2019年7月1日の火災事故で損傷したロシア海軍の深海調査原潜ロシャリクは2025年までに復帰する
- カテゴリ:ロシア海軍の特務原潜

『タス通信』より
2021年4月5日9時1分配信
【情報筋:原子力特殊潜水艦「ロシャリク」の修理は4年続く】
モスクワ、4月5日/タス通信
原子力水中有人装置AS-31(非公式名「ロシャリク」)の修理は、4年間続く。
『タス通信』は防衛産業企業体の情報提供者より伝えられた。
「原子力特殊潜水艦ロシャリクの修理には4年掛かります。
その後、水中装置は戦闘編制へ復帰します」
彼は話した。
装置を修復している艦船修理センター『ズヴェズドーチカ』(『統合造船業営団』へ加入)広報サービスは、この情報にコメントしなかった。
以前、『タス通信』は、3月にセヴェロドヴィンスクの艦船修理センター『ズヴェズドーチカ』は、事故を起こした特殊潜水艦から原子炉の炉心を降ろす操作を完了し、それには1ヶ月掛かったと伝えた。
他の『タス通信』の情報提供者によると、潜水艦の検査が行なわれ、チタン製船体は事実上損傷していない事が立証されたので、その後、「ロシャリク」の近代化を伴う修理作業も同時に開始され、炉心が降ろされた。
伝えられる所によれば、修理中、原子炉の交換は計画されていない。
潜水艦AS-31の火災は7月1日に発生し、14名の船員が命を奪われた。
事故原因についてメディアは、リチウム電池の発火及び爆発と言った。
潜水艦の原子炉は火災による損傷は無かった。
2019年11月、潜水艦は艦船修理センター『ズヴェズドーチカ』へ運ばれた。
AS-31のプロジェクト名と戦術-技術的特性は公式には公表されておらず、兵装を搭載せず、大深度へ潜航できる事が知られているのみである。
船体の特殊な形状~互いに接続された複数のチタンの球~故に、同名の1971年のアニメ映画のボールから成る馬の玩具に因んで「ロシャリク」のニックネームを付けられた。
2019年7月1日、ロシア海軍の「科学研究深海装置」は、ロシア領海内での海底調査中に火災が発生し、乗組員14名が死亡しました。
[ロシア海軍の深海調査原潜で火災が発生し、乗員14名が死亡した]
ロシア国防省は、事故を起こした「科学研究深海装置」の名前などは一切公表していませんが、プロジェクト10831「ロシャリク」原子力深海ステーションのようです。

原子力深海ステーションAS-12は、1988年頃にセヴェロドヴィンスク造船所『セヴマシュ』で起工され、2003年8月頃に進水、2010年頃に就役しました。
船体はチタン製です。
同級に関しては詳細は未だ不明です。
艦名については「AS-31」という説も有り、今回の『タス通信』の記事では、AS-31と記されています。
明確な要目も不明ですが、水中排水量は2100トン、全長は60メートル、幅は7メートル、水中速力は30ノット、潜航深度は少なくとも1000m以上(未確認情報によれば最大6000m)、乗員は25名と推定されています。
ロシア海軍の第4世代通常動力潜水艦プロジェクト677「ラーダ」とほぼ同サイズの小型原潜のようです。
「ロシャリク」級特務原潜AS-12(AS-31?)



ロシャリク級は、以前には戦略原子力潜水艦プロジェクト667BDR(デルタIII級)K-129を改造した特殊用途原子力潜水艦プロジェクト09786(デルタ・ストレッチ)BS-136「オレンブルク」を母艦としており、同艦に搭載されて海洋で行動していました。


2012年9月には北極圏へ行き、ロモノソフ海嶺とメンデレーエフ海嶺の海底を調査しています。
『イズべスチヤ』より
2012年10月29日配信
【軍用原子力バチスカーフ「ロシャリク」は北極圏を探った】
北極圏で行動する母艦BS-136「オレンブルク」(2012年9月27日)

ロシャリクは、2015年にも2回の遠距離航海を行なっています。
[ロシア海軍の特務原潜ロシャリクは2015年に2度の遠征を行なっていた]
2016年12月末にプロジェクト09787特殊用途原子力潜水艦「ポドモスコヴィエ」が再就役してからは、同艦を母艦としているようです。
[改造を終えた特務原潜ポドモスコヴィエ(モスクワ州)はロシア海軍へ引き渡された]

事故後、ロシャリクと搭載母艦(プロジェクト09787特殊用途原子力潜水艦BS-64「ポドモスコヴィエ」)は北方艦隊基地セヴェロモルスクへ入港しました。


この事故の詳細や事故を起こした艦の名前は相変わらず公表されていませんが、ロシア国防省は、事故で死亡した乗員14名の名前は公表しています。
[2019年7月1日のロシア海軍の深海調査原潜の火災事故で死亡した乗組員14名の氏名が公表された]
死亡したのは艦長を始めとして佐官クラスの年長者が殆どですが、おそらくは、火災事故発生の際、若い乗組員(つまり、将来のロシャリク運用の中核となる人々)を助ける為、自分達が犠牲になったのでしょう。
(ロシャリクの標準乗員は25名なので、おそらく11名程度が生存している)
火災事故で損傷したロシャリクは、2019年11月初頭にセヴェロドヴィンスクの艦船修理センター『ズヴェズドーチカ』へ回航されました。

[2019年7月1日の火災事故で損傷したロシア海軍の深海調査原潜の修理は9月に始まる]
[2019年7月1日の火災事故で損傷したロシア海軍の深海調査原潜AS-31は修理の為にセヴェロドヴィンスクへ運ばれた]
[2019年7月1日の火災事故で損傷したロシア海軍の深海調査原潜AS-31(ロシャリク)の修理作業が始まった]
機関部分以外の損傷は激しく、船体の一部を含め、殆どの機器は交換される事になるようです。
まず初めに、原子炉の炉心を降ろす予定でしたが、作業は2021年に延期されました。
[2019年7月1日の火災事故で損傷したロシア海軍の深海調査原潜AS-31(ロシャリク)の修理作業は2021年に延期された]
延期の理由は、ロシャリクよりも古い原子力深海ステーションAS-15(1991年12月30日就役)のオーバーホールを先に行なう事になった為です。
ロシャリクの原子炉の炉心は、2021年3月末までに降ろされました。
[2019年7月1日の火災事故で損傷したロシア海軍の深海調査原潜AS-31(ロシャリク)は原子炉の炉心を降ろした]
ロシャリクの修理と近代化改装には4年掛かるとの事ですから、艦隊へ復帰するのは2025年頃になります。
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