ロシア海軍の重戦略用途原子力水中巡洋艦ドミトリー・ドンスコイは2020年代後半まで現役に留まる

『タス通信』より
2021年1月14日22時27分配信
【「ドミトリー・ドンスコイ」は早ければ5年後に海軍から除籍されるかもしれない】
モスクワ、1月14日/タス通信
プロジェクト941(コード名「アクラ」)戦略用途水中ロケット巡洋艦「ドミトリー・ドンスコイ」がロシア海軍から除籍されるのは、5年後よりも前にはならないだろう。
『タス通信』はロシア北部の軍機関の情報提供者より伝えられた。
「2021年には巡洋艦の戦闘訓練活動が計画されています。
ロケット艦の退役、この問題は、早くとも5年後になりますね」
対談者は話した。
以前、『セヴマシュ』のトップ、ミハイル・ブドニチェンコは、雑誌『工場』のインタビューに対し、2020年に署名された契約により、更なる2隻のプロジェクト955A(コード名「ボレイ-A」)戦略ロケット艦を建造し、その内の1隻は「ドミトリー・ドンスコイ」の名を受けると述べた。
『タス通信』の情報提供者によると、このような潜水艦の建造サイクルは、発注時から7~8年掛かる。
最近まで、「ドミトリー・ドンスコイ」は、世界最大の潜水艦と見られていた。
今、このようなものとして、特殊用途原子力潜水艦「ベルゴロド」~超核魚雷「ポセイドン」搭載艦の試験が行なわれている。
「ドミトリー・ドンスコイ」は1980年9月に進水し、1981年12月にソヴィエト社会主義共和国連邦海軍へ加わった。
当初のロケット艦の基本兵装は、20基の大陸間弾道ミサイル複合体D-19であった。
2002年に巡洋艦はプロジェクト941UMの下での近代化を完了し、その後、大陸間弾道ミサイル「ブラヴァー」の試験の為に使用された。


ロシア・ソ連潜水艦総合情報サイト『ディープストーム』より
【プロジェクト941「アクラ」(NATOコード名「タイフーン」)】
プロジェクト941重戦略用途原子力水中巡洋艦(タイフーン級)は、1981年~1989年に6隻が就役しましたが、現役に留まっているのは1隻のみであり、既に3隻が解体されています。

プロジェクト941巡洋原子力潜水艦の1番艦TK-208は、セヴェロドヴィンスクのセヴマシュ造船所で1976年6月30日に起工されました。





1980年9月27日に進水し、1981年6月から8月まで工場航行試験を行ない、1981年11月から12月末まで国家試験を行ないました。
1981年12月27日には、初めて弾道ミサイルR-39の発射に成功しました。
1977年7月25日付でプロジェクト941は「重戦略用途ロケット水中巡洋艦」に類別変更されました。
1981年12月29日に受領証書へ署名されてソ連海軍へ納入されましたが、翌1982年10月までは弾道ミサイルR-39(SS-N-20)の発射試験に従事し、総計で18回の発射に成功しました。

R-39の戦力化の目途が立った事を受け、1982年12月14日に海軍旗初掲揚式典を開催し、正式にソ連海軍へ就役し、北方艦隊の第18潜水艦師団へ編入されました。
同年12月21日に母港となるザーパドナヤ・リツァのニェールピチャ基地へ到着しました。

その後は戦闘勤務(戦略核パトロール任務)や弾道ミサイルR-39の発射試験に従事しました。
1988年9月20日にセヴェロドヴィンスクの『セヴマシュ』へ到着し、新型弾道ミサイル「バルク」を搭載するプロジェクト941U改装が行なわれる事になり、翌1989年1月20日には予備役に編入されました。
しかし、1991年12月のソ連邦解体により資金供給は止まり、TK-208の工事はストップしました。
1992年6月3日付で「重戦略用途原子力水中巡洋艦」に類別変更されました。
その後、弾道ミサイル「バルク」の開発は中止され、新たにモスクワ熱技術研究所が開発する「ブラヴァー」を搭載する事になった為、今度はプロジェクト941UM改装を受ける事になりました。

2000年10月7日に「ドミトリー・ドンスコイ」と命名されました。
2002年6月26日に再進水し、6月30日から係留試験を開始し、翌2003年に洋上試験を行ないました。

洋上試験は2004年12月初頭に完了し、ロシア海軍へ再就役しました。

2005年から2010年まで潜水艦弾道ミサイル「ブラヴァー」の発射試験に従事しました。

その後、「ブラヴァー」発射試験艦としての任務を解かれ、今度は、海洋で試験を行なう新型潜水艦のサポート(試験のモニタリング)を行なう事になりました。
[タイフーン級原潜「ドミトリー・ドンスコイ」は試験艦として現役に留まる]

2013年には、戦略原潜「アレクサンドル・ネフスキー」、多用途原潜「セヴェロドヴィンスク」の海洋試験をサポートしました。
[タイフーン級原潜はロシア新世代原潜の海洋試験をサポートする]
2014年にも、新型原潜の海洋試験のモニタリングの為に何度か出航しています。
[タイフーン級原潜ドミトリー・ドンスコイは出航した]
[タイフーン級原潜ドミトリー・ドンスコイは帰港した]
[ロシア海軍最新鋭原潜セヴェロドヴィンスクはタイフーン級原潜ドミトリー・ドンスコイと共に出航した]
2015年6月26日から7月16日まで白海へ出航しました。
[ロシア海軍のタイフーン級原潜ドミトリー・ドンスコイは白海へ出航した]
[ロシア海軍最後のタイフーン級原潜ドミトリー・ドンスコイは3週間の航海を終えて帰港した]
2015年9月3日から10日まで、再び白海へ出航しました。
[ロシア海軍最後のタイフーン級原潜ドミトリー・ドンスコイは白海へ出た]
[ロシア海軍の重原子力戦略用途ロケット水中巡洋艦ドミトリー・ドンスコイはセヴェロドヴィンスクへ帰港した]
暫く動きの無かった「ドミトリー·ドンスコイ」ですが、2017年5月27日にセヴェロモルスクへ到着しました。

[ロシア海軍最後のタイフーン級原潜ドミトリー・ドンスコイは北方艦隊基地セヴェロモルスクへ移動した]
2017年7月中旬、「ドミトリー・ドンスコイ」は、クロンシュタットの『ロシア海軍の日』観艦式へ参加する為、重原子力ロケット巡洋艦「ピョートル・ヴェリキー」と共にバルト海へ向かいました。
[ロシア海軍北方艦隊の重原子力ロケット巡洋艦ピョートル・ヴェリキーと重戦略用途原子力水中巡洋艦ドミトリー・ドンスコイはバルト海へ向かった]
「ドミトリー・ドンスコイ」と「ピョートル・ヴェリキー」は、2017年7月25日にクロンシュタットへ到着しました。
[ロシア海軍北方艦隊の重原子力ロケット巡洋艦ピョートル・ヴェリキーと重戦略用途原子力水中巡洋艦ドミトリー・ドンスコイはクロンシュタットへ到着する]

2017年7月30日、サンクトペテルブルクとクロンシュタットで観艦式(主要海軍パレード)が行なわれました。

[2017年7月30日にクロンシュタットとサンクトペテルブルクで挙行される『ロシア海軍の日』観艦式には約40隻の艦船が参加する]
北方艦隊からは、重原子力ロケット巡洋艦「ピョートル・ヴェリキー」、重戦略用途原子力水中巡洋艦「ドミトリー・ドンスコイ」、ロケット巡洋艦「マルシャル・ウスチーノフ」、大型対潜艦「ヴィツェ・アドミラル・クラコーフ」の他に、潜水艦「ウラジカフカス」もクロンシュタットの観艦式へ参加しました。
「ドミトリー・ドンスコイ」と「ピョートル・ヴェリキー」は、主要海軍パレード終了後の翌7月31日にクロンシュタットを出航しました。
[ロシア海軍北方艦隊の重原子力ロケット巡洋艦ピョートル・ヴェリキーと重戦略用途原子力水中巡洋艦ドミトリー・ドンスコイはクロンシュタットを去った]
北方艦隊艦船部隊は、8月7日までに北海へ入りました。
[クロンシュタットの『ロシア海軍の日』観艦式へ参加した北方艦隊の艦船は北海へ入った]
その後、北方艦隊艦船部隊はバレンツ海で演習を行なった後、8月11日にセヴェロモルスクへ帰投しました。
[クロンシュタットの『ロシア海軍の日』観艦式へ参加した北方艦隊の艦船はセヴェロモルスクへ帰投した]
「ドミトリー·ドンスコイ」は、暫くの間セヴェロモルスクに留まっていましたが、9月初頭に出航し、9月4日に母港セヴェロドヴィンスク(白海海軍基地)へ帰港しました。
[重戦略用途原子力水中巡洋艦ドミトリー・ドンスコイはセヴェロドヴィンスクへ帰港した]
2017年9月には北方艦隊の演習へ参加しました。
[タイフーン級戦略原潜ドミトリー・ドンスコイはロシア海軍北方艦隊の演習へ参加する]
2017年12月15日には就役35周年記念式典が開催されました。
『ロシア連邦国防省公式サイト』より
ロシア北方艦隊広報サービス発表
2017年12月15日10時4分配信
【世界最大の潜水艦は35周年を迎えた】
他の同型艦は全て退役しましたが、「ドミトリー・ドンスコイ」のみは現役に留まっています。

[重戦略用途原子力水中巡洋艦ドミトリー・ドンスコイはロシア海軍で現役に留まり続ける]
2018年~2019年にはオーバーホールを行ない(2018年初頭から6月までロスリャコヴォの大型浮きドックPD-50へ入渠)、2019年6月20日から白海で航行試験を行ない、深度200メートルまで潜航しました。



一方、2021年に起工予定のプロジェクト955A(ボレイ-A)戦略用途原子力ロケット水中巡洋艦2隻の内の1隻が「ドミトリー・ドンスコイ」と命名される事になりました。
[ロシア海軍の為の新たなボレイ-A戦略用途原子力ロケット水中巡洋艦ドミトリー・ドンスコイとクニャージ・ポチョムキンは2021年に起工される]
そうなると、今の「ドミトリー・ドンスコイ」は一体どうなるのかという疑問が生じますが(通常は退役する事になる)、現在の所は退役の話は全く出ておらず、仮に退役するとしても、それは5年以上先の話(つまり2020年代後半)になるようです。
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