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ロシア海軍北方艦隊のフリゲート"アドミラル・ゴルシコフ"は2020年6月以降に極超音速ミサイル"ツィルコン"の国家試験を開始する

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『ロシア通信社ノーボスチ』より
2021年3月28日3時7分配信
【情報筋は2021年の「ツィルコン」試験計画について話した】
モスクワ、3月28日-ロシア通信社ノーボスチ

北方艦隊プロジェクト22350フリゲート「アドミラル・ゴルシコフ」による2021年の最初の極超音速ミサイル「ツィルコン」発射は初夏に行なわれ、この射撃は複合国家試験の始まりとなる。
『ロシア通信社ノーボスチ』防衛産業企業体の情報提供者より伝えられた。

以前、メディアへ「アドミラル・ゴルシコフ」は既に4回のミサイル「ツィルコン」発射を行なっており、これにより水上搭載艦からの極超音速ミサイルの飛翔-設計試験は完了するという情報が現れた。

「ゴルシコフによる飛翔-設計試験は、昨年11月の3度目のツィルコン発射で完了しており、この時点で、フリゲートは、それ以上のツィルコン射撃は未だ行っておりません。
艦上からの次の射撃は、初夏に行なわれなければなりません」

対談者の1人は伝えた。

他の防衛産業企業体の情報提供者が明らかにしたように
「暫定的に6月に計画されているゴルシコフからのツィルコン発射は、水上搭載艦からのミサイル複合体の国家試験の始まりとなります」
「極超音速ミサイルの一斉射撃が行なわれる可能性は排除されません」

彼は付け加えた。

現在、フリゲート北方艦隊の戦闘訓練計画の枠組みで任務を遂行している。
北方艦隊広報サービスは木曜日、「アドミラル・ゴルシコフ」バレンツ海で、ノヴァヤ・ゼムリャの地上標的への有翼ミサイル「オーニクス」の射撃を実施したと伝えた。
ミサイルは約300キロメートルを飛翔し、目標を成功裏に撃破した。

[以前に言われたプログラムの詳細]
国防省
によると、2020年に「ゴルシコフ」は試験の枠組みで3回の「ツィルコン」発射を実施した。2回は海上標的へ、1回は地上標的へ。
全ての射撃のケースでは、ミサイルは1基のみだった。

1月29日の『軍需製品統一受領の日』に国防次官アレクセイ・クリヴォルチコは、極超音速ミサイル「ツィルコン」の国家試験は2021年に完了し、潜水艦からの射撃が行なわれると述べた。
海軍の為のミサイルの生産品の供給は2022年に開始されなければならない。
クリヴォルチコは、この時、「ツィルコン」飛翔-設計試験の結果は肯定的であり、次の段階への着手を可能にすると述べた。

今年1月初頭、防衛産業企業体の情報提供者は、2021年末までに「アドミラル・ゴルシコフ」ミサイル複合体の国家試験の枠組みで極超音速ミサイル「ツィルコン」の初の一斉発射を実施すると『ロシア通信社ノーボスチ』へ伝えた。
ミサイルは艦上から数秒間隔で発射される。

『ロシア通信社ノーボスチ』の他の情報提供者によると、年末までに更に数回の極超音速ミサイルの発射が北方艦隊多目的原子力潜水艦「セヴェロドヴィンスク」により実施される。
以前には「ツィルコン」の射撃は、水中位置の潜水艦からの発射を模した潜航スタンドから実施されていた。

[「ツィルコン」と最初の搭載艦]
「ツィルコン」
は、ルート全距離で自身のエンジン推力を使用し、大気圏の密度の濃い層で機動する空気力学飛行を継続して行なう事が可能な世界初の極超音速有翼ミサイルである。
ミサイルの速度は音速の約9倍に達し(高度20キロメートルで毎秒約2.65キロメートル)、最大射撃距離は1000キロメートルまでとなる。
「ツィルコン」は、水上及び地上の目標を同様の効率で撃破できる。

フリゲート「アドミラル・ゴルシコフ」は、プロジェクト22350のトップ艦であり、その主要兵装は、ミサイル「カリブル」「オーニクス」或いは「ツィルコン」を使用できる16基の汎用垂直有翼ミサイル発射装置で構成されている。

潜水艦「セヴェロドヴィンスク」プロジェクト885潜水艦のトップであり、同様のミサイルの為の32基の汎用垂直有翼ミサイル発射装置を有する。



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極超音速対艦ミサイル「ツィルコン」(ジルコン、風信子石)は、以前に長距離超音速有翼ミサイル「バザーリト」/「ヴルカーン」「グラニート」、そして超音速ミサイル「オーニクス」を開発した科学生産合同『機械製造』が新たに開発しているミサイルです。

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[長距離打撃ミサイル複合体バザーリト/ヴルカーン]

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[有翼ミサイル複合体グラニートは軍備採用30周年を迎えた]

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[ロシア海軍は2019年に55基の超音速対艦ミサイル"オーニクス"を受領する]

科学生産合同『機械製造』は、長距離超音速有翼ミサイル「グラニート」の直接の後継となる筈だった「ボリード」(最大射程800km、飛翔速度マッハ4)の開発を1980年代末から開始し、1991年にはエンジンの最初の試験が行われたのですが、1990年代末には開発は中止されました。

「ツィルコン」の開発には、「ボリード」の開発作業の経験もフィードバックされているようです。


「ツィルコン」の発射試験は、2015年秋頃から始まりました。
[ロシア海軍の為の極超音速巡航ミサイル"ツィルコン"の試験が始まった]

初期の「ツィルコン」の発射試験は、アルハンゲリスク州ネノクサ村に在るロシア海軍ミサイル発射試験場で行なわれており、初期には失敗した事も有るようです。
[ロシア海軍の為の巡航ミサイルは試射中にアルハンゲリスク州ネノクサ村の住宅へ落下した]
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「ツィルコン」の発射試験は秘密裡に行なわれ、2016年4月に行なわれた試験では最大速度マッハ8を記録しました。
[ロシア海軍の為の極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"は発射試験で最大速度マッハ8に達した]

「ツィルコン」の試験完了と生産開始は、2018年からスタートする新たな国家軍備プログラム(2018-2027年の国家軍備プログラム)において実現する事になります。
[ロシア海軍の為の極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"は新たな2018-2027年の国家軍備プログラムにおいて開発を完了し、生産を開始する]

ネノクサ村ミサイル発射試験場からの「ツィルコン」発射試験は、10回以上行なわれました。
[ロシア海軍の為の極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"は10回以上の発射試験を行なった]

2019年2月20日、ロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチン氏は、教書演説において極超音速対艦ミサイル「ツィルコン」の開発は順調に進んでいると発言しています。
[ロシア海軍の為の極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"の開発は滞りなく進んでいる]

地上からの発射試験に続き、海上での発射試験が北方艦隊プロジェクト22350フリゲートの1番艦「アドミラル・ゴルシコフ」(2018年7月28日就役)により行なわれる事になりました。
[ロシア海軍の新たな極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"は2019年末にフリゲート"アドミラル・ゴルシコフ"で洋上発射試験を行なう]

「アドミラル・ゴルシコフ」は2019年11月末に「ミサイル兵器」の試験の為、セヴェロドヴィンスクへ移動しました。

[ロシア海軍北方艦隊の最新鋭フリゲート"アドミラル・ゴルシコフ"は新型ミサイルの試験を行なう為にセヴェロドヴィンスクへ到着した]

ただ、この時には発射試験は行わず、2019年12月末にセヴェロモルスクへ帰投しました。
[ロシア海軍北方艦隊の最新鋭フリゲート"アドミラル・ゴルシコフ"は母港セヴェロモルスクへ帰投した]

2020年1月初頭、「アドミラル・ゴルシコフ」バレンツ海「ツィルコン」の発射試験を行ないました。
ミサイルは500キロメートル以上を飛翔し、北ウラルの地上目標へ命中しました。
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[ロシア海軍北方艦隊の最新鋭フリゲート"アドミラル・ゴルシコフ"は2020年1月に極超音速ミサイル"ツィルコン"の発射試験を行なった]

「アドミラル・ゴルシコフ」からの2回目の「ツィルコン」発射試験は、当初は2020年春に実施される予定であり、同艦は2020年4月初頭にセヴェロドヴィンスクへ回航され「ツィルコン」の運用(発射)に関する部分的な近代化改装が行なわれました。
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[ロシア海軍のプロジェクト22350(アドミラル・ゴルシコフ型)フリゲートは近代化される]

しかし、発射試験はコロナウイルスの影響により何度も延期されました。
[ロシア海軍北方艦隊の最新フリゲート"アドミラル・ゴルシコフ"は白海で演習を行なう]

結局、白海で2回目の「ツィルコン」発射試験(海上目標に対しては初)が実行されたのは、2020年10月6日になりました。

[ロシア海軍北方艦隊の最新鋭フリゲート"アドミラル・ゴルシコフ"は海上目標への極超音速ミサイル"ツィルコン"発射試験を行なった]

11月26日、「アドミラル・ゴルシコフ」白海から3回目の「ツィルコン」発射試験(海上目標に対しては2回目)を実行しました。
公表された動画を見る限り、発射は夜間(おそらくは11月25日深夜~11月26日未明)に実施されたようです。

[ロシア海軍北方艦隊の最新鋭フリゲート"アドミラル・ゴルシコフ"は白海からバレンツ海の海上目標へ極超音速ミサイル"ツィルコン"を発射した]

12月11日、「アドミラル・ゴルシコフ」白海からチジャ射爆場の地上目標へ「ツィルコン」発射試験を実行しました。

[ロシア海軍北方艦隊の最新鋭フリゲート"アドミラル・ゴルシコフ"は白海から極超音速ミサイル"ツィルコン"を地上へ発射した]

2020年の「ツィルコン」発射試験は、全て成功と認められました。
具体的には、「驚くべき」命中精度を示したという事のようです。
[2020年の極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"発射試験は全て成功と認められた]

2021年には「ツィルコン」の発射試験は7回程度の実施が予定されています。
[ロシア海軍の為の極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"は2021年に7回の発射試験を行なう]

フリゲート「アドミラル・ゴルシコフ」からの発射試験では、複数のミサイルの一斉発射も予定されています。
[ロシア海軍の為の極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"は2021年末までに一斉発射試験を行なう]

原子力水中巡洋艦「セヴェロドヴィンスク」は、2021年中に少なくとも2回の「ツィルコン」発射試験を行ないます。
[ロシア海軍北方艦隊の原子力水中巡洋艦セヴェロドヴィンスクは2021年中に極超音速ミサイル"ツィルコン"を少なくとも2回発射する]

以前には、「アドミラル・ゴルシコフ」からの発射試験の後に「セヴェロドヴィンスク」からの発射試験を開始する予定でしたが、ほぼ同時並行で行なわれる事になったようです。
「セヴェロドヴィンスク」からの発射試験は、早ければ2021年6月に実施されます。
[ロシア海軍北方艦隊の原子力水中巡洋艦セヴェロドヴィンスクは2021年6月以降に極超音速ミサイル"ツィルコン"発射試験を開始する]

一方、「アドミラル・ゴルシコフ」の次の発射試験は、早ければ2021年5月に実施されます。
[ロシア海軍北方艦隊のフリゲート"アドミラル・ゴルシコフ"は2020年5月以降に極超音速ミサイル"ツィルコン"の国家試験を開始する]
これまでの「アドミラル・ゴルシコフ」による発射試験は「飛翔-設計試験」と呼ばれる初期段階の試験でしたが、今後実施されるのは、ミサイルの制式採用前の最終試験となる国家試験です。

今回の「匿名希望の情報提供者」によると、国家試験の開始は6月以降になるとの事です。

「ツィルコン」の量産開始は、早ければ2022年になります。
[ロシア海軍の為の極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"の量産は2022年に始まる]
[極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"は2022年からロシア海軍への引き渡しが始まる]


「ツィルコン」は、超音速対艦ミサイル「オーニクス」対地/対艦巡航ミサイル「カリブル」の両方を発射できる汎用垂直発射機3S-14UKSKから発射できます。
(つまり、「カリブル」「オーニクス」と発射機を共有できる)

「ツィルコン」は、ロシア海軍の新世代艦であるプロジェクト22350フリゲート及びプロジェクト22350Mフリゲートプロジェクト885/885M「ヤーセン」原子力水中巡洋艦に装備されます。

この他、現在、大規模な近代化改装が行なわれている重原子力ロケット巡洋艦「アドミラル・ナヒーモフ」にも装備されます。
[近代化改装されるロシア海軍北方艦隊の重原子力ロケット巡洋艦アドミラル・ナヒーモフは2022年末に復帰する]

同様に大規模な近代化改装が行なわれる4隻のプロジェクト949A原子力水中巡洋艦(オスカーII級巡航ミサイル原潜)にも装備されます。
[ロシア海軍のプロジェクト949A原子力水中巡洋艦(オスカーII級)は近代化改装により極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"を装備する]

「ツィルコン」は、実質的には「グラニート」の後継という位置付けになるようです。

この他、現在、設計作業が進められており、2020年代から建造が始まるロシア海軍第5世代原子力潜水艦「ハスキー」/「ライカ」級にも装備されます。
[ロシア第5世代多目的原子力潜水艦プロジェクト「ハスキー/ライカ」]

基本的には大型水上艦及び原子力潜水艦に搭載される「ツィルコン」ですが、より小型の艦へ搭載する為の小型ヴァージョンも開発されます。
[ロシア海軍の小型艦の為に極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"軽量化型が開発される]
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