ロシア海軍太平洋艦隊のフリゲート"マルシャル・シャーポシニコフ"は日本海で新型対潜ミサイル"オトヴェート"を発射した
『タス通信』より
2021年12月15日15時1分配信
【最新対潜複合体「オトヴェート」ミサイルは日本海で成功裏に目標を撃破した】
モスクワ、12月15日/タス通信
太平洋艦隊のフリゲート「マルシャル・シャーポシニコフ」は、日本海で最新対潜複合体「オトヴェート」ミサイルの発射を実施し、成功裏に水中目標を撃破した。
水曜日にロシア連邦国防省は発表した。
「太平洋艦隊のフリゲート"マルシャル・シャーポシニコフ"は、日本海エリアで最新対潜複合体オトヴェートの水中目標へのミサイル発射を実施しました。
ミサイルの弾頭は成功裏に水中目標を撃破しました」
声明では、こう述べられた。
同省は、艦載対潜ミサイル複合体「オトヴェート」は潜水艦の撃破の為に意図されている事を指摘した。
「対潜ミサイル発射の為、更に有翼ミサイル"オーニクス"と"カリブル"の使用が可能な汎用発射装置が使用されます」
ロシア連邦国防省は指摘した。
[複合体「オトヴェート」]
2020年11月、防衛産業企業体の情報提供者は、新たなロシアの対潜ミサイル複合体「オトヴェート」は、2020年12月~2021年1月にロシア連邦海軍への軍備採用が計画されていると述べた。
2019年9月にロシア連邦国防次官アレクセイ・クリヴォルチコが述べたように、複合体「オトヴェート」は、この時点で既に国家試験を行なっており、複合体の開発会社であるコンツェルンMPO(海洋水中兵器)『ギドロプリボル』は試験量産を行なっていた。
公開情報によると、「オトヴェート」は、汎用発射装置3S-14(有翼対艦ミサイル「カリブル」、「オーニクス」、「ツィルコン」の為にも使用される)から撃ち出される対潜ミサイルで構成されている。
ミサイル「オトヴェート」の頭部には、小型自己誘導対潜魚雷が有る。
目標エリアへ到達すると、ミサイルはパラシュートで魚雷を水中へ投下し、その後は、自身の水中音響ステーション(ソナー)を使用し、自己で敵潜水艦の捜索を続ける。
ミサイル複合体の最大射撃距離は、水上艦の為のヴァージョンで40キロメートルである。
プロジェクト1155大型対潜艦の8番艦「マルシャル・シャーポシニコフ」は、1983年5月25日にカリーニングラードの沿バルト造船工場『ヤンターリ』で起工され、1984年12月27日に進水し、1985年12月30日にソ連海軍へ納入されました。
1986年2月2日に太平洋艦隊へ編入され、正式に就役しました。

1987年10月1日から12月26日まで太平洋艦隊基地への移動航海を行ないました。
この間、モザンビーク、ルアンダ、セーシェル諸島、インド、ベトナムを訪問しました。
1988年7月14日から1989年2月13日までペルシャ湾で行動し、41隻の船を護送しました。

1990年にはエチオピアからソ連民間人を避難させ、この間にアブダビとアデンへ寄港しました。

1990年8月14日から18日まで朝鮮共和国のウォンサン(元山)港を訪問しました。
1990年12月15日から1991年8月30日までペルシャ湾で行動し、この間にアブダビとアデンへ寄港しました。

1992年11月から1994年4月までウラジオストクの艦船修理工場『ダーリザヴォード』でオーバーホールが行なわれました。
2003年4月16日にウラジオストクを出航し、5月にインド洋で黒海艦隊の艦船と合同演習を行ない、その後、インドを訪問しました。
[ロシア海軍、インド洋遠征(2003年4~5月):その1・太平洋艦隊のウダロイ級大型対潜艦]
2003年10月にはハワイの真珠湾を訪問しました。

2004年8月30日から9月30日まで日本の呉を訪問し、9月4日には日本海上自衛隊と捜索救助合同演習を行ないました。
2005年8月には中国の青島港を訪問しました。
2006年3月にはグアム島を訪問しています。

2008年9月15日から17日まで日本海で実弾射撃訓練を行ない、帰投した直後に火災事故が発生しました。
[大型対潜艦マルシャル・シャーポシニコフで火災発生 ]
2009年3月に修理を完了し、艦隊へ復帰しました。
「マルシャル・シャーポシニコフ」は、これまでに3度に渡りアデン湾海賊対処任務へ就いており、1度目は2010年2月24日に出港しています。
[大型対潜艦「シャーポシニコフ元帥」支隊はソマリアへ出発した]
アデン湾到着後の「マルシャル・シャーポシニコフ」艦内で打ち合わせを行なうロシア海軍海賊対処部隊幹部とアメリカ及びシンガポール海軍のアデン湾派遣部隊指揮官
(2010年4月8日)

2010年5月6日、ソマリア海賊に乗っ取られたロシアのタンカー「モスクワ大学」を解放しました。

【ソマリア海賊:露タンカー乗っ取り 翌日に解放】

『ロシア通信社ノーボスチ』情報グラフィックより。
2012年5月7日配信
【乗っ取られたタンカー「モスクワ大学」の突入解放作戦】
この時のロシア海軍海賊対処部隊指揮官は、第44対潜艦旅団司令官イリダル・アフメロフ1等海佐でした。
[ソマリア海賊対処部隊指揮官イリダル・アフメロフの華麗な戦歴]
タンカー「モスクワ大学」を乗っ取ろうとしたソマリア海賊は1名が射殺され、10名が拘束されました。


しかし、拘束された10名も、ボートに乗せられて海上へ放逐され、その後、死亡しました。


結果的に、「モスクワ大学」を襲撃したソマリア海賊は、11名全てが死亡しました。
[アデン湾における大型対潜艦マルシャル・シャーポシニコフの活躍を描いた映画が撮影される]
「マルシャル・シャーポシニコフ」は2010年6月25日に帰投しました。
2012年4月下旬に黄海で実施されたロシア-中国海軍合同演習『海洋協同-2012』へ参加しました。
[ロシア-中国海軍合同演習「海洋協同-2012」(2012年4月)]
2012年11月2日から2013年4月21日まで遠距離航海を行ない、2度目のアデン湾海賊対処任務に就きました。
[ロシア太平洋艦隊アデン湾派遣部隊はウラジオストクへ戻った]
2014年3月中旬から7月初頭までインド洋への遠距離航海を行ない、この間に3度目のアデン湾海賊対処任務を遂行しました。
[ロシア太平洋艦隊インド洋遠征(2014年3月-7月)]
2014年10月から12月までオーストラリア沖への遠距離航海を行ないました。
[オーストラリア沖へ行ったロシア海軍太平洋艦隊の軍艦はウラジオストクへ帰ってきた]
2015年3月下旬から4月上旬まで日本海で演習を行ないました。
[ロシア海軍太平洋艦隊は日本海で演習を行なう]
[ロシア海軍太平洋艦隊は演習を実施した]
2015年6月下旬から7月初頭にオホーツク海で実施された演習へ参加しました。
[ロシア海軍太平洋艦隊はオホーツク海で対潜演習を実施した]
[ロシア海軍太平洋艦隊の『決闘』演習がオホーツク海で行なわれた]
2015年10月26日に宗谷海峡を東進し、11月16日に同海峡を西進したのを最後に、洋上での活動は見られなくなりました。
『日本国防衛省・統合幕僚監部公式サイト』より
2015年10月26日発表
【ロシア海軍艦艇の動向について】
『日本国防衛省・統合幕僚監部公式サイト』より
2015年11月16日発表
【ロシア海軍艦艇の動向について】
2016年春からウラジオストクの艦船修理工場『ダーリザヴォード』で近代化改装工事が始まりました。


2基の「ラストルブ」対潜ミサイル4連装発射筒、AK-100 100mm単装砲2番砲塔、ガスタービンエンジンなどが撤去されました。
ガスタービンエンジンは『クロンシュタット海洋工場』へ送られ、修復されました。
[クロンシュタット海洋工場はロシア海軍の全ての艦艇用ガスタービンエンジンを修理する]
「マルシャル・シャーポシニコフ」は、近代化改装により対艦ミサイル「ウラン」を装備する事になりました。
[ロシア海軍太平洋艦隊の大型対潜艦マルシャル・シャーポシニコフは近代化改装によりウラン対艦ミサイルを装備する]
近代化改装開始から1年以上経った2017年8月には、「マルシャル・シャーポシニコフ」の為に、有翼ミサイル「カリブル」用の垂直発射機3S-14も発注された事が明らかになりました。
ブログ『BMPD』より
2017年8月19日配信
【大型対潜艦「マルシャル・シャーポシニコフ」の近代化で2基の汎用垂直発射装置3S-14モジュールが設置される】
(つまり、当初は「ウラン」対艦ミサイルのみを装備するつもりだったが、その後、「カリブル」も装備する事になった)
「ウラン」4連装発射筒(3R-60U)は「ラストルブ」対潜ミサイル4連装発射筒の在った場所に、3S-14発射機は100mm単装砲2番砲塔の在った場所に設置されました。

2018年2月16日、「マルシャル・シャーポシニコフ」で、溶接作業中に木製足場へ引火した事により火災が発生しました。
[ウラジオストクで近代化改装中のロシア海軍太平洋艦隊の大型対潜艦マルシャル・シャーポシニコフで火災が発生した]
その後、『ダーリザヴォード』の乾ドックへ入渠しました。
[近代化改装中のロシア海軍太平洋艦隊の大型対潜艦マルシャル・シャーポシニコフ近影(2018年7月11日)]
2019年11月13日までに乾ドックを出ました。
[近代化改装中のロシア海軍太平洋艦隊のフリゲート(大型対潜艦)マルシャル・シャーポシニコフはウラジオストクの乾ドックを出た]
その後、『ダーリザヴォード』の岸壁で艤装工事が進められました。
「マルシャル・シャーポシニコフ」はAK-100 100mm砲の1番砲塔も撤去され、代わりにロシア海軍の新世代水上艦にも装備されているA-190-01「ウニヴェルサール」100mm単装砲が設置されました。
[近代化改装されるロシア海軍太平洋艦隊のフリゲート"マルシャル・シャーポシニコフ"は新たな100mm砲を得る]
更に、最新の高射ミサイル-砲複合体「パーンツィリ」の装備も検討されています。
(未だ実際に装備はされていませんが )
[近代化されるロシア海軍太平洋艦隊のフリゲート"マルシャル・シャーポシニコフ"は最新高射ミサイル-砲複合体パーンツィリ-Mを装備する]
2020年7月10日、「マルシャル・シャーポシニコフ」は、最初の洋上試験を開始しました。
[近代化改装されたロシア海軍太平洋艦隊のフリゲート"マルシャル・シャーポシニコフ"は日本海で洋上試験を開始した]

その後、一旦ウラジオストクへ戻り、8月13日には再び洋上試験の為に出航しました。
[近代化改装されたロシア海軍太平洋艦隊のフリゲート"マルシャル・シャーポシニコフ"は日本海で洋上試験を続ける]
9月15日、太平洋艦隊司令官セルゲイ・アヴァキャンツ大将が「マルシャル・シャーポシニコフ」を視察しました。
[ロシア海軍太平洋艦隊司令官は近代化改装されたフリゲート"マルシャル・シャーポシニコフ"を視察した]
10月19日、「マルシャル・シャーポシニコフ」は工場航行試験の第2段階を実行する為にウラジオストクを抜錨し、日本海へ出航しました。
[近代化改装されたロシア海軍太平洋艦隊のフリゲート"マルシャル・シャーポシニコフ"は洋上試験の第2段階実施の為に日本海へ出航した]
その後、ウラジオストクへ帰投し、11月6日には艦船修理工場『ダーリザヴォード』の乾ドックへ入渠しました。
[近代化改装されたロシア海軍太平洋艦隊のフリゲート"マルシャル・シャーポシニコフ"は最終洋上試験の準備の為にドックへ入った]
兵装の試験を行なう為、12月15日に出航しました。
[近代化改装されたロシア海軍太平洋艦隊のフリゲート"マルシャル・シャーポシニコフ"は兵装試験を行なう為、日本海へ出航した]
12月24日、A-190-01 100mm単装砲と対艦ミサイル「ウラン」の発射試験を行ないました。
[近代化改装されたロシア海軍太平洋艦隊のフリゲート"マルシャル・シャーポシニコフ"は日本海でA-190-01 100mm砲と対艦ミサイル"ウラン"の発射試験を行なった]
12月28日に再び対艦ミサイル「ウラン」を発射しました。
[近代化改装されたロシア海軍太平洋艦隊のフリゲート"マルシャル・シャーポシニコフ"は日本海で再び対艦ミサイル"ウラン"を発射した]
この時期に「カリブル」の発射試験も行なわれたようですが、失敗しました。
「マルシャル・シャーポシニコフ」は、2021年1月から港内に停泊した状態で乗組員の各種訓練~第1錬成任務K-1を行ないました。
[ロシア海軍太平洋艦隊のフリゲート"マルシャル・シャーポシニコフ"はウラジオストク港内で乗組員の錬成訓練を行なった]
2021年3月には海上での乗組員の各種訓練~第2錬成任務K-2へ移行し、3月4日には他の太平洋艦隊の水上艦と共にピョートル大帝湾で対潜戦闘訓練を行ないました。
[ロシア海軍太平洋艦隊旗艦・ナヒーモフ勲章授与・親衛ロケット巡洋艦ワリャーグ、フリゲート"マルシャル・シャーポシニコフ"、大型対潜艦アドミラル・トリブツはピョートル大帝湾で対潜戦闘訓練を行なった]
4月4日にはピョートル大帝湾で砲撃訓練を行ないました。
[近代化改装されたロシア海軍太平洋艦隊のフリゲート"マルシャル・シャーポシニコフ"はピョートル大帝湾で砲撃訓練を行なった]
2021年4月6日、「マルシャル・シャーポシニコフ」は、有翼ミサイル「カリブル」(対地型)を地上目標へ発射しました。
[近代化改装されたロシア海軍太平洋艦隊のフリゲート"マルシャル・シャーポシニコフ"は日本海で巡航ミサイル"カリブル"を発射した]
ミサイルは日本海から発射され、距離1000km以上離れたタタール海峡西岸のシュルク岬(ソヴィエツカヤ・ガヴァニの北方)の標的へ命中しました。

翌4月7日、今度は水上目標へ有翼ミサイル「カリブル」(対艦型)を発射しました。
[近代化改装されたロシア海軍太平洋艦隊のフリゲート"マルシャル・シャーポシニコフ"は日本海で対艦ミサイル"カリブル"を発射した]
4月8日には無人機を使用して地上目標への艦砲射撃訓練を行ないました。
[近代化改装されたロシア海軍太平洋艦隊のフリゲート"マルシャル・シャーポシニコフ"はピョートル大帝湾で艦砲射撃訓練を行なった]
2021年4月27日、フリゲート「マルシャル・シャーポシニコフ」は、正式に太平洋艦隊へ復帰しました。
[近代化改装された大型対潜艦改めフリゲート"マルシャル・シャーポシニコフ"はロシア海軍太平洋艦隊へ復帰した]
2021年5月初頭に遠距離航海へ出発し、その後、太平洋中央部の太平洋艦隊の大規模演習へ参加し、7月8日に帰投しました。
[ロシア太平洋艦隊のアジア-太平洋遠征と太平洋中央部演習(2021年5月-7月)]
2021年11月中旬にピョートル大帝湾で近代化された通信システム、対空防衛システム、レーダーの洋上試験を行ないました。
『ロシア連邦国防省公式サイト』より
ロシア東方軍管区(太平洋艦隊)広報サービス発表
2021年11月11日12時0分配信
【太平洋艦隊のフリゲート「マルシャル・シャーポシニコフ」は艦の新たなシステムの航行試験の為に海上へ出た】
『ロシア連邦国防省公式サイト』より
ロシア東方軍管区(太平洋艦隊)広報サービス発表
2021年11月12日14時30分配信
【太平洋艦隊のフリゲート「マルシャル・シャーポシニコフ」はピョートル大帝湾で対空防衛訓練を実施した】
2021年12月1日からロシア連邦軍の新年度が始まり、「マルシャル・シャーポシニコフ」は12月6日に洋上演習を行なう為に日本海へ出航しました。
これは、近代化改装により新たに設置された各種機器の試験も兼ねているようです。
[ロシア海軍太平洋艦隊のフリゲート"マルシャル・シャーポシニコフ"とコルベット"ロシア英雄アルダル・ツィジェンジャポフ"は日本海で戦闘訓練を行なう]
その後、ウラジオストクへ帰投し、12月14日に戦闘訓練の為、再び出航しました。
[ロシア海軍太平洋艦隊のフリゲート"マルシャル・シャーポシニコフ"はピョートル大帝湾で戦闘訓練を行なう]
翌12月15日、新型対潜ミサイル「オトヴェート」を発射しました。
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