ロシア海軍太平洋艦隊はクリル諸島(千島列島)マトゥア島(松輪島)へ超音速地対艦ミサイル"バスチオン"を配備した
- カテゴリ:ロシア海軍沿岸部隊(海軍歩兵)
『タス通信』より
2021年12月2日14時36分配信
【太平洋艦隊の沿岸ミサイル複合体「バスチオン」班はクリルで当直に就いた】
モスクワ、12月2日/タス通信
太平洋艦隊の沿岸ミサイル複合体「バスチオン」班は、クリル諸島のマトゥア島での当直を開始した。
木曜日に太平洋艦隊広報サービスは発表した。
「太平洋艦隊の沿岸ミサイル複合体バスチオン班は初めてマトゥア島へ配置され、当直に就きました。
このクリル群島の中央部分の離島で、太平洋艦隊のロケット兵は隣接する海域と海峡ゾーンを監視する為、24時間の当直へ就きます」
声明では、こう述べられた。
太平洋艦隊の沿海地方多種戦力小艦隊の大型揚陸艦が島嶼地帯へ機材、要員、物資を送り届けた事が指摘された。
「島の領域で艦隊の物資-技術支援部隊は、1年中勤務へ就き、要員が居住する事を意図した部屋の整備作業を完了し、自立軍事施設地区を展開しました」
広報サービスは説明した。
太平洋艦隊は、機材の運用と整備の為、技術部署の機器が据え付けられ、機材と物資の貯蔵施設が展開し、発射位置への通路が装備されている事を強調した。
「要員は当直へ就き、計画戦闘訓練活動の実施へ着手しました」
声明では、こう述べられた。

現在、クリル諸島(日本側呼称・千島列島)には、ロシア海軍の沿岸ミサイル部隊は駐留していますが、ロシア海軍の「軍港」は存在せず、艦船も駐留していません。
2016年3月下旬、ロシア連邦国防相セルゲイ・ショイグ上級大将は、クリル諸島にロシア海軍の「基地」が造られる可能性に初めて言及し、クリル諸島へ太平洋艦隊の調査部隊を派遣すると述べました。
[クリル諸島にロシア海軍太平洋艦隊の基地が建設されるかもしれない]

2016年5月7日、大型揚陸艦「アドミラル・ネヴェリスコイ」とサルベージ船KIL-168など6隻で構成され、太平洋艦隊副司令官アレクサンドル・リャブヒン中将が指揮する調査部隊はウラジオストクを出航し、5月14日にクリル諸島中部のマトゥア島へ到着しました。
以後、マトゥア島へ太平洋艦隊の基地を建設する可能性についての調査が行なわれました。
[クリル諸島のマトゥア島にロシア海軍太平洋艦隊の基地が建設される?]
マトゥア島には太平洋戦争中に旧日本海軍が建設した飛行場跡(3本の滑走路)が残されており、その復旧の可能性についても調査が進められました。
[クリル諸島のマトゥア島でロシア海軍太平洋艦隊の基地建設の為の調査が進められている]
2016年5月末からはヘリコプター発着の為のマトゥア島飛行場の復旧作業が始まりました。
この他、大型揚陸艦が海岸へ貨物を荷揚する為の海岸の整備も行われました。
[ロシア海軍太平洋艦隊はクリル諸島(千島列島)マトゥア島(松輪島)の旧日本軍飛行場を再建する]
これと並行して旧日本軍の地下施設(掩体壕など)の本格的な調査(重機による掘削)も行なわれました。
[ロシア海軍太平洋艦隊はクリル諸島(千島列島)マトゥア島(松輪島)の旧日本軍地下施設を調査する]
[ロシア海軍太平洋艦隊はクリル諸島(千島列島)マトゥア島(松輪島)の旧日本軍地下施設の調査を続ける]
2016年6月下旬には、ドヴォイナヤ湾で旧日本海軍の零式艦上戦闘機(ゼロ戦)が発見されました。
[クリル諸島(千島列島)のマトゥア島(松輪島)で旧日本海軍の零式艦上戦闘機(ゼロ戦)が発見された]
2016年6月末までにマトゥア島の調査は全て完了し、調査隊は一旦撤収しました。
[ロシア海軍太平洋艦隊はクリル諸島(千島列島)マトゥア島(松輪島)の調査を全て完了した]
2017年にはマトゥア島の第2次調査が実施される事になりました。
[ロシア海軍太平洋艦隊は2017年6月~9月にクリル諸島(千島列島)マトゥア島(松輪島)の調査を行なう]
2017年5月30日、第2次マトゥア島調査隊を乗せた太平洋艦隊艦船支隊はウラジオストクを出航しました。
[ロシア海軍太平洋艦隊のクリル諸島(千島列島)マトゥア島(松輪島)調査部隊はウラジオストクから出航した]
6月7日、太平洋艦隊艦船支隊はマトゥア島へ到着しました。
[ロシア海軍太平洋艦隊のクリル諸島(千島列島)マトゥア島(松輪島)調査部隊は現地に到着した]
更に、最新鋭の潜水艦救助船「イーゴリ・ベロウソフ」(2015年12月25日就役)が派遣され、マトゥア島沖の海底で発見された潜水艦(1944年6月1日に撃沈されたアメリカ海軍の潜水艦「へリング」)の調査が行なわれました。
[ロシア海軍太平洋艦隊の最新鋭救助船イーゴリ・ベロウソフはクリル諸島(千島列島)のマトゥア島(松輪島)沖で沈没した潜水艦を調査する]
マトゥア島の第2次調査は9月初頭に完了し、9月7日には現地の設備や人員を収容する為の艦船部隊がマトゥア島へ向かいました。
[ロシア海軍太平洋艦隊は2017年度のクリル諸島(千島列島)マトゥア島(松輪島)の調査を完了した]
以後、マトゥア島には太平洋艦隊の将兵が常駐し、飛行場が運用されています。

[ロシア海軍太平洋艦隊はクリル諸島(千島列島)マトゥア島(松輪島)の飛行場を運用する]
[ロシア海軍太平洋艦隊はクリル諸島(千島列島)マトゥア島(松輪島)に常駐する]
沿岸ミサイル複合体「バスチオン」は、超音速対艦ミサイル「オーニクス」(ヤーホント)の地上発射ヴァージョンです。
[ロシア海軍は2019年に55基の超音速対艦ミサイル"オーニクス"を受領する]
これまでに黒海艦隊と北方艦隊とバルト艦隊、そして太平洋艦隊へ配備されています。
黒海艦隊の「バスチオン」部隊はシリアにも派遣されており、2016年11月15日にはシリア領内のテロリスト施設を攻撃しました。
[ロシア海軍黒海艦隊の最新警備艦アドミラル・グリゴロヴィチはシリア領内のテロ組織へ巡航ミサイルを発射した]
太平洋艦隊への「バスチオン」配備は2016年から始まり、同年3月初頭、沿海地方のスモリャニノヴォに駐留する第72沿岸ロケット旅団へ配備されました。
[ロシア海軍太平洋艦隊へ超音速地対艦ミサイル"バスチオン"が配備された]
[ロシア海軍太平洋艦隊沿岸部隊は超音速地対艦ミサイル"バスチオン"を初めて発射した]
2016年11月下旬には、クリル諸島南部のイトゥルプ島(択捉島)へ「バスチオン」が配備されました。
配備された部隊は、第520独立沿岸ロケット-砲旅団所属の第574独立沿岸ロケット砲大隊です。
[ロシア海軍太平洋艦隊は南クリル(千島)に新型地対艦ミサイルを配備した]
2017年2月、ロシア太平洋艦隊の原潜基地と、更には第520独立沿岸ロケット-砲旅団司令部が在るカムチャツカ半島にも「バスチオン」の配備が始まりました。
[ロシア海軍太平洋艦隊はカムチャツカ半島へ超音速対艦ミサイル"バスチオン"を配備した]
2019年3月、新たな「バスチオン」がカムチャツカ半島へ到着しました。
[カムチャツカ半島へロシア海軍太平洋艦隊沿岸部隊の新たな超音速対艦ミサイル"バスチオン"が到着した]
[ロシア海軍太平洋艦隊は2019年初頭にカムチャツカ半島へ新型地対艦ミサイルを配備した]
そして2021年12月初頭、マトゥア島にも「バスチオン」が配備されました。
これでロシア太平洋艦隊沿岸部隊の「バスチオン」配備地は、スモリャニノヴォ、イトゥルプ島、マトゥア島、ペトロパヴロフスク・カムチャツキーの4ヶ所になりました。

今回の太平洋艦隊広報部発表によると、「バスチオン」は大型揚陸艦でマトゥア島へ輸送されたとの事ですが、11月28日には大型揚陸艦「オスリャービャ」が宗谷海峡を東進してオホーツク海へ入っています。
『日本国防衛省・統合幕僚監部公式サイト』より
2021年11月30日発表
【ロシア海軍艦艇の動向について】
更に遡れば、11月初頭に大型揚陸艦「ニコライ・ヴィルコフ」と「アドミラル・ネヴェリスコイ」もオホーツク海へ入っています。
『ロシア連邦国防省公式サイト』より
ロシア東方軍管区(太平洋艦隊)広報サービス発表
2021年11月2日12時45分配信
【太平洋艦隊の大型揚陸艦はオホーツク海で砲射撃を実施した】
これらの揚陸艦が「バスチオン」をマトゥア島へ輸送したようです。
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