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新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフは2028年にロシア海軍へ就役する

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『イズベスチヤ』より
2021年4月13日20時13分配信
【汎用揚陸:ロシアのヘリコプター母艦は2028年に海軍へ増強される】

最新艦には、更に様々なクラスの無人機が駐留する。

プロジェクト23900の1隻目の汎用揚陸艦「イワン・ロゴフ」の建造は2028年に完了する。
同プロジェクトが他の同様のクラスと異なるのは、無人機管制所の統合である。
これは、ロシアヘリコプター母艦が、沿岸或いは他の艦から射出されたドローンを管制できる事を意味する。
更に、超遠距離通信システム、自動管理システム、他の標準兵装を装備する。

[主要コース]
計画では、プロジェクト23900のトップ艦「イワン・ロゴフ」の作業は2028年に完了しなければならない。
軍当局の情報提供者によると、この時期には更に航空グループの形成も規定されている。
その構成には、戦闘ヘリコプター及び輸送ヘリコプター、更には、水上及び水中ドローンを含む個々の無人機ラインが加わる。

プロジェクト23900汎用揚陸艦と他の同クラスの艦の差異は、無人飛行装置管制所の統合である。
これは、ヘリコプター母艦が、沿岸或いは他の艦から射出された無人機を管制できる事を意味する。

汎用揚陸艦シリーズのトップ「イワン・ロゴフ」は、昨年7月20日に起工された。
起工板はウラジーミル・プーチン大統領により設置された。
この時に国家元首は、最新艦は先進的な兵装システム、管理システム、遠距離通信システムを装備する事を指摘した。
彼は、このような汎用揚陸艦は、ロシア海軍の戦闘ポテンシャルを著しく強化し、その戦略的能力を高める事を強調した。

「プロジェクト23900艦は、大きくて多機能です。
排水量約4万トン、本質的に、これは軽航空母艦です」

軍事歴史家ドミトリー・ボルテンコフ『イズベスチヤ』へ話した。
「これは、新たなレベルの能力を引き出す艦隊の有力な更新です。
ヘリコプター母艦は、世界のあらゆる地域において戦力投射及び揚陸作戦や、平和維持任務の遂行を可能にします。
艦は艇とヘリコプターで海軍歩兵を上陸させ、野営地を建設し、ヘリコプターの支援を受ける事が出来ます。
これは、我々にとって、かなり重要なプロジェクトです」


現在、アメリカ合衆国は、ロボット化の方向へ艦隊を開発しており、ロシアも同じコースを進んでいると軍事専門家ワジム・コジュリン『イズベスチヤ』へ伝えた。

「アメリカ人は、将来的には艦隊の全てがロボット技術に結ばれると予測しており、それは、打撃、偵察、水中及び空中の脅威の探知に初めて使用されました」
彼は説明した。
「既に、マイクロソフトにより作られた軍事クラウドストレージが存在し、多くの実験が行なわれています。
ですが、新たなシステムがどう見えるのかは未だ完全な確信が有りません。
経験は、彼らが正しい道を進んでいる事を示しています。
同様の道をロシアも進んでおります。
ロボット化システムは、対機雷、対潜防護、偵察、電波電子戦闘を保障しなければなりません。
将来的には、プロジェクト23900艦の建造は新たな技術の出現となり、その中で近代化が準備されます」


以前に『イズベスチヤ』は、プロジェクト23900艦の能力はヘリコプター及び海軍歩兵の輸送に限定されないと伝えた。
これらは、海上、地上、航空グループの戦闘指揮の為に必要な全ての機器が設置される。
ヘリコプター母艦は、超遠距離通信システム、自動指揮システムと他の司令部用の設備を備える。
汎用揚陸艦の艦内には、コンピュータ端末と作業場を有する特殊司令室が据え付けられる。

[ヘリコプターは単一ではない]
このようなサイズの汎用揚陸艦は、有人機及び無人機から成る多様な航空グループを搭載できる。
それは15~20機の海上ヘリコプターが中核となる予定である。

このような艦の為、火力支援ヘリコプターKa-52K「カトラン」が特別に開発された。
陸上ヴァージョンと比べ、それは胴体とエンジンの腐食防止処理が改善されている。
ローターとブレードは、内部格納庫への収納を保障する為に折り畳み型で作られている。
ローリング条件での甲板への着艦に耐える為、シャーシは補強された。

複座の戦闘機材は、無誘導兵器及び射程10kmの対戦車ミサイル「ヴィーフリ-1」の大量の弾数を使用できる。
将来的には、既に陸上で試験されているより強力な誘導弾を装備する。

2017年にKa-52Kエジプトへ供給された。
同国は2隻の「ミストラル」型汎用揚陸艦の複合航空グループの為、46機の「カトラン」を発注した。

海軍歩兵を沿岸へ移動させる為、航空グループの一員として輸送戦闘ヘリコプターKa-29が使用される。
各々は、完全装備の16名の将兵を輸送できる。

新たな汎用揚陸艦には更に、遠距離電波位置測定探知ヘリコプターKa-31Rも駐留できる。
それは艦から数百キロメートル離れた空中及び地上目標を探知し、遅滞なくその接近を警告できる。

既にロシア海軍フリゲートは、小型偵察無人機「オルラン-10」を艦上から射出し、その後に帰還させる実験を成功裏に行なっている。
その助力により、艦は偵察を行なうのみならず、地上目標への砲撃を修正する。
同様の装置は、新たな汎用揚陸艦でも使用できる。
甲板での発艦と着艦が可能なヘリコプター型小型艦上無人飛行装置は既に軍備採用されている。

この数十年間、ロシアには汎用揚陸艦が1隻も無かった。
ヘリコプター母艦自体は、ソヴィエト社会主義共和国連邦時代にプロジェクト1123「コンドル」対潜巡洋艦「モスクワ」「レニングラード」が軍備として在ったが、1990年代に除籍され、インドで解体された。
ヘリコプターは、プロジェクト1143重航空巡洋艦「ミンスク」、「キエフ」、「ノヴォロシースク」、「バクー」、そして更には「アドミラル・クズネツォフ」へ配置できた。
しかし、最後を除くすべてはソヴィエト連邦崩壊後に海軍から除籍された。

ポスト・ソヴィエト時代には、ヘリコプター母艦の建造問題さえ提起されなかった。
それは、当時の軍事ドクトリンでは想定されていなかった遠く離れた沿岸での行動の為に必要であると考えられていた。
その後、世界の様々な地域での軍事紛争の経験は、海軍歩兵、車両、ヘリコプターを艦内に受け入れる事が出来る艦が無くては、現代世界ではやって行けない事を示した。

ヘリコプター母艦海軍へ受け入れる試みは、この10年間で初めて行なわれた。
2011年、国防省フランスへ4隻の「ミストラル」型艦を発注した。
パリ-モスクワ間の合意条件下で、フランスが2隻のヘリコプター母艦の製造を約束した。
更なる2隻の艦がロシアの工場で建造されなければならなかった。
このタイプの最初の2隻の汎用揚陸艦の為の乗組員の募集は2013年秋に始まった。
チームが揃った後、彼らはサンクトペテルブルクで最初の訓練を行ない、その後、ヘリコプター母艦の設備の知識を得る為にフランスへ向かった。

400名から成る乗組員グループは、練習艦「スモールヌイ」に乗って2014年6月にサンナゼールへ到着した。
同年9月と10月には、建造されたヘリコプター母艦の1隻がロシア人チームを乗せて10日間海上へ出た。
しかし2015年、我々の乗組員は海上で「ミストラル」をマスターしていた時、フランス大統領フランソワ・オランドは、ロシアへ科された制裁を動機に艦の引き渡しを拒否した。
2016年にパリエジプトヘリコプター母艦を売却し、現在は「アンワル・アッ=サーダート」「ガマール・アブドゥル=ナーセル」の名で勤務に就いている。
その後にエジプト政府は、「ミストラル」の為のロシア製兵器と機器の購入、更にはヘリコプターKa-52Kの一団の供給に関するモスクワとの交渉を発議した。



2011年6月にロシアフランスへ2隻の「ミストラル」級ヘリコプター揚陸ドック艦(ヘリコプター空母)を発注し、「ウラジオストク」、「セヴァストーポリ」と命名された艦は2014年と2015年に引き渡される筈でしたが、フランスウクライナ情勢に関連して引き渡しを凍結しました。

2015年8月5日、ロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチンフランス大統領フランソワ・オランドは電話で会談し、「ミストラル」級ヘリコプター揚陸ドック艦の建造・供給契約の終了(破棄)を決定しました。
[ロシアとフランスはロシア海軍向けミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦の契約を終了させた]

フランスロシアへ補償金として約9億5000万ユーロを支払い、2隻の「ミストラル」級に設置されたロシア製機器は全て取り外してロシアへ返却されました。
[ロシア海軍向けミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦の契約終了によりフランスはロシアへ9億4975万4849ユーロを支払う]
[ロシア海軍向けだった2隻のミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦から取り外されたロシア製機器は全てロシアへ到着した]
[ロシア向けだった2隻のミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦から取り外されたロシア製機器はロシア海軍へ引き渡される]

その後、2隻の「ミストラル」級エジプトへ売却されました。
(1番艦は「ガマール・アブドゥル=ナーセル」、2番艦は「アンワル・アッ=サーダート」と改名)

「ガマール・アブドゥル=ナーセル」(旧「ウラジオストク」):2016年6月2日にエジプト海軍へ引き渡し。
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「アンワル・アッ=サーダート」(旧「セヴァストーポリ」):2016年9月16日にエジプト海軍へ引き渡し。
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一方、ロシアは、以前からロシア版ミストラルとも言える大型の全通甲板ヘリコプター揚陸艦(汎用ヘリコプター揚陸艦)の設計を進めており、2015年6月には、汎用ヘリコプター揚陸艦の概念設計案「ラヴィーナ」の詳細が公表されました。
[ロシア海軍将来汎用揚陸ヘリコプター搭載艦プロジェクト「ラヴィーナ」]

この概念設計案「ラヴィーナ」をベースにして、実際にロシア海軍向けとして建造される汎用ヘリコプター揚陸艦が設計されました。
[ロシア海軍の為の将来大型揚陸艦は複数のヴァージョンが設計されている]
[ロシア海軍の為の新たなヘリコプター揚陸艦の設計は進められている]
[ロシア海軍の為の将来汎用ヘリコプター母艦プリボイ級の設計作業は進められている]

汎用ヘリコプター揚陸艦の為に新たな戦闘情報管理システムも開発されます。
[ロシア海軍将来汎用揚陸艦の為の新たな戦闘情報管理システムが開発される]

搭載機は、元々は「ミストラル」用に開発された艦上攻撃ヘリコプターKa-52K「カトラン」などになります。

[艦上攻撃ヘリコプターKa-52Kカトランはロシア海軍の新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフ型の艦載機となる]


この他、ソ連時代に生産された戦闘輸送ヘリコプターKa-29も搭載されるようです。
Ka-29は1990年代以降は予備役として保管されていましたが、2016年から修復が始まりました。
[ロシア海軍太平洋艦隊の艦上輸送戦闘ヘリコプターKa-29は飛行訓練を行なった]

汎用ヘリコプター揚陸艦の機関は、ディーゼル/ガスタービン複合推進CODAG(COmbined Diesel And Gas turbine)になるようです。
これはディーゼルが巡航用、ガスタービンが増速用であり、ロシア海軍の新型艦では、プロジェクト22350フリゲートに採用されています。
[ロシア新世代艦のガスタービンとディーゼル]


新世代汎用揚陸艦の建造場所としては、以前にはサンクトペテルブルク『北方造船所』などが有力視されていましたが、2019年になって、クリミア半島ケルチ市造船工場『ザリフ』(造船コーポレーション『アク・バルス』傘下)で建造する案が浮上してきました。
【造船工場『ザリフ』公式サイト】
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[ロシア海軍の為の新世代汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻は2020年5月にクリミア半島ケルチ市のザリフ造船所で起工される]
[ロシア海軍の為の2万5千トン級汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻は2020年5月にクリミア半島で起工される?]
[ロシア海軍の為の新たな汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻は2020年にケルチ(ザリフ造船所)で起工され、2025年と2026年に就役する]
[ロシア海軍の為の2万5千トン級汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻は2020年5月上旬(5月9日まで)にクリミア半島で起工される]

造船工場『ザリフ』も、ロシア海軍新世代汎用揚陸艦を建造する用意がある事を認めました。
[クリミア半島ケルチのザリフ造船所はロシア海軍の為の2万5千トン級汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)を建造する準備を整えている]

2隻の汎用揚陸艦の建造費は、ほぼ1000億ルーブルになるようです。
[ロシア海軍の為の新世代汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻の建造費は1000億ルーブルになる]
因みに1000億ルーブルは、プロジェクト22350(「アドミラル・ゴルシコフ」型)フリゲート4隻分に相当します。

当初、2隻の汎用揚陸艦の起工は、2020年5月9日の大祖国戦争勝利75周年記念日に予定されており、起工に先立つ建造契約の締結は、2020年4月末までに行なわれる予定でした。
[ロシア海軍の為の新世代汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻は大祖国戦争勝利75周年記念日の2020年5月9日に起工される]
[ロシア海軍の為の新世代汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻の建造契約は2020年4月末までに締結される]

しかし、最近の新型コロナウイルス流行の影響により艦の起工は延期され、これに伴い建造契約の締結も先送りされ、5月22日までに締結されました。
[ロシア海軍の為の新世代汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻の建造契約が締結された]
[クリミア半島のザリフ造船所はロシア海軍のプロジェクト23900汎用揚陸艦の建造準備を進めている]

2隻の汎用揚陸艦の起工は6月29日に予定されていましたが、またも延期となりました。
[ロシア海軍のプロジェクト23900(セヴァストーポリ型)汎用揚陸艦の起工は延期された]

その後、起工日は7月16日に決まりましたが、これも延期され、2020年7月20日に起工式典が開催されました。

[ロシア海軍のプロジェクト23900汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフとミトロファン・モスカレンコはクリミア半島のザリフ造船所で起工された]

造船コーポレーション『アク・バルス』傘下のゼレノドリスク設計局が設計したプロジェクト23900汎用揚陸艦は、フランス「ミストラル」級の影響を大きく受けているようです。
[プロジェクト23900汎用揚陸艦(イワン・ロゴフ型)の開発・建造元『アク・バルス』のトップは語る]
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2隻の汎用揚陸艦の艦名は、以前には「セヴァストーポリ」「ウラジオストク」が有力視されていましたが、結局、旧ソ連時代のプロジェクト1174大型揚陸艦の1番艦と3番艦の名前を受け継いだ「イワン・ロゴフ」「ミトロファン・モスカレンコ」となりました。

プロジェクト1174大型揚陸艦「イワン・ロゴフ」(1978年6月15日就役、1995年8月4日除籍)
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プロジェクト1174大型揚陸艦「ミトロファン・モスカレンコ」(1990年9月23日就役、2006年12月18日除籍)
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プロジェクト23900汎用揚陸艦は、指揮艦としての能力も付与されます。
[ロシア海軍の新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフ型は指揮艦として使用される]
[ロシア海軍の新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフ型の為の指揮システムが開発される]
この場合は、例えば、地中海ロシア海軍常設作戦連合部隊の旗艦としての使用などが考慮されているようです。

以前には、プロジェクト23900汎用揚陸艦は満載排水量25000トン、ヘリコプター20機搭載、海軍歩兵900名を積載すると言われ、その後、設計変更されて満載排水量は30000トンに拡大し、ヘリコプター16機搭載、海軍歩兵1000名積載、そして艦上無人攻撃機も搭載する事になりました。
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[ロシア海軍の新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフ型は艦上無人攻撃機を搭載する]
[ロシア海軍航空隊は対潜任務に無人機を使用する]

しかし2020年12月末、ロシア連邦国防次官(防衛産業担当)アレクセイ・クリヴォルチコ氏は、プロジェクト23900汎用揚陸艦の(満載)排水量は40000トンになると述べました。
[ロシア海軍の新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフ型は40000トンになる]

2020年7月の起工から7ヶ月後の2021年2月、「イワン・ロゴフ」「ミトロファン・モスカレンコ」の船体の形成が始まりました。
[ロシア海軍の新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフ型の船体の形成が始まった]

1番艦「イワン・ロゴフ」ロシア海軍への引き渡しは2028年に予定されています。
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