地対艦ミサイル「バスチオン」はクリル諸島へ配備されない
- カテゴリ:ロシア海軍沿岸部隊(海軍歩兵)


『イズベスチヤ』より
2013年2月4日11時01分配信
【対艦(ミサイル)「バスチオン」は陸上への射撃を学ぶ】
海軍は最新沿岸ミサイル複合体の配置場所の変更を要求した。
海軍総司令部は、最新の作戦戦術ミサイル複合体「バスチオン」の第4の中隊を(ロシア)南方のアナパ地域への配置を要望するセルゲイ・ショイグへの報告書を準備する。
以前に提案されていたクリル諸島防衛の為、複合体を(同地へ)送る事案は、もはや考慮されていない。
総司令部の情報提供者は『イズベスチヤ』へ伝達した。
「既に黒海艦隊の軍備として置かれている3個中隊とは異なり、新たなバスチオンは、ミサイルで地上の小型目標への打撃を与える事が可能な追加誘導システムを受け取ります。
その誘導精度は、現行の100メートルではなく、数メートルになります。
これはもはや対艦ではなく、高精度の対地複合体です」
彼は話した。
海軍の提案の要因となった国防省科学生産組合の計画によると、今年(2013年)春には作業を開始し、2013年末までに第4の発射装置中隊は完全に準備を整え、翌年(2014年)初頭には軍備採用されるだろう。
「バスチオン」は卓越した戦術-技術的特性を有しており、それ故に、政治的な要因となる。
「その標準装備ミサイル"オーニクス"(ヤーホント)と、ロシア・インド共同対艦ミサイル"ブラーモス"は、地上へ発射できます。
バスチオンは、トルコ東部とグルジア全域をカバーできます」
国分省の対談者は、『イズベスチヤ』と意見を共有する。
ミサイルは、マッハ2-2.5、時速2000-3200kmの平均速度で飛翔する。
対艦モデルの飛翔範囲は、高度を変更して(混成プロファイルと呼ばれる)300kmであり、対地攻撃の場合は、それよりも長くなる。
敵の対空防衛網を突破する為、高度5-10mまで降下し、弾頭の電波位置特定自動照準は、数メートルの大きさの小さな目標を認識できる。
ミサイルはブースター部分で弾道軌道を飛翔し、その後、レーダーで目標を認識して地面へ急降下し、敵の対空防衛網の射撃に当たらないように慣性システムで誘導される。
第11独立沿岸ロケット砲兵旅団の使用可能な「バスチオン」12基全ては、アナパ付近のウタシュ村の第25独立ロケット大隊に配備される。
彼らは、対艦ミサイルを有している。
国防省からの非公式情報によると、地上目標に対するミサイルを装備する第25独立大隊の部隊強化の為の提案は、この前の秋~冬のシリア内戦の為、トルコがアメリカ製高射ミサイル複合体「パトリオット」を受け取ったという事実に起因するものとされている。
トルコ及びロシアの軍部は、互いに対する潜在的な脅威という関係で、これらの複合体を受け取る事は明確である。
しかしロシア軍当局者は、 「パトリオット」は防衛兵器であるが故に、南方境界線上の安全保障の直接の脅威にはならないと言う。
「ロシアは大国として、地域のバランスの変化に対応しなければならず」、いかなる場合でも、南方の戦略目的をカバーする重要な戦力が必要である。
黒海エリアの軍部隊は、2010年に計画された沿岸ミサイル複合体の将来のクリル諸島配備には同意していた。
その後、歴史上初めてロシア大統領が同諸島を訪問したが故に、ロシアと日本の外交危機が勃発した。
軍の情報提供者は、武力紛争の可能性を指摘した。
「東方管区司令部は、反撃の為の戦力も兵器も無い為、(クリルへの)全ての侵略を防ぐ事が出来ないと確信してました。
しかし2011年3月の東部日本大地震と津波は、日本軍を動揺させました」
東方軍管区司令部の対談者は、『イズベスチヤ』に対し確言した。
「戦略研究分析所」の所長アレクサンドル・コノワーロフ氏は、黒海エリアには危険性が有ったとしても、それはあまり深刻ではないと考える。

「無論シリアの出来事は、地域の安定性を強化する事には繋がりませんが、私は、最も問題であるのは太平洋方面であると考慮いたします。
日本海軍は、現在の所、我が国への侵略には指向されておりません。ですが彼らは、非常に効果的である大いなる伝統を有しております。
グローバルな政治活動の中心は、着実にヨーロッパ地域からアジア太平洋地域へシフトしており、ロシア東部は、強力な防衛力を必要としております」
彼は話した。
反対に、軍事予測センターのトップであるアナトリー・ツィガノク氏は、南部方面の方がより重要であると述べた。

「ロシアはシリア指導部を支持しており、タルトゥースに基地を維持することで合意しています。
状況について言えば、近東は、我々にとっては"今日"であり、極東は"明日"です。
クリルには、インフラストラクチュア、各種設備、掩体壕などといったバスチオンに必要なものは何も有りません」
彼は『イズベスチヤ』に指摘した。
2010~2011年に「バスチオン」複合体セット2基をシリアへ供給した事は、国際スキャンダル及びモスクワ、ワシントン、ダマスカス、テルアビブ、アンカラ間の一連の外交工作の原因となった。
沿岸ミサイル複合体「バスチオン」は、クラスノダール地方のウタシュ村に駐留するロシア黒海艦隊の第11独立沿岸ロケット砲兵旅団・第25独立ロケット大隊へ配備されています。



『ロシア黒海艦隊公式サイト』より
【K-300P「バスチオンP」】
以前は、クリル諸島へも「バスチオン」が配備される予定でした。
[クリル諸島への新型地対艦ミサイル配備は2014年までに完了する]
現在、クリル諸島に配備されているロシア太平洋艦隊沿岸軍の地対艦ミサイルは、旧式化した「リドゥート」です。
[ロシア太平洋艦隊の地対艦ミサイル部隊]
「リドゥート」は、シムシル島О. Симуширとイトゥルプ島О. Итурупに配備されています。

これらの「リドゥート」が「バスチオン」に代替される計画でしたが、今回の記事によれば、この計画は取り止めになるようです。
クリル諸島へ配備される筈だった「バスチオン」は、クラスノダール地方のウタシュ村へ行く事になりそうです。
「バスチオン」の最大射程距離は300kmとされていますが、昨年(2012年)12月中旬、ロシア海軍総司令官ヴィクトル・チルコフ提督は、2012年11月22日に「バスチオン」が最大射程の400kmでの試射に成功したと述べています。
[多用途原潜ヤーセン級は距離1500kmの地上目標を攻撃できる]
なお、記事中で戦略研究分析所所長アレクサンドル・コノワーロフ氏が述べている「日本海軍は、非常に効果的な大いなる伝統を有している」と言うのは、歴史を紐解けば、過去に日本海軍はハワイの真珠湾を奇襲攻撃して日本とアメリカの戦争(太平洋戦争)の火蓋を切り、それ以前にも、旅順のロシア艦隊を奇襲攻撃してロシア-日本戦争の火蓋を切っている事を指しています。
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