ロシア海軍北方艦隊の原子力水中巡洋艦セヴェロドヴィンスクは2021年中に極超音速ミサイル"ツィルコン"を少なくとも2回発射する
- カテゴリ:極超音速対艦ミサイル「ツィルコン」

『ロシア通信社ノーボスチ』より
2021年2月26日8時5分配信
【情報筋は潜水艦「セヴェロドヴィンスク」からの「ツィルコン」発射計画について述べた】
モスクワ、2月26日-ロシア通信社ノーボスチ
プロジェクト885(コード名「ヤーセン」)多目的原子力潜水艦「セヴェロドヴィンスク」は、今年、水面下からを含め、ロシア潜水艦から初めての極超音速ミサイル「ツィルコン」射撃を実施する。
『ロシア通信社ノーボスチ』は防衛産業企業体の情報提供者より伝えられた。
「潜水艦セヴェロドヴィンスクは、今年末までに少なくとも1回の水上位置からの、そして少なくとも1回の水中位置からのツィルコン発射を実行します。
セヴェロドヴィンスクによる一連の射撃により、ミサイル複合体の国家試験は完了しなければならず、その後、これを水上搭載艦や水中搭載艦の兵装として採用する決定が下されます」
対談者は話した。
彼は、以前には「ツィルコン」の射撃は、水中位置の潜水艦からの発射を模した潜航スタンドから実施されていたと付け加えた。
情報筋は、過去の水中試験の時期と「セヴェロドヴィンスク」からの計画射撃時期については明らかにしなかった。
1月末にロシア連邦国防次官アレクセイ・クリヴォルチコが軍当局の統一軍事受領日に述べたように、極超音速ミサイル「ツィルコン」のミサイル複合体の国家試験は、水中搭載艦からの兵器試験段階の後、今年に完了する。
その後、2022年からミサイル「ツィルコン」の生産品の供給を開始しなければならない事をクリヴォルチコは指摘した。
2020年に北方艦隊のフリゲート「アドミラル・ゴルシコフ」から3回のミサイル「ツィルコン」発射が実施された。
特に艦は、海上標的へ2回、軍事射爆試験場へ配置された地上目標へ1回の極超音速ミサイルの打撃を成功裏に与えた。
『ロシア通信社ノーボスチ』の情報筋によると、今年、フリゲートは初めて少なくとも2回のミサイル「ツィルコン」一斉発射を実施しなければならない。
これは、ミサイルが艦から僅か数秒の間隔で飛び立つ事を前提としている。
ロシアのミサイル「ツィルコン」は、ルート全距離で自身のエンジン推力を使用し、大気圏の密度の濃い層で機動する空気力学飛行を継続して行なう事が可能な世界初の極超音速有翼ミサイルであり、その速度は音速の約9倍に達し、最大射撃距離は1000キロメートルまでとなる。
「ツィルコン」は、水上及び地上の目標を同様の効率で撃破できる。
プロジェクト「ヤーセン」唯一の潜水艦「セヴェロドヴィンスク」は1993年に起工され、艦の進水は2010年になった。
2014年6月、潜水艦は北方艦隊の戦闘編制へ加わった。
「セヴェロドヴィンスク」は13800トンの水中排水量を有しており、最大水中速力-31ノット、巡洋艦の乗組員は90名を数える。
水中巡洋艦の主な兵装は、有翼ミサイル「カリブル」及び「オーニクス」の為の32基のミサイル複合体発射装置である。
従って複合体「ツィルコン」の試験完了後、潜水艦は32基までの極超音速ミサイルを搭載できるようになる。
このタイプの次の潜水艦「カザン」は、近代化プロジェクト885M(ヤーセン-M)として建造され、新たな潜水艦シリーズのトップとなった。

極超音速対艦ミサイル「ツィルコン」(ジルコン、風信子石)は、以前に長距離超音速有翼ミサイル「バザーリト」/「ヴルカーン」や「グラニート」、そして超音速ミサイル「オーニクス」を開発した科学生産合同『機械製造』が新たに開発しているミサイルです。

[長距離打撃ミサイル複合体バザーリト/ヴルカーン]

[有翼ミサイル複合体グラニートは軍備採用30周年を迎えた]

[ロシア海軍は2019年に55基の超音速対艦ミサイル"オーニクス"を受領する]
科学生産合同『機械製造』は、長距離超音速有翼ミサイル「グラニート」の直接の後継となる筈だった「ボリード」(最大射程800km、飛翔速度マッハ4)の開発を1980年代末から開始し、1991年にはエンジンの最初の試験が行われたのですが、1990年代末には開発は中止されました。
「ツィルコン」の開発には、「ボリード」の開発作業の経験もフィードバックされているようです。
「ツィルコン」の発射試験は、2015年秋頃から始まりました。
[ロシア海軍の為の極超音速巡航ミサイル"ツィルコン"の試験が始まった]
初期の「ツィルコン」の発射試験は、アルハンゲリスク州のネノクサ村に在るロシア海軍のミサイル発射試験場で行なわれており、初期には失敗した事も有るようです。
[ロシア海軍の為の巡航ミサイルは試射中にアルハンゲリスク州ネノクサ村の住宅へ落下した]



「ツィルコン」の発射試験は秘密裡に行なわれ、2016年4月に行なわれた試験では最大速度マッハ8を記録しました。
[ロシア海軍の為の極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"は発射試験で最大速度マッハ8に達した]
「ツィルコン」の試験完了と生産開始は、2018年からスタートする新たな国家軍備プログラム(2018-2027年の国家軍備プログラム)において実現する事になります。
[ロシア海軍の為の極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"は新たな2018-2027年の国家軍備プログラムにおいて開発を完了し、生産を開始する]
ネノクサ村のミサイル発射試験場からの「ツィルコン」発射試験は、10回以上行なわれました。
[ロシア海軍の為の極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"は10回以上の発射試験を行なった]
2019年2月20日、ロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチン氏は、教書演説において極超音速対艦ミサイル「ツィルコン」の開発は順調に進んでいると発言しています。
[ロシア海軍の為の極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"の開発は滞りなく進んでいる]
地上からの発射試験に続き、海上での発射試験が北方艦隊のプロジェクト22350フリゲートの1番艦「アドミラル・ゴルシコフ」(2018年7月28日就役)により行なわれる事になりました。
[ロシア海軍の新たな極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"は2019年末にフリゲート"アドミラル・ゴルシコフ"で洋上発射試験を行なう]
「アドミラル・ゴルシコフ」は2019年11月末に「ミサイル兵器」の試験の為、セヴェロドヴィンスクへ移動しました。
[ロシア海軍北方艦隊の最新鋭フリゲート"アドミラル・ゴルシコフ"は新型ミサイルの試験を行なう為にセヴェロドヴィンスクへ到着した]
ただ、この時には発射試験は行わず、2019年12月末にセヴェロモルスクへ帰投しました。
[ロシア海軍北方艦隊の最新鋭フリゲート"アドミラル・ゴルシコフ"は母港セヴェロモルスクへ帰投した]
2020年1月初頭、「アドミラル・ゴルシコフ」はバレンツ海で「ツィルコン」の発射試験を行ないました。
ミサイルは500キロメートル以上を飛翔し、北ウラルの地上目標へ命中しました。

[ロシア海軍北方艦隊の最新鋭フリゲート"アドミラル・ゴルシコフ"は2020年1月に極超音速ミサイル"ツィルコン"の発射試験を行なった]
「アドミラル・ゴルシコフ」からの2回目の「ツィルコン」発射試験は、当初は2020年春に実施される予定であり、同艦は2020年4月初頭にセヴェロドヴィンスクへ回航され、「ツィルコン」の運用(発射)に関する部分的な近代化改装が行なわれました。

[ロシア海軍のプロジェクト22350(アドミラル・ゴルシコフ型)フリゲートは近代化される]
しかし、発射試験はコロナウイルスの影響により何度も延期されました。
[ロシア海軍北方艦隊の最新フリゲート"アドミラル・ゴルシコフ"は白海で演習を行なう]
結局、白海で2回目の「ツィルコン」発射試験(海上目標に対しては初)が実行されたのは、2020年10月6日になりました。
[ロシア海軍北方艦隊の最新鋭フリゲート"アドミラル・ゴルシコフ"は海上目標への極超音速ミサイル"ツィルコン"発射試験を行なった]
11月26日、「アドミラル・ゴルシコフ」は白海から3回目の「ツィルコン」発射試験(海上目標に対しては2回目)を実行しました。
公表された動画を見る限り、発射は夜間(おそらくは11月25日深夜~11月26日未明)に実施されたようです。
[ロシア海軍北方艦隊の最新鋭フリゲート"アドミラル・ゴルシコフ"は白海からバレンツ海の海上目標へ極超音速ミサイル"ツィルコン"を発射した]
12月11日、「アドミラル・ゴルシコフ」は白海からチジャ射爆場の地上目標へ「ツィルコン」発射試験を実行しました。
[ロシア海軍北方艦隊の最新鋭フリゲート"アドミラル・ゴルシコフ"は白海から極超音速ミサイル"ツィルコン"を地上へ発射した]
2020年の「ツィルコン」発射試験は、全て成功と認められました。
具体的には、「驚くべき」命中精度を示したという事のようです。
[2020年の極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"発射試験は全て成功と認められた]
2021年には「ツィルコン」の発射試験は7回程度の実施が予定されています。
[ロシア海軍の為の極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"は2021年に7回の発射試験を行なう]
フリゲート「アドミラル・ゴルシコフ」からの発射試験では、複数のミサイルの一斉発射も予定されています。
[ロシア海軍の為の極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"は2021年末までに一斉発射試験を行なう]
原子力水中巡洋艦「セヴェロドヴィンスク」は、2021年中に少なくとも2回の「ツィルコン」発射試験を行ない、これが「ツィルコン」の最終発射試験となるようです。
「ツィルコン」の量産開始は、早ければ2022年になります。
[ロシア海軍の為の極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"の量産は2022年に始まる]
[極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"は2022年からロシア海軍への引き渡しが始まる]
「ツィルコン」は、超音速対艦ミサイル「オーニクス」と対地/対艦巡航ミサイル「カリブル」の両方を発射できる汎用垂直発射機3S-14UKSKから発射できます。
(つまり、「カリブル」や「オーニクス」と発射機を共有できる)
「ツィルコン」は、ロシア海軍の新世代艦であるプロジェクト22350フリゲート及びプロジェクト22350Mフリゲート、プロジェクト885/885M「ヤーセン」原子力水中巡洋艦に装備されます。
この他、現在、大規模な近代化改装が行なわれている重原子力ロケット巡洋艦「アドミラル・ナヒーモフ」にも装備されます。
[近代化改装されるロシア海軍北方艦隊の重原子力ロケット巡洋艦アドミラル・ナヒーモフは2022年末に復帰する]
同様に大規模な近代化改装が行なわれる4隻のプロジェクト949A原子力水中巡洋艦(オスカーII級巡航ミサイル原潜)にも装備されます。
[ロシア海軍のプロジェクト949A原子力水中巡洋艦(オスカーII級)は近代化改装により極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"を装備する]
「ツィルコン」は、実質的には「グラニート」の後継という位置付けになるようです。
この他、現在、設計作業が進められており、2020年代から建造が始まるロシア海軍第5世代原子力潜水艦「ハスキー」/「ライカ」級にも装備されます。
[ロシア第5世代多目的原子力潜水艦プロジェクト「ハスキー/ライカ」]
基本的には大型水上艦及び原子力潜水艦に搭載される「ツィルコン」ですが、より小型の艦へ搭載する為の小型ヴァージョンも開発されます。
[ロシア海軍の小型艦の為に極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"軽量化型が開発される]
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