ロシア海軍北方艦隊の砕氷船イリヤー・ムーロメツはバレンツ海でPQ-17船団の沈没船を捜索する
- カテゴリ:ロシア北方艦隊(2020年-)

『ロシア連邦国防省公式サイト』より
ロシア北方艦隊広報サービス発表
2021年3月10日17時20分配信
【砕氷船「イリヤー・ムーロメツ」はバレンツ海で北方艦隊とロシア地理学協会の複合探検任務の処理へ着手した】
北方艦隊の砕氷及び水路調査保障部隊の一連の任務を処理する為、数日前にバレンツ海へ出航した砕氷船「イリヤー・ムーロメツ」は、愛国行為『戦争を忘れない』の枠組みで行なわれる北方艦隊とロシア地理学協会の複合探検計画の下での調査の実行へ着手した。
現在、砕氷船はバレンツ海中央部分の氷縁境界付近で行動している。
調査グループは、先ず第一に、第2次世界大戦中、悲劇で知られる船団PQ-17で沈んだ連合国の艦船を捜索する目的で、海底の地形を測量し、そのついでに海域の調査を行なう。
歴史家が以前に指摘した海域の1つでの捜索中、既にある種の大きな寸法の水中物体が発見されており、今後の分類の為、より詳細な調査と研究を必要とする。
この物体の追加調査は、近い内に複合探検任務の処理へ参加する北方艦隊の多機能後方支援船「エリブルス」や、探検計画下で行動する他の船により行なわれる事が計画されている。
探検は複数の段階で構成されており、2021年9月まで続く。
それには地理学協会の水中捜索者が参加し、北方艦隊の水路調査船及び水路調査艇、砕氷船「イリヤー・ムーロメツ」、多機能後方支援船「エリブルス」、コラ多種戦力小艦隊の艦が関わる。
2018年から2020年に北方艦隊は、ロシア地理学協会と合同で、北極圏、バレンツ海、白海で数回の探検を実施した。
これらの探検はロシア連邦国防省首脳から高い評価を受け、2019年には国家賞『クリスタル・コンパス』が授与された。

現在のロシアは、原子力砕氷船「アルクチカ」型を筆頭に各種砕氷船を保有していますが、これらの砕氷船はロシア海軍の所属ではありません。
ソ連邦海軍時代には、プロジェクト97砕氷船が8隻建造され、1960年から1970年に掛けて就役しました。
プロジェクト97も『アドミラルティ造船所』で建造されました。
先代の砕氷船「イリヤー・ムーロメツ」(プロジェクト97K)は1965年12月にソ連海軍へ納入され、太平洋艦隊へ配備されました。


ソ連邦解体後の1993年6月にロシア海軍から除籍されました。
初代「イリヤー・ムーロメツ」が姿を消してから20年以上経った2015年4月23日、プロジェクト21180砕氷船の1番船として新たな「イリヤー・ムーロメツ」が起工されました。
[ロシア海軍の為の新型砕氷船イリヤー・ムーロメツは2015年4月23日に起工される]
[ロシア海軍の新型砕氷船イリヤー・ムーロメツは起工された]
2代目「イリヤー・ムーロメツ」は2016年6月10日に進水しました。
[ロシア海軍の新型砕氷船イリヤー・ムーロメツは進水した]
進水後、『アドミラルティ造船所』の岸壁で艤装工事が進められ、係留試験が行なわれました。

「イリヤー・ムーロメツ」は、2017年7月22日から洋上試験~工場航行試験の第1段階を開始しました。

第1段階試験は8月29日に終了しました。
[ロシア海軍の新型砕氷船イリヤー・ムーロメツは洋上試験の第1段階を終えた]
続いて9月上旬まで工場航行試験の第2段階が実施されました。
『ロシア通信社ノーボスチ』より
2017年9月14日1時7分配信
【最新砕氷船「イリヤー・ムーロメツ」は工場試験弾2段階を実行した】
これで工場航行試験は完了し、10月4日から最終洋上試験である国家受領試験が始まる予定でしたが、1日遅れて10月5日にサンクトペテルブルクを出航しました。
[ロシア海軍の新型砕氷船イリヤー・ムーロメツは2017年10月4日に最終洋上試験を開始する]
[ロシア海軍の新型砕氷船イリヤー・ムーロメツの最終洋上試験はバルト海で始まった]
「イリヤー・ムーロメツ」の国家受領試験は11月下旬に完了し、2017年11月30日にサンクトペテルブルクの『アドミラルティ造船所』でロシア海軍旗の初掲揚式典、即ちロシア海軍への就役式典が開催されました。
同時に造船所からロシア海軍への納入証書への署名も行われたようです。
[新型砕氷船イリヤー・ムーロメツ、ロシア海軍へ就役(2017年11月30日)]
「イリヤー・ムーロメツ」は2017年12月26日にバルチースク基地を出港し、2018年1月2日に北方艦隊基地セヴェロモルスクへ到着しました。
[ロシア海軍の新型砕氷船イリヤー・ムーロメツは北方艦隊基地へ到着した]

4月12日には砕氷試験の為にセヴェロモルスク基地から出航し、4月24日にはカルスキエボロタ海峡へ入りました。
『ロシア連邦国防省公式サイト』より
ロシア北方艦隊広報サービス発表
2018年4月24日14時26分配信
【北方艦隊の最新砕氷船「イリヤー・ムーロメツ」はカルスキエボロタへ入った】
4月末には未だ氷が張っている白海へ向かい、北方艦隊の戦略用途原子力水中巡洋艦「ユーリー・ドルゴルーキー」を先導してセヴェロドヴィンスクへ入港しました。
[ロシア海軍北方艦隊の最新砕氷船イリヤー・ムーロメツは白海の結氷海域で戦略用途原子力水中巡洋艦ユーリー・ドルゴルーキーを先導した]
2018年8月上旬~10月上旬に実施されたロシア北方艦隊の7回目の北極海遠征へ参加しました。
[ロシア北方艦隊第7次北極圏遠征(2018年8月-10月)]
2019年8月初頭~9月末に実施されたロシア北方艦隊の8回目の北極海遠征へ参加しました。
[ロシア北方艦隊第8次北極遠征(2019年8月-9月)]
2020年8月初頭~10月下旬に実施されたロシア北方艦隊の9回目の北極海遠征へ参加しました。
[]ロシア北方艦隊第9次北極遠征(2020年8月-10月)
2021年3月上旬にバレンツ海へ出航し、第2世界大戦中の1942年7月初頭、ドイツ軍の攻撃によりバレンツ海で壊滅したPQ-17船団の沈没船の捜索を開始しました。




今後、プロジェクト23120多機能後方支援船「エリブルス」(2018年4月9日就役)も捜索活動へ参加します。
[プロジェクト23120多機能後方支援船エリブルスはロシア海軍へ就役し、北方艦隊へ編入された]

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