船工場『ザリフ』も、ロシア海軍新世代汎用揚陸艦を建造する用意がある事を認めました。
[クリミア半島ケルチのザリフ造船所はロシア海軍の為の2万5千トン級汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)を建造する準備を整えている]

2隻の汎用揚陸艦の建造費は、ほぼ1000億ルーブルになるようです。
[ロシア海軍の為の新世代汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻の建造費は1000億ルーブルになる]
因みに1000億ルーブルは、プロジェクト22350(「アドミラル・ゴルシコフ」型)フリゲート4隻分に相当します。

当初、2隻の汎用揚陸艦の起工は、2020年5月9日の大祖国戦争勝利75周年記念日に予定されており、起工に先立つ建造契約の締結は、2020年4月末までに行なわれる予定でした。
[ロシア海軍の為の新世代汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻は大祖国戦争勝利75周年記念日の2020年5月9日に起工される]
[ロシア海軍の為の新世代汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻の建造契約は2020年4月末までに締結される]

しかし、最近の新型コロナウイルス流行の影響により艦の起工は延期され、これに伴い建造契約の締結も先送りされ、5月22日までに締結されました。
[ロシア海軍の為の新世代汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻の建造契約が締結された]
[クリミア半島のザリフ造船所はロシア海軍のプロジェクト23900汎用揚陸艦の建造準備を進めている]

2隻の汎用揚陸艦の起工は6月29日に予定されていましたが、またも延期となりました。
[ロシア海軍のプロジェクト23900(セヴァストーポリ型)汎用揚陸艦の起工は延期された]

その後、起工日は7月16日に決まりましたが、これも延期され、2020年7月20日に起工式典が開催されました。

[ロシア海軍のプロジェクト23900汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフとミトロファン・モスカレンコはクリミア半島のザリフ造船所で起工された]

ゼレノドリスク設計局が設計したプロジェクト23900汎用揚陸艦は、フランス「ミストラル」級の影響を大きく受けているようです。
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2隻の汎用揚陸艦の艦名は、以前には「セヴァストーポリ」「ウラジオストク」が有力視されていましたが、結局、旧ソ連時代のプロジェクト1174大型揚陸艦の1番艦と3番艦の名前を受け継いだ「イワン・ロゴフ」「ミトロファン・モスカレンコ」となりました。

プロジェクト1174大型揚陸艦「イワン・ロゴフ」(1978年6月15日就役、1995年8月4日除籍)
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プロジェクト1174大型揚陸艦「ミトロファン・モスカレンコ」(1990年9月23日就役、2006年12月18日除籍)
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プロジェクト23900汎用揚陸艦は、指揮艦としての能力も付与されます。
[ロシア海軍の新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフ型は指揮艦として使用される]
この場合は、例えば、地中海ロシア海軍常設作戦連合部隊の旗艦としての使用などが考慮されているようです。

以前には、プロジェクト23900汎用揚陸艦は満載排水量25000トン、ヘリコプター20機搭載、海軍歩兵900名を積載すると言われておりましたが、設計変更されて満載排水量は30000トンとなり、ヘリコプター16機搭載、海軍歩兵1000名積載、そして艦上無人攻撃機も搭載する事になりました。

どのような無人攻撃機を搭載するのかは明らかにされていませんが、例えば、コンツェルン『ベガ』が2010年代初頭から開発を進めている戦術打撃無人飛行装置「ルチ」は主翼を折り畳めるので、艦上用に適しているでしょう。
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